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オークランド航空博物館〜USSメイコンの二人の犠牲者

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このオークランド航空博物館は、何度か言ったように、
ハンガーに飛行機をただ並べただけのぞんざいな展示なのですが、
そのそっけなさというか放置されたままの感じが、
よりここにある飛行機たちとの距離の近さを感じさせて、非常に印象深いものでした。

「Don't touch」と書いてあっても、見張っている人もいないし、
極限まで近寄って、心ゆくまで機体を眺めることができるのですから、
飛行機好きの人にはまさにサンクチュアリのようなところです。



下を見て歩いていないと翼にぶつかってしまうから、と言うことでこのように
目立つ色のシールをこれまたぞんざいにテープで貼ってあるだけ。
飛行機と飛行機の間も決して広くないので、うっかりしていると体が当たってしまいそうです。

キャッスル航空博物館の方はこんなことはなかったので、アメリカだからというより
こういった「おらが空港のミュージアム」ならではの大らかさなのでしょう。



Sparrowhawk Mk II

スパローホークで調べると、これとは全く違う形のカーチスの戦闘機が出てきます。

これはカナダのバンクーバーにあるエアロダイナミクス社の制作した
ツインブーム・テイルのナセル・コクピットデザインの飛行機。
こう見えて?非常にコントロールしやすいということです。

カーボンファイバーとケブラー樹脂の混合された素材は、軽量でかつ丈夫とのこと。



この機体はキットをオーナーが組み立てるというものです。
ドゥーイットユアセルフの飛行機ですね。

ツインブームのテールなので、



こんなところにプロペラがついているのですがこれがなんともかわいい。
プロペラのカバ‐を白と水色のストライプにするなど、オーナーのこだわりですね。



サイドバイサイドで二人乗り。
操縦するのは車と同じで左座席だけです。
しかし、この助手席に乗るのはご遠慮したいものです。

わたくし何を隠そう、グランドキャニオン行きのセスナで終始生きた心地がしなかったくらい、
こういう小さな飛行機に乗るのは怖いのです。

これは自分で操縦しないからで、車でも助手席に乗っていると高速などは怖くて仕方ありません。
相手を信用しているとかいう以前に助手席にいるより運転席が長いと、
どうしてもこうなってしまうように思われます。

たぶんですけど、こういう飛行機も自分が操縦するのなら平気なんですけどね。



North American Aviation T-39 Saberliner

ノースアメリカンと言えば、このブログ内で語ったT-6「テキサン」、F-86「セイバー」など、
傑作飛行機を作った航空機製造会社ですが、このNAが初のビジネスジェット機として
自費開発したのがこの「セイバーライナー」です。

NAで開発が始まったちょうどそのとき、米空軍に汎用練習機の試作計画が起きました。
Utility Trainers Experimental、つまりUTX計画です。

これに呼応したNA社に空軍が付けた注文が

「翼と尾翼は『セイバー』と類似性を持たせてほしい」

そこで、NAは、このジェット機に「セイバーライナー」と名付けたのでした。
この機種は空軍が1959年に配置した後、空軍と海軍どちらにも配備されました。

この機体の認識番号はCT-39A、60-3504。

これは、輸送(Cargo)と人員輸送(Personal Transport)に従事するためにデザインされたもので、
1960年に就航した、という意味があります。


ところで、この写真を撮っていたエリス中尉の目は、ある物を見つけてきらりと光りました。
なんと、このセイバーライナー、ドアが開いているではありませんか。

もしかしたら、この日はこのセイバーライナーを公開する日だったのかもしれません。
単にドアが壊れて開きっぱなしだっただけなのかもしれませんが。

これは中に入ってもいいってことよね?
それでは、と中に入り込みました。
写真は撮りませんでしたが、搭乗口から三段ほどの階段が降ろされています。
これは機体に据え付けられたもので、少し高いですが、簡単に機内に入れます。



お邪魔します。
コクピットには二人、乗務員は一人、キャビンには6人が乗れます。
こうして写真にとると狭いように思えませんが、なにしろ狭いです。
頭をかがめないと歩けません。

ちゃんとカーテンがあったり、もう撤去されていましたが写真の左側には昔トイレがあった形跡が。
左に見えているのはシンクで、水道の蛇口のようなものも見えます。



コクピットはどちらも操縦桿付き。
当時使っていたヘッドフォンがそのまま置いてありました。
シートベルトは肩から回して股のところで留める三点式です。



そしてずいっと奥まで入ってみると・・・・・・。

窓が・・・外れたままになっている・・・・・ORZ

まあ、この辺は雨が降らないんですけどね。
でも、やっぱり外気にさらされっぱなしというのは保存の観点からいかがなものか。



その気になればここからも入れたわね。


それはどもかく、この右側のシートに、星が一つあるカバーが掛けられていますね。
これは、ここがアメリカ的に「上席」というやつで、ここに一度だけですが
彼女は空軍のお偉いさん、星ひとつのジェネラルつまり准将(Brigadier General)を
乗せて飛んだことがあるのだそうです。

言ってはなんだけど准将でもこうやって「記念」を残すんですね。




そして問題の・・・・・・これ。

これ、何なんでしょう。

デコイ・ミサイルを「子供用のレプリカ」などと勘違いしてしまったエリス中尉ですが、
説明を読んでもこれが何なのかさっぱりわかりません。



Multipurpose Servicing Unit RCPP

充電と空冷のサポートをする、と説明には書いてありました。

パイロットの耐圧スーツのためのホースとか予備燃料のためのアクセスとかありますから
航空機の非常電源とか、燃料とかが搭載された「便利グッズ」なんでしょうけど、
これはマルチ・パーパスになった現代の増槽?

こういうものの通称、どうやって使うかご存知の方おられますか?
 



これも説明板が見つからず、なにか正確にはわかりませんでした。
ただ、形からどうもメイコン飛行船のモックアップのようなものではないかと考える。

もしこれがUSS Maconだとしたら、これは偵察任務に使用することを目的に
アメリカ海軍によって建造され、使用された硬式(公式ではない)飛行船のことです。

実は「スパローホーク」で画像を検索したら、このメイコンが出てきたのですが、
メイコンは空中母艦として軽いスパローホークを5機まで牽引できたそうです。

機体が金属にもかかわらずヘリウムガスで揚力を得ていたという、
素人目に見てもいかにも危なっかしい機構のものですが、
案の定というか予想通りというか、二年も経たないうちに、強風に煽られて
モントレー湾(今いるところの近く)に沈んでしまいました。

比較的天候の穏やかなカリフォルニアだからこそ、2年もの間無事故だったとも言えますね。

この時の事故で、メイコンの機体は海上には非常にゆっくり落下したため、
乗員乗客のの70人はライフジャケットとボートで生還することができました。

この事故における犠牲者は二人。
一人は何を思ったか、事故発生直後に高高度から海面に飛び降りて即死、
もう一人は一旦脱出できたのに、私物を取りに船体に近づき、沈没に巻き込まれて死亡。
どちらも本人次第で防げた犠牲です。


先日のアシアナ事故で、乗客の何人もがカートまで持って脱出していましたね。
これはすべてたまたま延焼が遅かったからできたことで、ただ、運が良かったのです。
このような恣意的な行動は、本来脱出の手助けをする乗務員によって全て制御されるべきで、
もし事故機がガソリンが少ない状態で墜落したのでなければ、
この乗客たちのエゴによって死傷者は倍増していたものと思われます。

東北の大震災でも、自宅に貴重品を取りに帰って津波に巻き込まれた人が多くいたといいますが、
お金も大事なものも命に代えられるものではありません。

昔読んだ「大事故、自然大災害から生還した人々」という本の一節に、
たとえば常日頃瞑想をするなど、精神統一を欠かさない人はこういう時に
結果的に生還する確率が高い、という印象深い報告がありました。
このようなひとたちは一般的に精神性を重んじ、物欲を排除しようとする傾向にあるので、
いざとなったときにそういった欲に支配されることもなく、
過たず判断し、かつ行動することができるということなのかもしれません。

また、逆に大災害を経験した者は物に執着しなくなる、という話もあります。
いずれにしても物への執着や過った状況判断によって命を失うほど虚しいことはありません。

せいぜいいざというときのために、この二人がなぜ犠牲になったかを肝に銘じたいと思います。



メイコンはモントレー湾の海底深く、ダイバーも到達できない場所に沈みました。
最近調査委員会によって機体の一部が引き揚げられたりしましたが、
自然保護区であるため、これ以上の引き揚げは今のところ不可能であり、
メイコンの眠るこの海の底は「アメリカ海軍の墓場」の一つとなっています。

http://www.sanctuaries.noaa.gov/missions/2006macon/welcome.html









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