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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「Here Comes The WAVES」(WAVESがやってきた)

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以前陸軍女子WACの入隊宣伝映画「陸軍の美人トリオ」(常に備えあり)
を紹介しましたが、今日は海軍WAVES勧誘映画を取り上げます。


タイトルは「Here Comes The WAVES」
直訳すれば「波が来た」ですが、このウェーブスとは

Women Accepted for Volunteer Emergency Service

の頭文字を取った志願緊急任務女性軍人のことです。
日本の海上自衛隊では女子隊員を「WAVE」としていますが、
その成り立ちを考えるとこの言葉は正鵠を得ておらず、
しかも(こちらは推測の域を出ませんが)ウェーブスだと、
語尾の響きがあまり好ましくないという理由で、
肝心の「任務」を意味する「S」が省かれた名称となっています。

ただ、アメリカでも名称は「WAVES」としながら、
口語では映画を聞く限りSを省略することが多いようですので
本稿も単体に関してはこの名称に倣います。

本作は戦時コメディばかり8本が収録された2枚組CDの中の一編でした。

直輸入版でリージョンが違い、(海外で購入したCDプレーヤーが活躍)
英語字幕すらついておらず、youtubeでも予告編しか見つからなかったので、
正直セリフを細部まで聞き取れたという自信は全くありませんが、
そこはそれ、コメディ&ミュージカルなので、なんとかなるでしょう。

Betty Hutton - "Here Come The Waves" Trailer (1944)
とりあえず、まずトレーラーを上げておきます。
最後まで見た方はお気づきだと思いますが、
本編に登場するWAVEさんたちは一部を除き本物です。
海軍の協力によって1944年に公開されたこの映画は、
ストーリーの中心のドタバタ恋愛劇と音楽の合間に、
WAVESの訓練や任務の映像を盛り込んでくるのを忘れません。

当時カリスマ的人気を誇ったスター、
ビング・クロスビーを主役に配したのも、
WAVES入隊資格のある若い女性にアピールするのが目的です。


ローズマリーとスーザンは双子の姉妹で活躍する人気歌手です。
最初に歌う曲は「ジョイン・ザ・ネイビー」。



赤毛のローズマリーと金髪のスーザン、
この双子を一人二役で演じるのはベティ・ハットンです。

ショーのシーンをはじめ、何度も同時に画面に現れるのですが、
何回見てもハットン一人がやっているとは思えません。



ブルネットの姉のローズマリーは物静かで落ち着いた物腰の、
今や死語ですが「おしとやか」を絵に描いたような女性です。



対して12分後に生まれた金髪のスージーは、典型的な陽キャタイプで、
いつも騒がしいハッピーゴーラッキーな、姉とは正反対のタイプ。



彼女は人気歌手ジョン・キャボット(クロスビー)の熱烈なファンです。

ここで話はいきなり、ショーの後、愛国心の強い姉が、
国のために海軍に入隊すると妹に打ち明けるところから始まります。

最初スージーは反発しますが、姉と離れたくないというそれだけで、
歌手をやめて、一緒にWAVEになることをすぐ決めてしまいます。

展開早すぎ。

そして高らかな「錨を揚げて」が鳴り響きます。


次のシーンからはニューヨークのブロンクスにあった
海軍の訓練学校での撮影となります。

一糸乱れぬWAVESの行進がグラウンドで行われています。



それぞれの私服に貸与されたWAVESの帽子姿の新入生たち。
最初に行うのは海軍式敬礼の練習です。



なんでもそつなくこなす姉に対し、少々不器用な妹のスージーは、
何度も敬礼の角度を直されています。



ベッドメーキングもシーマンとして最初に叩き込まれます。うまくいかず癇癪を起こすスージーに、担当教官(多分本物)は、

「トライ・アゲイン」(ニッコリ)



制服が出来上がり、ハイヒールを黒のパンプスに履き替えても、
まだスージーは歩調を皆と揃えられず、大変苦労しています。

彼女の周りにいるのもおそらく全員本物のWAVESです。


海軍軍人として必要な基礎を学びます。
艦隊模型を見ながらフォーメーションにについて学んでいるのでしょうか。


スポーツは野球、そして、



バレーボール。

どんなスポーツの時にもスカートを履いて行うのがこの頃の女性です。
スカートの下にはショートパンツが基本でした。
(戦時中結成された女子プロ野球がそうだったように)


両足を組み替える美容体操(死語)みたいなのをしています。
なんなんだこれは。



牧師のお話を伺うレリジョンの時間もあり。
(ここだけ音楽はオルガンのコラール風)


食事は食堂でいただきます。



「食事の前には口紅を落としましょう」

今ではありえない注意書きですが、当時の女性は、
口紅なしで人前に出るのはみっともないとか恥ずかしいとされていたのです。加えて当時の口紅は食器に付いたら大変落ちにくかったようですね。


そして、「錨を揚げて」がエンディングを迎える頃には、
スージーもすっかり行進がサマになってきていました。


そんなある日、ローズマリーが宿舎に戻ると、
スージーが洗面室に立てこもってジョン・キャボットの曲を聞いていました。
誰にも邪魔されず、一人で彼の歌に酔いしれるスージー。


我慢できなくなったみんながスージーをトイレから引き摺り出したとき、
なんと上官が、明日ジョン・キャボットのコンサートに行くから、と、
「That Old Black Magic」のレコードを借りにきました。


翌日、その「That Old Black Magic」を歌っているジョン・キャボット。

演じるのがビング・クロスビー(しかも絶頂期)なので、
当たり前と言えば当たり前ですが、素晴らしい歌唱です。


彼が現れると会場の女性は熱狂して叫びながら一斉に立ち上がり、
歌い終わると、何人もが彼の甘い声に失神するほど。

アイドルに熱狂し、泣いたり失神したりするファンというのは、
ビートルズやプレスリー以前の時代にもいたんだ、とちょっと驚きました。

カリスマに対する一種の集団催眠的な狂乱は古今東西どこにでもあり、
そんなことがなさそうなヨーロッパのクラシック演奏家でも、人気のある人、
たとえばピアニストでポーランド大統領になったパデレフスキーという人は、
若い頃、熱狂的なファンに何度も髪の毛をむしられて困ったそうだし、
あのフランツ・リストのコンサートでは失神する女性もいたと伝えられます。
この映画で、クロスビーの演じるジョニー・キャボットという歌手は、
ビング・クロスビーというより、当時のフランク・シナトラの要素を持ち、
特にこのステージはシナトラのパロディのように演出されています。


スージーもついきゃーっと叫びながら立ち上がってしまい、
ローズマリーに「制服着てることを忘れないで!」と嗜められています。

ジョンの楽屋に海軍に入った友人のウィンディが訪れました。
彼は楽屋でウィンディが配属された「ダグラス」での様子を尋ねます。

ここで、ジョンが海軍に入れなかったのが、
色覚障害(カラーブラインド)のせいだったという話になるのですが、
実は、ビング・クロスビー自身が有名な色覚障害でした。
彼が自分でブルーだと思って選んだ服は大抵他の人には派手すぎたとか、
それにまつわるエピソードがたくさん残されています。

色覚障害は、男性に20人に一人の確率で現れる症状なので、
有名人の中にも驚くほど多く、たとえばロッド・スチュアート、
ジミー・ヘンドリックス、ニール・ヤング、フレッド・ロジャース、
團伊玖磨、丹波哲郎、ビル・クリントン、タイガー・ウッズ、
キアヌ・リーブス、マーク・ザッカーバーグなど錚々?たるメンバーです。

流石に画家にはいないだろうと思ったら、なんと
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホもそうだったらしいです。後世に残っているゴッホの絵、彼の思ったのとは違う色だったんですね。

ゴッホは自分の作品がこう見えていた
ちなみに、女性は遺伝子を受け継ぐだけで本人に症状は出ず、
彼女が生んだ男児にそれが発現することが多いようです。



このウィンディ、実はアリソン姉妹と同郷の知り合いでした。
彼はジョンを「知り合いが出演しているクラブに行こう」と誘います。

ジョンは、ファンに見つからないように変装しました。
(この変装は一つの伏線)



しかし、アリソン姉妹はすでにステージを引退して、
今日は海軍軍人として客席に座っていました。

ウィンディは実は姉のローズマリーに想いを寄せています。
クラブで彼女らにジョンを紹介すると、スージーは大喜び。

ジョンはというと、ほぼ瞬時にローズマリーを気に入り、
メニューにいつものように自分のサインをして渡したのですが、
彼女は気を悪くしてメニューをビリビリっと破き、

「ご親切ね。でもわたしが何が欲しいか勝手に決めつけないで」

「すみません・・」

(´・ω・`)となるジョン。
世の中の女が全て自分を好きだなんて思うなよ?

ところで、同じ女優が演じる同じ顔の二人という設定なのに、
二人の男のどちらもが、騒がしいスージーには見向きもしないのです。
顔が同じならエレガントな方を男は選ぶってことですかね。

ローズマリーは思い上がった男に反発し、
ダンスの誘いを受けるとウィンディと踊り出しました。



必然的にジョンはスージーと踊ることに。

耳元で彼が流れる音楽(That Old Black Magic)に合わせて鼻歌を歌うと、
それだけでスージーはあまりの興奮に失神してしまいました。

しかし、この夜、ジョンはローズマリーに本格的に恋をしてしまうのです。


そして次の瞬間、なんと彼はいきなり(40歳にして)海軍に志願しました。

戦争中ということで、身体的条件が緩和され、
色覚異常の男性も入隊が可能になったのを受けてのことです。
WAVESのローズマリーを好きになったからと言いたいところですが、
それより彼は海軍軍人だった父の後を継ぎたかったから、
そして、正直ファンに追い回される生活に嫌気がさしていたからです。



国民的アイドルの入隊ということで、西海岸に向かう汽車に乗るキャボットに
ファンが詰めかけて群がり、落とした私物を奪い合う騒ぎに。

「何か言ってえ、ジョニー!」
「ヘルプ!」

着く駅着く駅彼を見ようとファンが押しかけ、うかうか窓も開けられません。



そしてサンディエゴの海軍訓練センターに到着。
ピカピカのプレートを水兵がさらに磨き上げています。
1923年に開始したこのセンターは、1997年まで使用されていました。
閉鎖されてからも「トップガン」など映画の撮影に利用されています。


ここからは、トレーニングセンターの実際の映像が紹介されます。
キャボットを含む新入隊者がゲートをくぐって着任してきました。



グラウンドでこれでもかと訓練が繰り広げられています。
キャボットはこれから6週間のブートキャンプをここで行います。


同じ訓練センターに新入WAVESも着任してきました。この船はWAVES専用なのか、名前が「WAVE」です。


宿舎に到着してベッドが割り当てられます。



ブルックリンの新兵訓練所の僚友、ルースとテックスに再会しました。
彼女らはヨーマン(事務職)に配置されたようです。
そこで「故郷への通信はテレグラムでできるわよ」という会話があり、
海軍を志望したいが、家族との連絡が取れなくなるのでは?
と心配するお嬢さんたちの懸念を払拭しようとしているのがわかります。


シーマン・キャボットは「ダグラス」乗組が希望です。
彼の父親は第一次世界大戦の際水兵としてこの艦に乗っていました。


しかし、艦は改修中なので、済むまでは歩哨の任務です。

そこにスージーがジョンの配置場所を突き止め、押しかけたものだから
周りが気づき、またしても女の子が群がる騒ぎになってしまいました。
ジョンはこれが嫌で海軍に入隊したのに、と激怒。
スージーもWAVEがなぜこんなところにいるのかと士官に叱責されます。



ローズマリーをなんとかして口説きたいジョンは、
ウィンディと彼女のディナーの席に割り込み、
隣の席の女性にナッツや氷をぶつけてそれをウィンディのせいにして、
騒ぎを起こし、憲兵に連行させるという汚い手で恋敵を追い払い、
彼女と二人きりになることに成功しました。



ここまで来ればもうこっちのもの。

最大の武器である歌を使って落とすだけ、といえば聞こえが悪いですが、
ローズマリーは否定しながらも彼に惹かれている自分に気がつきました。



その夜宿舎に帰ってきてジョンと会ったという姉を妹は問い詰めますが、
肝心のことを話せない姉は、ただ彼が、父親の遺志を継いで
「ダグラス」乗組を希望しているということを聞いた、といい、
スージーは、それでは彼が前線に行ってしまう!とパニクります。

そして、彼を内地に留めるために策略を巡らしました。



それは、ジョン・キャボットをレクリエーション担当に任命させること。

スージーはなんとジョン本人になりすまし、嘆願書を出します。
WAVES勧誘のための娯楽部門を設置し、自分がその指揮を執りたいと。

カリスマアイドルである彼が女性軍人勧誘の広告塔になるというアイデアが
ワシントンに受け入れられないはずがありません。
彼がヘッドオフィスに呼ばれた時には、
すでにその責任者としてCPOに昇任するという話にまでなっていました。
覚えのない「嘆願書」に驚愕するキャボット。

「父の後を継いで『ダグラス』に乗れると思っていたんですが・・」

「君の父上のことは知っているよ。君の気持ちもわかる。
しかし、それはその任務を終えてからでもいいんじゃないかな」


「ダグラス」に戻ると皆が周りを取り囲みました。

「なんだったんだ?」

「CPOになった」

「嘘だろ?本当に合衆国海軍のか?」

「WAVESのレクリエーション担当オフィサーなんだと」

「ほー、WAVEのねえ(ニヤニヤ)」

「気をつけ!かしら中!」

「・・・・な」

「俺は上官だ。
いいかウィンディ、お前『ダグラス』を降りて俺を手伝え」

「いや、俺は『ダグラス』で戦いますよ」

「ダメだ。上官命令だ」

「それが変更できるかどうか貴様の顔に聞いてやろうか?」
「やれよ。すぐに上官反逆罪で海軍警察行きだ。
いいか、命令だ。今夜中にショーの構成についての報告書を書け」

いきなり上官ヅラして友人を同じ穴に引き入れるジョン・キャボット。
なんかこいつ色々といい性格してんなー。


続く。



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