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ネイビーズ・アプレンティス〜メア・アイランド海軍工廠博物館

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 メア・アイランド博物館、今日は造船所の技術部についての展示です。

海軍造船所には、

ネイビー・アプレンティス・スクール

という初級技術者を訓練する教育機関がありました。
文字通り、初心者を熟練技術者、そして指導者のレベルに
導くための最初の道案内を行う重要な組織です。

「アプレンティス」(apprentide)

という単語はあまり日本では馴染みがありませんが、例えば
ポール・デュカスの「魔法使いの弟子」(ミッキーが演じたあれ)は

「Sorcerer's Apprentice」

といいます。
徒弟制度の弟子、というイメージでしょうか。

ここにはアプレンティス・トレーニングを受けていた学校の写真、
彼らが授業で使った設備がそのまま残されて展示されています。

右下の大きなやっとこのような形をしたものは「キャリバー」といって、
物差しでは測れない外周や内側を計測するための道具です。

学校で使われていた椅子は、作業用なのかアメリカ人が座るにしては
異常に座部が低く、脚は床に固定できるようになっています。

ロッカーの中にはメカニックの本、昔の保護用眼鏡などが見えます。

ふと上を見上げると、学校で授業に使われていた黒板がありました。
謎の数式が書かれていますが意味は不明です。

セイルロフト、「帆」関係を学ぶクラスの優秀卒業者が
金色のプレートに名前を残せる木の看板。

古いプレートはすでに黒ずんで、全く文字は読めませんが、
一番新しいプレートは1993年の卒業生です。

ところで、「セイル」というと布の帆のことですよね?
針と糸、ハサミ、ミシン、コンパスというのはわかりますが、
そこに原子力を表す電子マークが・・・・。

昔は帆を作っていたけど、近年は潜水艦のセイルについての技術を
勉強していた、ということでしょうか。

机ももちろんアプレンティス・スクールで使われていたものです。
左側の説明によると、スクールは1858年に始まりました。
つまり、ここに造船所ができるとほとんど同時に学校もできたということです。

SPUR GEAR、というのは平歯車のことです。
これは歯車の歯の拡大で、噛み合う部分も含め、その仕組みと
部分名称を学ぶための模型です。

「ホールディプス」(実際の深さ)と「ワーキング・ディプス」(稼働する深さ)
の微妙な違いなどが説明されていますね。

実際に活躍した踏み台の上にある黒くて長いものは、
ツールボックスです。

PLUMB ALIGNER BRACKET。

配管を結合するブラケットという感じでしょうか。
しかしそれにしてはたいそうな木箱に入れられているのが不思議です。

右の写真はアプレンティススクールで学ぶ少年。
名前がラッセル・ワグナーくんということまでわかっています。

今日はこどもの日なのでこのエントリを選びました(嘘)


おそらく当時は子供を働かせてはいけないという法律がなかったので、
彼のような幼い機械工も時々は見られたのでしょう。

左は、1963年にアプレンティス過程を終え、晴れて一人前の
技術者としてこれからスタートします、という53人の卒業生。

よく見ると二人、アフリカ系の卒業生がいます(上から3段目と4段目の左から2人目)。

公民権運動真っ最中の時期に彼はここで勉強をして卒業したことになりますが、
ここでは黒人に制度上の対する差別はなかったということです。

海軍そのものがアフリカ系を昔から締め出していなかったので、
自然なことかと思われますが、まあ職場では色々あったんではないかと。

さて、ここからは学校ではなく、ラボラトリー、研究室などの機材の紹介になります。

これは一目見てとんでもなく古い機械であることがわかりますが、
なんと1890年ごろバッテリー部門で製作された充電器だそうです。

艦船に搭載し、船のバッテリーを充電するのに使われていました。

「デンジャー」と書かれた札がつけられたレバーをバチっと
反対側に倒して通電する、という原始的な仕組みだと思われます。

ラボラトリーでは、顕微鏡を覗いていたり、前掛けをして机に向かっていたり、
理科の実験室のようなのどかな雰囲気があります。

それではラボラトリーではどんなことが研究されていたのでしょうか。
左から、ラボラトリーという本、メジャリング・チューブ、
真ん中の生姜のような物体はなんと、フジツボです。

これは、塗装、ペインティングラボで飼育?されていました。
理由はお分かりですね?

そう、フジツボがつきにくい艦船の塗装を研究していたのです。

右側の茶色い塊、一番右側は全てゴムですが、これは
説明によるとガンマ線の防護を研究していたそうです。

γ線は電離作用により、DNAを傷つけるので発がん作用があると言われます、
致死線量は6グレイ前後で、防護は、現在、比重の重い物質
(鉛、鉄、コンクリートなど)で行いますが、他のα、β線より
遮蔽しにくい放射線と言われています。

なるほど、ラボのが当時化学実験室のようだった訳がわかりました。

インダストリアルラボラトリーの名前が金で刻まれた黒板がありました。

フジツボを育ていたらしい「ペイントショップ」の写真です。
防錆性、耐久性、それからステルス性も研究されたかもしれません。

工廠では女性も働いていました。
もちろん技術者というより、補助の仕事ではありましたが。

かつてここで働いていたお嬢さんたち。
機械の前に立っているのは右下のキャロラインさん。
左はイブ・ハッチンソンさんの若き日と現在のお姿。

そうやって研究した塗装を実際に行う作業がここで行われていました。

電気機器を含む、無線、レーダー、ソナー、そして暗号などの機械を
修理していいたショップで使われていた道具の数々です。

左からマイクロメーター、インジケーター、リキッドレベルセンサー、
圧力スイッチ、圧力計、ワークセンサー、などなど。
それを実際に使っている写真と一緒にあったりして、もしかしたら
ここは造船技術の細部について展示されている唯一の博物館かもしれません。

マイクロメータは、精密なねじ機構を使って
ねじの回転角に変位を置き換えることによって拡大し、
精密な長さの測定に用いる測定器のことです。

ノギスよりも精度の高い測定に用いられます。

ただの白いつなぎですが何か?

と言いたくなりますが、一応防護衣服ということになっています。
これにゴムの安全靴、防護メガネ、手袋などを付けます。

マスクはアスベストに対し特に有効でした。
これらは塗装を行ったり、剥がしたりする作業の時に着用しました。

左;回路をチェックする電流計

右;  電流計

左;電気抵抗を検査する機械

右;メグオーム(megohm)メーター、同じく。

原子炉、パワープラントショップなる部門もありました。

ここからは説明がなく、謎の機械が続きます。
第二次世界大戦中、海軍工廠で使われていた機械ばかりです。

これはわかる。扇風機。

これは同じようなのを「ミッドウェイ」のマシンショップで見た気がします。
空母に必要な部品を、彼らは全て艦の上で作ってしまうのです。

万力のような非常に原始的な機械。

素材を切断する機械らしいですね。

粉砕機のようです。
機械の設置にあたっては、かつての技術者たちが協力したようで
ところどころにその写真があります。

これは説明がありました。
Horizontal Turret Lathe、水平タレット旋盤です。

普通旋盤にタレットと呼ばれる、旋回式の刃物台を取り付けたもので、
タレットに複数の刃物を取り付けておき、
これを旋回させることで使用する刃物を切り替えていきます。

台の向きはこれ以外に垂直のもの(バーチカル)もあります。

これは何かわかりませんでした。
丸いテーブルで穿孔する機械のようです。

1935年当時のメア・アイランド造船所で働いていた人たち。
ソフトボールのリーグがあったようですね。

ここに描かれている人たちのほとんどが1800年代生まれ。
彼らのほとんどが、その後に始まる戦争の時代にここにいて、
怒涛の時代、戦いに身を投じる艦船を建造し、送り出した経験を持つのでしょう。

 

 

 


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