入間航空祭三度目にして招待者席に潜入することに成功したわけですが、
この招待者席というもの、パイプチェアに座れて楽は楽ですが、
実際に会場の上空を縦横無尽に飛びまくる飛行機の写真を撮ろうとすれば、
とてもではないけど座っていられず、わたしはほとんど立ちっぱなしでした。
招待者席はその中もオレンジ色のテープで幾つかに仕切られていて、
もらったリボンの色によって大体座るところが決まってくるわけですが、
一番「上席」は区画の一番後ろのひな壇で、ここは「予約制」となっていました。
その前が我々(?)協賛企業席、その前が隊員家族関係といった感じです。
入間基地としては、滑走路に近い=ヘリなどの轟音や風に近いということで、
必ずしも前列が上席と考えていないらしいことがわかりました。
招待者席の椅子は最後まで全部埋まることもなく、わたしのとった席の列は
最後まで誰も座ることがないという状態だったので快適でした。
9時開始ということでしたが、観閲を伴う他の自衛隊公式行事と違い、
あくまでも航空「祭」なので、始まったといってもゆるい感じで、せいぜい
地元の協賛団体の偉い人がお祝いを述べる程度のオープニングです。
その間、われわれは観覧席前に駐機してあったT-4の整備を見ることになります。
入間基地のT-4は「中部航空方面隊司令部支援飛行隊」の所属です。
空自の航空集団は航空総隊という名前の組織に属しますが、それは司令部を横田に置き、
北部・中部・西部・南西の各航空方面隊
に分けられます。
入間はこのうち中部方面隊の司令部が置かれているところです。
入間航空祭の報告をするたびにお話ししていることですが、T-4は
練習過程でプロペラ機からジェット機への移行の際使われる飛行機なので、
素直な操作性と高い安定性が備わっており、なおかつ、低速から高速まで
安定した飛行特性を持つよう設計された川崎重工業の名作です。
展示の順番が最初なので、整備隊が最後の調整にかかっています。
オリーブドラブの耐圧スーツ着用、T-4パイロットキター。
入間は司令部があり、「教官の養成」を行う組織を持ちます。
ゆえにT-4の教官は全て佐官級、つまりロートルパイロットであるという話を聞いたことがありますが、
このパイロットもアップにすると、いかにも飛行時間の長そうな大ベテランの風格。
(姿勢が良くて体型が若いので遠くから見ると若く見えるんですね)
しかし、入間航空祭のT-4編隊飛行は、そんなロートル部隊の本領発揮、
かつてのファイターパイロットがここぞと円熟の技能を見せてくれる機会のはず。
なるほど、燃料給油口はインテイクの外側にあるのか。_φ(・_・
整備が終わったのか、愛機に乗り込むパイロット。
こちらからは見えくいですが、機体に登るのにハシゴは掛けて使うんですね。
整備は整備隊員だけにお任せするのでなく、パイロットも参加します。
空自のパイロットは、こういう場合このタイプの帽子をかぶるんですね。
前回アメリカ空軍の軍人さんのことをお話しするときに少し話題にしましたが、
このタイプの帽子を「ギャリソン・キャップ」といいます。
船のような形をしているので日本語では船形帽ともいうそうです。
アメリカ空軍がこのタイプを採用しているせいか、アメリカ式空軍を持つ国は
帽子もこれを採用している軍が多いということで、自衛隊もその一つ。
どうして空軍がこれを多用するかというと、なんといってもたたみやすいからでしょうね。
特にパイロットは、かぶり物をヘルメットに変えたりする状況なので、
たたんでベルトや肩章にはさめるこのタイプは重宝なのです。
そういえば、岩国基地で会ったホーネットドライバーたちも、皆ギャリソン型でした。
戦闘機を持たない陸海自衛隊はスクランブルの必要もないので、
たためなくてもベースボールキャップ型で不便はないのかもしれません。
展示飛行機に向かって最前列がそろそろ埋まり始めました。
しかしこの辺はブルーインパルスの前に場所を占められなかった人たちが
だんだんこちらに追いやられてきているという感じです。
ブルーインパルスはその整備の段階から、搭乗、タキシングに出るところ、
そして帰投してからの花束贈呈などを至近距離で見たい&撮りたい人がたくさんいるようで、
わたしは最後の頃その辺りに行ってみましたが、人垣が何重にもなっていて
とても前で起こっていることが見えるような状況ではありませんでした。
U-125。
尾翼に赤白のチェッカー模様があるこの飛行機は、
チェッカー←チェック=点検→点検隊 \( ̄▽ ̄;)/
ということで、英語で言うと「フライト・チェック・スコードロン」。
全国唯一入間に存在する、飛行点検隊の仕様機です。
入間基地にはエプロン中央にこのような飛行点検隊のハンガーがあります。
飛行点検隊の任務は、飛行機の航行のために必要な安全装備について
自らが飛行しながらそれを点検するというものです。
例えば飛行設備の運用前検査、定期検査、事故を設定した検査、
新たな施設やシステムの検査。
飛行方式の改正に伴う検査があれば、事故の検証を行うのも飛行隊の仕事です。
U-125はホーカー・ビーチクラフトの製造です。
何?「ホーカー・ビーチクラフト」だと?
イギリスの「ホーカー・シドレー」(シーハリアーのあそこ)とビーチクラフト社は
いつの間に合併していたのだ?
と一瞬思わされる名称ですが、ここはもともとレイセオン傘下の航空機会社で、
つまりホーカーとビーチクラフトのブランドをどちらも製造販売しているのだとか。
しかしこの機体の原型はデ・ハビランド社の飛行機だったという、いろいろ混在型。
素人目にはビーチクラフトのスタイルという気がしますけどね。
CH-47Jのローターに着陸しそうなU-125。
この写真を見ていきなり思い出しましたが、前回参加の2年前には「ド」の字もなかった
「ドローンの持ち込み、近隣での飛行の禁止」
の貼り紙が、基地のあちらこちらに見られ、放送でも注意がありました。
この傾向は夏の陸上自衛隊の総合火力演習のときから気づいたもので、
富士演習場でも幾度となく「ドローンを飛ばさないように」と放送があったわけですが、
会場内にいる人はすでに手荷物検査も受けているわけだし、入間基地においても
一般入場者は皆検査を受けているので、内部で告知しても意味がないのでは・・。
さすがに海自は合理的というか、護衛艦内でそんな注意はされませんでしたが、
一度ならず二度までも、停泊中の護衛艦にドローンの落下を許しています。
犯人は自衛隊のイベントに来る人ではなく、外部からの操作であるのは明白なのですが、
自衛隊としては、集まってくる人たちに訴えるしか、とりあえず方法がないという・・・。
官邸ドローン事件を受けても、まだドローン機の所有者が登録制にならないのなら、
もう自衛隊としては、護衛艦に近づいたらCIWSで、総火演の現場では無反動砲か自走榴弾砲で、
航空祭に飛んできたらF-2をスクランブルさせて墜としてもいいってことにすればいいと思います。
入間基地にいる飛行整備隊のU-125は全部で3機です。
こういう構図で撮るとなんだか「紙飛行機」感が漂うU-125。
「CHのローターと航空機」シリーズその3のお題は、
「蜻蛉釣り 今日は何処まで行ったやら」
棒の先にトリモチをつけてトンボを採ったあの日を思い出してください。
そういえば旧海軍で空母から落ちた飛行機を回収することを「とんぼつり」といいましたが、
これは回収機材がトリモチ竿のように見えることからだそうです。
この飛行機も飛行整備隊の点検機、YS-11FC。
FCは「フライト・チェッカー」の意です。
機体が大きいだけに、検査装置はもちろんのこと、計器着陸装置、通信装置、グラフィックレコーダー、
機上録音機、信号観測用オシロスコープなどなどの無線機材が詰め込まれています。
入間ではYS-11も3機が稼働しています。
デモを終えて帰ってきたフライトチェッカー。
仕切りの内側の人と、その外側の人たちの「空気の違い」をごらんください。
この部分は滑走路右手に向かって障害物が何もなかったので、とりあえずこの辺では
写真を撮りたい人が集中する必死ゾーンとなっていました。
方向変えてきた〜。
航空祭の写真は会場の様子が写り込んでこそ。
わたしは前で人が立っていてもむしろ大歓迎です。
さて、続いてのプログラムは、先ほど点検整備を行っていたT-4の編隊飛行です。
アプローチは全てこのように画面の右側にタキシングしていき、左に向かってテイクオフします。
テイクオフ直後。まだ脚が出ています。
このTー4が「オープニング・フライト」とスケジュールにはあります。
ということは、最初の点検飛行隊のフライトは状況チェックを兼ねていたのでしょうか。
脚が収納されました。
ブルーインパルスとは色が違うだけで同じドルフィンシェイプでもこんなに印象が違うのか、
と思うのですが、いったん編隊飛行を始めるとやはりブルーの演技を彷彿とさせます。
忖度にすぎませんが、T-4のパイロットたちは、この日のメインである
ブルーインパルスの飛行に見劣りするといわれぬよう、
ベテランの意地をかけてこの編隊飛行に臨むのではないでしょうか。
というわけで渾身の(たぶん)フライトを終えたTー4が帰ってきました。
ところで入間航空祭では、例年「ミス航空祭」コンテストが行われます。
軍用車(観閲式の時に部隊長や安倍首相が立って乗るあれ)でパレードさせたり、
山田さんのご趣味はヨガと音楽鑑賞、なんていう超どうでもいいことをアナウンスしたり、
ブルーインパルスの隊員に花束を渡させたりしているわけですが、どうも、
会場を見ていると、当人とその家族以外には「それがどーした」な反応なのです。
それを裏付けるように、この日の観客の「ミス」に対する無関心さが
象徴的に現れている写真が撮れてしまいました・・・(涙)
聞くともなく聞いていると「ミス川越」とか「ミス飯能」とか、他府県の人間が聞くと、
失礼だけどあまりありがたみのないようなミスが一堂に集い、そのなかから
この日、何処かの誰かによって最終的に「ミス航空祭」が決められるということでした。
ミス航空祭とやらの栄冠をめでたく手にしたとして、たとえば優先的に
ブルーインパルスのパイロットとお付き合いできるとかいうご褒美があるのならともかく、
自衛隊の祭で美人コンテストをしてミスを選ぶ意味が、わたしには正直よくわかりません。
文字通り「華を添える」という意図で始まったことだと思うのですが、
なんとなくミスコンそのものが「バブル時代の昭和のかほり」というか、
コンセプトそのものが時代遅れという気がしないでもないというか。
同じ自衛隊でも「ミス観艦式」とか「ミス総火演」など生まれるべくもない陸海からみると、
「ミス航空祭」は良くも悪くも空自のアプレゲール的フリーダム気質を象徴しているのでは、
とわたしはなんとなく思ったのですが、ただ思っただけです。すみません。(←弱気)
続く。