海上自衛隊幹部候補生の卒業式を江田島で見届け、
その帰りに大尉殿のグッドジョブで呉地方総監部庁舎内に潜入し、
さらには高田帽子店で記念にミニチュアの将官用正帽を買って帰る、
という一連のご報告がやっと終わったところで、また呉に行ってまいりました。
呉地方総監部主催による恒例観桜会。
旧鎮守府庁舎の後にできた海上自衛隊地方総監部には、昔から桜の意匠を
その印にして来た海軍のシンボルとしての桜が毎年花を咲かせます。
横須賀地方総監部の旧鎮守府長官庁舎(田戸台庁舎)などでも観桜会が
毎年行われ、桜の時期には庁舎が一般公開されるの恒例となっていますし、
海自に限らず自衛隊基地で桜にまつわる基地駐屯地公開をすることもあるようです。
この「観桜会」というイベントそのものが、わたしは海軍時代から鎮守府が
行って来た行事を引き継いでいるのではないかと想像しているのですが、
その行事に今年初めて参加をすることが叶いました。
前日、関東地方ではまだ桜は咲いていない状態だったので、
「これはさすがに西日本でもまだ開花は望めないだろう」
と思いながら、当日、羽田から乗ったANAの機内で、突如機長がアナウンスを始めました。
「皆さま、大変重要なお知らせがあります」
その時には飛行機は雲の上で、飛行にもなんの異常も感じられず、
皆が「?」となったわけですが、続けて機長、
「広島空港上空は大雪のため、着陸ができない可能性もあります。
冬期は着陸を試みますが、それが不可能であった場合引き返し、
大阪空港に着陸することも予想されます」
周りからはなんの声も上がらず、もちろんパニックにもなりません。
さすがはこういう時に冷静な日本人、と感心したのですが、
わたしを含めてほとんどすべての人たちは、これまでの経験値から
まあ最悪の場合を言っているだけでなんとかなるんじゃね?
と考えていたのかもしれません。
真っ白でまるでピカピカ光っているかのような雲の下に入ると、
雪が山々や田んぼをうっすらと雪化粧していっているのが見えます。
明日から4月というのに、雪・・・・だと?
雲を抜けると中央のモニターにすぐに広島空港独特のグライドパスが見え、
着陸は行われるらしいことがわかったと思った次の瞬間、 もう機体は
滑走路に進入し、至極あっさりと着陸を済ませておりました。
このランディングが平常時の一般的な着陸のレベルよりかなり上手かったので、
着地評論家のわたしとしてはこれはなんとかお伝えしたいと思いまして、
ハーロック三世さんのおっしゃっていた
「お褒めのお声があると大変嬉しいものです」
という言葉に励まされる形で、降りる時にCAに生まれて初めて
「ビューティフルランディングだったと機長にお伝えください」
ということに成功しました。
雪が降って着陸しないかもしれない、という事態であったからこそ
こんなことを言うこともできたのかもしれません。
それはともかく、どうなってんのこれ。
今年は雪のあるところに全く行かなかったし、関東でも雪が積もらなかったので、
わたしとしては今シーズン初めて雪見をしたことになるのですが、
それにしても花見に来て初雪見をすることになろうとは・・・。
(しかもまだ桜咲いてないし)
エアチャイナの飛行機に雪が積もっております。
中国からの観光客は時ならぬ雪にきっと驚いたことでしょう。
階段で待機する係の地上員さん、階段に積もってしまった雪を
手でせっせと払いながら待機していますが、とにかく寒そう。
後で聞いた話によると、前日は暑いくらいの暖かさだったそうです。
ロビーから見える飛行機を皆が盛んに携帯で撮っていました。
なんの混乱もなくいつも通りに無口な乗客たちですが、
一人一人はちょっとしたアクシデントにワクワクしているのでしょう。
この写真では向こうにJALが普通に着陸しております。
この日、飛行機を早めに取ったことから、わたしは一旦
総監部からのお迎えを
「早すぎるので申し訳ないから(来ていただかなくても)結構です」
と断ったのですが、
「控え室も用意してありますし、庁舎敷地にある防空壕跡をお見せします」
というありがたいお言葉に、案の定ほいほいと前言を翻したのでした。
前回車で空港まで送ってくださった大尉殿(仮名)は、今回も
「前回降りられたところで車を停めて待っています」
とおっしゃっていたのですが、空港のロビーで待ってくださっていました。
顔を見合わせるなり、挨拶もそこそこに笑ってしまうわたしたち。
「お花見に来て雪を見ることになるとは思いませんでした」
「呉は雨ですが、雪ではないのでここに来てびっくりしました」
大尉殿も空港に来て雪に驚いたそうです。
確率としては低かったとは思いますが、もし大阪空港に引き返すことになったら、
その時には観桜会の5時半には新幹線でなんとか間に合うとしても、
大尉殿に連絡が取れなくなって彼を右往左往させることになっていたでしょう。
空港と呉を繋ぐ高速道路は山間部を走っているので、その間ずっと
このようなまるでスキー場に来た時のような光景を見ながら走りました。
後部シートにまでヒーティングのついた快適な車内から
眺める景色としては、なかなか乙なものではあります。
呉までの一車線道路はほとんどが凍結しかかった雪道で、
皆がのろのろと時速60キロメートルで数珠繋ぎになっている様子は壮観。
この辺りは凍結しやすく、商業トラックや住民などは冬場タイヤを履き替えたりするそうですが、
さすがに4月の声を聞こうとする頃で、皆普通タイヤに戻してしまっていたのではないでしょうか。
そして無事に呉に到着。
大尉殿のいうように雪は降っていませんでしたが、とにかく気温が低く、
スプリングコートにスカートという格好では震え上がるほどです。
とりあえず地方総監部のいつもの(なんて言ってしまう驕り高ぶったわたしである)
応接室に通され、ホッとしていると、総監夫妻が登場。
ご挨拶の後、大変でしたね、とおっしゃる総監に飛行機の着陸について話すと、
「自動操縦のままだったのなら大丈夫だったでしょう」
パイロットというのは一般の人と同じことを聞いても見方が少し違うな、
と思うと同時に、わたしは機長は確かアナウンスで自動操縦から
手動に切り替えるということを言っていたことを突如思い出しました。
「いえ、手動に切り替えるとアナウンスがあったと思います」
「広島空港と岡山空港は地形的に着陸が結構難しいんですよ。
だからあそこに乗り入れる飛行機のパイロットは上手い人が多いです」
なーるほどー。
そう言えば、アシアナ航空の飛行機が着陸失敗して(ローカイザに接触)
機体が破損したという事故があったのもここでしたっけね。
あの時の天候は霧雨だったそうですが、事故原因は機長の判断ミス、
しかし機長は事故直後から行方不明(おい)、
脱出の際、乗務員らによる避難誘導は無く 、さらには全損した機体は
しばらく放置され、日本側が解体作業をしたとかなんとか。
そういう難しい空港なので、アシアナの機長も「ベテランだった」ということですが、
まあ、あの国だし、本当のところどうだったのか・・。
総監夫妻をお待ちするちょっとの間に、前回にはなかった「くらま」の盾を発見!(左端)
呉最終寄港 護衛艦 くらま 平成28年12月5日
先日退役の式典が行われたというニュースを見ましたが、その「くらま」、
佐世保に行く前に最後の呉寄港を昨年の12月5日に行なっていたようです。
各地方隊に寄って最後のお別れをしたんですね。
室内には呉海自カレーシリーズのレトルトと、シールを集めてもらえる
スプーンとお皿のセットが飾ってありました。
わたしも集めて見たものの、(無理とはわかっていましたが)
この日3月31日をもって第一次ラリーは終了。
4月からは新しいラリーが開始されるということを知りました。
結果としてシールは3枚ゲットに終わりました乙。
総監夫妻は雨天のため呉地方総監部敷地内から変更された観桜会会場である
教育隊の体育館に先に向かわれ、残ったわたしは敷地内ツァーに出かけることになりました。
ご案内くださるのは地方総監部副官の方です。
外はシトシトと降り続く冷たい雨の中、黒い傘と🔦を二本もった副官が
ご案内と、説明もしてくださることになりました。
いやーなんか申し訳ないです。
続く。