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キング・オブ・スカイスパイ ハッブル宇宙望遠鏡〜スミソニアン航空宇宙博物館

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スミソニアン博物館の「スカイ・スパイズ」のシリーズ、
スミソニアンでは決してそうと標榜しているわけではないですが、
流れ的にこれこそが「宇宙からの眼」の集大成ではないかと思い、
最後に、ハッブル宇宙望遠鏡の展示で締めたいと思います。
宇宙望遠鏡は空中からの偵察などという狭義の物ではなく、もっと純粋な、
そう、アメリカがずっとその偵察衛星の歴史で標榜してきたが如き、
人類の科学技術の発展のためのものであることに間違いはありませんが、
小さな小さな人工衛星から始まった「宇宙の眼」の技術が発展した
一つの究極の形であることは確かだと考えるからです。

それでは参りましょう。

■ ハッブル宇宙望遠鏡
ハッブル宇宙望遠鏡(HST、Hubble)。
1990年に地球低軌道上に打ち上げられ、現在も運用されています。
もう稼働を始めて32年になるわけです。

史上初の宇宙望遠鏡ではありませんが、これまでで最大であり、
最も用途の広い望遠鏡の一つであり、重要な研究ツールとして、また、
地球の大気に邪魔されない環境で天文学の広報活動を行う重要な設備です。

宇宙望遠鏡は1923年にはすでに考案が始まっていました。

ハッブル以前の宇宙望遠鏡には、1983年にNASAとオランダ、
イギリスが共同で打ち上げた赤外線天文衛星、IRASというのがありました。

IRAS Infrared Astronomical Satellite


ハッブル望遠鏡は、天文学者エドウィン・ハッブルの名にちなんでつけられました。

【ガチの天才】宇宙を広げた超人 「エドウィン・ハッブル博士」の天才っぷりがヤバすぎる【ゆっくり解説】

ついにゆっくり解説という禁断の領域に手を出してしまう当ブログである
ハッブル以降打ち上げられた宇宙望遠鏡、

チャンドラX線観測衛星(1999-現在)
スピッツアー宇宙望遠鏡(2003-2020)

などとともにいまだにNASAの大観測所の1つとなっています。
ちなみに我が国がこれまで運用した天文衛星は、

X線天文衛星 「すざく」 (ASTRO-EII)
赤外線天文衛星 「あかり」 (ASTRO-F)
太陽観測衛星 「ひので」 (SOLAR-B)
惑星観測衛星「ひさき」(SPRINT-A)
で、「ひので」「ひさき」は現行運用中です。
■打ち上げ直後にトラブル発生!

ハッブル望遠鏡は1970年代にNASAが資金を提供し、
欧州宇宙機関からも寄付を受けて建設されました。

1983年の打ち上げを目指していたのですが、技術的な遅れや予算の問題、
そして1986年のチャレンジャー号事故のためプロジェクトは難航しました。

これが宇宙望遠鏡の「主鏡」です。
ハッブルは 2.4m の「鏡」を持ち、5 つの主要な観測機器で
紫外線、可視光線、近赤外線の電磁波を観測しています。

1990年にようやく打ち上げられたハッブルですが、配備された直後に
主鏡の取り付けに失敗していたことがわかりました。
具体的には、間違った研磨のせいで球面収差が発生してしまったのです。

球面収差とは、これも簡単にいうと、形状が歪だと、
鏡の端で反射した光が中心とは違うところに焦点を結ぶということです。
焦点がずれると光が損失し、暗い天体の高コントラストの撮像に影響があります。
このミラーの欠陥の実態は人間の髪の毛の50分の1レベルだったそうですが、
それでも球体収差はハッブル望遠鏡にはあってはならないことでした。

そこで、主鏡の補正のために、NASAのエンジニアたちは、
それこそ欧州宇宙機関をも巻き込んだ危機管理会議を開いて検討しました。

問題となったのはどうやって現行の狭いチューブに、
補正光学レンズ、そしてミラーを挿入するかでした。

この時、エンジニアの一人ジェームズ・クロッカーがシャワーを浴びていて、
ホテルのシャワーヘッドが垂直のロッドを移動するのを見て思いついたのが、
(向こうのシャワーは壁に直接ついているタイプが多い。
これはおそらく壁に取り付けられて高さだけがスライドできるものだったと思われ)

「必要な補正部品をこのような装置(つまりシャワースライド?)に搭載し、
筒の中に挿入してからロボットアームで必要な位置まで折り畳み、
副鏡からの光線を遮って補正し、様々な科学機器に焦点を合わせる」
というアイデアだったそうです。
なんかよくわかりませんが、少なくともこれ、
日本のホテルのシャワーなら思いつかなかったことは確かですね。

そこで、クロッカーはアメリカに帰ってから
Corrective Optics Space Telescope Axial Replacement (COSTAR)
つまり補正光学宇宙望遠鏡軸上交換装置の開発を進めました。
(軸上、というのがシャワーの取り付け軸のことだと思う。知らんけど)

NASAの宇宙飛行士とスタッフは、COSTARの開発とその設置方法、
もしかしたらこれまでで最も困難なものになるであろうミッションの準備に
11か月を費やしました。(逆にたった11ヶ月でできたのかという説も)

そして1993年12月、スペースシャトル「エンデバー」に乗った7人の飛行士が
HSTの最初のサービスミッションのために宇宙に飛び立ちました。
このエンデバー、STS-61はワンミッション。
つまり打ち上げ、ハッブル望遠鏡の修理、以上、でした。

髪の毛の50分の1の傷のために一体いくら使う気なのという気がしますが、
それだけハッブルの修理は最優先課題かつ大ごとだったということです。


ハッブル望遠鏡修理のために宇宙に行った人々
STS-61 Mission Highlights Resource Tape, Part 2

おそらく最終日、飛行8日目、5回目の宇宙遊泳のフィルムです。

1時間もかかるので全部みっちり見たわけではありせんが、
大体15:00〜から船外作業が始まり、35:00ごろには作業が終わって、
CAPCOMの女性がお礼を言って、43:00ごろ修理箇所が写り、
47:27にCAPCOMが「フロリダ上空のすごい映像が映っています」と報告し、
最後に男性のCAPCOMがプロフェッショナルな仕事でした、
我々はあなた方を誇りに思う、と褒め、最後に
"We wish you Godspeed in a safe trip home."(無事帰還を祈ります)
と眠そうに(この人はサブで、メインは夜中なのでいないみたい)言っております。

これだけ見ると1日で簡単に修理ができたようですが、修理には
史上2番目に長時間となる7時間50分の滞在を含む計5回の船外作業を要しました。

ハッブル宇宙望遠鏡とディスカバリー(下)。
これは1997年の2回目の整備ミッション中。
太陽光の中に持ち上げられています。

このサービスミッションにより、ハッブルの光学系は本来の品質に修正されました。
ハッブル望遠鏡は、宇宙飛行士が宇宙でメンテナンスできる唯一の望遠鏡です。

5回のスペースシャトルミッションで、観測装置など望遠鏡のシステムの修理、
アップグレード、交換が行われてきました。

5回目のミッションは、コロンビア号の事故(2003年)の後、
安全上の理由から当初は中止されましたが、その後2009年に完了しました。
■ ハッブル望遠鏡の仕組み


1、後部シュラウド・ベント(AFT Shroud Vents)
望遠鏡内の科学機器の換気を行うためのベントです
2、バーシング・ピン(Berthing Pin)停泊ピン?
オービターのペイロード・ベイに取り付けられた
サポートシステムのラッチに装備されています

3、アンビリカル(Umbilical)臍の緒
ペイロードべいでの任務及び展開奏者中、オービターから望遠鏡に
電力を供給するから「臍の緒」
4、エレクトリカル・インターフェース・パネル
(Electrical Interface Panel)メインとバックアップの「臍の緒」を接続します


他の望遠鏡と同様に、HST(ハッブル望遠鏡)には、
光を取り入れるために一端が開いている長いチューブがあります。

それは、その「目」が位置する焦点に光を集めてもたらすための鏡を持っています。
これが先ほどから話題になっていた「メイインミラー」です。

HSTはいくつかのタイプの「目」を持っています。
昆虫が紫外線を見ることができるように、人間が可視光を見ることができるように、
ハッブルは天から降るさまざまな種類の光を見ることができなければなりません。
具体的にハッブルが装着しているのはカセグレン反射望遠鏡というものです。

開口部から光が入り、主鏡から副鏡へと反射します。
副鏡は、主鏡の中心にある穴を通して光を反射し、その後ろに像を結びます。
入射光の経路を描いた場合、「W」の状態になることが必要です。
具体的には下の図をご覧ください。


焦点では、より小さい、半反射、半透明のミラーが
入射光をさまざまな科学機器に分配します。
HSTのミラーはガラス製で、純アルミニウム(厚さ10万分の7ミリ)と
フッ化マグネシウム(厚さ10万分の2ミリ)の層でコーティングされており、
可視光、赤外線、紫外線を反射します。
主鏡の直径は2.4メートル、副鏡の直径は30センチとなります。
ハッブル望遠鏡は地球の大気の影響を受けず歪みが生じない軌道を回るため、
地上と違い背景光が大幅に少なく、高解像度の画像を撮影することができます。

また、可視光だけで詳細な画像を記録することができ、
宇宙の奥深くまで見通すことができるのです。

ハッブル望遠鏡による多くの観測は、宇宙の膨張速度の決定など、
天体物理学の分野で画期的な進歩をもたらしています。


ハッブル望遠鏡は2020年4月で運用期間が30年を迎えました。
今後も2030年から2040年まで耐用できると予測されています。

もちろんそうなる前に後継機も用意されており、
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は
2021年12月25日に打ち上げられたばかりですでに稼働中となっています。


このジェイムズ某望遠鏡がまた画期的でしてね。
太陽光や電磁波、赤外線がノイズになって影響を及ぼすのを防ぐため、
遮光板が必要となるのですが、これがその折り畳まれた遮光板です。
5層のレーヤーになっていますが、一枚は人の髪の毛の薄さしかありません。
物質が付着しないように、見学者はネットを被って見ていますね。


下から見たところ。
上に乗っている金色のものが主鏡で、望遠鏡の方式はカセグレン式です。
これ、何かを思い出しません?
そう、折り紙による紙飛行機ですよ。

ハッブルの100倍高性能! NASAが「オリガミ宇宙望遠鏡」の展開試験に成功
How NASA's $10 Billion Origami Telescope Will Unfold The Early Universe 
わたしの知り合いに、折り紙で有名な人がいるのですが、
彼女は科学系の学者が本業であり、NASAの先端宇宙技術にも
実は折り紙が使われていて、と昔話していたのを思い出しました。
このことだったんかしら。
JWSTは今後地球からおよそ100万マイル(160万km)の軌道から、
星、他の太陽系と銀河の誕生、そして
私たち自身の太陽系の進化に関する情報を明らかにするでしょう。

JWSTが搭載しているのは主に4つの科学機器です。
近赤外線(IR)カメラ、近赤外線マルチオブジェクト分光器、
中赤外線機器、そして調整可能なフィルターイメージャーです。
■ スミソニアンの”ハッブル宇宙望遠鏡”
ハッブル宇宙望遠鏡構造物試験機(SDTV)
ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が建設されることになった1975年、
ロッキード・ミサイル・アンド・スペース社は実物大のモックアップを製作し、
さまざまなフィージビリティ(実行可能性)研究を行いました。

当初は宇宙船の取り扱い方法をテストするための金属製の円筒でしたが、
ロッキード社が実際の宇宙船を製作する契約を獲得するにつれ、
この試験体は研究に次いで進化を重ね続けました。

そしてこの試験体は、最終的に実際の宇宙船のケーブルや、
ワイヤーハーネスを製作するためのフレームとして使用され、また、
軌道上での保守・修理作業を開発する際のシミュレーションにも使用されました。

その後振動試験や熱試験など動的な研究が行われ、
ハッブル宇宙望遠鏡構造物試験機(SDTV)と正式に命名されたのです。


この試験機は、使用の役目を終えて1987年6月にNASMに寄贈され、
カリフォルニア州サニーベールのロッキード社で屋外に保管されていましたが、
そこで改修され、1976年当時の形状に復元されました。

そして1996年、シャトルから放出されるHSTの実物を再現するために、
SDTVは展示から取り外されてまたミッションに復活されることになりました。

この大規模なアップグレードは、ロッキード社、HSTの下請け業者、
NASAゴダード宇宙飛行センター、NASMスタッフとボランティアによって行われ、光学望遠鏡アセンブリの機器部分、開口ドア、高利得アンテナ、ソーラーアレイ、
後部シュラウド手すり、その他多数の細部を製作することに成功しました。
主な追加作業は、現実的な多層(ノンフライト)熱ブランケットとテーピング、
インターフェースハードウェア、ウェーブガイド、そしてアンビリカルでした。

NASAは、アップグレードされた物体を床から劇的な角度で展示できるように、
大型の機器クレードルも提供して、今日スミソニアンで展示されています。

ハッブル宇宙望遠鏡は30年の月日を日夜稼働し続け、
次世代型望遠鏡JWSTの打ち上げによって引退を考える時がやってきました。

しかし、我々人類はハッブルの果たした務めを決して忘れてはなりません。
HSTの長年にわたる比類のない発見のおかげで、地球の大気圏外の様子が、
そこでの魅惑的な画像が、地球で一生過ごす誰にも楽しめるようになりました。

2つの渦巻銀河間のまれな配列から、銀河団間の強力な衝突まで。
ハッブル宇宙望遠鏡は天界の片隅で起こっていることを、
我々の住むこの地球に近づけることを可能にしたのです。


「ザ・スカイスパイ」シリーズ終わり。



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