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空挺レンジャー〜レンジャー基礎訓練「障害走検定試験」

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さて、空挺レンジャー訓練、まだまだ続いております。



普通の自衛隊員でもそのタフさにおいて「あれは特別」と言い切るほどのレンジャー隊員。
元々そういう素質があり、志願してやってきた屈強の若者たちですが、
さすがの彼らもそのキツさには苦しさを隠せぬ表情。



しかしああ無情にもそんな彼らに向かって司令官の厳しいお言葉。

「まだまだ山に入ったらこんなもんじゃないからな!
こんなもんではどうしようもない!
何が世界一の空挺レンジャーだ馬鹿たれこの!
甘えんな!」

はい、馬鹿たれ呼ばわり入りました〜。
司令官が言う「山に入る」とは、この訓練に耐えた者が行う
山中での「最終訓練」のことです。

やっぱりこういうのを見ても空自や海自とは違うなあと・・。
空自海自でも馬鹿たれ呼ばわり、場合によってはあるのかもしれませんけど、
司令官はあまりこういう風に言わないような気がしますね。


空挺レンジャー過程も昔ほどは厳しくなくなった、という話があります。
あまりの厳しいしごきに、過去死者が出たりしたこともあったため、
上からの御指導ご鞭撻が入り、かなり緩和されたものになっているとか。

浅田次郎の「歩兵の本領」を読んで、現在の陸自隊員が

「昭和の自衛隊って、怖い〜」

と感想を述べていましたが、全体的に「人権意識」が隈無く行き渡り、
さらには自衛隊の方も「大事な子弟をお預かりする」という立場から
あまり無茶なことはできなくなってきたということかもしれません。

とはいえ、このようなしごきは昔から陸自専門というわけではなく、
海自の航空でもう退官した方が、まだ若い訓練生の頃は、
まだ旧軍出身の自衛官が生き残っていたため、

「とにかくばんばん殴られた」

と言っていたのを聞いたことがあります。
操縦訓練中に教官に顔を殴られ、飛行機を降りたら
皆がモーゼの十戒のようにさーっと道をあけるので不思議に思い、
鏡を見たら顔からマフラーから皆血まみれだった、みたいな。

まず自分が鼻血を出しているという自覚もないってのはいかがなものか、
とそれを聞いてわたしは思ったものですが。



ちなみにこの馬鹿たれ呼ばわり司令官が何がいいたかったかかちうと、

「もう少し自分で体を鍛えろ」

なんだそうです。
いや、そのですね。
それを鍛えるために今これをやっているんではないのかと。



だって、彼らはほとんど休みなくこの期間レンジャーになるための
基礎訓練を行なっているわけですから。
だいたい「自分で体を鍛える」時間がどこにあるのかと。

この不条理ぶりはやはり体育会系っぽい?



いつもの匍匐前進も雨上がりの後ともなると泥濘んで、
まるで絵に描いたようなTHE・レンジャー訓練。
カメラ的にはこれ「美味しい絵」ってことなんだと思います。




降下の際の飛び出し姿勢を訓練してます。
パレンバンのために速成された陸軍挺進部隊のドキュメンタリー、
「空の神兵」でも、この「飛び出し姿勢」は大変重要なものとして
繰り返し訓練していました。

「立派な姿勢で飛び出そう」

明日は降下という日、訓練生が日記に綴った文句が思い出されます。

ところで冒頭の漫画なのですが、これは実は「空挺館」に展示されていました。
第一空挺団に入ってしまった「普通の男の子」が、その最初の降下に際し、
傘の開かない確率30万分の1に恐れおののくというリアルな描写。

これは実際に体験した者にしか分からない感覚だろうなあと思いますが。
「ライジング・サン」の作者は元陸自隊員であったそうですが、
この作者ももしかして・・・。

この掲示の前では必ず人が立ち止まって真剣に見ていました。
せっかくですので全コマここに掲載します。























ここまでです。
因みに「今なら—」の後のコマは、板垣隊員が大谷1曹に土下座して

「許して下さい降下長ッッ降りれませんッッ」
「ハハハ怖いもんなあ、ヨシッ帰ろう!」

ンなことあるわけないじゃん、となっています。
レンジャー過程とはおそらくこの板垣隊員の場合は違い、
「人生最初の降下」なのでしょう。

このような思いをしてこの後レンジャーに成ろうとする頃は
おそらく降下の恐怖などこのころに比べれば「無いに等しい」ものに
なってしまっているのかもしれません。



ところで、レンジャー訓練期間中、訓練生は何を言われても
返事は「レンジャー!」と言うことになっています。



使用した銃を助教に返すとき、いろいろ言われていますが、

「もっと練習しろぉ」
「レンジャーッ!」
「そんなもんついていけないぞ山入ったら」
「レンジャッ」
「丸々(銃のどこか)が詰まっとる」
「れんじゃっ」

こんな会話です。
何を言われてもレンジャーしか答えられないのなら

「やる気があるのか!」「レンジャー!」
「ないのか!」「レンジャー!」
「どっちなんだ!」「レンジャー!」

みたいな会話になってしまうのか・・・。

うーん、やっぱり不条理である。



訓練終了後銃点検。
銃も泥だらけだけど、本人はまるで泥人形。
全員が「何とか良しどこそこ良し」と声を出しつつ点検です。



桜が満開の習志野基地を、銃を掲げたままマラソン。
89式は重さ3・5キロだそうですが、それを腕を延ばして捧げ持つのは
普通の人間なら数分でギブアップしてしまうでしょう。
重みに耐えかね、銃が頭の後ろに落ちてしまう隊員も。

その点、こういうとき隊旗を持って走る隊員はちょっと楽かもしれません。
腕を大きく広げることができますから。
ただし、この旗竿にはわざわざ鉄が仕込まれているそうで。
(ライジング・サン第4巻の情報による)

どちらにしても常に「銃を携行して走る」というのが大変なんですよね。



あれ、この景色、見覚えがあるぞ。
第一空挺団の降下始めのとき、開門まで外で待っていた人たちが
荷物検査を終えるなり観覧場所に向かって一目散に走っていくのですが、
それがちょうどこの道だったような・・・・。

あのときは空挺団の降下訓練をみるために皆ここを一目散に走っていましたが、
そうか、この道は普段その空挺団が訓練で走る道だったんだ・・・。



基礎訓練の総仕上げとして、この障害走の検定試験があります。
障害コースを15周、55分以内に走破しなければ、後半の
房総半島山中で行なわれる想定訓練に参加する資格が得られません。



助教たちはポイントに机を置いて立ち、通過する者の名をチェック。
因みに、張り出してあったこれまでの記録保持者の一位は
36分という記録を持っていました。
・・・・・・化け物?






障害は塀乗り越え、ロープ登り、丸木渡り、匍匐前進、ネット越え、
クリーク越えなどなど。
それを相変わらず銃を背負ったまま行なうのです。
匍匐前進のときには銃を両手に持つのがお約束。



皆日頃の訓練よりも力を出し切りますから、終わった後はこんなことに。



こんな思いを共有すればきっと男同士の固い絆が生まれ、
必要以上に仲良くなってしまうとか・・・それはないかな。\(//∇//)\

突如こんな話ですみません。
こんな第一空挺団の事件を報じる新聞記事をみつけてしまったもので。

「スキンシップ」で部下の体触る 
男性隊員を停職処分 陸自第1空挺団 
2011.9.9 19:28 [自衛隊] 

陸上自衛隊第1空挺団(千葉県船橋市)は9日、
部下の男性隊員の体に触るなどし、 精神的苦痛を与えたとして、
同団所属の男性1等陸尉(32)を停職25日の懲戒処分とした。 
同空挺団の聴取に対し、1等陸尉は
「特別な感情はなく、スキンシップだった」と話しているという。 
同団によると、1等陸尉は7月31日深夜、
自宅官舎で被害隊員と2人で酒を飲んだ後、
被害隊員の意志に反して体を触るなどした。 
被害隊員が1等陸尉の上司に相談し、発覚した。

これ・・・・普通の会社員なら記事にされてませんよね・・・。



自衛隊というのも社会の縮図。
何万人もいるんですからそりゃ色んな趣味の人がいましょうし、
社会に生息するのと同じパーセンテージで存在するでしょう。

今回「神話」を検索していてどうしてもこの手の話が出て来るので、
その理由を考えてみたのですが、

「厳しい訓練に耐えると云う体験の共有」
「男ばかりの集団生活」
「皆肉体派」
「バディという緊密なシステム」

こういったエレメンツのため、世間のイメージはどうしても
そのようなものになってしまうのかと思ってしまった次第です。

実際は知りません。


(続く)

 


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