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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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「世界の潜水艦首都」〜グロトン・海軍潜水艦博物館

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今滞在しているノーウォークというのは、ニューヨークから1時間、
ボストンから4時間くらいで、ニューヘイブンとニューヨークの間にあります。

TOが日本から来ている間は一緒にニューヨークに行くことが多いので、
去年に続きここのキッチン付きホテルを取ったのですが、
ここからニューヨークとは反対ののニューロンドンまで行くことになりました。

その理由はそこに

「Submarine Force Library and Museum』(潜水艦隊博物館&図書館)

があったからです。
わたしはボストンに住んでいた時も、日本から毎年この地に訪れていながらも、
ニューロンドンという街があり、そこにテムズという名前の川まであることを知りませんでした。

きっと、アメリカに入植したイギリス人が 西へ西へと進んで行ったとき、
ここコネチカットに母国のにそっくりな大きさの河を見つけ、

「ここをニューロンドンとしよう!」

と盛り上がってそういうことにしたんだろうなー、と
安易に予想されるこのネーミングですが、アメリカ人がその後、
そのイギリスから独立することになったとき、彼らが海軍基地を作ったのは
皮肉というかなんというか、このテムズ川沿いのニューロンドンでした。

かつては巨大だったニューロンドンの街は1700年〜1800年間に分割され、
その過程でグロトンという街が生まれました。
海軍基地はグロトンにあったため、ニューロンドンとはテムズ川を挟んで対岸です。


ここに潜水艦部隊とともに海軍直営?の博物館があることを教えていただいた日、
わたしはさっそくツァーの計画を立てました。
グーグル先生のお見立てによると、ホテルからは車で約1時間半で行けるということです。

ところでホテルを出てすぐ、ストラトフォードというところを通過するのですが、
ここにはシコルスキーのメモリアルエアポートがあります。



走る車から手だけそちらを向けて撮った写真。
なんとなく「シコルスキー」という字が見えますね?ね?



こちらも同じく。
木の陰から見えるのが一瞬なので運転しながらではこれが限界。
シコルスキーの星のマークがお分かりいただけますね?

ちなみにシコルスキーエアクラフトは本社もここからすぐ近くです。

さて、途中ところどころ渋滞しながらも(自然渋滞だけど事故も多し)
無事ニューロンドンに到着。
高速の降り口にはもう「サブマリンミュージアム」と出ています。
降りてからもいたるところに看板があるので、ナビいらず。

ところが好事魔多し、それらしいゲートがあったので入っていくと、
入り口で海軍迷彩の軍人さんが心なしか厳しい顔つきでチェックしています。
いくらなんでも博物館にこれはないだろう、と気づくのと、
わたしが間違えて海軍基地のゲートに突入していたのに気づくのと、
警衛の軍人さんがこちらに近づいてくるのは同時でした。

「あのー。ミュージアムに来たんですが・・」(びくびく)

そうですか、と言いながら、彼は車をゲートに誘導し、中に入れたところで

「免許書見せてください」

少し迷って国際免許を見せたところ、

「こんなんじゃなくて、あなたの国の免許書を見せてください」

ほらきた。
いつも思うんだけど、日本の国際免許って全く役に立たないのよ。
有効期限が1年なので毎年作り替えなくてはいけないし、
写真の大きさが2ミリ足りないくらいで文句言われたりうるさいんだけど、
レンタカー会社でチラッと見るだけで、こういうときには全く信用なし。

免許書を渡すと、かれはそれを持って少し車から離れ、どこかにインカムで
連絡して照合らしきことを始めました。

「テロリストとかのブラックリストに名前がないか聞いてんだね」

リストには当方の名前らしきものはなかったらしく、
(知人にIRAのテロリストと同姓同名で、いつも空港で大変という人がいる)
警衛の人は免許書を返してくれながら、

「博物館はあそこから出られますから、右に曲がってください。エンジョイ!」

と愛想よく送ってくれました。
わが自衛隊はもちろんのこと、ネイビーは世界共通で実に紳士的です。



で、これが博物館の入り口。
海軍の組織なので、日本じゃ横須賀でしか見れない海軍迷彩がうじゃうじゃおります。


冒頭の入り口に丸い輪が二重になっていますが、これが面白くて、
小さい丸が、初代潜水艦ホランド(S-1)、大きな丸が
現役の原子力潜水艦「オハイオ」を輪切りにしたのと同じ大きさ。



初代と今の潜水艦ではこれだけ違いますよ、ということです。
いかに「オハイオ」が非常識にでかいか一目でわかる展示ですね。



かれが歩いていく先に展示してあるのは

UGM84 ”Harpoon" 対艦ミサイル。



皆さんはジュール・ベルヌの「海底二万マイル」を読んだことがありますか?
ホールには、1870年に発表された初版の挿絵と共に、
同名の映画に使われた「ノーチラス号」のレプリカがかかっています。

「ノーチラス号」・・・。

そう、この潜水艦博物館には、同じ名前を持つ世界最初の原子力潜水艦、

「ノーチラス」(USS Nautilus, SSN-571)

の現物が展示されているのです。



全館隈なく見てその充実ぶりとお金がかかっているのを知れば、
この博物館には入館料が要らないというのにびっくりします。

まあ、自衛隊の「りっくんランド」やその他資料館、展示館ですら
軒並み無料であることを思い出せば、アメリカ海軍の広報組織でもある
この施設が無料なのも当然かと思われますが。

入り口にはドネートを募るお知らせがあり、わたしたちも寸志を寄付しました。



ドネートといえば、レンガに名前を刻む権利を買うこともできます。
120ドルとか200ドル少しで、名前とメッセージを残すことができるとか。



外側のスペースにそのコーナーがありました。
もう少しこの地域や潜水艦隊にご縁があればわたしもやっていたかもしれませんが・・。



入ってすぐ、実際の潜水艦のコクピットを再現した部屋が。
「シップ・コントロール・パネル」との説明があります。

この椅子には実際に座ってみましたが、狭いとは感じませんでした。
やはり基本大きなアメリカ人の体型に合わせてあるので当然です。



座席の右側部分。
左側には「深度調整システム」「ホバリングシステム」とあります。

右側は「バラスト・コントロール・パネル」。

バラストとはタンクに海水を出し入れすることで浮上・沈降を調整することです。
メインタンク前後の2つのトリムタンクの海水を移動させることで
トリム(上下方向の傾き)制御をおこなったりします。

 

この展示には、三種類の潜水艦のパネルが継ぎ合わせてあります。

原子力潜水艦ラファイエット(USS Lafayette, SSBN-616) 

原子力潜水艦ポーギー (USS Pogy, SSN-647)・・バラストパネル部分

原子力潜水艦ブルーフィッシュ (USS Bluefish, SSN-675) ・・シップコントロールパネル

いずれも90年代に退役した潜水艦ばかりで、アメリカの原潜の歴史は
ノーチラスに始まりすでに大変長いものであることがこれからもわかります。



外側のモニター?と思ったけど、そんなわけないか・・。



ところで、最初の原子力潜水艦が「ノーチラス」(オウム貝)の名であるのは、
「海底二万マイル」のノーチラス号が

ノーチラス号は元インドの王子にして技術者であるネモ船長により設計され、
その指揮下の元、陸地との一切の交流を絶った海底探検の航海を続けている。
ノーチラス号の動力は全て電気で賄われており、水銀と海水から取りだした
塩化ナトリウムを用いたナトリウム・水銀電池で発電した電力を、
電磁石を介して特殊装置に伝え、スクリューを稼働させている他、
船内外の照明などに使用している。
電池の原料は乗組員の手により海中から賄われている。また、電力だけではなく、
食料や衣類なども全て海中から得たもので作られている。wiki

という潜水艦、つまり

陸上補給を全く必要としない潜水艦である

ことから、浮上せずにずっと行動を続けることのできる
原子力を動力とした潜水艦にその名を冠したということなんですね。



ホワイトヘッド魚雷Mk3。

ヘッドは赤なのにホワイトヘッドとはこれいかに。
と思ったら、形態を表しているのではなく、完成させたのが
ロバート・ホワイトヘッドという人だったからです。紛らわしいな。
つまりこれが史上初の魚雷です。

開発されたのが1860年、日本ではまだ髷を結っていた人もいるというのに、
魚雷の形というのはもうこの時点で完成していたらしいことがわかります。

考えたこともありませんでしたが、魚雷を最初に考え出したのは
19世紀のオーストリア海軍砲科のある無名士官だったそうです。
かれが思いついたのは、爆発物を載せた小型艇を用いるという概念で、この艇は
蒸気機関もしくは圧縮空気による機関で自走し、ケーブルによって舵を取り、
敵艦船に打ち込むというものでした。

それを実現化し、完成させたのがホワイトヘッド魚雷です。
この模型を見る限り、実現化した途端完成しているって感じですね。



頭部はニトロセルロースの炸薬、圧縮空気で射出するこの魚雷が
生産体制に入ったのは1890年のことになります。

潜水艦が武器となったのはこの魚雷あってのことで、1904年、イギリス軍の
ヘンリー・ジョン・メイ提督という人は、

「ホワイトヘッド魚雷が無かったら、潜水艦は興味深い玩具か、
またはもう少しましなままだったろう。」

などと言ったそうです。



魚雷の向こう側は窓を通してテムズ川の河畔の光景が望めます。



館内は、第1号潜水艦の「ホランド」から原潜に至るまでの、
潜水艦の歴史資料が網羅されており、ここを見学すれば
あなたはいっぱしの潜水艦博士になれることは間違い無し。

そういえば、高速道路の降り口に、

「ここグロトンは世界の潜水艦の首都(capital)です!」

と書かれた潜水艦の形をした看板がありましたよ。
呉の「ここは大和のふるさと」みたいな感じですね。

アメリカ国内だけでなく世界の首都、と言い切ってしまうあたりに
米国潜水艦隊の誇り高さを見る思いです。

これからここで見たことを何回かに分けてお話ししていこうと思います。


続く。



 

 


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