サンフランシスコ空港で墜落したアシアナ航空機事故から一週間。
三人目の犠牲者が出ました。
この間、事故調NTSBとのやり取りを巡って、
「調査内容を公表しないように」
と異例の申し出を非公開にしたアシアナ航空側ですが、その依頼を
また公開されてしまい、この事実に呆れる声も上がっているようです。
そんな中、最新のニュースが飛び込んできました。
Asiana Airlines confirms it will sue KTVU-TV
over broadcast of racist fake pilot names
(アシアナ航空は架空のパイロットの名前(を報道した件)で
レイシストの報道をしたとしてKTVUを訴えることを確定した)
「斜め上のニュースが飛び込んで来たらまた書きます」
と前回この件について書いたときに予告したのですが、
こんな早くにその機会がやって来るとは(笑)
事の起こりは、この事故を報じるサンフランシスコ地元のテレビ局
KTVUが、字幕で事故機のパイロットの名前を
「ありそうなコリアンネーム(だが英語読みすると爆笑)」
に、適当に変えたものが何の手違いかオンエアされてしまったこと。
いずれも報道では、
「どう不謹慎だったのか」
具体的にどういう名前にしてしまったのかを伏せているのですが、
こういうことには一生懸命になるエリス中尉、英語のネットを検索して、
冒頭のキャプチャ画像を拾ってきました。
あははは。
こりゃはっきり言って「ネットネタ」ですわ。
Something wrong (なんか変だぞ)
We're too low (俺ら低過ぎるし)
Holy F○○○(説明なし)
Bang Ding Ow(バン!ドン!わー!)
うーん。
ちゃんと上から読むと事故の展開に合わせてストーリー仕立てなのね。
しかし、この名前はどちらかというと三番目を除いて中国系だな。
4番目はどちらかというとベトナム人の名前ですね。
やっぱりアメリカ人はアジアンの名前の違いなんてわかってないらしい。
ツッコみどころはそこじゃないだろって?
この衝撃的な(笑)放送事故は、ネットで拡散され、不謹慎だと非難する声が上がり、
さっそく指摘を受けたテレビ局側は公式に謝罪。
夏の間勤務しているインターンが、権限なしで電波に乗せてしまったこと、
そしてワシントンの事故調報道部関係者が伝えた名前も正確ではなかったと弁明しました。
ところが、これを「レイシズム」であるとし、アシアナ航空は本日付けで
KTVUを訴訟する決定をしたというのです。
いやー、予想を上回る斜め上です。
やってくれるとは思っていましたが、ここまで予想外の展開が来るとは(わくわく)
ところで事故後、韓国国内のテレビキャスターが
「亡くなったのが中国人で幸いだった」
として舌禍を巻き起こし、さらにその言い訳で
「韓国人でなくてよかったという意味だ」
と言ってしまい火消しどころかガソリンをぶっかけてしまったということがありました。
その後、件のキャスターではなくテレビ局がそれを謝罪したのですが、
その謝罪後も批難が収まらないことに対し
「謝罪を受け入れなければいけない」
と上から目線で余計なことを言って今も全く騒ぎは収まる様子がないわけです。
確かにこのような悪ふざけは仲間内でやるもので、公共の電波に乗せた
KTVUは放送局として責任を問われるのが当然ですし、
この件で悪戯をしたインターンはすでに処分されていることと思われます。
しかし(とあえて言います)。
このおふざけと「中国人が死んで幸いだった」という発言。
比べられるものではありませんがあえて比べます。
どちらが倫理的に悪質かというと、圧倒的に後者でしょう。
しかも韓国のテレビ局はこのキャスターを処分したわけではなく、
「謝罪したのだから受け入れてほしい」
などと、押し付けがましくアナウンスしてさらに中国人を怒らせました。
翻って不祥事に対し、KTVUは関係者処分、即座に謝罪、しかもNTSBまでが
「謝った報道をさせてしまったこと」を直接の関係もないのに謝罪しているわけですが、
アシアナ航空は謝罪を受け入れるどころが、今のこの時点で告訴に踏み切ったと。
テレビ局と航空会社とは別の企業体であるとはいえ、この事故を見る世界の目は
どちらがいったことも「韓国というひとつの国の発言」であると捉えるでしょう。
そのうえで言うと
「自分のミスは謝罪したから受け入れろと高圧的にいい、その一方
自国の飛行機を落とした国のテレビ局に対して謝罪を受け入れずいきなり訴える」
これは、どう考えてもダブルスタンダードです。
冒頭の、NTSBに「調査結果を公表するな」と申し入れたという件もそうです。
自分は勝手に機長の談話を発表し、CAを事故早々カメラの前に立たせてインタビューさせ、
あれこれと勝手な行動をとるので、事故調から「独自にいろんなことをするな」
とクギを刺された当事者が言うことでしょうか。
自分がやるのはいいが相手がやるのは(たとえ正規の業務でも)許さない。
これも立派なダブルスタンダードです。
そして、もう一つ。
「中国人で幸い」
という発言は、拡大解釈すればこれも立派なレイシズムだと思うのですが、
テレビ局のアルバイトの悪ふざけに、たとえば
「事故で亡くなっている人もいるのに不謹慎」という理由ではなく、
「レイシズムであるから」
とレッテルを貼る、これもダブルスタンダードではないのでしょうか。
現在日本国内でも、自分に都合の悪い、あるいは不愉快な言論は
「レイシズム」「ヘイトスピーチ」とまずレッテルを貼り、その言論そのものを封じたり、
非難する過程で相手にその「レイシズム」「ヘイトスピーチ」を弄する民族団体があります。
自分が陥っているのがダブルスタンダードであるという認識に決して立てない。
自分側に理があるということに毫も疑いを持たない、
共通するこれらはもしかしたらこの「民族」の特性なのでしょうか。
この報道に対するアメリカのネット言論は、たとえばニュースサイトに併設された
公式のコメント欄においても、否定的なものがほとんどです。
彼らの声を少し抜粋してみましょう。
「わたしの予想では0だと思うが、もしアシアナがこの裁判でいくらか賠償を手にしても、
そんなの他国の空港で250万ドルの飛行機を落として壊し、大勢の人を負傷させ、
3人も殺したことに対して償わなければならない賠償金には遠く及ばないよ」
So let me get this straight: some joke names damaged their reputation
more than actually crashing a plane?
(じゃはっきりいわせてもらうよ。
この冗談ネームが彼らの評判を害したっていっても
飛行機墜落させたのにはとても及ばないでしょ)
Good luck with that!
(頑張ってね!《棒》)
They have hired and attorney: We Su Yu
(そして彼らが雇った弁護士の名前はWe Su Yu《We sue you・訴えるぞ》だった)
Asiana's announcement appears to indicate
Asiana is more concerned with its reputation
(which ironically they have already damaged on their in a huge way)
than with the lives and well-being of their passengers.
(広報は今回の訴訟を、アシアナの評判を考慮したためだと言ってるね
《もっとも強烈なやりかたですでに自分で評判をズタズタにしているっていうのに皮肉だな》
乗客の命や安全より大事なことなのかね)
もちろん「差別は許せない!」とただひたすら息巻く人もいますが、
大抵は
●こんなことで訴えて自分たちの起こした事故への非難をそらそうとしているのか
●乗客のことより自分の会社の評判のためにこんなことを訴えるとは
という批判的な意見で占められています。
そして中には、
「黙ってやり過ごしていれば誰も知らなかったのに、こんな大騒ぎするから
この『差別的な』ネームが有名になっていつまでも取りざたされるな!」
という意見もあります。
わたしはこの件を日本語でも検索してみましたが、出てきたのは
「東亜日報」(韓国の新聞)の記事でした。
そこでもドン引き。
アメリカのメディアがこの件を報道するのに、その肝心の「差別ネーム」を
具体的に全く明らかにせずに訴訟についてだけを述べているのに対し、
この韓国の国内紙は本日このエントリで挙げたすべてを原文で報じ、
ご丁寧にもどういう差別的な意味があるかまでを細かく説明しているのです。
そして、
在米韓国人をはじめ、多くの米国人も、明白な人種差別であり、
悲劇的事故への侮辱だと、憤りをあらわにした。
アジア系のジャーナリストの連合体「米国アジア系記者協会(AAJA)」は、
「言葉では言い表せないほどの激しい憤りを感じている」と明らかにした。
怒っているのは韓国人だけじゃない!
多くのアメリカ人もこんなにこの差別に対して怒っているぞ!
と、言っているわけですが、これ、何かに似ていますね。
そう、在米韓国人がアメリカで起こしている日本の慰安婦問題に対する非難決議です。
実際公的にはともかく、アメリカ人はほとんどが上のような意見のようですけどね。
それにしても、今回のことや、あるいは日本国内で戦後行われてきた
「人権」を楯にしたあれこれを見ていると、まさにこの「人権」という言葉は
時としてどんな犯罪者にとっても、本来なら権利を享受できないはずの外国人にとっても
自分の立場を正当化する実に便利な万能の呪文だと言えます。
これを使えば昨日までの加害者も被害者となって、
それを武器に相手を刺すことすらできるのですから。
人権とは実はそれを使用する側の意図によっては
いかようにも悪用できる、取扱注意の危険物でもあるのです。
悪名高い人権法案が、民主党政権下で閣議決定されていたというのを聞いて
背筋を寒くした人はおそらくたくさんおられるでしょう。
その人権法案を通すことを外国人参政権の成立とともに強く推していたのが、
やはりこのアシアナ航空と同じ国の民族団体であったことがわかっています。
この、見事なまでに同じ戦い方。
やはり同じ民族だからですか?
追記:
記事中、名前を創作したのがテレビ局のインターンだと書いていますが、
テレビ局ではなくNTSBのインターンだったことがわかりました。
NTSBが謝罪したのは妥当であったということです。
今日付けのニュースでNTSBはこのインターンを解雇処分にしたことが報じられていますが、
アシアナ航空は当初このインターンを訴訟することを検討していたそうで、
処分決定を受けて直接報道したKTVUのみを対象にする予定だそうです。
Good luck with that!:)