映画「戦艦バウンティ号の叛乱」二日目です。
政府の命令を担った「バウンティ」は、苦難の航海の末、
ついにタヒチに到着します。
ちなみにブライ艦長の技量は卓越していて、タヒチには過去二度、
当時英国海軍航海長であったジェームズ・クックとともに訪れています。
ブライはクックから航海術を学ぶ弟子であり、
ブライとフレッチャー・クリスチャンは同じ師弟関係にありました。
クックはハワイ先住民との間のトラブルが元で惨殺されています。
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初めてのタヒチ。皆期待に満ちた表情で島陰を見つめます。
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島からはタヒチ人たちが総出で熱烈歓迎。
この時MGM社に雇われたタヒチ原住民の数は2,500人に上ります。
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「バウンティ」を迎えるために彼らが漕ぎ出すカヌーは
全てハリウッドからロケ地のカタリナ島に輸送されて撮影に使われました。
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船に乗り込んできたタヒチの男にココナッツを渡され、中身を飲んで
「ミルクだ!卵を産む牛がいるのか」と言うシーンがありますが、
ご存知のように、ココナッツの中にはココナッツミルクはありません。
スタッフは誰もココナッツジュースを飲んだことがなかったようです。
おそらくこのシーンは、殻から飲むふりをしていただけでしょう。
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立派なカヌーに乗ってやってきたのはヒティヒティ(Hitihiti)
と言う首領で、キャプテン・クックがこの島を訪れたことを知る人物です。
ブライはキャプテン・クックと一緒にここにきたことがありました。
「クック船長は?」「亡くなりました」
まあ、10年前のことですから。
「クック船長が、今度はジョージ国王と来ると言ってましたが」
「あーいやー陛下は来られなくて遺憾と仰せでした」
「国王が来ないなら帽子をくれると約束した」
「あーそそそ、もちろんです、覚えてます。帽子ね」
ブライ艦長、なんかいきなりいいやつモード発動。
まあ、ここでパンノキの実をもらい、乗員の面倒を見てもらう訳ですから。
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ヒティヒティはバイアムが気に入ったらしく、
「わたしヒティヒティ、あなたテヨ(友達)、うち泊まるよろし」
「はえ〜」
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艦長は乗組員を集め、この島にいる間も任務中なので羽目を外さないこと、
パンノキの積み込みを行うこと、上陸には必ず許可を得ることを訓示します。
いや、これ、割と当たり前のことだよね。
ただ、クリスチャンに島の上陸を禁じました。
直前の司法裁判の結果を受けてのことと思われます。
これもまあ当たり前と言えば当たり前かも。
一応死刑判決下ってるわけだし。
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島民は花を編んで船を飾り、地元の食べ物を振る舞ってくれました。
島民生活の描写では、バナナの葉で蒸し焼きにした豚の姿焼きとか、
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下拵え中の豚とかがバンバン登場します。
今なら絶対アウトな画像ですね。
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島民に混じって労働をする乗組員たちが目を奪われたのは、女性。
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「バウンティ」がタヒチに滞在したのは5ヶ月でしたが、この間、
「乗組員の多くは現地の女性たちと乱交生活を送った」(wiki)とされ、
クリスチャンを含む18名が性感染症に罹患しました。
ちなみにブライはそういうことは行わない主義だったようですが、
部下の行動には比較的寛容だったそうです。
ただ、「想像を絶する放蕩の誘惑」で、任務の遂行が滞ることに対し、
失望し、激怒していたと伝えられます。
タヒチでの生活に無節操になった(とブライが考えた)ため、
クリスチャンはしばしば皆の前でブライに侮辱され、
これが二つ目の「叛乱の理由」とも言われています。
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首領の家でタヒチ語辞典の編纂を試みていたバイアムにも、
テハニという女性が近づいてきます。
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そのとき、クリスチャンが上陸してきたので、
バイアムは喜んで迎えに行きました。
ヒティヒティが艦長に頼んで彼の上陸を許可してもらったのです。
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テハニはバイアムの仕事中のペンで書きかけのノートに落書きを始めました。
犬猫が飼い主の持ち物に悪戯するような感じでしょうか。
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そこに戻ってきたバイアムが慌てて駆け寄りペンを取り上げます。
このときのセリフがひどい。
「何やってんだ、この”小さなお化粧ザル”(little powder monkey)!」
ね、すごいでしょ。ナチュラルに人間扱いしていないよね。
英語を話さない原住民というのはこいつらにとっては猿なのよ。そして、自分がちょっと船に乗っていたからといって、粋がって
「もしまた僕の船の横を通ったら、
君の小さな右舷を叩いてやるぞ、わかったか?」
などという恥ずかしいセリフを吐いています。
で、お前はこの女性の何?しかも、この男、女性が英語を全く理解しないと思ってこれ言ってるんですよ。
テハニが「イエス」というと、彼はびっくりして、
「君は僕のことを馬鹿にしてるんだな」
彼女はニコニコしながら「イエス」
「え・・・英語わかるの?わからないの?」
「彼女はイエスという言葉しか喋れないんですよ」
ね?脚本そのものが原住民をバカにしてるでしょ。
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テハニを演じているモビータという女優はメキシコ系アメリカ人で、
確かにエキゾチックな美人ではありますが、その後のキャリアでも
ほとんどが「島の娘」みたいなセリフの少ない役ばかりを演じました。
あるサイトでは、
「おそらく5分以上、ぼんやりとした、
恋に落ちた笑顔を保てるかどうかでキャスティングされた女の子」
などと書かれています。
アフリカ系アメリカ人に対しても、つい最近まで
人間扱いしていなかったアメリカで、1935年というこの当時、
原住民を猿呼ばわりするこのセリフがなんの問題にならなかったのは
当たり前と言えば当たり前なのですが、正直、実に不快です。
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そのときパウダーモンキー2号が現れました。
ヒティヒティの孫、マイミティ、本名マウアトァ、
後のイザベラ・クリスチャン、あだ名メインマスト。
フレッチャー・クリスチャンの現地妻だった実在の女性です。
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一目見るなり恋に落ちたらしいクリスチャン。
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言葉も通じない相手に・・・いや、通じないからこそなのかな。
こうしてクリスチャンとバイアム、そしてほとんどの乗員の、
ブライの言う「放蕩で快楽主義的なタヒチの日々」が始まるのでした。
タヒチに到着した「バウンティ」の乗組員にとって、
色んな意味で運命的な5ヶ月間がはじまりました。
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主人公のフレッチャー・クリスチャンとバイアム候補生は、
どちらもいい感じのタヒチ美人といい感じになります。
この二人の女性、あまりに似ていて見分けがつかないんですが、
クリスチャンの相手のマイティティを演じたのは
マモ・クラーク(Mamo Clark)というホノルル出身の女優で、
この映画がデビュー作だったそうです。
テハニを演じたモヴィータ同様、ポリネシアの王女とか、
太平洋諸島を舞台にしたB級映画に現地の女性役に需要がありました。
しかし、その後、陸軍大尉と結婚し、子供を儲けてから、
女優業を引退して大学(UCLA)で学位を取得しています。
ちなみに、モヴィータは2回目の結婚相手が、
1962年版「バウンティ」のクリスチャン役、マーロン・ブラントでした。
これはきっと、作品をネタに運命感じて盛り上がっちゃったんだろうなあ。
彼女はブラントとの間に二児を設けましたが、2年後離婚しています。
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男二人は、この地上の楽園で美しく純真な女性に知り合えたことに
すっかり舞い上がっていますが、まあ要するに「現地妻」よね。
女性ではなく「化粧した可愛い猿」と思ってることはわかってるからな。
実際の「バウンティ」乗組員がタヒチ滞在中「放蕩と快楽の日々」
を過ごしたことは前述しましたが、相手が女性だけとは限らず、
この最初のフィルムには現地の少年と乗組員のカップルが写っていました。
そのシーンはいつの間にかカットされたそうです。
今なら「LGBTQへの配慮がない」と糾弾されるかもしれません。
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そこにブライ艦長から、クリスチャンに帰還命令が出ました。
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怒りながらも一応命令には従うクリスチャン。
出発前に彼らは初めて結ばれます。
実際にはこんなロマンチックなものでは決してなかったと思いますが、
やはりクラーク・ゲーブルにあまり変なことはさせられないですよね。
ちなみに二人は互いの言語を全く理解しておらず、クリスチャンは
マイティティを故郷の元カノの「イザベラ」という名で呼んでいました。どこまでも傲慢で無神経な白人様ですこと。
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まあでもこういう関係に言葉はいらない・・ということだったんでしょう。小舟に乗り遅れて泳いで船に戻るクリスチャンを追いかけてきて
海上で別れを惜しむマイティティでした。
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「バウンティ」には目標通り大量のパンノキの苗が積み込まれました。
ブライ艦長と話をしているのは、実際の「バウンティ」にも乗っていた
民間の植物学者デビッド・ネルソンです。(役ではモーガンとなっている)
このほかにも、植物の世話のために彼の補佐である庭師が乗っていました。
ネルソンが、西インド諸島に運ぶまでこの植物を枯らせないためには
積載量以上の水が必要だと言うと、ブライが提案した解決策は
「それでは乗組員のための水を制限しよう」
いやいや、それはまずいでしょう。
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島で取得してきたものを没収された乗員の間には不満が溜まっていきます。
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架空の人物バイアム候補生ですが、こちらは自分が帰国することを踏まえ、
女性には手を出さなかったという設定です。(実際は出していました)
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ヒティヒティは、バイアムに島に残って息子になれ(つまり娘の婿になれ)
とまでいうのですが、彼は申し出をきっぱり断りました。
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去っていく彼を見送りながら涙するテハニ。
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しかしクリスチャンはそうではありませんでした。
彼はすっかりまた戻ってくるつもりだったので、彼女から贈られた現地のパールを受け取り、バイアムに
自分が帰ってくることを通訳させます。
常識人のバイアムはそれに対し、
「この島は僕たちにとって現実ではありません。
帰国する船こそが現実なんですよ」
とど正論で忠告しますが、彼は取り合いません。
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この3人は島を離れたくなくて脱走したものの、捕まって連れ戻されました。
これは「バウンティ」の史実通りで、左のマスプラット始め3名が
小型ボート、武器、弾薬を持って脱走したというものです。
従前から、アシスタントコックのウィリアム・マスプラットは、
怠慢を理由に鞭打ち刑を受けていたこともあり、逃げたかったのでしょう。
彼らの逃走期間は3週間、連れ戻され鞭打ちに処されています。
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出航すると、ブライは総員を集めて、ココナッツが10個紛失した件で
クリスチャンが犯人ではないかと問い詰め始めました。
「クリスチャンの気分は、ブライが船長の私的備蓄から
ココナッツを盗んだと非難したときにさらに悪化した。
ブライは乗組員全員を罰し、ラム酒の配給を止め、食料を半分に減らした」
(wiki)
クリスチャンはこの件で「バウンティ」の生活が我慢ができなくなり、
筏を作って島に逃げることを検討し始めたそうです。
しかもブライはマイティティが彼に真珠を贈ったという報告を受け、
この島から得られるものは全て国王に所有権があるものだと主張し、
ココナッツだけでなく真珠も窃盗した、と彼を責め始めました。
クリスチャンはそれならこんなものいらん、と真珠をブライに渡します。
甲板では続いて、脱走した者への懲罰が始まろうとしていましたが、
船医のバッカスが来ていないことにブライは気がつきます。
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「わしゃー高齢な上に重病でね」
と迎えに来たバイアムに情けなく呟く船医。
というか、高齢なのに遠洋航海に着いてきて浴びるように飲酒していたら
こうなるのが当然で、全く同情できかねるんですが。
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連れ戻しに行ったはずが安静を指示したというバイアムに、艦長は、
「私の船に規律を乱すような老耄の酔っ払いはいらん」
実際のブライは、だらしない外科医のハガンにキレており、
彼の不潔で怠惰な生活態度は最大の悪影響を及ぼすとまで言っていました。
診断ミスで乗員を死なせ、自分の間違いを隠す報告をしていたわけですから
船医としての信頼はとっくに失われていたことは間違いありません。
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彼を甲板に来させることで艦長とクリスチャンらが揉めていると、
ふらふらになった船医が部屋から這い出すようにやってきました。
しかしマスプラットへの鞭打ちが始まると、船医はその場に倒れ込み、
クリスチャンの腕の中で死んでしまいます。
実際に船医が死亡したのはタヒチに到着して1ヶ月半後のことでした。
これをブライは、「無節制と怠惰の結果」と厳しく断じています。
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しかしこの映画では、クリスチャンがここぞとブライを責めまくり。
「全員が証人だ、あんたが殺した」
とまで言ってますが、どう考えても原因は本人にあるんだなあ。
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乗組員の中には、思わず武器になるようなものに手を掛ける者がでますが、
ブライのひと睨みで引き下がります。
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船医の遺体を部屋に安置しながら、植物学者は、
確かに彼は酒飲みだったが、優しくて皆彼を愛していた、
船乗りに必要なのは規律だけじゃないんだが、と嘆きます。
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そして何事かを決心したらしいクリスチャンは、バイアムに、
もし君だけがイギリスに帰ったら、自分の実家を訪ねてほしいと頼みます。
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鞭打ちが延期になったマスプラットが地下に鎖で繋がれていると、
彼がサメで殴った下士官がやってきて、諍いが始まりました。
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拘束されたまま虐待されている彼らを見てついにクリスチャンブチギレ。
「ブライ、貴様にこの船の指揮はもう執らせない!
立ち上がってまた男になってやる!」
最後のセリフは"We'll be men again, if we hang for it."で、
「絞首刑になっても構わん、今立ち上がるぞ」と翻訳されています。
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クリスチャンの呼びかけに興奮して応える乗組員たち。
早速手の空いた者は武器を手に取り始めます。
叛乱が起こりつつありました。
続く。
政府の命令を担った「バウンティ」は、苦難の航海の末、
ついにタヒチに到着します。
ちなみにブライ艦長の技量は卓越していて、タヒチには過去二度、
当時英国海軍航海長であったジェームズ・クックとともに訪れています。
ブライはクックから航海術を学ぶ弟子であり、
ブライとフレッチャー・クリスチャンは同じ師弟関係にありました。
クックはハワイ先住民との間のトラブルが元で惨殺されています。

初めてのタヒチ。皆期待に満ちた表情で島陰を見つめます。

島からはタヒチ人たちが総出で熱烈歓迎。
この時MGM社に雇われたタヒチ原住民の数は2,500人に上ります。

「バウンティ」を迎えるために彼らが漕ぎ出すカヌーは
全てハリウッドからロケ地のカタリナ島に輸送されて撮影に使われました。

船に乗り込んできたタヒチの男にココナッツを渡され、中身を飲んで
「ミルクだ!卵を産む牛がいるのか」と言うシーンがありますが、
ご存知のように、ココナッツの中にはココナッツミルクはありません。
スタッフは誰もココナッツジュースを飲んだことがなかったようです。
おそらくこのシーンは、殻から飲むふりをしていただけでしょう。

立派なカヌーに乗ってやってきたのはヒティヒティ(Hitihiti)
と言う首領で、キャプテン・クックがこの島を訪れたことを知る人物です。
ブライはキャプテン・クックと一緒にここにきたことがありました。
「クック船長は?」「亡くなりました」
まあ、10年前のことですから。
「クック船長が、今度はジョージ国王と来ると言ってましたが」
「あーいやー陛下は来られなくて遺憾と仰せでした」
「国王が来ないなら帽子をくれると約束した」
「あーそそそ、もちろんです、覚えてます。帽子ね」
ブライ艦長、なんかいきなりいいやつモード発動。
まあ、ここでパンノキの実をもらい、乗員の面倒を見てもらう訳ですから。

ヒティヒティはバイアムが気に入ったらしく、
「わたしヒティヒティ、あなたテヨ(友達)、うち泊まるよろし」
「はえ〜」

艦長は乗組員を集め、この島にいる間も任務中なので羽目を外さないこと、
パンノキの積み込みを行うこと、上陸には必ず許可を得ることを訓示します。
いや、これ、割と当たり前のことだよね。
ただ、クリスチャンに島の上陸を禁じました。
直前の司法裁判の結果を受けてのことと思われます。
これもまあ当たり前と言えば当たり前かも。
一応死刑判決下ってるわけだし。

島民は花を編んで船を飾り、地元の食べ物を振る舞ってくれました。
島民生活の描写では、バナナの葉で蒸し焼きにした豚の姿焼きとか、

下拵え中の豚とかがバンバン登場します。
今なら絶対アウトな画像ですね。


島民に混じって労働をする乗組員たちが目を奪われたのは、女性。

「バウンティ」がタヒチに滞在したのは5ヶ月でしたが、この間、
「乗組員の多くは現地の女性たちと乱交生活を送った」(wiki)とされ、
クリスチャンを含む18名が性感染症に罹患しました。
ちなみにブライはそういうことは行わない主義だったようですが、
部下の行動には比較的寛容だったそうです。
ただ、「想像を絶する放蕩の誘惑」で、任務の遂行が滞ることに対し、
失望し、激怒していたと伝えられます。
タヒチでの生活に無節操になった(とブライが考えた)ため、
クリスチャンはしばしば皆の前でブライに侮辱され、
これが二つ目の「叛乱の理由」とも言われています。

首領の家でタヒチ語辞典の編纂を試みていたバイアムにも、
テハニという女性が近づいてきます。

そのとき、クリスチャンが上陸してきたので、
バイアムは喜んで迎えに行きました。
ヒティヒティが艦長に頼んで彼の上陸を許可してもらったのです。

テハニはバイアムの仕事中のペンで書きかけのノートに落書きを始めました。
犬猫が飼い主の持ち物に悪戯するような感じでしょうか。

そこに戻ってきたバイアムが慌てて駆け寄りペンを取り上げます。
このときのセリフがひどい。
「何やってんだ、この”小さなお化粧ザル”(little powder monkey)!」
ね、すごいでしょ。ナチュラルに人間扱いしていないよね。
英語を話さない原住民というのはこいつらにとっては猿なのよ。そして、自分がちょっと船に乗っていたからといって、粋がって
「もしまた僕の船の横を通ったら、
君の小さな右舷を叩いてやるぞ、わかったか?」
などという恥ずかしいセリフを吐いています。
で、お前はこの女性の何?しかも、この男、女性が英語を全く理解しないと思ってこれ言ってるんですよ。
テハニが「イエス」というと、彼はびっくりして、
「君は僕のことを馬鹿にしてるんだな」
彼女はニコニコしながら「イエス」
「え・・・英語わかるの?わからないの?」
「彼女はイエスという言葉しか喋れないんですよ」
ね?脚本そのものが原住民をバカにしてるでしょ。

テハニを演じているモビータという女優はメキシコ系アメリカ人で、
確かにエキゾチックな美人ではありますが、その後のキャリアでも
ほとんどが「島の娘」みたいなセリフの少ない役ばかりを演じました。
あるサイトでは、
「おそらく5分以上、ぼんやりとした、
恋に落ちた笑顔を保てるかどうかでキャスティングされた女の子」
などと書かれています。
アフリカ系アメリカ人に対しても、つい最近まで
人間扱いしていなかったアメリカで、1935年というこの当時、
原住民を猿呼ばわりするこのセリフがなんの問題にならなかったのは
当たり前と言えば当たり前なのですが、正直、実に不快です。

そのときパウダーモンキー2号が現れました。
ヒティヒティの孫、マイミティ、本名マウアトァ、
後のイザベラ・クリスチャン、あだ名メインマスト。
フレッチャー・クリスチャンの現地妻だった実在の女性です。

一目見るなり恋に落ちたらしいクリスチャン。

言葉も通じない相手に・・・いや、通じないからこそなのかな。
こうしてクリスチャンとバイアム、そしてほとんどの乗員の、
ブライの言う「放蕩で快楽主義的なタヒチの日々」が始まるのでした。
タヒチに到着した「バウンティ」の乗組員にとって、
色んな意味で運命的な5ヶ月間がはじまりました。

主人公のフレッチャー・クリスチャンとバイアム候補生は、
どちらもいい感じのタヒチ美人といい感じになります。
この二人の女性、あまりに似ていて見分けがつかないんですが、
クリスチャンの相手のマイティティを演じたのは
マモ・クラーク(Mamo Clark)というホノルル出身の女優で、
この映画がデビュー作だったそうです。
テハニを演じたモヴィータ同様、ポリネシアの王女とか、
太平洋諸島を舞台にしたB級映画に現地の女性役に需要がありました。
しかし、その後、陸軍大尉と結婚し、子供を儲けてから、
女優業を引退して大学(UCLA)で学位を取得しています。
ちなみに、モヴィータは2回目の結婚相手が、
1962年版「バウンティ」のクリスチャン役、マーロン・ブラントでした。
これはきっと、作品をネタに運命感じて盛り上がっちゃったんだろうなあ。
彼女はブラントとの間に二児を設けましたが、2年後離婚しています。

男二人は、この地上の楽園で美しく純真な女性に知り合えたことに
すっかり舞い上がっていますが、まあ要するに「現地妻」よね。
女性ではなく「化粧した可愛い猿」と思ってることはわかってるからな。
実際の「バウンティ」乗組員がタヒチ滞在中「放蕩と快楽の日々」
を過ごしたことは前述しましたが、相手が女性だけとは限らず、
この最初のフィルムには現地の少年と乗組員のカップルが写っていました。
そのシーンはいつの間にかカットされたそうです。
今なら「LGBTQへの配慮がない」と糾弾されるかもしれません。

そこにブライ艦長から、クリスチャンに帰還命令が出ました。

怒りながらも一応命令には従うクリスチャン。
出発前に彼らは初めて結ばれます。
実際にはこんなロマンチックなものでは決してなかったと思いますが、
やはりクラーク・ゲーブルにあまり変なことはさせられないですよね。
ちなみに二人は互いの言語を全く理解しておらず、クリスチャンは
マイティティを故郷の元カノの「イザベラ」という名で呼んでいました。どこまでも傲慢で無神経な白人様ですこと。

まあでもこういう関係に言葉はいらない・・ということだったんでしょう。小舟に乗り遅れて泳いで船に戻るクリスチャンを追いかけてきて
海上で別れを惜しむマイティティでした。

「バウンティ」には目標通り大量のパンノキの苗が積み込まれました。
ブライ艦長と話をしているのは、実際の「バウンティ」にも乗っていた
民間の植物学者デビッド・ネルソンです。(役ではモーガンとなっている)
このほかにも、植物の世話のために彼の補佐である庭師が乗っていました。
ネルソンが、西インド諸島に運ぶまでこの植物を枯らせないためには
積載量以上の水が必要だと言うと、ブライが提案した解決策は
「それでは乗組員のための水を制限しよう」
いやいや、それはまずいでしょう。

島で取得してきたものを没収された乗員の間には不満が溜まっていきます。

架空の人物バイアム候補生ですが、こちらは自分が帰国することを踏まえ、
女性には手を出さなかったという設定です。(実際は出していました)

ヒティヒティは、バイアムに島に残って息子になれ(つまり娘の婿になれ)
とまでいうのですが、彼は申し出をきっぱり断りました。

去っていく彼を見送りながら涙するテハニ。

しかしクリスチャンはそうではありませんでした。
彼はすっかりまた戻ってくるつもりだったので、彼女から贈られた現地のパールを受け取り、バイアムに
自分が帰ってくることを通訳させます。
常識人のバイアムはそれに対し、
「この島は僕たちにとって現実ではありません。
帰国する船こそが現実なんですよ」
とど正論で忠告しますが、彼は取り合いません。

この3人は島を離れたくなくて脱走したものの、捕まって連れ戻されました。
これは「バウンティ」の史実通りで、左のマスプラット始め3名が
小型ボート、武器、弾薬を持って脱走したというものです。
従前から、アシスタントコックのウィリアム・マスプラットは、
怠慢を理由に鞭打ち刑を受けていたこともあり、逃げたかったのでしょう。
彼らの逃走期間は3週間、連れ戻され鞭打ちに処されています。

出航すると、ブライは総員を集めて、ココナッツが10個紛失した件で
クリスチャンが犯人ではないかと問い詰め始めました。
「クリスチャンの気分は、ブライが船長の私的備蓄から
ココナッツを盗んだと非難したときにさらに悪化した。
ブライは乗組員全員を罰し、ラム酒の配給を止め、食料を半分に減らした」
(wiki)
クリスチャンはこの件で「バウンティ」の生活が我慢ができなくなり、
筏を作って島に逃げることを検討し始めたそうです。
しかもブライはマイティティが彼に真珠を贈ったという報告を受け、
この島から得られるものは全て国王に所有権があるものだと主張し、
ココナッツだけでなく真珠も窃盗した、と彼を責め始めました。
クリスチャンはそれならこんなものいらん、と真珠をブライに渡します。
甲板では続いて、脱走した者への懲罰が始まろうとしていましたが、
船医のバッカスが来ていないことにブライは気がつきます。

「わしゃー高齢な上に重病でね」
と迎えに来たバイアムに情けなく呟く船医。
というか、高齢なのに遠洋航海に着いてきて浴びるように飲酒していたら
こうなるのが当然で、全く同情できかねるんですが。

連れ戻しに行ったはずが安静を指示したというバイアムに、艦長は、
「私の船に規律を乱すような老耄の酔っ払いはいらん」
実際のブライは、だらしない外科医のハガンにキレており、
彼の不潔で怠惰な生活態度は最大の悪影響を及ぼすとまで言っていました。
診断ミスで乗員を死なせ、自分の間違いを隠す報告をしていたわけですから
船医としての信頼はとっくに失われていたことは間違いありません。

彼を甲板に来させることで艦長とクリスチャンらが揉めていると、
ふらふらになった船医が部屋から這い出すようにやってきました。
しかしマスプラットへの鞭打ちが始まると、船医はその場に倒れ込み、
クリスチャンの腕の中で死んでしまいます。
実際に船医が死亡したのはタヒチに到着して1ヶ月半後のことでした。
これをブライは、「無節制と怠惰の結果」と厳しく断じています。

しかしこの映画では、クリスチャンがここぞとブライを責めまくり。
「全員が証人だ、あんたが殺した」
とまで言ってますが、どう考えても原因は本人にあるんだなあ。


乗組員の中には、思わず武器になるようなものに手を掛ける者がでますが、
ブライのひと睨みで引き下がります。

船医の遺体を部屋に安置しながら、植物学者は、
確かに彼は酒飲みだったが、優しくて皆彼を愛していた、
船乗りに必要なのは規律だけじゃないんだが、と嘆きます。

そして何事かを決心したらしいクリスチャンは、バイアムに、
もし君だけがイギリスに帰ったら、自分の実家を訪ねてほしいと頼みます。

鞭打ちが延期になったマスプラットが地下に鎖で繋がれていると、
彼がサメで殴った下士官がやってきて、諍いが始まりました。

拘束されたまま虐待されている彼らを見てついにクリスチャンブチギレ。
「ブライ、貴様にこの船の指揮はもう執らせない!
立ち上がってまた男になってやる!」
最後のセリフは"We'll be men again, if we hang for it."で、
「絞首刑になっても構わん、今立ち上がるぞ」と翻訳されています。


クリスチャンの呼びかけに興奮して応える乗組員たち。
早速手の空いた者は武器を手に取り始めます。
叛乱が起こりつつありました。
続く。