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平成25年度自衛隊音楽まつり〜海自音楽隊の「歌手」

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11月16日に行われた陸海空自衛隊音楽まつりの様子をお伝えしています。

この演奏会には「休憩」がありません。
基本演奏中の席の出入りは自由ですし、飲食も周りの迷惑にならないようなら可能、
何と言っても写真ビデオ撮影大歓迎、という太っ腹。

何と言っても国民の税金に支えられている自衛隊音楽隊ですから、
その演奏会は日本国民であれば著作権など関係無しに広めていただいて結構、
いやむしろ、写真、映像、そしてブログで宣伝して頂ければ大変嬉しい。
そのような自衛隊広報の声が聞こえてきそうな「ゆるさ」です。

その心の広さに甘えて、思いっきり内容をここでお伝えしてしまう当ブログです。



4章に分かれているこの日のプログラム、第二章の「大海」の始まりです。
ということは、当ブログ的に最も張り切ってお伝えしたいところの海自音楽隊登場。

と思ったのですが、この章は防衛大学校のファンシードリルから開始。

陸海空問わず未来の指揮官を育成する防衛大学校なのに、なぜ「海」なのか。
その理由は、わたしの勝手な独断で説明しますと(笑)、防大というのは
表向きにどういうことになっていようとも、その元々は「海軍兵学校」なのです。
異論は認めません。


この日の映像でも紹介された防大生必須の東京湾遠泳。
海軍兵学校の伝統であったこの遠泳を防大では恒例として行うことから、
「大海」の章に防大を投入した、ともとれる説明がありましたが、
防大が海軍兵学校から受け継いでいるのは遠泳だけではありません。

開校記念祭でも行われた「棒倒し」。
細部を少し替えただけの短いジャケットのネイビーブルー、夏は純白の制服。
そして、上級生が下級生を一対一で指導する「対番制度」。
全学年が一つの「隊」として上級生が下級生を指導する制度。

違うのは鉄拳制裁の有無だけ、というくらいです(昔も一応禁止されていたんですがね)。

というわけで、海自が旧海軍の流れを強く引き継いでいると言われているように、
防大も実は「海軍兵学校の末裔」であるというのが、海自内の暗黙の了解です。(たぶん)









この次の日、わたしは全く同じ演技を防大グラウンドで見ましたが、
そのときも、誰一人としてミスをしませんでした。
今まで見た防大儀仗隊の映像によると、失敗率0。

もしかしたら、去年の開校記念祭で見たミス(銃を落とした)は異例だったのかも。







この「銃くぐり」を見ると、いつも映画「パイレーツオブカリビアン」の最後の海戦で、
ベケット卿が破壊されて行く英海軍艦船の階段を、スローモーションで降りるシーンを思い出します。

記念祭の演技のとき、隣にいた女性たちが(どうも防大生の母親のようだった)

「あれ、当たったら痛いよね」

と真剣に心配していましたが、三枚目の写真からも予想されるように、
重さ4・7キロの銃がもし顔面直撃したら、痛いではすまないでしょう。





前にも書きましたが、防大の儀仗隊は「クラブ活動」などではありません。
彼らは防大所属の「儀じょう兵」であり、儀礼、警備のために天皇・皇族・大臣・高官、
あるいは外国の賓客などにつけられた兵隊という位置づけでもあります。

彼らが行うファンシードリルは、全ての儀仗隊が行うものではなく、国内では
陸上自衛隊少年工科学校、陸上自衛隊44科普通科連隊、そして防衛大学校儀仗隊だそうです。




眉目秀麗な学生さん。
ちょっとイメージフォト風に加工してみました(笑)

 

指揮は第4学年の川上北斗学生です。



さて、この音楽まつりでは、毎年米軍以外の外国軍楽隊をゲストバンドとして招聘します。
会場のスクリーンでは、開始までの長大な時間(早くに会場になるので、たっぷり1時間はある)
観客に向けて自衛隊の活動広報映像を見せたり、これまでの音楽まつりの様子を紹介していました。

それによると、今までに出演したゲストバンドは、シンガポール軍、インド陸軍、
オーストラリア陸軍、韓国陸軍、同じく空軍。

どうも近場ばかリのような気がしますが、招聘するからには旅費も防衛省が持つので、
ヨーロッパや南米からは呼びにくい、ということなのかもしれません。
というわけで、今年はタイ王国陸軍軍楽隊です。

どうしてこのゲストバンドが「大海」という、海自の受け持ち部分に入っているのかというと、
その理由は、わたしの勝手な独断で説明しますと(笑)、

海外から来る→海を渡ってくる→「大海」

ってことだったんだと思います。


正直、バンドとして、あるいはドリル演奏だけを見ると、自衛隊が素晴らしすぎるのか
少しその部分に関しては見劣りしないでもありませんでした。

が。



このタイ美人が登場して、思わず皆から笑いが漏れた、
「変な音の笛」を吹いたときから、タイ王国軍楽隊、本領発揮です。



楽団員が皆でリンクを形作り、おそらく隊員が二人、
ムエタイの選手となって擬似格闘を音楽に乗せて行いました。



背中と腕に本物の入れ墨があり、とても「偽選手」には見えません。

ムエタイは「最強の格闘技」とも言われタイの伝統的な武術ですが、賭けの対象であるため、
ムエタイをするのは、「身体しか資本が無い」貧困層の若者だけなのだそうです。
しかし、世界では「タイ=ムエタイ」という国家的イメージが強いため、
タイの人はえてして海外に出て初めて、その評価を知ることになるのだとか。

このたびはタイ王国軍楽隊、そのイメージを前面に押し出して、音楽というより
パフォーマンス重視で攻めて来ました。



型だけとはいえ、迫力です。



そして模擬試合が終了。
全員が最後の曲の演奏を始めました。
曲は「ソング・フォー・ジャパン」。

このタイトルではトロンボーンのチャリティしか見つからなかったので、
おそらく軍楽隊の方が作曲されたのではないかと思われます。
そして、日本人のわたしたちにとってじんと来るような演出がありました。



楽隊員一人と、ムエタイのプレイヤーが二人で、
この曲の流れる中・・・・・、

 

両国の国旗を・・・・。

「素晴らしい」

隣に座っていた方がつぶやきました。
わたしもつい目頭が熱くなりました。

こういう国とこそ仲良くしていきたいですね。
というか、相手の国旗に敬意を表する、これが「普通の国」なんですけどね。




さて、「大海」なので、続いては・・・米海兵隊。

・・・・・ん?

海兵隊が、「大海」って、ちょっと違わないか?
確かに水陸両用部隊ではあるけど、「海の真ん中」というより
どちらかというと海兵隊の仕事は沿岸警備とか水際作戦とか・・・、

まあでも今年は海軍が出演していませんので細かいことは抜きでいきましょう。
本人たちも最初の曲に

「海の男たちの歌」Song of Sailor and Sea(R.W.Smith作曲)

を選んでいることでもあるし。
この曲は、いわゆる吹奏楽界では有名な曲で、作者はまだ50代。
アメリカ海軍の委託作品です。
原語は「水兵と海の歌」なんですけど、なぜか日本語訳の段階で「男たち」になりました。

このYouTubeを見ていただくと分かりますが、どうも先ほどのタイ軍隊といい、
米陸軍といい、演奏そのものはともかく、フロアードリルのステップに
全体的にキレがないというかなんと言うか・・・・。



こういうフォーメーション(とも言えない効果)を多用するし・・・(笑)
これはこっちが普通で、我が日本国自衛隊のドリル演奏が素晴らしすぎるってことですか?

さて、海兵隊バンドからのプレゼントは、なんとNHKの朝の連続テレビドラマ、

「あまちゃん」

オープニングテーマ。
見ている見ていないにかかわらず、半年間毎朝流れる曲なので、
皆知ってるらしく、最初では笑いが漏れました。
わたしも一回も見ていないのになぜか知っていたなあ。なんでだろう。

そして、リパブリック讃歌、海兵隊賛歌と続きます。



手前のクラリネットの眼鏡っ子お姉さんは後で歌も歌ってしまうのだった。
ただし、このときには出番はありませんでした。



海兵隊退場。
いつ見てもこの海兵隊の制服はかっこいいですね。

そ・し・て!



海上自衛隊東京音楽隊、キター(AA省略)!




どうですかこの、「時の人」ならではの貫禄。

今や国民的話題となった三宅由佳莉三等海曹の歌うのは

「海のお母さん」

宮崎駿のアニメ「崖の上のポニョ」の挿入歌です。

彼女は最近CDを発売し、ニュースでも取り上げられるなどして有名になってしまったので、
その結果毀誉褒貶を免れないというか、他の隊員のように演奏会で「一隊員」として歌い、
それだけを評価されるというわけにいかなくなったわけで、これも「有名税」
というやつだろうか、と少し心配ではあります。

実際のところ声量、音程、音域、表現力、彼女の歌は
クラシックのフィールドからは決して図抜けたものではないのは事実ですが、
わたしはそういう観点からの評価を彼女に加えるのは筋違いだと思っています。

自衛隊員らしいきりりとした清潔感を漂わせた歌手が、皆の聴きたい歌を歌ってくれる。

それが存在意義であるとすれば、彼女は十分に自衛隊の歌手として職責を果たしており、
かつ十分魅力的なので、自衛隊歌手としてはこれ以上の人材はいないと断言できます。

しかし彼女の存在価値は、そこに限定されるべきで、個人的意見ですが、
海自広報は決して今以上のバリューを彼女に負わせるべきではないとわたしは考えます。

始球式で君が代を歌う、これはよろしい。
しかし、芸能界にどっぷり浸かったような歌手と一緒くたにして、
NHKの番組に出演させる、(『あの』紅白にでも出すつもりですか?)
これはいかがなものだったでしょうか。

自衛隊のイメージアップに、彼女が大きく寄与しているのは間違いの無いところです。
しかし彼女「個人」をあまり強調しすぎると、自衛隊という温室ではありえないような
世間の、端的に言うとマスコミの好餌となって脚を引っ張ろうとする輩もいるかもしれない。

考えすぎだったらいいのですが、わたしはこの日、彼女の、
他の自衛隊隊員歌手とは全く違う「練れた自意識」のようなものが見えて、
少し今後に不安を感じずにいられなかったのでした。

それは、この日「歌手」としてステージに上がった何人かの歌手たちの
比較において感じたことでもありました。

さて、ここで言明しておきますが、この日のステージで歌を歌った隊員たちは
いずれも劣らぬ素晴らしい歌手ばかりでした。



「海のお母さん」に続き、海自はまたもボーカル投入です。
男性デュオ。
右側は、自衛隊音楽ファンにはもうすっかりおなじみ、持ち歌「宇宙戦艦ヤマト」の
宮品いさおさん・・・・って言うんですか森くまさん?
報告によるとこの瞬間ニコ動では「宮品キター」の嵐だったそうで(笑)

チャゲアスか?それともまた「ゆず」でも歌うのか?
と思ったら、

イージス2〜輝ける盾

ってこれは・・・もしかして、あの自衛隊作曲家河邉一彦二等海佐の、
あの、「イージス」の続編?
それにしても、この左側の歌手、どこかで見たことあるなあ・・・・
と思ったら!



河邉軍楽中佐ではありませんかー!

いやビックリしました。
わたしの周辺で少なくともビックリしていたのはわたしだけだったと思いますが。

「イージス」は河邉二佐の作品ですが、どうもこの「そーうーさイージース♪」
という歌詞の入った曲をお作りになったのも河邉隊長の模様。(ですよね?)

つまり、自作自演です。

それにしても、お上手なんですよ、歌が。

わたしは音大を出たからといって、さらに音楽をやっているからといって、
全員が歌がうまい訳ではないというのを良く知っているのですが(笑)、
河邉隊長って、管楽器出身だと思っていたけど、もしかしたらウタ科だったっけ?
と一瞬ですが考えてしまったほどです。




隣の宮品隊員?も安定の歌唱力。
この曲の、ちょっと「ヤマトっぽい」調子(『イージス』のフレーズが随所にあり)に、
朗々としたお二人の声がぴったりマッチし、さらにスクリーンには



この映像。
そしてその盛り上がりはそのまま行進曲「軍艦」へと・・。

しかも、「軍艦」のあのややこしい部分、わたしが個人的に「音楽的欠陥」
と思っているあの「海行かば」の中間部分はすっ飛ばして、すっきりと終止に持って行く、
なんともブラボーな大岡裁き(ちょっと違うかな)的エンディング、
これも河邉隊長の編曲ですね!

さすがです。河邉二佐に敬礼。

さて、「軍艦」をもって海自だけの演奏は終わった訳ですが、
このあと突入した第三章、「烈火」の第一部、

「平和への道」

で、最初に陸海空自衛隊音楽隊の「火星」(ホルストの惑星より)に続き、

「空の精鋭/陸軍分列行進曲/海をゆく」

が空、陸、海の曲として演奏されました。
「海をゆく」は宮品?三宅両隊員によるデュエットです。



「海をゆく」。

「海行かば」ではありません。

海上警備隊発足のときに古関裕而が作曲し、歌い継がれたメロディですが、
歌詞が現代にそぐわないということで、自衛隊発足50周年の記念の際、
あらためて公募され、採用された歌詞となっています。

明け空告げる海をゆく

歓喜沸き立つ朝ぼらけ

備え固めて高らかに

今ぞ新たな陽は昇る

おお堂々の「海上自衛隊」(じえいたい) 

海を守る我ら 



このときの三宅三曹は、帽子を目深に被り、口元を引き締めて、
わたしがソロのときに不安を感じたあの「芸能人スマイル」は
すっかり影を潜めていました。

もしかしたらこれは別の隊員かも、と思ったくらいです。

しかし、この「一自衛隊員としての歌」の方が、
抑制されたその凛とした佇まいも相まって、遥かに好ましくわたしには感じられました。



ドリル演奏の間、ずっとライトで指揮(楽員はいつも指揮者の方を向いていないので)
をしていた音楽隊員。
なんと指揮者が死角になる部分、三方にこの「指揮補助」がいました。

こうした、陰で進行を目立たず支える隊員の力が集まって、
この日の素晴らしい演奏会は形になっているのです。

逆に言うと、自衛隊に「スター」は必要ありません。

「海をゆく」

の三宅三曹を見て、わたしの懸念はどうやら杞憂に過ぎないらしい、
と安心してもいいような気もしないでもありませんでしたが・・・。



東京音楽隊の演奏では「歌手」となった河邉二等海佐。
今日の驚きは実は隊長の力によるところが大きかったと思います。



というわけで、ますます海自音楽隊のファンになったわたしでした。


 

 


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