もうすぐ帰国なので今年アップル本社のストアに行ってきました。
気のせいか去年、一昨年よりも観光客が増えている気がします。
スティーブジョブズの像でも出来ているかと思いましたが
外には何も代わりはありませんでした。
ここの住所はインフィニティ1といいます。
ここに立って写真を撮るためにわざわざ造られたモニュメント。
ですが、今回は誰もやっていませんでした。
アップルとしても物見遊山の客のためにわざわざ
サービスしようと言う気はそこまでないらしく、
この直営ストアは平日の6時までしか営業していません。
こういうロゴも、社内で考えたものを製品化して
背中にリンゴを付けて売っていますが、
アップルの巧いところは、このロゴグッズを
ここでしか売らない
ということです。
ここで売っているTシャツ、マグカップ、ペン、などのロゴグッズを
中国で大量生産させ、世界中のアップルストアに置いたなら
さぞかし売れると思うのですが、アップルに取ってこの物販は
あくまでも「わざわざここに来たという記念」にしてもらうためで、
それによって儲けようとかは全く考えていないのでしょう。
この三枚は息子のために買った「今年バージョン」ですが、
真ん中のシャツには
I left my heart Cupatino.
と書いてあります。
クパチーノに来た、という記念ですね。
ついでに残りの二つは
"Siri, remind me not to wash this with whites."
「Siri、これを白い物と一緒に洗わないように思い出させてね」
"Degined by Apple in California"
以前のに比べるとTシャツの文句がいい加減になった気がします(笑)
パソコン用のバックパックを息子の学校用に購入。
色がかっこいいので喜んでいました。
夏の間ここロスアルトスで過ごすようになって三度目になります。
最初の夏、ここにアップルやグーグルの本社があると知ったときには
わざわざそれを見に行ったわけですが、この2社に限らず世界中が知っている会社
(Facebookとかオラクルとかebayとかインテルとかヒューレットパッカードとか)
が探さずとも目につき、
あらためてここがシリコンバレーであることを実感している毎日です。
シリコンバレー、と言う言葉は良くお聞きになると思いますが、
具体的に何処を指すかというというと、サンフランシスコから
約1時間南下した、サウスベイといわれる地域のこと。
スタンフォード大学がテクノロジーのコミュニティの中心を担っています。
なぜここにシリコンバレーが生まれたかは明らかではありません。
スタンフォード大学があるという理由だけでは、他の工学系大学、
たとえばMITとかカルテックとかの周りになぜそういう現象がないのか
を説明できないからです。
しかしわたしはここで3度の夏を過ごしてみて、その理由はまず間違いなく
この地の「気候」と「自然」であると断言します。
起業家に取って、実はその気分ややる気を左右する気候は
非常に重要な条件です。
たとえば年間降雨量が多く日照時間が短いシアトルには
鬱病者や自殺者、異常犯罪が多いという不名誉なイメージがあります。
それとは全く逆に、決して雨が降らず、一日中たっぷりと日がさし、
しかし日陰に入ればひんやりと冷たくて夜は火が必要、というような
メリハリのある気候は、多くの人々に好まれます。
何と言っても朝一番、お日様が出て空が晴れているかどうかは、
起業家たちに取って何より精神を高揚させやる気を生む
重要なファクターだからではないでしょうか。
一言で言うと、「身体にも頭脳にも快適な環境」なのです。
しかも、最先端の研究所を持ちながら豊かな自然に囲まれ、
少し、どころか隣のブロックに野生動物のある地域があったりします。
グーグルの庭にヤギがいると話題になったことがありますが、
この辺の動物たちがどんな環境で生息しているかを知れば
そんなことは何の不思議もありません。
そして、そんな地域に住む人たちにもある傾向があるようです。
先日ロスアンジェルス近郊のラグーナに住む友人とここで会ったのですが、
一緒にレストランなどに入ってそこに集う面々を見るなり
「やっぱりこの辺の人たちって独特の雰囲気があるわ」
良く言えば知的、洗練されている、余裕があるように見える、
悪く言えばお高く止まっている、スノッブ、よそよそしい・・。
田舎者をあからさまに馬鹿にするような空気もあるかもしれません。
スタンフォード大学周辺、特に今いるロスアルトスなどは
地価がそこだけ異常な高さであるというだけあって、
目を見張るような豪邸が行けども行けども軒を連ねています。
(この比喩はこの状況に全く適切ではありませんが)
全部が開IT企業関係ではないでしょうが、いずれにせよ
収入もアメリカ人の平均を遥かに超える人々ばかりが
この辺りに居を構えている感があります。
さて、去年、今泊まっているホテルの近くの、
高級外車専用ディーラーがリニューアル工事をしていたのですが、
今年行ったら新しいディーラーが出来ていました。
「てすら・・・・・?」
そのまま読んではて、と首を傾げたわたしに息子が
「ニコラ・テスラだよ」
「誰だっけそれ」
すると息子は信じられないといった調子で
「えっ!知らないのニコラ・テスラ」
「知らん」
「発明家だよ。交流電流やラジオを発明した」
「電気の発明ならエジソンしか知らないな」
さらにそれを聞いた息子はいきなり気色ばんで
「エジソンはね!テスラの発明に負けたんだよ。
で、テスラの実験結果の評判を落とすために電流で動物を殺したり」
わかったわかった。ちゃんと調べるよ。
「ていうかテスラを知らないなんて・・」
散々自分がお腹を痛めて生んだ子に呆れられてしまいましたが、
こちとら発明王エジソンの伝記を小さいときには読み、さらには
「天才は99%の努力と1%の霊感である」
なんて名言をちょっと感心したりして育った世代なんですから。
というか、どうして昔はエジソンだけが有名だったんでしょうか。
今でもエジソンの伝記が子供たちに読まれていたりするの?
なぜ、テスラの名前が全然そこに出て来ないの?
ついでですから寄り道になりますが調べたことを説明しておきますと、
ニコラ・テスラはすでに発明家として成功していたエジソンの会社に
技術者として加わり、そこで交流電流を発明し、
それを認めようとしないエジソンとの間に確執があったといわれます。
直流システムだったエジソンの工場を交流電流で動かせたら、
報償を5万ドル払う、とエジソンはテスラに約束したのに
それを成功させた後もエジソンは自分の負けを認めたくないがために報償を
冗談ですませたのが齟齬のきっかけとなりました。
エジソンは確かに実績のある発明家でしたが、
少なくともテスラともう一人の技術者、ウェスティングハウスとの間に
起こったこの「電流戦争」では結果的に完璧に敗北しています。
しかも、自分の主張のため、息子の言うところの(笑)
動物を電流で殺して「交流電流は危険である」という宣伝をやったりしました。
中でも評判が悪かったのが、象の「トプシー」を電気で殺した実験です。
ニュース映像(残酷なので閲覧には注意が必要です)
トプシーは飼育員を踏み殺してしまったかどで薬殺される予定でした。
エジソンはウェスティングハウスとテスラの足を引っ張る
ネガティブキャンペーン目的で、処刑に電気を使うことを提案し、
そのための実験と称して動物を殺処分していました。
トプシーの処刑もその一環です。
今なら愛護団体が黙っていないところですね。
というか、当時は今とは「命」の意味がだいぶ違っていたということでしょう。
しかしエジソンのネガティブキャンペーンは裏目に出ました。
エジソンは「交流は怖い」というイメージを人々に刷り込もうとしたのですが、
人々にはただ
「電気での処刑という残虐行為を首謀した恐ろしい人物はエジソンだ」
というイメージが植え付けられ、それは彼自身の評判を
著しく落とすという結果になります。
人を呪わば穴二つ。ってこういうときにいうんでしょうかね。
さて、エジソンの黒い話はともかく(笑)。
テスラという名称はこの、先見の明が有り交流誘導電動機や多相交流の
送電システムを考案・設計した発明家に敬意を表してその名にちなんだものです。
テスラの発明は、はるか遠方から安定した電力を送配電し提供することを
可能としました。
気がつけば街で遭遇する確立が去年と段違いです。
というか、去年もいたんでしょうけど、わたしが気づかなかったのかも。
Tのロゴといい、このスタイリングといい、実にかっこいい。
新し物好きのシリコンバレーの人々が飛びつくのもわかります。
ところで、ここは場面変わって再びアップルの駐車場。
去年まではこんなことはなかったのですが、あまりにも昨今
「アップル詣で」の客が増えたため、アップル側は駐車場の
係員を雇い、このような二重駐車をさせることにしたようです。
大阪は北新地の名物二重駐車をカリフォルニアで見ようとは。
それはともかく、アメリカの駐車場は大抵が無料ですが、
車いす用の優先区画と並んで「電気自動車充電用」が
どこの施設にも必ず最もいい場所に備え付けられるようになりました。
どちらかというと東海岸より西の方が変革は速いようです。
どこでも必ず充電中の車が停まっていて、アメリカには
こんなに電気で走る自動車が多いものかと感心しているのですが、
(今日はニッサンを見ました)このとき、
ここの駐車場に冒頭の白とこの赤のテスラが充電中であるのを見て、
テスラが電気自動車であることを初めて知りました。
そのことを息子に言うと
「ああ、それでテスラなのか・・・」
と感動の面持ち。
テスラモータースは、まさに今いるカリフォルニア州パロアルトに本社を持ち、
PayPalの共同創立者、Googleの共同創立者、ebayの社長などの
そうそうたるここシリコンバレーの起業家たちの協賛を受け、
さらにはかつてニコラ・テスラに出資した歴史を持つJPモルガンの
管理を受けて出発したバッテリー式電気自動車販売会社です。
テスラの燃費はプリウスの2倍で、1回の充電にかかるのは500円。
それでおよそ370kmの走行が可能です。
しかも必要なメンテナンスは極めて少なくオイル交換は不要。
またブレーキのメンテナンスは回生制動によりこれも少しでOK。
ミッションオイル、ブレーキフルード、および冷却水の交換は、
ガソリン車でないため不要、という夢のような車なのです。
写真を見てもお分かりかと思いますが、電気自動車なのに大きさは
殆どBMWやレクサス並で、高級感もあります。
おそらく静謐性に優れ、乗り心地もいいと思われます。
お洒落で高級感があってしかも先端技術。
今までメルセデスやBMW、レクサスに乗っていたシリコンバレーの人々が
次々とこの車に乗り換えているように見えるのも、
テスラの何たるかを知って見れば合点が行きます。
「次の車はテスラにしよう!」
早速そのコンセプトに感銘を受けた息子がその気になっていました。
「アメリカに住んでるならね・・・」
そう、日本にも輸入されて入るようですが、今のところまだまだ超のつく高級車。
しかも、インフラが少ないため、アメリカのようにどこででも
駐車場には専用スペースがあるような社会になりでもしない限り、
わざわざ乗ろうという物好きはいないと思われます。
今のところ希望は、トヨタがテスラと業務ならびに資本提携に合意し、
共同開発のモデルを制作するという話が進んでいることです。
日本人もこういうことにかけてはシリコンバレーの人々のような
「いい物好き」「新し物好き」なところがありますから、
何年かしたら街を電気自動車が走り回っている光景が見られるかもしれません。
わたしは車を買い替えたばかりなのですが、
次の買い替えのころには日本でテスラが乗れるようになっていてほしいな。