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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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恩師の激励〜工学部卒業式@ベイエリア

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アメリカ西海岸におけるMKの大学卒業式シリーズ、
この学部セレモニーでいよいよ最後となります。


前回の卒業式は、学部セレモニーと全体セレモニーが別の日だったのですが、
今回は大学卒業式に続いて午後からが各学部での式となります。

スタジアムを出て指定された建物へと向かいます。
皆が各学部への移動を一斉に始めるため、学内はご覧のように
ガウンを着た人と家族関係者がいろんな方向に三々五々歩き回っています。


工学部卒業式会場は、名前こそ「メイプルズ・パヴィリオン」ですが、
なんとバスケットボール専用体育館です。
なんと、バスケの練習と試合をするためだけの体育館があるのです。(まあ、至る所にビーチバレー部のためにあちこちに専用コートがあって、
ゴルフ部のために専用ゴルフ場がある大学ですから当たり前ですが)

アメリカの私大は、スポーツの振興でも大学名を賭けて競い合うため、
高校スポーツでいい成績を出し、大学の決めたレベルをクリアすれば、
いわゆる「エリート校」に推薦入学することができます。

もちろん当大学くらいになるとSATの成績が悪ければ入れませんし、
大学入学後に成績が維持できなければ試合に出してもらえません。

ちなみに、当大学のバスケチーム、「カーディナル」ですが、
現在では男子より女子の方が強い模様。


天井のこれは4面に向けたスクリーンになっています。
バスケットボール専用体育館なので仕方がないのですが、
蛍光灯に照らされ、劇場のような照明は望むべくもありません。



今度は正面ではなく、壇を一番近くで見られる場所に席をとりました。
「威風堂々」が流れる中、卒業生たちが入場してきます。


上のスクリーンからは別角度からの入場が見られます。


博士課程、大学院、学部卒業生全部合わせてもそんなに多くはありません。


全卒業生が入場を終わりました。
帽子をクリエイトしている卒業生は多くはありませんが何人かいます。
■ 錚々たる教授陣


続いてファカルティ、教職員が入場し壇上に着席しました。
卒業生に渡される卒業証書はダミーで、名前は書かれていません。



今年工学部の卒業式の進行を行ったのは、機械工学者であり
ロボット工学者のアリソン・マリコ・オカムラ教授でした。

Allison Mariko Okamura

日本人としてどうしてもその名前が気になってしまいますが、
アメリカ生まれのアメリカ育ちの日系アメリカ人です。

ロボティクス分野に関しては、触覚技術、遠隔手術の研究を通じて
医療分野におけるロボット技術の普及に貢献しておられます。

オカムラ教授によって、教授陣が紹介されます。



紹介が終わると、二人が壇上に上がりました。
このコリンズ准教授の専門はヒューマノイド型ロボット研究。
かっこいい・・まるで映画に出てくる教授みたいです。
この綺麗なブルーのガウン、ミシガン州立大でPh.Dを取ったことを表します。


続いて、副学部長のケン・グッドソン教授。グレーと赤のガウンは、MITの博士号を受けたことを表します。
壇上で一際存在感を放っていると思ったら、やっぱり凄い人でした。
一番目立ってた

専門は、電気自動車、データセンター、
パワーエレクトロニクスに応用される熱伝導とエネルギー変換で、
DARPAや政府のエネルギー研究局、空軍科学研究所などからの支援を受け、
発明家としても35の特許を持っています。
アップル社のためにヒートシンクを製造した実績もあります。

また、バリトン歌手としてオラトリオのソロを務める一面もあり、
タングルウッドで声楽のフェロー、芸術賞を取っているそうです。

■ 博士号授与



まず、博士号を取った人たちに、
壇上でガウンの上にストールをかける儀式が行われます。

赤と黒のガウンは当大学独自のもので、
そこに肩からかけるオレンジのストールは工学博士を意味します。


新博士たちは、自らのストールを手に持ち登壇して、担当教授直々にストールを後ろからかけてもらいます。


背の低い教授に大きな人が掛けてもらうのはちょっと大変。




卒業生は自分の名前が書かれた紙を、コールする人に直前に渡します。
おそらくこの人(インド系)は、名前の読み方を確認されています。
そしてこの後、博士号取得者は、元いた席にではなく、
壇上の、教授准教授の後ろに設えられた椅子に座ります。

つまり、これからは皆同じ博士ですよってことなのでしょう。

■ 修士号授与



というわけで、MKが修士号授与される順番になりました。
彼の名前をコールしているカトコスキー教授は、なんのご縁か、
MKが学士授与された大学で博士号を取っており、
そうと一目でわかるタータンチェックのストールをしておられます。

このストールが素敵だと思ったのはわたしだけでなく、MKも、

「もし将来Ph.D.取ることがあればここよりC大がいいなあ」
その理由はというと、やはりこのタータンチェックだそうです。

ちなみにカトコスキー教授の専門も、ロボットハンドなどです。


前後に並んでいるのはみんな親しい「学友」なので、
名前を呼ばれると声援を送り合い、盛り上がります。

ヒスパニック系など、大家族で応援に来ている卒業生の名前が呼ばれると、
一族郎党が凄まじい声で名前を叫び、プラカードが振られます。


賞状を渡す係とまず握手。
この方、コンピュータサイエンスの助教授で、名前が凄い。

モンロー・ケネディ3世
Monroe Kennedy III


ファーストネームがモンローでファミリーネームがケネディ。
しかも、三代に亘ってこの名前がアフリカ系一族に受け継がれてるって、
・・・・・なんか色々と謎の情報量多すぎ。

ケネディ助教授も専門分野はロボット工学です。

モンロー・ケネディ3世助教と写真を撮って、おしまい。


博士課程、修士課程のセレモニーが終わりました。
2024年というのは当大学133回目の卒業式に参加した卒業生が、
「クラス2024」と生涯にわたって呼ばれる数字となります。


さて、ここからは学士、アンダーグラデュエイト認証となり、
カトコスキー教授に変わってコリンズ准教授がコール係となりました。

モデルさんですか?みたいな人も結構います。


「世界130カ国から集まっている」という当大学。
わたしたちの近くに座っていた一団はオーストリアから来た家族でした。
(帰りのチケットを確認していたのが見えてしまった)

この写真の女性のように、国旗と共に登壇する愛国者もいます。
彼女が持っているのはモーリタニア国旗ではないでしょうか。
(赤いラインがないのは旧国旗だから?)

モーリタニアはアフリカの西岸に面した人口465万人のイスラム教国で、
国土は日本の2.7倍ですが日本大使館は目黒区五本木の一軒家です。

なお、全員の名前が呼ばれるのを注意して聞いていたのですが、
全工学部中、日系と思われる女性は一人、(教授に一人いますが)
ファーストネームも日本名の、つまり留学生らしき卒業生は、
この中でMKと学士の女性一人だけでした。

つまり工学部で男性の日本人留学生はMKだけだったことになります。

そういえば、中西部での大学にいたときも、日本からの留学生は少なく、
そのことがアメリカ人の父兄とレセプションの席で話題になり、

「日本は元々先進国だから、留学の必要がないんじゃないですか」
と言われましたが、それもちょっと違うような・・・。
■ キャップトス(帽子投げ)

卒業証書授与式が終わり、一瞬素に戻っている先生たち。
画面左手にあるロゴ入りのボードは、撮影用のバックで、
卒業生がここに来ると業者が一人ずつ撮影を行います。

卒業式後、すぐに業者から写真を買えというメールが来たので、
当然のように買ってしまったわけですが、届いたプリントを見ると、
うーん・・・わたしが撮った写真のほうがよく写っているかも・・。


アメリカのセレモニーの不思議なところは、
「ここで終わり」というアナウンスをしないことです。

なので、卒業生たちはなんとなく終わった〜的タイミングで
てんでに立ち上がり、何人かが帽子を投げたりし始めます。

この帽子投げは英語では「ハットトス」「キャップトス」といいますが、
本来は、これから任官して帽子が変わる士官学校での慣習であり、
普通の大学の卒業帽=「モルタルボード」mortarboardは投げません。

「新しい帽子を得るために古いものを捨てる」という意味がないからです。
つまり、そのイメージを受け、完全に雰囲気でやっているだけです。

それに、改造されてプラスチックなどを貼った帽子は、
下手に投げたら角で人を傷つける心配もありますからね。
■ 野外レセプションパーティ


セレモニー終了後は、体育館横のバーベキューエリアで
工学部主催のレセプションがありました。

スタジアムには軽食のスタンドもあったので、
それを買い求めて食べている人もたくさんいましたが、
わたしたちは朝早く、一口だけ食べて家を出てきただけなので空腹です。
そうそう、スタジアムで横に座っていたコリアンらしい青年は、
買ってきた山のようなフライドチキンのバレルを抱え、もりもり食べて、
食べ残しをそのまま座席の下に放置していったわけですが、
彼に限らず、セレモニーが終わった後、スタンドの足元に、
ペットボトルやその他食べ残し、チラシなどゴミを放置する人多数。

「一流と言われる大学の卒業生関係者でもこれか・・」

とちょっと唖然とさせられました。
ワールドカップでゴミを拾う日本人応援団が話題になりましたが、
それがいかに世界基準では異様なことだったかがよくわかります。

こっちの人ってまじで、

「掃除をする人の仕事がなくなるからゴミ拾いなんて必要なし」

とか平気で思ってそうなんですよね・・。


卒業生は木陰のテーブルに座り、あるいは立って、
お世話になった先生と話したり、家族に会ったりします。

そう、レセプションパーティは食事をする場所ではないのです。



とはいえこれは・・・いかがなものか。

お腹が空いたので、フードの列に並んでみたところ、
テーブルの上にあるのはズッキーニのサラダ、
中身スカスカのソフトタコ(しかももう残ってない)、クッキー。
飲み物はサーバーから汲む生ぬるい水道水、以上。
「タンパク質とか全くねええ!」

「ビーガンの人に対する配慮かな」

「レセプションって量じゃないぞ」
しかし、とりあえず一皿取って食べたら味はそう悪くない。
小皿一杯では流石に量も足りないので、おかわりしようと思ったら、
このわずかしかない食べ物に長蛇の列ができていて、諦めました。
(きっと全員に行き渡らなかったと思う)しかも補充される様子なし。

いかに食べ物の質に頓着しないアメリカ人もこれにはびっくりだ。
MKも呆れて、

「工学部何考えてんだ」

おもてなし以前に、共感性欠如疑うレベル。まさかこの大学で「予算がなかった」なんて言い訳通らないぞ?

きっとビジネススクールはこんなんじゃなかったんだろうな、とふと思う。
■ 駆けつけてきた「レジェンド」教授



MKと同じラボの研究生が、恩師を囲むの図。
教授は昨年一杯で退官し、リタイアしているのですが、
可愛い?弟子たちの卒業式に立ち会うべく、
ロスアンゼルス方面から車を飛ばしてやってきたのでした。
しかし、この日曜日、道路が異常に渋滞していて、
到着したのはセレモニーが終わったときだった、とのことです。

ちゃんと弟子に会うために退官後にもかかわらずガウンを着用。
MK曰くその分野では「レジェンド」というべき存在だったとか。


早速恩師を囲んで記念撮影が行われました。



わたしが一番好きなのがこの写真です。
退官したにもかかわらず、弟子のために数時間かけてやってきて、
彼らの門出を祝福してくれる名物教授。


そういえば、最初にラボの見学をさせてもらったとき、
教授の似顔絵が貼ってあったなあ・・・。

写真の身振り手振りからも、教授が教え子にいかに真摯に対峙していたか、
いかに尊敬され、慕われていたかが推察できる一瞬だと思います。

自分の薫陶を受けた技術者が、これからの世界に
どれほどの功績を遺すかを、心から楽しみにしている師の姿。

後藤新平が言ったという、

「人を遺すは一流」

という言葉を、カリフォルニアの太陽の下で思い出したわたしです。

というわけで、長らくお付き合いいただいた卒業式シリーズ、終わります。
MKはこの後、企業の研究所でインターンシップを行った後、休みを取り、
本格的に地元で技術者として歩みだすことが決まりました。

親としての役目は一応これで一区切りついたと言えるかもしれません。


卒業式シリーズ終わり



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