■アジア系レストラン
こちらに来てから何度か外食をしましたが、どうしても
アジアン系の味を選んでしまいます。
しかも西海岸は美味しいチャイニーズレストランがたくさん。
パロアルトのユニバーシティストリートの中華で、
MKが頼んでいた肉乗せ麺。
あまりのボリュームに彼ですら食べきれず残していました。
また別の日、スタンフォードモールにある(前にはなかった)
「TARO SAN」といううどん屋さんに行ってみました。
パロアルトの太郎さん。なにか期待できそう。
確かにうどんの麺そのものは良かったです。
麺だけなら下手な日本のまずい店よりよっぽどコシがあって美味しい。
でも、決定的に出汁が何か違う。
解析はできませんが、日本のうどん出汁にはない何かが入っていました。
しかも、つけうどんも肉うどんも鴨うどんも、
同じ出汁一本槍で出てくるので、わたしたちは「うーん・・・」
カウンター内で働いているのは全員がヒスパニック系だったので、
オーナーも日本人ではない可能性は高し。
日本人オーナーならこの出汁は出さないよなあ、と思いました。
わたしはこのとき何故か無性にカキフライが食べたくなって、
(TOもMKも牡蠣は食べない)一人で頼んでしまいました。
これは日本で食べるのと全く同じでした。
これは去年も行ったサンマテオのチャイニーズ。
サンフランシスコの中華街でレストランを経営していた(に違いない)
先代の遺志を継いで、サンマテオのビジネス街にオープンしたチャイニーズは
現地の中国人にも大人気で、いつ行っても店内はまるで中国本土。
MKは迷わずにこの麻婆豆腐を頼みました。
ウィキョウの香りが独特の深みを湛えるピリ辛麻婆です。
ここのネギパンケーキがまた激うまなんだ。
ネギがたっっぷり練り込まれたふわふわの中華パンに、
ピーマンとひき肉炒めをちょっとだけ挟んでいただきます。
■バーミキュラのフライパン
こちらで買い揃えてやったテフロンのフライパンに傷がついていたので、
買い換えた方がいいね、というと、MK、
「バーミキュラのフライパンが欲しい」
でも高いから・・・と遠慮する彼。
そういえば誕生日にもクリスマスにも何もねだらなかったので、
この際買ってやることにしました。
それまで知らなかったのですが、バーミキュラって日本製なんです。
電気ポットをTOが買い込んだけど使いきれず放置されている我が家では
それほどバーミキュラの評価は高くありませんでしたが、
届いたこの名古屋本社の鋳鉄会社の製品、使ってみると優れものでした。
鍋の記念すべき使い初め料理はグラスフェッドのテンダーロイン。
バーミキュラ監修のレシピの最初のページに掲載されていました。
しばらくはバーミキュラでレシピを次々制覇していきました。
珍しくホールフーズにローカルのカモ肉が出ていたので、オレンジソースで。
ビーガンメニューもありました。
これはカリフラワーのステーキ。
丸ごとを厚切りして、レーズンとケッパーを加えたソースでいただきます。
蓋は別売り。
バーミキュラのウリは蓋ごとオーブンに入れられること。
コンロにかける際は、根本のシルバーの部分から先が熱くなります。
次の日は同じ鴨のレッグを買って、シンプルに焼いていただきました。
牛乳や小麦粉を避ける人向けに、アメリカでは早くから
オルタネイティブの食材がどこでも買えましたが、
最近は日本でも米粉やオーツドリンクが買えるようになって嬉しい限りです。
この日は、ココナッツフラワーでカップケーキを作ってみました。
■ 大学寮の”コーテシー ”フード
わたしたちはMKの居心地の良い大学寮が気に入って、
Airbnbよりももっぱらこちらで料理を作り、部屋で食べて、
時間があればわたしは寮に備え付けのピアノを弾いて過ごしました。
この日、MKがリモートワークだったので、わたしたちは
彼の部屋でランチを一緒に食べるために材料を持って行ったのですが、
敷地内にフードトラックがいてたくさん人が並んでいるのに気がつきました。
手前の赤いテントはチュロス、赤いトラックはクラムチャウダー、
緑のトラックはボバ(タピオカドリンク)やかき氷の業者です。
食後、チュロスかかき氷を買うためにトラックに行きました。
まず、チュロスは売り切れで店じまいの途中。
ならかき氷でも、と窓口の中国人のおばちゃんから受け取り、
「いくら?」と何度聞いても、「はあ?」みたいな反応をするので
困っていたら、奥から若い男性が
”It’s free. It's courtesy.”
コーテシーという言葉は、through the courtesy of…=好意によって
というニュアンスで要するに大学寮からのサービスでした。
日本のかき氷のようにふわふわとかではありませんが、
中にはゼリーのようなボバのようなものが入っていました。
こちらでも昼間は猛烈に暑くなってきていたので、
このかき氷のプレゼントはしばしの涼を届けてくれました。
この「大学寮からのコーテシー」はMKによると度々あるそうです。別の日、わたしたちが部屋にいると、彼がスマホを見ていて
「今から一階でチキンの丸焼き配るらしいけどどうする?」
このように、情報はデバイスで住民にリアルタイムで共有されます。
その日の晩は丸焼きのモモなどをバーミキュラで温めて食べました。
残りのガラと胸肉は、次の日セロリやにんじんと一緒に煮込んで
美味しいスープになりました。
チキンの丸焼きはアメリカのスーパーでは店頭でいつでも買えます。
MKによるとこの日のチキンは「コストコのもの」ということでした。
■ ”バーベンハイマー”事件
今年の夏の話題作は、「バービー」と「オッペンハイマー」。
しかもその2作品がアメリカでは同じ日に公開されるということを
わたしはMKから聞きました。
よりによってこの対極(何の対極かわかりませんが)にあるような作品が、
と、それだけでアメリカでは話題になっていたというわけです。
これに調子に乗ってしまった一部の人々が、
バービーの髪の毛を原子雲にしたり、オッペンハイマーを演じた俳優が
肩にバービーを乗せるなどという両作品の画像コラボに興じ、
バービーの公式がこのミームにうっかり乗っかってしまったのです。
これに対し、主に日本から不快感が表明され、
あっという間にワーナーブラザーズが謝罪をする羽目になりました。
わたしはというと、した方は忘れてもされた方は決して忘れない、
という人類共通の加害者と被害者についての心理について、
鈍感すぎた公式の宣伝担当には、もう少し慎重になるべきだったね、
くらいは思いますが、別に怒りの類の悪感情は持ちません。
我々日本人は「不謹慎」と言われるようなことには殊に敏感で、
地雷原を歩くように、それらを注意深く見つけ、
踏まないようにして世渡りしていくことを習い性のようにしていますが、
それは日本の専売特許ではなく、こと「人類の悲劇」といわれるような
原子爆弾とはじめとする悲惨な事件については、民族国家関係なく、
「世界の常識」というべきマナーでもあります。
ところがアメリカときたら、昨今LCBTQETC関係には死ぬほど敏感で、
それこそ地雷を踏まないように自主言論統制しているような風潮なのに、
どうしてこの件に関しては、ツィッター公式もネット民もやっちまったのか。
BLMに迂闊なことを言うと「人生終わる」とばかりに
固く口を閉ざす人たちが、どうしてこの件では
「日本ヘイト」を半ば嬉々として展開したのか。
この件を報じるアメリカのニュースでのインタビューで、
わたしが個人的に一番気の毒に思ったのが、
映画を見にきて、インタビュアーに例の「バーベンハイマー」から
いくつかのコラ画像を見せられた黒人女性でした。
彼女は画像を見せられるなり、
「いいわね!これ気に入ったわ」
と大笑いしたのですが、次いでインタビュアーから、
「原爆の被害にあった日本の人々はこれに怒っているそうですが」
と聞かされるや、見るも無惨なくらい気まずそうに動揺し、
「まーそれはねー・・日本の人たちとしてもねー」
とモゴモゴと口ごもりながら場を取り繕っていました。
ワーナーでは公式が謝罪した後、関係者(トップではない)が来日し、
「後悔している」とかなんとかいう言葉で謝罪したそうですが、
どう見ても日本公開での売り上げに影響しないようにという火消しであり、
少なくとも肝心のアメリカ国内に対してはノーアクションのまま、
というのがさらに一部の日本人の反感を買う結果になっているようです。
ここアメリカにいると感じるのですが、メディアを挙げてバービーバービー。
どうもこちらではかなりのヒットを見込んでブームを作ろうとしており、
現にそれに乗っかる消費者たちもいるようで・・・。
先週末、わたしとMKが大型モールにいったときのことです。
服もバッグも、人によっては靴も全身をピンクをあしらった、
アジア系の若い女性の集団がにぎやかに歩いていました。
彼女らは別にキャンペーンモデルというわけではなく、(見た目も)一般人。
ピンクがテーマのパーティに行く人たちかな、と思ってみていたら、
その騒がしい目立つ一団は、モールの映画館に向かっていきます。
「あ・・・・もしかして、バービー観に行くのかな」
「そうなんじゃない?」
気がつけばその日は公開初めての週末でした。
このように、ノリで楽しんじゃいましょう、という女子を生み出すほどには
こちらではそこそこのブームになっているということです。
もちろん、バーベンハイマーが「不謹慎」などという意見は
ほとんどのアメリカ人にとって耳にも届いていなさそうです。
映画館に向かいながら盛んに自撮りしたり仲間と撮ったり、
実に楽しそうな彼女らを観て、角を曲がった瞬間、
バスボム(一回分の入浴剤)専門店のショーウィンドウに、便乗商品を発見。
バービーはおそらくオッペンハイマーなんかより「ドル箱」なので、
ワーナーも日本向けには謝ってみせても、国内に向けては
人気に水を刺すような辛気臭い?抗議などなかったことにしたいようです。
ちなみに、検索したところ、このミームは止まるところを知らず、
「バービー✖️オッペンハイマー」「バービーvsオッペンハイマー」
などのYouTube動画が現在でも盛況です。
まあなんだ、911やBLMには許されない不謹慎も、
相手が「悪かったあの日本」なら仕方ないよとか思ってるんだろうな。
日本は怒らないし、たとえ怒っても怖くないし。
そう思ってたら日本いきなりキレて真珠湾攻撃、
ということが実際にあったわけですが、原爆投下は2度と日本が
「キレないように」という躾だったと思ってる人もいそう。
サンフランシスコのプレシドに近い商店街にあった映画館では
「ミッションインポッシブル=バービー」の組み合わせ。
こちらならどんなにコラボしても問題にならなかったのに・・。
ところでこちらをご覧ください。
アメリカにはいまだに商店街の「小さな街の映画館」が残っていて、
数は少ないですが、ヒット作品というよりは、
昔の映画を特集でリバイバル上演しています。
ピッツバーグのAirbnbの近くにもそんな映画館があって、
黒澤作品を上映していたのに驚かされたものです。
ここユニバーシティアベニューの映画館では、この週、
ケイリー・グラント映画特集と銘打って、
古き良き幾つかの作品を上映しておりました。
このシリーズ地元民には好評のようで、この日も
かつてこの映画をデートで観たかもしれない年齢の方々を中心に、
若い人たちもたくさん集まっていました。
ピンクの集団が目にも騒がしかったであろうバービー上映の映画館とは、
次元を別にする世界とも思えて、わたしは実に興味深く眺めていました。
古い白黒映画をレトロな大画面で鑑賞することができる小さな街の映画館。
その暗くて古い映画館のシートに身を埋め、ポップコーンを手に、
懐かしのスタアが演じる、もう何度も見たであろうシーンに観入る。
これもまたアメリカにいまだに残る、映画という娯楽のひとつの楽しみ方です。
続く。