今回のよこすかYYのりものフェスタの一番の目玉、
それはなんといってもアメリカ海軍の駆逐艦、
USS「ハワード」Howard(DDG-83)
であったのはまちがいありません。
「ハワード」は、アメリカ海軍の「アーレイ・バーク」級駆逐艦です。
艦名は海兵隊のジミー・E・ハワード一等軍曹(USMC)に因みます。
ハワード一等軍曹は、朝鮮戦争、ベトナム戦争のベテランですが、
名誉勲章を与えられた「ヒル488の戦い」で、
小隊15名の海兵隊員、2名の海軍兵を率いて敵陣の背後に降下し、
ベトコンの1個大隊(300人以上)と交戦し、12時間の戦闘で、
6名の犠牲者を引き換えに、敵200名を殲滅するという働きをしました。
ハワードは敵の手榴弾で重傷を負いながらも指揮を続け、
帰還して無事に退役しています。
ベトナムで一緒に戦った部下は、彼のことを
「ジョン・ウェインのような、ポーカーフェイスのハードな男で、
彼を見ていると『硫黄島の砂』のテーマソングが聞こえてくるようだった」
と回顧しています。
ハワード軍曹は64歳で亡くなりましたが、USS「ハワード」は、
サンディエゴから出港する時、彼が葬られている
フォート・ローズクランス国立墓地(コロナド近くのカプリロ国定公園)
の前を通るときに、必ず敬礼を行う慣習になっています。
ここで唐突に、元自衛官の方からいただいた、
「トップガン」のサンディエゴ聖地マップです(笑)
左にある
『アイスマンの葬儀をやった国立墓地』
ここに、ハワードさんも眠っているわけです。
「アーレイ・バーク」級というのもとてつもなく数が多くて、
「ハワード」はDDG-51からDDG-121までの現役艦、
そしてDDG-139までの建造中、建造予定艦のうち33番艦となります。
同級の命名基準はお察しの通り人名なので、
まあいうたらネタは無尽蔵です。
リソースには全く困らない上、艦名に名前を残すことが、軍人にとっては
至高の褒章となるのですから、言うことなしのシステムですね。
同級にはリチャード・オケインやローソン・ラメージ、
チャールズ・’スウェード’・モムセンなど潜水艦畑の人、
ジョン・ポール・ジョーンズなど古の海軍軍人、ルーズベルトなど政治家、
ミッチェル、スプルーアンスなどという海軍の英雄がいるかと思えば、
同じ船に乗っていて戦死した三人兄弟「ザ・サリバンズ」などの、
名もない水兵たちの名前もあります。
女性の名前もあります。
第一次世界大戦で海軍看護隊に加わり、女性として初めて十字賞を受けた
レナ・サトクリフ・ヒグビー。
(ネットニュースでHigbeeを”ハイビー”としていたけどそれはないかと)
そのミドルネームを含むフルネームを
USS Lenah Sutcliffe Higbee (DDG-123)に残しました。
また、日系アメリカ人の政治家(元陸軍第442日系部隊)の、
左・イノウエ(爆弾で右手を失い医師の道を諦めた)
「ダニエル・イノウエ」USS Daniel Inouye
(DDG-118)
また、史上初のアジア系アメリカ人将官となった、
Gordon Paiʻea Chung-Hoon
ゴードン・パイア・チュン=フー(1910ー1979)
の名前をとった、
「チャン・フー」USS Chung-Hoon (DDG-93)
さらに、第一次世界大戦時、USS「サンディエゴ」がボイラー爆発した際、
顔に火傷を負いながらも現場を離れなかったフィリピン人の消防士、
テレスフォロ・デ・ラ・クルス・トリニダード(1890-1968)
の名前をつけた、
「テレスフォロ・トリニダード」USS Telesforo Trinidad (DDG-139)
が、建造予定となっています。
おっと、つい艦名由来の話になると夢中になってしまいます。先に進みましょう。
持ち物検査は一応基地の入り口で済んでいるということで省略ですが、
「ハワード」に乗艦するためには免許証などの身分証明が必要でした。
乗艦するためのラッタルは通行を制限するため、
(ときどき写真のように荷物の積み下ろしが行われる)
5〜10分くらい並んで待ちました。
この様子を見ていただいてもお分かりのように、
並んでいるのはわたし以外全員が男性です。
積み下ろした物品は、なんとアメリカのお菓子。
TWIXというのはアメリカのパーキングエリアの食堂のレジなんかに
ちょこっと置いてあるようなクッキーバーです。
M&M(これをアメリカ風に発音すれば”エメネム”)とか
チーズイット(チーズクラッカー)なんかも。
艦内のPXの在庫整理をかねて(しらんけど)売るつもりのようです。
ところでセーラー服の二人、全く日本人のようで、
自衛官が制服だけ替えていると言われても信じてしまいそうですが、
この人たちも当然アメリカ軍人なんだなあ。
並んでいたら横でなにやら修理らしい作業をしているのに気がつきました。
乗員と海自の女性隊員、そして民間人らしいアメリカ人のおじさん。
これはどういう状況かな?
(多分ヒントは上から下された青いホース)
ラッタルの途中で通行者の見張り?をしているのも東洋系。
第7艦隊に配属される軍人はやはり東洋系が多くなるのかしら。
日系でなかったらあまり意味がない気がしますが。
舷門には5旒の旗が。
左から、
アメリカ合衆国海兵隊旗
🇯🇵日本国旗
🇺🇸アメリカ合衆国国旗
アメリカ合衆国海軍旗
POW戦争捕虜/MIA任務中行方不明者の旗
となります。
また、左側の赤いテントに黄色い文字で書かれた、
”READY FOR VICTORY”(もうこれで勝つる:意訳)
は、「ハワード」のモットーです。
構造物に掲げられている15とトロージャンが描かれたパッチは、
第15駆逐戦隊(Destroyer Squadron 15, DESRON 15)
のもので、「アーレイ・バーク」級DDGの8隻から成ります。
舷門から右側に進み、トンネルのようになった通路を通り抜けます。
「負荷容量」
「パント」(The punt)は少なくとも3人が乗れるものとし、
総荷重600ポンド(人員・機材)でなければなりません。
「パント」とは、一般的に小船の意味なので、
おそらく作業艇のことを言っているのだと思います。
赤い札というのはだいたい危険を告知するものですが、これも
危険
ここ(今いる場所)はミサイル爆破エリアに通じています。
うろつかないでください。
警告なしに発射が行われる可能性があります。
となっています。
ミサイル発射のときに甲板をうろうろしていたら
大変なことになるのはこれを読んできるみなさんならよくご存知ですね。
通路を抜けると前甲板に出ます。
Mk.41 垂直発射システム(Mk.41 Vertical Launching System)
自衛隊のほとんどの護衛艦に搭載されているのでお馴染み。
「あさひ」型以降の「まや」型、そして「もがみ」型もこのタイプです。
今回観艦式に参加した外国艦では、
タイ海軍の「プミポン・アドゥンヤデート」フリゲート
王立オーストラリア海軍の「アンザック」級フリゲート「アランタ」
同じくRASの駆逐艦「ホバート」
などが同じVLSを搭載しています。
甲板に出てとりあえず振り返ってみよう。
上部構造物の正面に鎮座するのは、
Mk.15 20ミリファランクスCIWS
「アーレイ・バーク」級の中には
前部にファランクスCIWSが搭載していない艦もあります。
2002年に就役したDDG-85以降は後部の1基だけになりました。
おそらく代わりに
Sea RAM(Rolling Airframe Missile)
を搭載するようになったからと思われます。
近接防空ミサイルとしてSea RAMを搭載している自衛艦は
「いずも」型護衛艦と「もがみ」型護衛艦となり、
「いずも」型はCIWSを2基にSea RAMを2基、
「もがみ」型はSea RAM のみでCIWSは搭載していません。
続く。