ヘローキャスティングを二組、4名のEODによる実技を見学したあと、
「いずしま」は移動を始めました。
みるみるうちに訓練海面が遠ざかっていきます。
・・・・と、そのとき。
ヘローキャスティングを行っているヘリのダウンウォッシュの霧の中に
虹が見えました。
アーチを描く虹というより、霧全体が虹色に浮かび上がって大変綺麗です。
「きれいですねー」
なにかとても神々しく有り難いものを見せていただいた気分です。
ずっと錨泊している掃海母艦「ぶんご」が近づいてきました。
というか、「いずしま」が「ぶんご」の後ろに回りこんでいるんですが。
「ぶんご」には前回の日向灘での訓練で夜間寄港したところに押しかけ、
珍しいクレーンによるジュース搬入のシーンなどを見せていただきました。
その「ぶんご」にそう日を分かたずして今度は伊勢湾でお会いできるとは。
艦首には一見日本の旗のような実は艦首旗が上がっていますが、
これは「ぶんご」が日中、停泊中であるからです。
「いずしま」は入稿準備をしながら「ぶんご」の後方に回り込み、
後ろから右舷に着岸(舷?)するつもりの模様。
入港作業のときの赤いヘルメットで全員が準備を行います。
もやいの準備が整ったので、近づいていくのを皆で注視。
このままいったら舳先が艦腹に激突!にみえますが、
ギリギリで「いずしま」は「ぶんご」と平行に船体を調整します。
細いもやいの類がきっちりと美しく並べられています。
20ミリ機関銃の台座ですが、用具置き場して使われることの方が多そう。
「ぶんご」見学の時に、ここから外を見せていただいたなあ・・・。
その時は何をする場所かわからず、案内してくださった副長の
「ここは一人になれる場所なのでタバコ吸いに来る乗員もいます」
という言葉にうなずいていたものです。
このくぼみの本来の役目は、洋上で接舷するときに防眩物を下ろすためだったのですね。
じわじわと近づいていく両舷。
ここまできたらミリ単位の操艦という感じです。
接舷したときに「衝撃に備え」する必要もないくらいでした。
「いずしま」が近づいてきてから防眩物を用意する「ぶんご」の乗員たち。
「いずしま」に知り合いでも見つけたのでしょうか。
上甲板からサンドレットにより索を受け取りました。
このサンドレットですが、
のちに「ぶんご」に移乗したときにまとめて置いてあるのを目撃しました。
もたせてもらったところ、先がずしりと重たいものです。
どこかで、
「岸壁でうっかりサンドレットをキャッチしてしまってものすごく怒られた」
という体験を語っている元隊員さんがいましたが、確かにこれでは
結構受け損なったときに危ないと思われました。
「いずしま」側で入港作業を行う乗員。
このように洋上で錨泊している母艦に接舷することも「入港」と呼び、
その瞬間にはちゃんと「入港ラッパ」も吹鳴されます。
「いずしま」の左舷からはバウスラスターの立てる白波が見えており、
母艦への接舷は、艇の推進力とバウスラスターの反発を使って
ミリ単位で行うらしいことがわかります。
この瞬間は艇長も舷側で接舷を見守っているようです。
そこでふと、近づいてくる「ぶんご」の艦橋をみあげたところ、
おお、なにやら偉そうなサングラス軍団がずらりと!
「ぶんご」のキャップをかぶっていない赤と黄のストラップは、
掃海隊「Mine Warfare Force」の帽子着用。
これは文字通り「機雷戦部隊」のことです。
そして、その左には・・・・!
このお方こそが掃海隊群司令、海将補 岡浩さんである。
前回は「うらが」に乗り移ることができず、ご挨拶を舷越しにするしかなく、
大変残念な思いをしたものですが、ようやくそちらに伺うことができます。
後から、日向灘の移乗が中止になったときのことが話題になったので、
「あのとき中止を決めたのはどの時点でしたか」
と質問してみたところ、やはりお互いの舷に一度かけたラッタルが跳ね飛んだとき、
これは無理だなと判断したとおっしゃっていました。
「隊員だけなら”泳いででも来い”って言えるんですけどね^^」
いや、あの海で泳ぐのはいくら海自隊員でも無理ですって。
とにかく、今回は移乗が無事に行われそうで、よかったです。
作業を見守る司令の表情も心なしか和らいでいるような。
三方からもやいで繋がれた防眩物がこのときになって下されました。
ところで、画面下の小さな丸窓から出ているもやいはいつの間に、そして
どうやって「いずしま」と繋いだのだろう・・・・。
掃海艇だけでなく、艦船の作業とは「索を捌くことと見つけたり」。
前にも同じ光景を見たような。
じゃなくて本当にみたんだった。
「ぶんご」側から「いずしま」の舷にラッタルを掛けるのです。
掃海艇と掃海母艦は甲板の高さが違うので、それに合わせて
このような形状のラッタルが掃海母艦側には備えられているのです。
高さの違いは階段6段分ですか。
そうだ!前回と同じところから写真を撮らねば!
わたしは慌ててラッタルを掛ける作業を前に見た、信号旗置き場の
手前に移動しました。
前回は前の信号旗置き場にもたれかかっていて、ラッタルが跳ねたとき
心臓が縮む思いをしたものですが・・・。
慎重に階段の先を「いずしま」に下ろしていきます。
「いずしま」に接地する部分はなんと車輪が付いていたのか!
降ろされる直前に「いずしま」側の乗員がこんな姿勢で
緑のネットを大急ぎで外しました。
作業でクレーンを動かしている間は、ずっとビー、ビー、と笛が吹かれています。
もう少しでこちらに届くぞ。
無事ラッタルがかけられました。めでたしめでたし。
お試し?のためにまず一人が上がっていきます。
このあと、メディアとわたしたち、そしてエスコートの広報幕僚、
陸自の迷彩服で参加していた地元地本隊員が移乗を行いました。
今渡っているのが最後の人だったかな。
前回の日向灘に参加していたのはメディアでは一社もなく、
一般参加のわたしたちだけでした。
あっという間にラッタルが収納されました。
我々を移乗させたあと、「いずしま」はずっと訓練の予定が入っています。
艦橋にあったホワイトボードに書いてあった本日の予定によると。
1400 MCH-101荷重データ収集支援
1430 松阪港入港(中間補給)
などと続き、そのあと1800から1時間半かけて機雷敷設とありました。
暇にしている時間など全くないということになりますね。
これは「いずしま」の艦尾側。
もやいを引き上げています。
「いずしま」の防眩物はこんなところに下げられていたのか・・・。
ブリーフィングで軽妙な話しぶりの解説をしてくださった第1掃海隊司令の
宇都宮2佐の姿が艦橋に見えます。
そのとき「帽触れ」の声がかかり、「いずしま」は出航していきました。
ところで、この写真を見てわたしはあることに気がつきました。
「PAPがない・・・」
白い掃海浮標は見えていますが、後甲板に出ていた黄色いPAP-104がありません。
わたしのいたところから見えなかった部分にシャッターが見えていますが、
どうも訓練終了後そこに収納してしまったようです。
やはり、繊細な機能を搭載した掃討具なので出しっぱなしにはしないんですね。
写真は「帽触れ」のあと「帽戻せ」の号令がかかった瞬間の「いずしま」艇上。
短い間でしたが、御世話になりました。
暖かい缶コーヒー、とても美味しかったです。
続く。