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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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国際観艦式 フリートウィークに伴う外国海軍艦一般公開〜RANの赤いカンガルー

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さて、当初全く参加のつもりがなかったにもかかわらず、
ぶっちゃけノリで行ってきた外国艦一般公開の報告続きです。

この日は素晴らしい秋晴れ、絶好の艦日和となりました。
しばらくぶりの大々的な艦艇公開であることもあってか、
長らく「ネイビー愛」を封印されていたファンがどっと繰り出してきた結果、
この日公開されたほとんどの艦は、開場して1時間後には
乗艦するのに100分という、ディズニーランド並みの待ち時間になりました。

わたしの場合、連れが早くから並んでくれていた上、
埠頭の奥に並んでいる艦から見るという提案が功を奏し、
ニュージーランド海軍の「アウテアロア」には全く並ばずに乗艦できました。
そして「アウテアロア」が、オーストラリア海軍艦2隻と並んで
3隻目指しにして係留してあった関係で、
これら全部を一気に見学をすることができたのです。


■ オーストラリアとニュージーランドの国際関係

ところで、今回観艦式に参加した国の中には、
国際関係が良くない国同士も含まれます。

ぶっちゃけ日本と韓国なんかが典型的なそれなんですが、
一応は「同じ側」という建前なので、参加を招聘すればきちゃうわけです。

いっそ中国海軍のようにきっぱり参加を拒否すればイイものを、
イヤイヤやってきてはプロトコルを無視して笑いものになったりするのです。

なんで友好を深めるつもりもないのに来るのか。

それは、全く売れないのに日本の自動車市場に臆面もなく何度も参入してくる
ヒュンダイ自動車の目的と同じだと思いますよ。ズバリ偵察、情報収集。(技術者の引き抜きと技術の盗み出しも)

前回の観艦式では、わたしも韓国海軍艦を目撃しましたが、
受閲されているのにも関わらず、逆に甲板や艦橋に何人も立って
海自艦艇の航行をカメラで撮影していた姿が忘れられません。
こんなでも、日本政府は韓国との間には領土問題は存在していない、
という立場をとっている以上、表向き友好国ということになっています。


しかし、今回はそんな生ぬるくはない関係の国同士も来ています。
それがパキスタン海軍とインド海軍です。

両国は元々イギリスの植民地から独立した一つの国でした。

しかしその際、イスラム教と仏教という宗教の違いで国を分かち、
その後、カシミール地方を取り合って紛争が勃発。
思想面でもレッドチーム(印)とブルーチーム(パ)に分かれ、
米中両国をバックにつけて代理で資源争い・・と、
全く仲良くなる要素が見当たらないくらい仲が悪いのです。

もう、埠頭でガンつけたとか肩が当たったとか(不良かよ)いう理由で
喧嘩が始まっても全く不思議ではないくらい一触即発の関係。

何なら、アメリカでも、インド料理と称していても
ほとんどはパキスタン人が経営していて、
互いに嫌いあってるとか、まあ色々あるようです。
(日本のインド料理レストランも実はほとんどパキって知ってた?)

自衛隊もそこのところは気を遣って、
同じ岸壁には係留させていませんが、それでもY-1とY-3ですから
ちょっと埠頭を歩けばお互い出会ってしまうわけですよ。
これ本当に最後まで何も起こらないで済むのかしら。


さて、この印パのように、隣りあった国で仲が良い例はほぼない、
というのが世界の常識となっているわけですが、
その極少ない例外が、ニュージーランドとオーストラリアです。

国は近いとはいえ、どちらも島国で、しかもどちらも先祖が同じ。
互いの国への行き来もビザ不要で無期限なので、実質交流は盛んです。

まあ、スポーツでは、ラグビー、クリケット、ホッケーなど、
お互い絶対に負けられないというライバル意識はあるみたいですが、
少なくとも歴史問題や領土問題は過去にも存在しない平和な関係です。

第一次世界大戦ではガリポリの戦いで一緒に戦って勝っていますし、
いまだにその戦勝の日を両国が祝ったりしているそうですから、
国防の面でも完全な「同盟国」なのでしょう。

そして今回、この二カ国海軍が一つの岸壁を仲良く使っているのを見て、
改めて良好な両国の関係を確認したわたしでした。

(現地で『アウテアロア』を豪州艦だと思いこんでいたのはここだけの話だ)


■ オーストラリア海軍の”ホワイトエンサイン”


HMAS 「スタルワート」STALWART A-304

は、RAN(ロイヤル・オーストラリアン・ネイビー)の
「サプライ級」(補給級とはこれいかに)2番艦です。
2021年11月就役ということなので、まだ1年も経っていない新鋭艦です。

オーストラリア海軍がこの「スタルワート」という名前の間を持つのは、

HMAS 「スタルワート」H14
1919〜1925年、駆逐艦

HMAS「スタルワート」D215
1968〜1990年、駆逐艦母艦
に続く3隻目となります。

「stalwart」を英語で発音すると、ほとんど「スターウォー」と聴こえます。
オーストラリアでは非常に良いイメージの言葉らしく、

「忠実な」「断固とした」「強力な」「堂々とした」
「ある組織や大義を堅く支持する人」「強靭な人」「勇敢な人」
「忠誠を誓う人」「しっかりした体格の人」

という意味を持ちます。
日本語だと「丈夫」(ますらお)とか「漢」みたいな感じでしょうか。

語源は、アレクサンダー大王の軍隊で、世界の果てまで喜び従った、
忠実で屈強な兵士たちの名称から来ているという説もあります。

そのイメージから、軍用車や警備会社、金庫などの商品名、
学校の名前にもよく使われていて検索するとたくさん出てきますし、アメリカには、南北戦争の後、共和党急進(ラディカル)派の
「スタルワーツ」という名称の政治団体が存在したこともあります。
ニュージーランド海軍「アオテアロア」甲板から見た「スタルワート」。



赤いカンガルーのモチーフが目を惹きます。
やっぱりオーストラリア、シンボルはカンガルーなのか。

と早速感心しながら通り過ぎたのですが、赤いカンガルーは
ロイヤル・オーストラリアン・ネイビー、RANのインシグニア、徽章です。

ところで、英連邦海軍がだったオーストラリア海軍が
正式にジョージ5世の承認により、
Royal Australian Navy、RANであると決まったのは1911年のことです。
つまりRANが発足して今年で111年目ってことなんですね。

同時にRANはジャックスタッフとして豪連邦の旗↓
Naval jack(艦首旗)
そして艦首旗として、ホワイトエンサイン、ナーバル・エンサイン
を掲揚することが正式に定められました。

しかしRANとなった1911年にはまだ本体が英連邦海軍であったので、
同じ王を戴く海軍としてイギリス海軍と同じ、
十字の入ったホワイトエンサイン↓



を使用していました。
ちなみに現在のRANが掲げているホワイトエンサインはこれ↓です。



現在の艦尾旗は1967年から使われるようになったのですが、
これにはちょっとした事件がありました。

ベトナム戦争の勃発です。

この時オーストラリアはベトナム戦争に参加することになったのですが、
イギリスは全く関与していません。(そうだったっけ)

そのためRANはちょっと困った事態に陥りました。

イギリス海軍と同じ旗を揚げることによって、事実上他の国、
戦争に参加していない国の旗の下で戦うことになってしまったのです。

そんな折、RANを英海軍だと誤認していた相手との間に戦闘が起きます。
(つまり相手はまさかの英海軍が撃ってきた!みたいな状態だった?)

オーストラリア議会でも、戦時配備された海軍の艦船が
他国の艦尾旗を使用しているってそもそもどうなんよ、と、問題視する議員が声を上げ始めました。
その上ベトナム戦争で、RANは、アメリカのミサイル駆逐艦を運用し、
共に行動していたため、米海軍艦と間違えられることもあったりして、
これも国のアイデンティティに関わる問題と認識されました。

そこでRANには独自の艦尾旗が必要だということになったのです。

その後、ユニオンフラッグを残した現在のデザインが承認され、
エリザベス二世陛下による王立許可を受け、制定されました。
正式な切り替えは1967年3月1日に行われ、
その日にすべての船舶と施設が新旗を掲揚しました。

ちなみに、RANの艦船のバトル・エンサイン(戦闘章)、
つまり戦闘中の旗の掲揚は、艦首マストとメインマストに
ホワイトエンサインを挙げることになっています。

■ オーストラリア海軍と赤いカンガルー🦘
イギリス軍と同じ艦尾旗を挙げていた頃、特に戦争中、
RANの乗員たちは常に誤認される心配をしていました。

第一次世界大戦中、HMAS「パーラマッタ」Parramattaは、



オーストラリアの国旗の上に王冠の代わりにカンガルーを付けて、

「俺らオージーでイギリス海軍じゃないのでよろしくNE」

とアピールしていた、という記録が残っています。
また、朝鮮戦争の時にも、HMAS「アンザック」Anzacは、
真鍮で切り出したカンガルー🦘を目立つところに掲げていました。

第二次世界大戦中も ML802の見張り中水兵さんの後ろ


HMAS「 クィーンズボロー」1955
手のひらマークの上、煙突に描かれたカンガルー

このフリゲート艦「クィーンズボロー」が、ファンネル=上部構造に
カンガルーをあしらった最初のRAN軍艦だと言われています。
ちなみに手のひらのマーク(アルスターの赤い手)は
英国海軍第6フリゲート艦隊の印で、オーストラリア海軍が
イギリスと同じ海軍旗を使用していた頃のことです。

「クィーンズボロ」は、その印の上に(上、というところがミソ)
あえてオーストラリアを表すカンガルーが来るようにしたのです。

そうしていつの間にか、「赤いカンガルー」は
オーストラリア海軍のシンボルの一つとなっていきました。


中東からの任務から帰還したHMAS「キャンベラ」は、
赤いカンガルーの横に中東から帰ってきたことを表すため、
赤いラクダのマーク🐪を付けて入港しました。

海軍のユーモアはRANにも堅持されています。

■その他のRANシンボル(ブーメラン関係など)

観艦式とは関係ないのですが、ちょっとこれが面白いので、
オーストラリア海軍のその他のシンボルを紹介しておきます。


1976年、RAN潜水艦隊の「オーベラン」Oberang級潜水艦は
分隊章として「Oの字にブーメラン=オーベラン」を導入しました(左)。

「オーベラン」と「ブーメラン」が韻を踏んでいることから
あえてカンガルーの代わりにブーメランを採用したに違いありません。
そう思った理由は、右側の黄色い「E」です。

これは潜水艦隊戦闘効率シールド獲得艦に与えられるマークですが、
(米軍艦にEEEEなどと描かれているあれと同じ意味です)これも

「イーベラン」Eberang  「イーメラン」E-merang

ブーメランと同じライム(韻)なのです。



今回の観艦式にもおいでいただいている、HMAS「ランキン」。

ちょっと話にも出ましたが、「コリンズ」級潜水艦は、
マークに「オーベロン」の「O」を「C」に変えたものを使っています。

並んで係留されている同じ「コリンズ級」の
HMAS「ファーンコーム」Farncomb SSG 74
のマークを(ちょっとデザインが違うのが気になりますが)ご覧ください。

そう、「コリンズ」級潜水艦のマークは、その名も
「Cメラン」(シーメランと読んでね)なのです。



こちらネームシップ、HMAS「コリンズ」の皆さん。(強豪だぞ)
セイルに描かれた「シーメラン」にご注目。

どうでもいいけど「コリンズ」の皆さん、全員体格が立派すぎない?
そんなので息切れしないのだろうかとか狭いのにすれ違えるのかとか(略)

さて、あとはいろんな海軍の舞台章をお楽しみください。




水陸両用部隊のマークは王冠に錨と剣、カンガルーと盛りだくさん。
写真はHMAS「トブラク」Tobruk L-50。



RAN 警備隊徽章はカンガルーとシドニーハーバーブリッジ。
HMAS「アドバンス」Advance P-83は「アタック」級パトロールボート。
シドニーが拠点です。



マカジキに数字の2はケアンズ拠点の巡視艇部隊。
HMAS「バリケード」Barricade P-98、これも「アタック」級。



HMAS「ラウンセストン」Launceston
ケアンズがベースのパトロール部隊です。
マークはブルーマーリン。


RANには、哨戒艇が地域間を移動した時、
ファンネルの徽章を交換するという慣習があるそうです。
こんなでかいもの交換してどこに飾っておくのか心配になりますね。

左の写真で交換しているのはダーウィンの巡視隊のバッファローホーンと
西部オーストラリア部隊のブラックスワン。

右はやはり水牛とマカジキの交換シーン。
半ズボンが正式な軍服とは、さすが南半球の海軍です。

巡視艇部隊は地域特有のタスマニデビルとか、
オーストラリアカササギをあしらったりして地域色を出しています。




掃海艇は、機雷マークに赤いカンガルーがデフォルトとなります。
(機雷のデザインがちょっとずつ違う)

「トン」級(オーストラリアの艦級って名前が皆ヘン)掃海艦、
HMAS  「カーレウ」Curlew M1121。




科学部隊を自認する観測艦のHMAS「クック」Cook GOR 291/A 219。

「クック」の当時の艦長が、休暇中に訪れたゴルフ場のレストランの
ビアマットに描かれたタツノオトシゴを見て気に入り、
これを我が艦の徽章にしよう!と思いついたことからこうなりました。




最後に、ハートウォーミングなこの徽章を。

HMAS「キンブラ」kimbra が就役したのは1956年3月26日のことです。
「キンブラ」はRANの最後のレシプロ式蒸気機関動力による防衛艦でした。

どんなに頑張っても時速10ノットしか出せないこの艦を、
RANは愛情を込めて「カタツムリ」と呼んで最後まで可愛がっていました。

そして彼女に晩年与えられた唯一無二のファンネルマークも、
「カタツムリ」🐌
だったのです( ;∀;)
そして1985年2月15日までの29年間で、363,038マイルを
カタツムリの速度で駆け抜けて「キンブラ」は退役しました。

写真はシドニー湾に入港するHMAS 「キンブラ」の最後の姿です。
ファンネルは黄色いカタツムリが描かれています。


「赤いカンガルー」についての原文は、RAN公式ページからのものです。
こちらもよければご覧ください。

The Origin of RAN Squadron and National Insignia
続く。


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