週末の夜、海上自衛隊東京音楽隊のコンサートに行ってきました。
東京音楽隊は定期演奏会の他年間120回くらいの演奏会を行っていて、
この日もそのうちの一つ「定例演奏会」。
この時期の定例演奏会はクリスマスコンサートと毎年決まっているようです。
ステージには隊員が皆で飾り付けをしたというツリーが。
確かこのバナーはブルーだったと記憶するのですが・・。
やっぱりiPhoneの写真は調整できないのでダメですね。
クリスマスツリーも近くで撮ろうとしたのですが、ちょうどその時
開始を告げるアナウンスがあり、慌てて階段を最上階まで駆け上りました。
♪ ゴッドスピード S.メリロ
Godspeed! By Stephen Melillo
GODSPEED、と聞くと、わたしは「アンチェインド・メロディ」という曲の
I need your love
I need your love
Godspeed your love to me
というサビ部分の歌詞を思い出します。
「仮面ライダーカブト・ゴッドスピードラブ」という映画のタイトルや、
歌詞サイトなどでは「GOD SPEED」と切ってありますが、一つの単語で
「GODSPEED」
意味は古語で「幸運・安全・成功の祈願」。
作曲者のメリロはこの言葉を私生活でも頻繁に使用
そのもので旅の道中安全という意味もありますから、当然ながら
「ご安航を」
の意味で使われることもあるでしょう。
海上自衛隊東京音楽隊のコンサートのオープニングにふさわしい曲です。
メリロは1957年生まれのアメリカの作曲家で、このゴッドスピード以来
日本の吹奏楽シーンで大変人気が出ました。
面白いことに、彼のウィキペディアは日本語にはありますが英語では存在しません。
8分の7拍子のスピード感のある導入部には変拍子オタクの血が思わず騒ぎます。
ところで、このメリルという作曲家のHPで、
「 USSインディアナポリスに敬礼」
という映像を見つけたので貼っておきます。
Forever Strong, A Salute to the USS Indianapolis from Stephen Melillo on Vimeo.
「ゴッドスピード」と曲調が全く一緒な気がするのはわたしだけ?
♪ きらきら星変奏曲 天野正道編曲
おそらく「きらきら星」=クリスマス、みたいなイメージで選択されたと思うのですが、
もともとモーツァルトの「きらきら星変奏曲」は星とは全く関係ありません。
「トィンクル、トィンクル、リトルスター」
というきらきら星としての歌詞がこの曲に当てられたのは1805年、
モーツァルトが亡くなってからのことになります。
もともとこの曲は、
「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」"Ah, vous dirai-je, maman"
という子供の歌を題材にモーツァルトが速度や調、曲調を変化させて繰り返していく
変奏曲という形式のピアノ曲として作曲したものです。
きらきら星そのものに版権?はないので、これをヴァリエーションにすることは
コロンブスの卵的な発想だなと思いました。
天野正道は1957年生まれの作曲家で、「進撃の巨人」「シンゴジラ」の
吹奏楽アレンジなども行っています。
この「変奏」が、例えば代理コードを使ったり、リズムをラテン風、行進曲風にする、
というような「今風の」ものであるところが、この曲のポイントです。
♪ クリスマス・シーン 歌劇「ラ・ボエーム」より G.プッチーニ
Christmas Scene from The Opera YDAP-A05
ラ・ボエーム、という言葉が何を意味するかご存知だったでしょうか。
「ボヘミアン」、つまりこの歌劇に出てくる芸術家の卵たちのことです。
クリスマスイブに始まるこの歌劇の第二幕は、イブで賑わうパリの街の情景。
貧しくとも夢を失わないボヘミアンたちの日常と恋を描いています。
その吹奏楽版では「ムゼッタのワルツ」のドラマチックな盛り上がりで、
思わず左半身に鳥肌がたつのを感じました。
【衝撃】音楽を聴いて鳥肌が立つ人は「特別な脳」の持ち主であることが判明!
♪ 海と涙と私と 木下牧子 やなせたかし
「あんぱんまん」の作者やなせたかしが作詞した、胸が締め付けられるような美しい曲です。
三宅由佳莉三等海曹が素晴らしく抑制の効いた歌唱でしみじみと聴かせてくれました。
とりあえずアップされている動画を全部聞きましたが、この男声合唱が
音質、演奏、画像の見やすさなどを総合判断して一番いいと思いました。
もちろんこの日の演奏がアップされたら、間違いなくそれがベストでしょう。
この曲を聴いていると、やなせ氏が95歳の死の直前に言ったという
「まだ死にたくねえよ。
面白いところへ来たのに、俺はなんで死ななくちゃいけないんだよ」
という衝撃的な言葉をなぜか思い出してしまいました。
♪ 富士山〜北斎の版画に触発されて〜真島俊夫
演奏が行われたのがすみだトリフォニーホール。
墨田区の生んだ世界の偉人、葛飾北斎を記念して
が去年オープンしたことにちなんで選ばれた曲だそうです。
真島俊夫氏は昨年惜しくも逝去されましたが、その作品は
吹奏楽シーンで確固たる不動の人気をえて今日も演奏され続けています。
この「富士山」は、和太鼓や拍子木のリズムで和旋律を使い、
北斎の版画、すなわち富嶽百景をイメージしています。
この動画でいうと4:44から始まるホルンのテーマ、
(ホルントップの川上一曹が演奏)
♪ラドレ〜ミドシド〜 ラドレ〜ミドレミ〜
ミソラ〜ソミレド〜ラ〜 ラドレ〜ミドシド〜(固定ド)
というなんとも心憎い旋律がクライマックスで打楽器を伴って壮大に戻ってくる、
誠に名曲だと思います。
この「美味しい」部分までいかにだれずに緊張をキープできるかが
指揮者の腕の見せどころ。
くるぞくるぞ、と思っていて『きたー!』が思い通りのものだった場合、
ほぼ確実にこれも鳥肌がたちます。
この日2回目の鳥肌、いただきました。
♪ ハレルヤ! バンドとゴスペルコーラスのための ヘンデル
第二部の始まりは、これは楽しい、ゴスペルハレルヤ。
このバージョンは、歌なしで行われることもあるようですが、
今回は三宅三曹とこの日司会を務めたハープの荒木美佳三曹、
そして男性ボーカル(多分『はしだて』で歌っていた人)の3人が
ゴスペルのリズムでコーラスしました。
ちなみに普通にアメリカのゴスペルチャーチではハレルヤを
このように歌います。
みなさん重量級ですね・・・。
Howard Gospel Choir - "Hallelujah! - From Handel's Messiah: A Soulful Celebration"
こちらはアクション多め。
宗派にもよりますが(笑)こういうのが割と普通です。
♪「世界の約束」「人生のメリーゴーランド」ハウルの動く城より 久石譲
宮崎アニメ「ハウルの動く城」より二曲です。
安定のジブリメロディ。
「世界の約束」は倍賞千恵子の歌のイメージが強いので、
ここで三宅三曹の歌があってもいいかなと思ったのですが、
吹奏楽アレンジのまま、「人生のメリーゴーランド」に続きました。
好きなんですよねーどちらも。
もしかしたらジブリの曲で一番好きかもしれない。
♪ ビューティフル・ネーム タケカワユキヒデ
クリス・ハート - 「ビューティフル・ネーム」
1979年にゴダイゴがリリースした曲で、1979年の『国際児童年』協賛歌でした。
今日は参考動画にクリス・ハートというサンフランシスコ出身の
アフリカ系日本人歌手の歌をご紹介します。(ただし途中まで)
この曲を三宅三曹が歌いました。
キイを1音くらい下げたほうが良かったと思います。
♪ マイ・フェイバリット・シングス R.ロジャース
〔熱帯JAZZ楽団吹奏楽アレンジ〕
クリスマスの夜には「私の好きなもの」という歌詞がマッチしますが、
最初にこの曲をクリスマスソングとして歌ったのはバーブラストライサンドだそうです。
ご存知「サウンド・オブ・ミュージック」の挿入歌ですが、
コルトレーンの名演をはじめ、名だたるジャズミュージシャンがこの曲で
インプロヴァイズを行ってきました。
この日、満を持して東京音楽隊がぶちかましたこのジャズバージョン、
トランペットに始まり、4本のサックスのソリなど、息詰まるソロが展開しましたが、
わたしが大いにショックを受けたのはピアノソロです。
実はその前、電子ピアノを弾いている奏者にわたしは注目していました。
彼女は遠目に見ても書かれた譜をみてその通り弾いているのではなく
明らかにコードネームを見て弾いていると思われたからです。
コードプレイはジャズピア二ストには基本ですが、クラシック出身の人には
アドリブと同じく超えられない壁であることが多いのです。
彼女の弾き方は明らかにそれを乗り越えたか、あるいは最初から
そっち出身か、と思えるもので、他の楽器で入隊したけれど、
ジャズピアノを趣味でしかもかなりやってきた人なのかな、と思っていました。
この曲でで初めてアコースティックピアノの前に座った彼女が
HIiromi(上原ひろみ)ばりのインプロヴィゼーションを始めた瞬間、
わたしは自分のの観察がほぼ正しかったことを知りました。
ただし、彼女、兒玉苑香二等海士は他の楽器で入った人ではなく、
なんと今年ピアノで入隊した二人目のピアニストだったのです。
経歴によると、歌手の中川麻里子士長と同じ愛知県立芸大の作曲科卒、
ピアノ科ではないだろうという予想も当たりました。
街角ネズミの長い夜 CHAMELEON
学生バンドで演奏している動画が見つかりました。
なお、彼女は2019年に行われる『いきいき茨城ゆめ国体』のイメージソング
『そして未来へ』の作詞、作曲を担当したということです。
彼女の参加によって東京音楽隊の演奏を聞くのが一層楽しみになってきますね。
プログラムを製作した人、フォトショのエッジ処理が甘〜い!
というどうでもいいツッコミはさておいて、マイ・フェイバリット・シングスでは
樋口隊長はパーカッショニストとして演奏しつつ指揮を行いました。
吹奏楽の名門である駒澤大学で打楽器奏者であった樋口隊長、
常々その指揮ぶりにはパーカッシブなキレの良さ、エッジを感じるのですが、
吹奏楽の指揮者が打楽器奏者であることは、指揮者に求められるカリスマ性にも
大いに寄与しているのではないかとふと考えた次第です。
その時には激しく、時にはエレガントな後ろ姿には注目せずにはいられません。
♪ 美女と野獣 アラン・メンケン
Celine Dion & Peabo Bryson - Beauty And The Beast (HQ Official Music Video)
ご存知、ディズニー映画の主題歌です。
もうこれはこの日すみだトリフォニーにいて聴けた人だけの至福というべき時間でした。
パイプオルガンの演奏台のあるところ、バルコニー状のステージに、
「5分で早変わりして」夏の白い制服に着替えてきた三宅三曹と
上下を純白の第二種軍装(ごめんねー違うのはわかってるけどこう言いたいの)
に着替えた男性歌手(多分”はしだて”で『蕾』を歌った人)とでそれはそれは美しく、
切なく、涙が出るほど清冽なデュエットを聴かせてくれたのです。
二人が歩み寄って、向かい合い、最後の「Beauty and the beast」を歌い終わった時、
なぜか心臓がドキドキしてしまったのはわたしだけだったでしょうか。
♪クリスマスキャロル・ファンタジー 星出尚志
陸上自衛隊第1音楽隊 第18回クリスマスチャリティコンサート
陸自の演奏があったので貼っておきます。
「神の御子は今宵しも」「 もろびとこぞりて」「まきびと羊を」
「あめには栄え」「もみの木」
など、思いつく限り?のおなじみの曲が登場し、最後もう一度「神の御子は」で終わります。
コードやリズムが凝っているので、なかなか新鮮に聴けるアレンジです。
♪ ブラームス ワルツ 第15番 変イ長調 Op.39-15
ジャズピア二ストの出現に衝撃を受けたこの日のステージですが、
クラシックのピアニスト太田佐和子二曹がソロで弾きました。
昔これを聴いた時「お姫様の曲だなあ」と思ったものですが、
優雅なワルツはまさにお姫様のスカートがくるくると回る様子を想起させます。
♪ 行進曲「軍艦」
海上自衛隊のコンサートでは最後に必ずこの曲をすることになっています。
が、この日、樋口隊長が何度目かになる(笑)指を一本立てて見せる仕草に続いて
いつも通り始まった「軍艦」。
音楽まつりでこの曲を歌付きで演奏したことを、激賞し絶賛したわたしです。
特に「海行かば」の部分に託す特別な思いについて熱く語ってみたわけですが、
まるでその思いを汲んでもらったようなサプライズが待っていました。
「海行かば」の始まる直前に三宅三曹と川上一曹が正帽着用で登場し、
男女のデュエットでその続きを歌ってくれたのです。
音楽まつりの時にも「海行かば」の後の部分でパブロフ犬並みに
必ず涙が出て困る、と書いたものですが、この日もきっちりそうなりました。
それだけではなく、その後オルガンのテラスに白い制服の管打一個小隊が現れ、
ファンファーレ風に最後の部分を演奏するというだめ押しつき。
何が感激するといって、軍艦をルーチンではなくこれほど大切に、
思い入れを持って演奏し聴かせてくれるというその心ですね。
音楽まつりに続いて、そのことを強くわたしは感じましたし、何より、
わたしの周りにいたオールドネイビーの諸紳士がたの感激は如何ばかりであったでしょう。
帰りにホールの外に出ると、オリジナルカレンダーを配っていました。
わたしも一つ持って帰りましたが、山のように抱えている人もいました。
というわけでその魅力と実力に魅了された素晴らしい演奏会。
この日も心から満足して帰路につきました。
この日の参加にご配慮をいただきました皆様方に心から感謝を申し上げます。
どうもありがとうございました。