前回自衛隊記念日の式典に参加したとき、少し時間があったので
この潜水艦桟橋にやってきて外から潜水艦群を眺めました。
そのとき車両がくると、経営の隊員がどこからともなく現れて門を開け、
通過後はすぐさま鍵を閉め、さすがに秘密のかたまり潜水艦基地だと思ったものですが、
今日はそこにノーチェックで車に乗ったまま入っていくわけです。
通過しながら写真を!と一瞬思ったのですが、当日は雨が強かったのと、
やはり潜水艦基地の出入りなので自粛しました。
反対側の桟橋では「しお」型潜水艦が充電中。
写真で見るよりも実際に上がる煙(水煙?)は派手です。
「どれくらいの時間やっているんですか」
と聞くと、長いときで20時間くらいという返事でした。
それってほぼ一日中やってるってことだよね?
さて、本日見学する潜水艦が繋留してあるSバースに向かう車窓からは
折しも激しくなった雨にもかかわらず、潜水艦の前に立って
わたしたちをお迎えしてくれている数人の姿が見えてきました。
当潜水艦艦長、そして本日ご案内くださる隊員の方々です。
挨拶もそこそこに、まず艦長の写真を撮らせてもらうわたし(笑)
濡れながらバースに立っている人たちを見たときには、内心
「こんな日に雨が降ったのもぜんぶわたしのせいですすみません」
と恐縮していたのですが、ファインダー越しにこの自衛官ポーズをとる
艦長の姿を見た瞬間、「雨でよかった」(その心はレインコート萌え)
と心から思ったことをここに白状致します。
基本勤務中の自衛官はマスクなしで上げている当ブログですが、
本件に関しては潜水艦艦長といういかにもスパイに狙われそうな
職種の方ゆえ、あえて顔を消しました。
この艦長が繁華街で因縁つけられたり、街を歩いていたらものすごい美女が
道端でうずくまっていて、
「どうしました」
「はい、持病の癪で差し込みを起こしまして」
「それはいけない。 肩をお貸ししましょう」
以下略という展開になっては大変ですからね。
自衛隊では一般に潜水艦艦長は二佐が務めることが決まっていますが、
後で伺ったところ、当艦艦長は「日本一若い潜水艦艦長」なんだそうです。
自衛隊の階級と年齢の関係についてわたしはあまり知らないのですが、
40くらいで三佐というのが普通かなと思っていたので、この艦長が
30代後半で二佐と聞いてさすがに驚きました。
「撮っていい」といわれたので、バースから甲板に渡るためのラッタルから一枚。
艦首にツノのような突起物がありますが、これが逆探ソナー(魚雷警報装置)で、
艦首アレイ、側面アレイ、曳航アレイとともにソナーシステムを構成します。
そういえば内部の機関部は皆見せてもらったのですが、
ソナー室はカーテンで覆われ、厳重に秘匿されておりました。
海面近くの艦体を見ていただくと、苔がついているのがわかりますね。
今回初めて現役の潜水艦の艦体を間近で見て知ったことは、
昔の潜水艦のように「甲板」がない分、艦上は人が立っても滑り落ちないような
硬化ゴムのような素材になっていることです。
人が歩く部分とその他では、この写真を見ただけでも素材が別のようです。
特に上部には滑り止め加工がしてあるのだろうと思うのですが、
そうではない部分も金属ほどつるつるしていないので苔や藻が付きやすいのでしょう。
そして付いてしまった藻は掃除しにくそうです。
この部分を「フィン・スタビライザー」だとこの日まで思っていましたが、
現行の潜水艦に「フィン・スタビライザー」なるものは存在しないそうです。
「スタビライジング」する仕組みは外付けのものではなくなってきたってことですね。
これは単に「潜舵」だそうです。
観艦式のとき、ここに三人が立ってラッパを吹いていたのを見ましたっけ。
潜水艦勤務は身体条件が厳しいとよく言われますが、中で聞いたところ、
なりにくさと言う点では航空の次くらい、だそうです。
耳抜きが出来ない人は鼓膜が破れてしまうのでもちろんダメです。
意外だったのは、潜水艦乗りは船酔いに弱い人が案外いるということ。
なぜなら潜水艦は一旦沈んでしまったらたとえ海面が大嵐でも
航行にはまったく影響がなく、動揺もほぼゼロというのが普通なので、
いつまでたっても海面の動揺には慣れないのだそうです。
さて、写真を何枚か撮ってから中に潜入(文字通り)することになりました。
当然ですが、内部は撮影禁止のため、カメラを入る前に預けます。
携帯も隠し撮りの可能性があるので入り口で回収。
カメラを預けた隊員さんは、雨が降っているので濡れてはいけないから、
と制服のお腹の部分にそれを隠して持っていってくれました。
一瞬、信長の草履を温めた秀吉の話を思い出してしまいました(笑)
カメラは、ハッチの横にたっている警衛小屋の中で預かってもらったのですが、
どうもその隊員さんが、取り出す時に動画モードにしたらしく、
小屋の内部の様子が一瞬ですが動画に撮られていました(写真)
さて、ここからはひたすら記憶を頼りに書いていきます。
この夏もアメリカで幾つかの展示艦となった潜水艦を見ましたが、
その全てが展示用に階段が取り付けられていました。
それらは全て展示用に改装されたものであり、本来潜水艦に乗るとは
こういうことだったのか、とすぐに思い知りました。
潜水艦のハッチを降りていくのは結構大変です。
まず、入ってすぐ二重構造になっていて、ラッタルがまっすぐ続いておらず、
足をかけるところが足探り?しないとわかりません。
「先におりますから上で見ていてください」
ここには足を乗せても構いませんからゆっくりと、などという説明を
頷きながら神妙に聞き、その後、
「いきまーす!」
と宣言して降りていきます。
いやーこれ、簡単じゃないよ?
構造上のことは詳しくは言えないけど、ただのラッタルじゃないし。
潜水艦の人って毎日これを登ったり降りたりして、それだけでも大変そう・・。
下からは先に降りた隊員さんの声が聞こえてきます。
「何かあっても下で支えますから!」
って、落ちたら下で抱きとめてくれるんかしら。
それとも身を呈して下敷きになってくれるとか。
いずれにしても現場の方にこんな言われると妙に安心してしまうものです。
一仕事終えたような達成感とともにラッタルを降り切ると、
降りたところには応接室(本当は士官食堂)の大きなテーブルがあって、
そこにパンフレットとコーヒーが、すでに二人分用意されていました。
気がつけば艦内のあちこちには、一般公開用の説明のボードなどが
設置されていて、もうお迎えの体勢万全な感じ。
コーヒーも淹れたてで熱々です。
白い龍が潜水艦を両側から守っているデザインををあしらった
かっこよさ満点のマーク(りゅう型って、それだけでかっこいいよね)
が描かれたパンフレットには、当潜水艦の諸元経歴とともに命名の由来が
「白龍は古来から四龍の一つであり、方角を司る霊獣である
白虎に対応し、西方の守護神とされてます」 (下線ママ)
とあります。
いかにも(比較的)西方の守りである呉地方隊の潜水艦に相応しい名前ではないですか。
しかし僭越ながら下線部の四龍は間違いで、正しくは四神・四獣(ししん・しじゅう)
のことであろうと思われます。
四獣とは中国の神話で天の四方を守る「神獣」のことで、
東の青龍・南の朱雀・西の白虎・北の玄武
を指します。
・・・で今気づいたのですが、この情報微妙に間違ってません?
西方は白い「虎」で、それに対し東のは「青龍」。
????
このいただいたパンフによると、わたしたちが進入してきたのは
士官室の上、セイルの後ろからということになります。
テーブルに着くと、真横のモニターに説明用の画像が現れました。
海上自衛隊の組織図が最初に出てきましたがそこはあっさりと通過し(笑)
「潜水艦がどうやって沈むかご存知ですか」
まず仕組みからレクチャーが始まります。
この絵だとまるでマホービンみたいな仕組みに見えますが、
メインバラストタンクは前後にあるのが普通です。
ここに海水を取り込んで沈む、排出して浮かぶ。
昔からこの仕組みは変わっていません。
潜水艦映画でおなじみ、「ベント開け!」は
ベント開く→海水が入る→潜水
ということで、必ず敵機が空中から襲ってきた時の台詞ですね。
ついでに、映画でこれもおなじみ(かっこいいんだよね)、
「急速潜行!」
というのは、今の潜水艦ではなくなってしまった指令だそうです。
なぜかというと・・・ずっと浮いている必要がないからじゃないかな(適当)
ところで、今回探していて、大変わかりやすく潜水艦の仕組みが
動画で見ることのできる川崎重工の神ホームページを見つけました。
潜水艦も妙にかわいいですが、動画にモブ出演している魚がちょっと萌えます。
というわけで続く。