わたしたちがピッツバーグからの「弾丸飛行」(ジョン・グレンのじゃないよ)
を済ませてサンフランシスコに帰ってきたそのころ、
まだベイエリアは絶賛ヒートウェイブの真っ只中でした。
高速道路を走ると、電光掲示板に、「ヒートウェイブ・注意」とあります。
一体何をどう注意するんだと思ったのですが、これは要するに、
極力スピードを抑えてガスの排出を抑えましょう、ということらしいです。
その後ヒートウェイブは去り、わたしたちが帰国すると同時に
現地の気温は昼間23℃、夜間17℃というレベルに下がりました。
これで湿度の低いベイエリアは過ごしやすくなるだろうと思いきや、
現在は雨が続いているのだとか。
アメリカでは、すでに台風で浸水の大被害が出た地域もあり、ここでも異常気象などという言葉が囁かれているようです。
さて。
わたしがピッツバーグに行くまでに、寮への荷物運び込みと整理を済ませ、
ついでに基本的な食材も一緒に買い物に行って買い整えてやったので、
さっそくMKは新しい寮での新生活をスタートさせ、自炊も始めたようです。
しかし、いかに料理が好きといっても所詮は学生の「男の料理」ですから、
百戦錬磨の主婦ほどの応用力も素材を見分ける力もなく、
最初に挑戦した料理は失敗してしまったようです。
初めてオーブンを使って野菜と肉をグリルしてみたようなのですが、
冷蔵庫にトレイのまま手付かずで残っているのを見て聞いたら、
「肉が硬くてすげー悲しかった」
ということでした。
どうやら敗因は肉の種類に合った調理法をしなかったことです。
(煮込み用の肉を叩かずにさっとグリルしてしまったとかね)
MKよ、まあこれも勉強だ。
次からはどうやったら美味しくなるか工夫するんだね。
■イエロージャケット・スカベンジャー
ある日、MKが検索してくれて、ゴルフ場併設のレストランに行きました。
まだヒートウェイブ真っ最中の頃でしたが、夕方なのと、
日陰のテーブルなので、外でご飯を食べるくらいなら大丈夫です。
わたしはゴルフをしないのですが、アメリカのゴルフ場を見るたび、
もしアメリカにずっと住んでいたらやっていたに違いない、と思います。
日本のゴルフ場はたいてい山の中とかにあって、
プレーしない人がグリーンを目にすることはありませんが、
アメリカは街からそう離れていないところに、しかも公園の道沿いとか緑地、
道沿いにあって、ほとんどは周りに柵もありません。
文字通り敷居が低そうで、手軽に始められそうですし、
おそらくは日本でするよりフィーも安いでしょうしね。
このレストランからも、壮年、主婦らしい人、老人、若い人と、
雑多な年代や男女問わず気楽にコースを回っていて、
プレーをしているのが見て楽しめるようになっていました。
このレストランは普通のアメリカ料理がメイン。
MKのリクエストでフライドチキンを一皿頼みました。
料理そのものは普通。
とにかく目の前に広がるゴルフ場のグリーンが目に気持ちよく、
ほとんど場所に価値のあるレストランという感じでしたが、
外ということで、時々虫が飛んでくるのです。
チキンを食べていると、黄色と黒の蜂が一匹、しつこく周りを飛び回り、
手で払っても払っても、すぐに戻ってきて困りました。
(チキンの骨閲覧注意)
あまりにしつこく周りを飛び回るので、全部食べ終わったこともあり
追い払うのをやめたところ、確信的にチキンの骨部分に止まりました。
骨に取り付いて一生懸命何かやっています。
家族三人で、つい観察してしまったのですが、なんとこの蜂、
フライドチキンの骨から、ガシガシっと肉を食いちぎっているのでした。
「もしかしてこの蜂、肉食いちぎってない?」
「うえー、ほんとだ。肉を外してる」
「蜂ってチキンなんか食べていいの?食物連鎖的に」
「奈良で鹿が観光客の捨てたフライドチキン食べてるの見たことあるけど」
「こいつ、この肉を巣に持っていくつもりなのかな」
「こんなの持っていったら女王蜂に追い出されるんじゃない?」
そうして見ていると、大きな肉の塊を食いちぎった蜂は飛んで行き、
そして、2〜3分経った頃、また戻ってきて、
全く同じところに止まり、同じように肉を食いちぎっています。
(次:虫閲覧注意)
後で調べたところ、これは北米に生息するハリナシミツバチ種の一種で、
その名もハゲタカバチという種類の鉢であることがわかったのです。
ミツバチは蜜と花粉から栄養分を得るのに対し、ハゲタカバチはその名の通りハゲタカのように、彼らは花粉の代わりに
死んだ動物の死骸の肉を食べ、肉を集め、肉の蜂蜜?を生産します。
こういう生物をスカベンジャー(屍肉食動物)と言いますが、
この蜂も、ゴルフ場に隣接したピクニック場のゴミ箱などを目当てに
近くに巣を作っているのだと思われます。
彼らの最も好物なのはまさにこの鶏肉で、なぜかというとそれは
タンパク質の摂取のためと言われています。
英語で黄色い蜂のことを「イエロージャケット」と言いますが、
それこそこいつらをヒーロー戦隊もの風にいうなら、
「イエロー戦隊・スカベンジャーズ」
といったところでしょうか。
■ 友人との再会〜噴火しない溶岩ケーキ
サンフランシスコに住んでいた時からの友人と、3年ぶりに会いました。
コロナ蔓延以降、そもそもわたしが西海岸に行けなくなったので、
それが再会した今年、何としででも会いたかった人です。
彼女の夫はアーバインに本社がある有名なゲーム会社のアーティストで、
LA近郊に家があるのですが、彼女自身はアート関係の仕事を引退し、
今は物件を持って賃貸業を営んでいます。
テナントがサンフランシスコ市内にあるので、いつもわたしが渡米すると
彼女は、仕事がてら7時間の距離をドライブして会いにきてくれていました。
今回はそれに加えて、娘さんがサンフランシスコの大学にいるため、
彼女の引っ越し手伝いと、彼女のボーイフレンドに会うという用事を兼ね、
わたしの滞在に合わせてやってきたのでした。
彼女がきた時、家族三人と合計四人で昼ごはんを食べに行きました。
サンマテオの中心街にある、アメリカン・ダイナーとカフェの間みたいな、
ハンバーガーもイタリアンも食べられるというレストランです。
皆で突っつけるように小皿料理をいくつか取りました。
これはそのうちの一つ、ニョッキです。
野菜たっぷりのハンバーガー。これはTOが頼んだもの。
わたしが頼んだのはツナのステーキ(ミディアムレア)。
デザートの一つ、クリームブリュレ。
薄いお皿上のプリン(的なもの)の表面をバーナーで焦がして仕上げます。
「Lava cake」とメニューにあったので、これに目がないMKのリクエストで
頼んでみたんですが、出て来たのを見て、MKがっかりして一言。
「ラーバ、噴火してないし」
アツアツのチョコケーキにフォークを入れるt、
中からあたかも溶岩(ラーバ)のようにチョコレートソースが出てくる。
これをラーバケーキ、日本ではフォンダンショコラと言ったりします。
コロナの影響で閉店してしまったザ・クリフという太平洋沿いのレストランは
ラーバケーキが自慢で、MKはいつもこれを食べたがりました。
ところが、ここのは、そもそもチョコレートの溶岩が流れる前に
クリームソースをかけて固めてしまった状態。
いわば噴火前で、ラーバと呼べる要素はどこにもありません。
「これ・・・もしかしたら失敗したんじゃない?」
「中まで焼けてしまったので、溶岩が流れず、代わりにソースをかけた?」
ヒソヒソ言いながら全員で突っつきましたが、
味は普通にチョコレートケーキでした。
ちなみに、彼女の娘さんとMKは小さい時かなり仲が良く、
わたしたちが会っている間、ほとんど恋人同士のように戯れあっていましたが、
そんな彼らもある夏から急に他人行儀な付き合い?になりました。
そして、今は彼女にも母親に紹介するようなBFがいるというわけです。
(ちなみに前彼は医者志望で、MEDにも合格した優良株だったけど、
あまりにも束縛してくるので嫌になって別れたらしい)
MKには今のところそれらしい気配はありませんが、
彼と同じ年頃の娘息子を持つアメリカ在住の知人たちからは、
いきなり息子が大学からGFを連れて帰ってきて家に泊めたとか、
いつの間にかBFと一緒に暮らしている、などという話を聞かされます。
昔も今も、アメリカの青年たちというのは、気軽にお付き合いを始め、
結婚するしないに関わらずステディな関係を親に公言するのね、とそのオープンさには文化の違いを感じずにはいられません。
日本もこんな感じなら、少子化はもう少しマシだったのかな、
などとつい考えてしまいました。
■ スタイリッシュ・インディアンキュイジーヌ
日本に帰国する前夜、家族でオシャレ系インド料理に行きました。
一口にエスニック料理のレストランといってもさまざまで、
前回の家族経営のインド料理屋は、キッチンから大きな声で
英語ではない会話と笑い声が筒抜けに聞こえてくるような小さな店で、
まるでインドの家庭の台所でご飯を食べているような気分でしたが、ここのはバーリンゲームの一等地に新しくできた、謳い文句も
「スタイリッシュ・アップスケール・南インド料理」
upscaleというのは、高級という意味。そして店名は「サフラン」Saffron と何やら趣味のいい感じです。
昔、ミシュランの星を持っていたこともあるとかで、
(なぜそれが今は無くなったのかはわかりませんが)
家族で食べるアメリカ最後の記念すべき夕食に相応しいという気がしました。
インド料理でエディブルフラワーをあしらったお皿を初めて見ました。
これは、ビーツを使ったサラダで、本来は山羊チーズが乗っていますが、
わたしたちは苦手なので抜いてもらいます。
店内もお花のお皿にふさわしく看板通りのスタイリッシュさ。
来ている客層も、近所のリッチそうな白人ばかりの奥様グループ、
シリコンバレーのテック関係っぽいインド人とアメリカ人の男性、
完璧な英語で会話している白人とインド人のおしゃれな女子、
と、いかにもバーリンゲームという高級住宅街の住人らしき人ばかり。
「Our Secret Recipe」(当店秘伝のレシピ)で作られたという、
お店のシグネチャー、バターチキンは外せません。
一皿25ドルとお高いですが、三人でたっぷり食べられて、
スパイスが効いたスモーキーな味わいのするこのチキンカレー、
お値段以上の価値があると思われました。
追加で頼んだロティとガーリックナンをつけて、
いくらでも食べられてしまうカレーです。
せっかくなのでデザートも頼んでみることにしました。
青のりを乗せたたこ焼きではありません。
こちらでいうところのパフクリーム=シュークリームです。
上の青のりの正体は多分チョコレートだと思います。
■ 出国
次の日、サンマテオのAirbnbをチェックアウトして、
三人で空港に向かいました。
このAirbnbの良かったところは、一にも二にも清潔さ(土足厳禁)。
Whole Foods Marketに近い、280と101どちらの高速にもすぐアクセスできる、
家の前に駐車スペースがある、バストイレが二箇所、とたくさんありますが、
何と言っても空港まで10分で行けるという安心感でした。
MKの寮生活はもう始まっていましたが、偶然この日から二泊、
サンディエゴの知人の家に招待されていたこともあって、しかも
たまたま出発時間がわたしたちの国際便とほぼ同じだったため、
前の晩は家族三人最後に一緒に過ごすことができたのです。
MKを国内線乗り場で降ろして、別れの挨拶をしました。
「ちゃんと野菜食べなさいよ」
「野菜食べるわ」
母親というのは、顔を見れば息子に
野菜を食べろと言わずにいられない生物であると彼は心得ています。
その後レンタカーを返し、チェックインを済ませると、
搭乗時刻まで新しくできたユナイテッドのポラリスラウンジで過ごしました。
ここは中に、オーダーしたものを持ってきてもらえるレストラン
(もちろん無料)があったので、試しに入ってみました。
おすすめは、特別のミートを使用したハンバーガー、とあったので、
一つ頼んでみましたが、これはおすすめというより、
「忙しいキッチンと給仕をする人のためのメニュー」という気がしました。
美味しくないことはなかったですが。
デザートも、あまりに普通。
わざわざ入っておいてなんですが、外のカウンターの料理やデザートの方が
何だか美味しそうで、そっちにすればよかったと思ったのはここだけの話。
さて、いよいよ出発です。
これから滑走路へアプローチ。
離陸。空港の建物が瞬く間に眼下へと。
二本線になって横切っている道路は280号線。
手前の街並みはサンブルーノ市街となります。
ついでに、手前右下のビルはウォルマート地域本社です。
あっという間に西海岸線が見えました。(この間2分くらい)
パシフィカと総称する海岸線です。
最後に見るアメリカ大陸は、ペドロポイントと呼ばれる岬でした。
さて、海の上に出たら窓を閉め、早速映画鑑賞です。
「マーヴェリック」が機内上映されていたので当然これを選びます。
「マーヴェリック」の興行収入は前代未聞というくらい良かったそうですが、
確かに、面白い。
面白いだけでなく、このシーンで一度は涙ぐんでしまいましたよ。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、
これはおそらくフォトショしまくった写真のアイスマンです。
トム・クルーズのファンだったことは一度もないわたしも、
この映画を観て、不覚にも良いなあと思ってしまったほど。
それから、中国資本ということで懸念されていましたがご安心ください。
マーヴェリックのボマージャケットに、ちゃんと日本の国旗ありましたよ!
やっぱりこういうことをちゃんとしたからこそのヒットでしょう。
細部は専門的な目で見ればツッコミどころも多いのだと思いますが、
エンタメとして近来稀に見るよくできた作品だと思います。
今はアマプラなどで有料配信しているようですので、
ぜひ迷っている方は騙されたと思わず、ご覧ください。
このわたしが自信を持ってお勧めいたします。
ここで恒例の機内食シリーズです。
相変わらず全く美味しそうに写っていませんが。
ちょっとはマシかなと思って、写真を撮る時だけ窓を開けてみました。
鯖の煮付け・・・ヒルズデールのやよい軒のより美味しかったです。
朝食は魔がさしてパスタを選んでしまいました。
オリーブオイル主体のトマトソースが液体状だったのが災いして、
パスタ(カネロニ)がソースに落下し、
サンフランシスコのリサイクルショップで買った新品のロロピアーナの
(しかも白)タンクトップの胸にシミがついてしまいました。
悲しかったです。
■入国
さて、わたしたちが帰国したほんの二日前のこと。
日本政府が、3回目のブースターショットを受けた人に限り、
PCR検査を免除するという措置をとることになりました。
しかし、成田に到着した時の機内アナウンスは、前と変わらず
降機したら係員の指示に従って云々、というもの。
まさかまた唾をはかされるんじゃあるまいな?と思っていたら、
途中で書類を回収し、何やらQRコードを入れさせられて、
それでもこれまでからは考えられないくらいスムーズに出ることができました。
途中でこんなものももらいましたが(なぜか赤だったのが今回は青)
入国審査を今は自動受付で行うため、誰にも見せずじまいでした。
というわけで、帰ってきたわけですが、帰った途端、MKから
iPhoneの新しいアップデートで、写真が切り抜けるよー、
というお知らせが入りました。
健康カードと検疫カードは、その新しい機能を試したものです。
こんなこともできるわけだ。
ところで前に住んでいたアパートの道向かいにあった、
このダイナー兼カフェ兼レストラン。
バタージョイントという名前のこのレストランをMKは滅法気に入っており、
わたしたちがいる時も、何かにつけて行きたがり、
ときには友達を誘って、最後の最後の日までリピートしていました。
家族三人で行ったときには、ウェイトレスのお姉さんと世間話をし、
お姉さんは大学院進学おめでとう、向こうで頑張って、
などと激励してくれている様子を見るに、彼はアパートでの一人暮らしで
ここによっぽど通い詰めたんだなと思ったものです。
勉強で忙しい時は、自炊もままならないので、
毎日のようにお世話になったのかもしれません。
おそらく彼にとってのピッツバーグの心の故郷の一つなのでしょう。
アメリカ滞在シリーズ終わり
おまけ;
日本に帰ったら、マンションの入り口で早速お出迎えしてくれた
同じマンションの住民の飼い猫、ひめちゃん。
猫の世界では、目を凝視するのは失礼ということになっているので、流し目しながら「おかえりー」と挨拶してくれました。