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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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リス戦隊警戒警報発令〜シリコンバレーの動物たち

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サンフランシスコにいたときにはその存在も知ることはなかったのですが、
ここシリコンバレーを毎夏訪ねるようになって、頻繁にお目にかかるリスに目覚めました。

シリコンバレーというのは、言葉からのイメージとは裏腹に、
実はほとんどが自然のまま、その中に街があるというところなので、
たとえばグーグル本社ではキャンパスでヤギを草刈りのために放牧していたり、
(なぜそんなことをするかというと理由は”かわいいから”←これ本当)
そのキャンパスも自然鳥類保護区「バーズ・サンクチュアリ」の隣にあったりします。 



スタンフォード大学の研究施設であるディッシュ・トレイルと言われる一角は
自然の丘にトレイル(小道)を作り、「道から絶対足を踏み出さないように」
としたうえでウォーキングやジョギングを楽しむ人に解放されているのですが、
ここは鳥ならぬカリフォルニアジリス(地リス)の天国。

最初に来たとき、わたしは、足元で人が来るのにも平気で草を食むリスたちの
可愛らしさに悩殺され、それ以降恒例の「リススレ」を夏になると
ここで空気を読まずにアップしてきました。

ところが去年、トレイル内部で大幅な改装工事が行われ、
道が舗装されたり柵を手前に移してバイクロードを作ったり、
という間閉鎖されていたため、ここに来ることはできませんでした。

今回、西海岸に着いて早速次の日、カメラを肩に出撃です。



歩き始めた頃と違ったことがあるとすれば、中国人が増えたことでしょうか。
確かにここの日差しは強烈ですが、日本人も日傘は差しません。
空気を読むというか、日傘が奇異な目で見られるので遠慮しているというか。
しかし、中国人というのは基本自分がどう見られているか全く考えない人種なので、
見た目も暑苦しい、しかも雨傘でトレイルを歩いてしまいます。



右手前方が入り口なのですが、入ってすぐ延々と坂が続き、
否が応でもここでハードモードになってしまいます。
真面目に歩くと息がきれるほどですが、カメラを持っている時のわたしは
被写体を見れば立ち止まってしまうので坂も苦になりません。



早速青い頭の「ラズリ・バンティング」(Lazuli Bunting)、
ムネアカルリノジコが現れました。
「ラズリ」とは「ラピスラズリ」 lapis lazuli からの命名ですね。



こちらは「ダーク・アイド・ジュンコ」(Dark-eyed Junco) 
日本では「ユキヒメドリ」だそうです。
オスとメスで色が違い、こちらはオスであるとのこと。



ところで、今年2年ぶりに足を踏み入れたディッシュトレイルで、
わたしはすでに違和感を感じていました。

「リスが、一匹も、いない・・・」

そして、その理由が坂を登りきったところで判明しました。
サギです。
グレート・イグレット、日本名ダイサギ。
今まで見たことがない水辺の鳥がなぜか草むらを闊歩しているのでした。



リスにすれば通天閣くらいの背の高さの鳥が餌を求めているのですから
それはそれは恐ろしいでしょう。
入り口からここに至るまで、かつてリスの天国だったフィールドに一匹も
その姿を見せていなかったのはこいつのせいだったのです。

サギは辺りをうかがいながらのしのしと歩き回っております。



何か気になって顔をアップしてみると、くちばしに血が・・。
これは殺してる顔ですわ。



やっと見つけた一匹のリス。
朝からずっと居座られているのか、お腹が空いてたまらなくなって
目を盗んで餌を食べに出たようです。



のしのしと書きましたが、実際は全く音を立てず、
いきなり立ち止まると首を前後にゆらゆらと揺すって狙いを定め、
次の瞬間には獲物を口でくわえているのです。

まあ、水辺であの素早い魚を捕まえる鳥ですから、
地上の獲物など弱って動かないように見えるに違いありません。



そして今日もまたトカゲがお亡くなりに(-人-)ナムー
サギの捕食対象はリスではなく、トカゲらしいことがわかりました。
しかし、別のところでカメラを持っていない日、野ネズミを
振り回しているのを目撃したので()リスであっても
小さければ食べられてしまうでしょう。

彼らが警戒するのももっともです。



それにしても2年前一度も見たことがなかったサギが
どうしてあちこちに(この道の右側にも一羽別のサギがいる)
今年は発生しているのでしょうか。

サギは全部で4〜5羽、近くの水場から”出張”してきているようでした。
ここに来ると各自が自分の持ち場?に分散して、互いに邪魔しないよう
そこで存分に食事を楽しみます。



サギとサギの担当地域の隙間ではリスたちがここぞと食事中。



リスたちに混じって野うさぎを発見しました。
体はリスよりも少し大きいですが、ここではリスの方が強いらしく、
このウサギはリスに追い払われてしまいました。



すると、どこからともなく「キッ!キッ!」という鋭い鳴き声が。



これはリスの「警戒警報」で、これが聞こえるとリスたちは食べるのをやめ、
体を起こして一瞬辺りを窺うと、迅速に近くの巣に避難してしまいます。



空襲警戒警報でした。
いつの間にか空からの天敵がやってきています。
リスのコミニュティでは、敵を発見したリスが声をあげ、
小さな体から信じられないくらいの大音量によって周辺一帯に
警報が行き届くという体制がとられています。

ちなみに、彼らは人間が真横に立っても平気ですし、
わたしのようにレンズを構えても平気な子もたくさんいます。
人間に対しては警報はまず発令されることはありません。



たとえば、こんな風に接近しても・・。



大きな望遠レンズを向けても、大抵のリスは我関せずです。



手を上げかけてこちらに気づき、一瞬固まってしまうリスもいますが。
大抵そんなのは小さな尻尾の若いリスです。



トレイルは大体普通に立ち止まらず歩いて1時間10〜15分で一周して
元の入り口に戻ってきますが、どちらから行ってもだいたい半分来たところに、
名前の由来となった「ディッシュ」があります。



ちょうどわたしたちがディッシュを過ぎる頃でした。
またここにも白い悪魔(わたしたち命名)が頑張っていました。



近くでキッキッという警報音が聞こえたので音源を探してみると、
一匹のリスが、体も張り裂けよと大きな声を出しているのでした。



この辺りのリスたちはすでに姿を消し、このリスだけが木の枝の上で
必死に警報を発しているのです。



「すごい・・・」

わたしたちはつい立ち止まって、サギではなくリスに見入りました。
サギからはリスの姿は完全に見えているはずです。
死ぬほど怖いであろうに、仲間に警報を発するため、彼は(多分)
自分の身を危険にさらして、ここで鳴き続けているのです。



わたしたちが立ち止まり両者の成り行きを息を飲んでみていると、
ウォーキングで通り過ぎた他の人たちも次々と立ち止まりました。
ただし、警報リスの居場所を確かめると、

「ああ、他のリスにウォーニングしてるのねー」

などと軽く話しながら行ってしまいます。
アメリカの人にはこういうの驚きでもなんでもないのでしょうか。



サギはおそらくですがリスを捕食対象にしていないでしょう。
しかし、鳴き続けるリスにまるで業を煮やしたかのように急に振り向きました。



リスは、時々顔の方向を変えて、ずっと鳴き続けています。



「ええ、うるさいやっちゃな」

と言わんばかりにリスの木の方に歩いていくサギ。

「わ、これ怒ってるよね」

「リス、襲われてしまうん?」

「食べるつもりはないけど邪魔だ!ってやられるかも」

わたしたちハラハラしながら見守っていました。



くちばしが傷だらけで、大変人相の悪い鳥です。
気のせいか怒っているようにも見えます。



木の前を歩くサギに臆せずキッキッと声を浴びせ続けるリス。

「漢だ・・・」

「リスですらこうやって命を張って仲間を守るのに・・・」

おっと、その話はそこまでだ。



サギにはリスを威嚇する意図があったかもしれません。

 

いきなり翼を広げて飛び立ち、泣いているリスの木の前を通過して、
5メートルほど離れた草地に降り立ちました。

まるでリスに「お前なんか食べねーよ!」と言っているようです。



そこで彼は(かどうか知りませんが)立ち止まり、例の「首ゆらゆら」を始め、



あっという間に何かをくちばしに咥えました。
スピード優先シャッターでも首がブレるほどの高速です。



彼女が(彼?)つかまえたのはトカゲでした。



この辺でこのようなトカゲを時々見ることがあります。
大変小さな、せいぜい3センチくらいのトカゲなのですが、
彼女が捕まえたトカゲのように尻尾は青くもないし長くありません。



ああっとわたしたちが息を飲んでいる前で、サギは獲物を飲み込もうとします。



しかしトカゲも必死。
胴を食い破られながらも尻尾をくちばしに巻きつけ、
喰われまいと抵抗する姿が憐れです。



うーん、どうしよっかなー、としばし考え込むサギ。
魚はこのような抵抗をしてきませんから、彼女にとっては想定外でしょうが、
全く慌てず騒がず、巻きつくままにさせています。



そして・・・・。
なんと、くちばしで器用に咥え直して、尻尾を切り落としてしまいました。



尻尾のないトカゲをあっさり飲み込んでしまいました。
実はこの写真、大変残酷なうえ、トカゲの可愛らしい顔まで写っているので
アップにするにしのびませんでした。



血に染まったくちばしで、地面を物色するサギ。
先ほど切り落とした尻尾を見つけて残さず食べてしまいました。

ちなみにリスは、この間もずっと健気に泣き続けていました。
こんな美味しい思いをした場所を、この後もサギが去るとは思えません。
心を残して立ち去りましたが、もしかしたらあのリスは
陽が落ちてサギが帰って行くまで、警報を発し続けていたのかもしれません。



自然界の弱肉強食と、小動物なのに必死で、しかも自分の身ではなく
仲間を守ろうとするリスの姿に、何かすごく尊いものを見たような気がして、
わたしたちがそのまま歩き続けていると、こんなリスを見つけました。



とても和みました。


続く。(え?)




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