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HMCS「バンクーバー」と「ウィニペグ」〜国際観艦式に伴う外国艦艇一般公開

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今日は先日の国際観艦式に参加した外国海軍艦シリーズから
カナダ海軍の二隻について調べてみようと思います。



カナダ海軍からは二隻のフリゲートが来日し、
最も目立つと思われるタイ海軍の「プミポン・アドゥンヤデート」の後ろ、
いつもなら「いずも」が係留してある岸壁に位置を占めました。



■ カナダ海軍(ロイヤル・カナディアン・ネイビー)の歴史

カナダ海軍は今までお話ししてきた国海軍より、複雑で長い歴史を持つため、
正式に海軍が創立された1910年前後のことを取り上げます。

大前提として、1763年以来、カナダはイギリス征服下の植民地でした。

20世紀に入ってカイザー・ヴィルヘルム2世の下で帝国ドイツ海軍が台頭し、
イギリスが海上貿易路の覇権を脅かされるようになると、
イギリス海軍はカナダからの派兵を条件に
カナダの海岸の防衛を本格的に行うようになります。

しかし、カナダ国民の感情としては、当然のことですが、
何の発言権も持たない帝国のために派兵するくらいなら、
自国の防衛は自分たちの手で行うべきというのが本音でした。

イギリス政府がハリファックス造船所などを放棄する意向を表明すると、
カナダ政府はこれを自国艦隊維持のチャンスと捉えました。

ちょうどその頃(1906年)、オーストラリア海軍もまた
イギリスからの独立を試みましたが、植民地の海軍を
イギリス海軍分隊と位置付けるイギリスには承認されず終わっています。
この頃、イギリスはドイツとの海軍力軍拡競争においては敗れつつあり、
植民地に対しドレッドノート建造のため資金提供をするよう圧力をかけます。

カナダもその例外ではなく、国内の帝国主義者は
これに追随することをよしとしましたが、議会はそれに反対。

つまり、カナダにとっての選択肢は、カナダ海軍の設立か、
あるいはイギリス海軍への財政支援継続かのどちらかとなったのです。
設立派はこの時、カナダ海軍がホワイトエンサイン(イギリス海軍旗)
の下に活動する結果として、紛争に巻き込まれるという危険性を訴え、
対するイギリス財政支援派は、帝国への忠誠心が不十分であると非難し、
カナダの沿岸の安全や、現在のドイツとの軍拡競争の危機において
もっとイギリスの戦艦建造に資金を投じるべきであることを主張しました。

この時の議会は一致した結論が出ず、これに対し
帝国会議でイギリス海軍提督は、カナダ海軍の戦力を

「ボアディケア」級重巡洋艦 1 隻、「ブリストル」級 4 隻、
魚雷艇搭載駆逐艦 5 隻の計 11 隻駆逐艦 6 隻
と定義し、カナダ国内で建造されることが決まりました。
■ カナダ海軍始動

1909年。
カナダ海軍を設立する海軍法(Naval Service Act)が法制化されます。
この法律には正規軍に加え、予備軍と海軍志願軍、
ハリファックスにある海軍大学校が含まれました。

訓練はイギリスのものと一致した基準で行われ、給与、昇進、
にんむ経験は移行可能であり、共通の昇進体系が採用されました。

また、カナダとオーストラリアの新しい植民地海軍は、
それぞれの政府によって管理されていましたが、外国の基地にいるときは、
イギリス政府に代わって行動することが認可されていました。

戦時下ではイギリス提督の管理下に置かれますが、
どのような海軍資産をイギリスの自由にさせるかは、
カナダ海軍(オーストラリア海軍も)の判断に委ねられていました。

イギリスがヨーロッパ戦線に艦隊を戻すと、この瞬間からカナダ海軍は
世界で最も長い海岸線を防衛する責任を負うことになったのです。

■ 第一次・第二次世界大戦

第一次世界大戦の最初の数年間、RCNの6隻の海軍部隊は
ドイツ海軍の脅威を抑止するために、北米の東西海岸哨戒を行いました。
一応イギリス陣営だったので警戒していたわけです。


HMCS「ケベック」(英海軍ではHMS『ウガンダ』)
「ケベック」は第二次世界大戦でRCNが就役させた軽巡洋艦です。

第二次世界大戦勃発時、カナダ海軍は11隻の軍艦、
145人の将校と1674人の兵士を有していましたが、
大戦中規模は大幅に拡張され、最終的には
北西大西洋全域を戦域とする責任を獲得するまでになり、
1945年までに世界第5位の海軍となりました。

大西洋における戦いの間、RCNは31隻のUボートを沈め、
42隻の敵の水上艦艇を撃沈または拿捕し、
25,343回の商船横断を成功させるという戦績を挙げています。
■ カナダ海軍と空母

カナダ海軍はイギリス海軍から譲渡された
航空母艦を戦後から運用することになりました。
1944年5月、ヨーロッパ戦線で勝利を治めたのち、
カナダ海軍は太平洋戦争に注力するための海軍力の必要を認識し始め、
空母の取得をイギリスに交渉し始めますが、終戦に間に合わず、
1946年からHMCS「ウォリアー」に続いてイギリス海軍から
少しだけ大きいHMCS「マニフィセント」を貸与することになります。

朝鮮戦争が始まると、カナダ海軍は駆逐艦を朝鮮半島に送り、
沿岸攻撃と海洋防衛に従事しました。
冷戦期には、ソ連海軍の脅威に対抗するため対潜能力を充実させます。

1956年11月、スエズ危機が起こると、カナダ政府は、

空母HMCS 「マグニフィセント」

をエジプトへの人員・物資輸送のために送りました。
この際、輸送に備えて全ての武器は外され、乗員は600人に減らされています。

ちなみにこれが「マグニフィセント」の最後の任務になりました。


HMCS「ボナベンチャー」上空を飛行する4機のF2H-3バンシー

1957年後半、RCNは「マグニフィセント」の代わりに
よりジェット機に適した

HMCS「ボナヴェンチャー」 Bonaventure

を就役させ、 1962年までマクドネルF2Hバンシー戦闘機、
および退役まで他の様々な対潜水艦航空機を搭載しました。

1960年代、対対潜能力の向上のため、RCNは小型水上艦に
大型海上ヘリシコルスキーCH-124シーキングを搭載。
この分野では先駆的な成功を収めることになりました。

その後、ユーゴスラビア紛争とコソボ紛争では、
アドリア海の哨戒にRCNの艦船が派遣され、
ソマリア海の海賊対策については、艦船の提供も行っています。

■ カナダの公用語法制定

カナダはバイリンガル国家です。
モントリオールを旅行した時、ホテルの人などが完璧なバイリンガルで、
英語とフランス語をなんのストレスもなく行き来しているのを見て、
彼らの言語脳は一体どうなっているんだろうとかなり衝撃を受けました。
(今ならバイリンガルが身内にいるんでそう驚かないですが)

・・というのは蛇足ですが、1968年、

王室カナダ海軍
(Royal Canadian Navy & Marine royale du Canada)

だったカナダ海軍は

カナダ統合軍海上部隊
(Canadian Forces Maritime Command, MARCOM)

となり、MARCOMは翌年の公用語法制定を受けて、
フランス語ユニット(フランス語ネイティブの部隊)を立ち上げました。

第一号はフリゲート艦HMCS「オタワ」 Ottawa FFH-331でした。
「オタワ」\(^o^)/のインシグニア

ビ・・・ビーバー?

1980年代と1990年代には、カナダ海軍では女性隊員の艦隊勤務が可能となり、
女性の潜水艦乗員は2001年に誕生しています。


一度MARCOMとなっていたカナダ統合軍ですが、

海上司令部は"Royal Canadian Navy"、
航空司令部は "Royal Canadian Air Force"
陸軍司令部は"Canadian Army”

と2011年に完全に元に戻されました。
どうやら、歴史的名称を元に戻しましょう、という回帰主義のなせること?
だったみたいです。

っていうか、それまでのは一体なんだったんだ・・・。

■HMCS 「バンクーバー」


1970年代半ば、カナダ海軍はこれまでの対潜能力と
水上および航空の脅威に対するシステムを備えたフリゲート艦取得のため

カナダ・パトロール・フリゲート・プロジェクト

として、「ハリファックス」級フリゲートを12隻国内建造しました。
艦名はオタワとモントリオールの主要都市から取られており、

ハリファックス  FFH 330
バンクーバー  FFH 331
ヴィル・ド・ケベック  FFH 332
トロント  FFH333
レジーナ  FFH334
 カルガリー FFH335
モントリオール  FFH336
フレデリクトン FFH337
ウィニペグ  FFH338
シャーロットタウン  FFH339
セントジョンズ  FFH340
オタワ  FFH341
今回来日したのはこの2番艦と9番艦「バンクーバー」「ウィニペグ」です。
ちなみに「ヴィル・ド・ケベック」はフランス語でケベック市を意味します。

2007年には「ハリファックス」級の改修計画が発表され、
各フリゲート装備の寿命延長が2018年には全艦完了しています。
現在のところ「ハリファックス」級はアップグレードを重ね、
2040年代まで就役を続ける予定とされています。

HMCS「バンクーバー」 FFH331

はその名前を持つ3番目のカナダ海軍の軍艦です。

最初のHMCS「バンクーバー」は駆逐艦で、イギリス海軍からの払い下げ。
2隻目のHMCS「バンクーバー」は第二次世界大戦のために就役した
「フラワー」級コルベットで、終戦まで活躍しました。

40年後、「ハリファックス」級「バンクーバー」が3番目に登場。
バンクーバーはカナダ海軍の歴史の中で最も頻繁に使われた艦名の一つであり、これより頻繁に使われたのはHMCS「オタワ」だけです。


全長134.65m
全幅16.36m喫水4.98m

[ディーゼルエンジン使用時]
最高速度29ノット(時速54km)
航続距離15ノット(時速28km)で7000海里(13000km)

[ガスタービン使用時]
最高速度18ノット(時速33km)で7930海里(4520mi)
乗員198名(将校17名)
航空要員17名(将校8名)

兵装と航空機


搭載機:CH-124シーキング・ヘリコプター
近接対潜兵器:Mark 46魚雷 Mark 32 Mod 9魚雷発射管


対艦防御:シースパロー垂直発射地対空ミサイル
近接武器システム(CIWS):ファランクス Mark 15 Mod 21 
「バンクーバー」はセントジョン造船で敷設されたこのクラスの2番艦で、
1989年7月8日に進水し、1993年同名の都市バンクーバーで就役しました。


対テロ戦争[編集]

2001年9月11日の同時多発テロ以降、「バンクーバー」とその姉妹艦は
中東におけるカナダの対テロ海軍部隊の主要な一員となりました。

USS「ジョン・C・ステニス」率いるアメリカ空母戦闘団に加わり、
ペルシャ湾に到着し、湾岸でイラク制裁のための海上阻止活動を行っています。



■ HMCS 「ウィニペグ」



「ウィニペグ」が岸壁のこちら側だったので、来た人全てが
艦のマスコット?に注目していたと思います。

CIWSの下に見えるのは・・・バイソンだったんですね。
艦歴などを見てもなぜバイソンなのかわからなかったのですが、
「バイソン ウィニペグ」で検索したらわかりました。

バイソンって食べられるんですよ。
なんかヘルシーで脂身が少なく美味しい・・らしい。

で、ウィニペグではバイソン肉を特産品として飼育輸出していると。
それで艦のシンボルってどうなのって気がしますが、

ちなみにウィニペグは、クマのプーさんの本名の
「ウイニー・ザ・プー」の由来だったりします。

日本では世田谷区がウィニペグと姉妹都市です。



バイソンをぼーっと見ていたら、ウィングにかっこいい女性士官が出てきて
コーヒーを飲んでおられました。



「バンクーバー」「ウィニペグ」の見学に並ぶ人々の列。

「ハリファックス」級の9番艦であるHMCS「ウィニペグ」 Winnipegは、
太平洋と北極海でカナダの主権を守り、領海と排他的経済水域で
カナダ軍のMARPAC(太平洋海上軍)ミッションに従事しています。

同艦は太平洋全域のほか、ペルシャ湾やアラビア海での対テロ作戦、
ソマリア沖での海賊対処などのインド洋での任務にも従事してきました。

「ウィニペグ」の起工は1993年、就役は1995年でした。

1997年、NATOの大西洋常備軍 (STANAVFORLANT) に参加。
2001年、ペルシャ湾でUSS「コンステレーション」空母戦闘群に編入。
空母戦闘団の一員として、6ヶ月間対イラク制裁を実施しました。

アフガニスタン戦争へのカナダの貢献である「アポロ作戦」で展開し、
2002年〜2003年、艦隊支援任務と海上阻止作戦を遂行。

2009 年海賊対策としてアデン湾に配備され、
救援物資を運ぶ国連船を護衛した「ウィニペグ」は
ノルウェータンカー MV 「フロントアーデンヌ」を襲撃する海賊を捕獲。
しかしカナダの法律により起訴を阻まれ、海賊はのちに釈放されています。

2010年8月12日、スリランカからのタミル人難民を乗せた
タイ船籍のMV Sun Seaをブリティッシュ・コロンビア沖で迎撃。

2012年アップグレードと近代化補修。

2013年4月23日、「ウィニペグ」はCFBエスキマルトに停泊中、アメリカン・シーフード・カンパニーの
「アメリカン・ダイナスティ」に
突っ込まれて6人が負傷しました。

これはどう見ても漁船が悪い

2020年12月14日、海外活動から帰還中、
カリフォルニア沖で乗組員が海に落ち行方不明になりました。
二日後、船員の捜索は打ち切られています。


今回「バンクーバー」と「ウィニペグ」が来日したわけですが、
彼女らは日本に来る前にハワイ沖のリムパック海軍演習に参加した後、
北朝鮮に対する国連制裁の実施に参加しています。

なお、2022年9月、「バンクーバー」は航行の自由のデモンストレーションで
ガイドミサイル駆逐艦USS「ヒギンズ」と一緒に台湾海峡を航行しました。



続く。





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