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航空教育隊訪問記~「世界一いやらしいP-3C部隊」

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関東某所にある航空教育隊に司令のご招待を受けて見学に行ってきた話、続きです。

Previously Nei-koi (ネイ恋・前回までのあらすじ)

人生で最初のP-3C内部見学に加え、操縦席に座って操縦桿を握り写真を撮ってもらうという、
この上ない名誉な瞬間を味わい、思わず人生で最初のVサイン写真を撮ったエリス中尉であった。

←証拠写真

P-3Cにいつまでも乗っていたいのは山々でしたが、案内してくださる自衛隊にも
時間の都合というか予定がございます。
後ろ髪を引かれる思いで機体から降り、次の場所に向かいます。



「今3機くらい上がっている」と現場の方はおっしゃっていましたが、
エプロンに出ているのが見る限り3機、1機はこの格納庫でお尻だけ出しています。

このP-3Cの尻尾の部分ですが、マッドブームというもので、鉄の塊である潜水艦が
航行することで生じる磁場の乱れをつかむ磁気探知機(MAD)です。


ところでハンガーの両脇に大きな字で「火気厳禁」と書いてありますね。
海将と後ほどお話をした時に、特に強調されていたのですが、
P-3Cを練習機として運用するこの基地にとって火災の発生が「一番怖いこと」となっています。
(伏線)



わたしたち二人の見学者のために、わざわざ倉庫から一般公開用の看板を出してくれる海上自衛隊。
横を通り過ぎようとする案内の広報室長に、

「あ、説明が・・・」
「あー、あれはたいしたものじゃないんですが」

いや、見せようよ。そのために出してあるんだから。
近づいて抜かりなく写真を撮ってきました。

P-3Cというのは知らない方のためにいうと、対潜哨戒機です。



機内を見学したときに一番興味があったのは、ソノブイを投下する部分はどうなっているかでした。
昔、P-3Cの下部にソノブイ落下用の穴が無数に空いているのがトライポフォビアのわたしには
甚だ苦手、というようなしょうもない話で盛り上がったことがありましたが、
ソノブイ落下の操作は、ちょうどその真上にあたる部分で行われていることを知りました。
つまり下から入れて上で落とす。シンプルなものだったんですね。

飛行機であるP-3Cがどうやって潜水艦を見つけられるのかというと、前述の

MAD
敵が発する電波を手がかりに位置を特定する電波探知装置(ESM)
捜索用レーダー
熱源を探知する赤外線暗視装置


そしてこのソノブイです。


ソノブイ=音響ブイという意味のこの筒のようなものを海中に落とし、音響で潜水艦の位置を知り、
場合によっては対艦ミサイルで攻撃ィ~!となるわけですが、この索敵と攻撃において、
日本のP-3C部隊は

「世界一嫌らしい部隊」

といわれるくらい優れているのだそうです。

P-3C部隊の訓練は、これも海将から伺ったのですが、前もって潜水艦隊と打ち合わせて、
何月何日の何時頃、どの海面付近で、と大雑把に決めておき、
当日そこをうろうろしている潜水艦をP-3Cが索敵するという形で行われます。
優秀な海上自衛隊の潜水艦部隊からも、我がP-3C部隊は

「アメリカ海軍と比べても、逃げるのが難しい」

と評価されるものだというから頼もしいですね。

同じ機材を使っていても、「嫌らしい部隊」になれるかどうか、というのは、
ひとえに隊員の練度にかかってくるわけですが、
アップデートされた最新のハイテク機器を搭載しているにもかかわらず、
潜水艦の索敵というのは 「最後は人間の目がものを言う」ものだと言われています。


P-3C部隊は2人の操縦士、警戒・監視に必要な情報を集約して指示を出す戦術航空士(TACCO)、
音響やレーダーなど、情報を分析する対潜員らで構成されます。
チーム11人の共同作業で敵潜水艦を捜索し、追い詰め、場合によってはこれを攻撃するのですが、
こういった、レーダーや音響のデータを分析して敵潜水艦を見分ける技術は、
徒弟制度で人から人へ伝えられる「マニュアルには書けない部分」が大きく、
こういう職人芸的な分野は日本人が得意とするところだからという説もあります。

「一度発見した潜水艦を見逃すなんてことがあれば恥ずかしくて基地に帰れない」


というくらい、一般的にP-3C部隊の技量は高いレベルを維持しているようですが、
ここで気になったことが・・・・・。

今、日本の、尖閣の近海には海底の深度を探査する船が出没しているそうです。
これはおそらく、尖閣付近に潜水艦を航行させようとしているためと言われていますが、
現在、 東シナ海南部をカバーする第5航空群(那覇航空基地)には
全国各地のP-3C部隊がローテーションで応援に駆け付けているそうです。

報道には出てきませんが、 実際に彼らはそこで中国の潜水艦と遭遇しているのでしょうか。

対潜哨戒機ですが、P-3Cの任務には捜索と救難も含まれます。
この絵は、ゴムボートに乗っている人が「help」「help」と小文字で囁いているのに
ちょっとウケたので、ついアップにしてしまいました。

2014年の3月、千葉県野島崎沖で中国船籍漁船が火災を起こしました。
まず海上保安庁が出動して現場を確認し、甲板に人が取り残されていたため、
海上自衛隊航空集団司令官に対して災害派遣要請がなされ、厚木基地第4航空群のP-3Cと、
岩国基地第31航空群のUS-2が出動しています。

このときP-3Cは付近で捜索を行い、US-2を南鳥島に進出させて救助を試みましたが、
海象不良により救出活動ができませんでした。
中国漁船の船員17人は同じ中国の漁船に全員救助されたものとみられるということですが、
中国政府がそれに対して謝意を表明したかというと 、もちろんNOです。

あの辛坊治郎氏の救出の時もまず海保の巡視船と哨戒機、
そしてP-3Cが出て、US-2が実際の救出に当たりました。
辛坊氏を助け上げたUS-2の乗員が密かに?表彰されたという話ですが、あの二人のために
海保と海自の連携でおそらく中国漁船のときと同じくらいの航空機、
船が出されているので、どうせするなら全員に表彰を、とわたしは思ったものです。
 



話が逸れました。

エプロンの一番端には、一機、消防車を横に待機させている風のP-3Cが。

「あれは、もう退役した機体なんですよ。
訓練生の整備やなんかのために”何をしてもいい”機体としておいてあるんです」


無茶苦茶やって壊してしまってもいいってことですね。
自衛隊では除籍した飛行機などはリサイクルとでもいうのか、廃物ならではの訓練、
例えば救助部隊が壁を切断したりする訓練に利用するらしいです。



これはTC-90であると先ほど司令室で伺ったばかりのような・・・。
この機体での訓練は第二段階の徳島で行われるのですが、これは色が違うので、
計器飛行の訓練のためにもしかしたらここにあるのかもしれません。

TC-90はP-3Cの前課程の使用機ということになりますが、徳島からここに来た時に、
こちらでも訓練を行ったりするのかな?



何かのプロペラ越しに(あれ?これ何だったっけ)ヘリが飛んでいるのが見えました。
これも司令室に飾ってあった模型にあった、TH-135ですね。
前回も書きましたが、報道用、ドクターヘリとして大変広い範囲で利用されているこのTH-135、
原型は ユーロコプター EC 135(Eurocopter EC 135)といい、ユーロコプター
(現エアバス・ヘリコプターズ)社が生産する双発の汎用ヘリコプターです。

リンク先を見ていただければ分かりますが、汎用ヘリコプターという分類は
そのものが軍用ヘリコプターの分類の一つです。

計器飛行に対応しているので、海上自衛隊ではこれを第二段階の練習機として
計器飛行(有視界飛行が不可能な時に計器のみで航空機の姿勢、高度、位置および針路の測定を行う)
の訓練を行っています。 



このヘリを見て、案内の2尉が、

「消防局のヘリコプターが訓練をやっています」

と言っていたような覚えがあります。



夏場はだいたいこの地域は「ガスって」遠景が見えませんが、
寒い頃は富士山まで見えることがあるそうです。
今日はこの通り、スカイツリーもうっすらとその形がわかる程度にしか見えません。



さて、先ほど伏線として

「P-3Cは特に火災に注意しなければいけない」

と司令が言ったという話をしましたが、わたしたちがこのあと連れて行っていただいたのは、
エプロンの端にある、「運航隊」でした。

運航隊という(わたしにとって)聞きなれない言葉ですが、何をするところだと思います?

航空管制、気象、地上救難、写真

以上が運航隊の任務となり、さきほどP-3Cで写真を撮ってくれた隊員さんは
この運航隊の写真班の隊員ということになります。

われわれがこのあと見学したのは、
地上救難班。

地上救難班の任務は文字通り、基地で起こりうる災害の際の救難活動です。
特に火災、と強調したのは、救難班の最も重要な任務が火災発生時の出動だからで、
これはどういうことかというと、当基地で運用されている

消防車の操縦席に乗せてもらう

というこの日のメインイベントがわたしたちのために予定されていたのでした。
消防車の運転席?
もしかしたら水をホースでぶわーっと撒いたりさせてもらえる?


続く。



 


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