この度、ご自分の知人がおそらく「あきづき」に乗っている(と思う)、
という一般の方、Bさんからご丁寧なコメントをいただきました。
非公開ご希望ですが、差し障りのない程度にここでご紹介させていただきます。
まずBさん、激励のお言葉誠にありがとうございました。
大変励みになるとともに、ブロガーとして発信する内容への責任も感じます。
さて、Bさんはあくまでも周りから聞き及んだ情報であると断りつつ、
「現場における幹部と曹士の意識の乖離があまりに大きい」
という現在の海自の問題点を指摘しておられますね。
まあ、どんな組織にも組織である以上大なり小なり問題点はあるものですが、
特に海上自衛隊は艦船の操作に携わるという性質上、技術的に
海軍から踏襲しているシステムが多くあり、それが組織の形成にも及んだ結果、
「伝統墨守 唯我独尊」
と言われる一種の硬直を生んでいるのかもしれないと思うことはあります。
さて一方当ブログですが、現場で自衛隊を考察していると言ってもそこは
極端に一隅的なレポートとなってしまうのは否めません。
しかしその点について、Bさんからは
「ブログを拝読して、士官の方はこういう志で物事を考え、
行動されているんだなということもわかりました」
というご感想もいただき、少しは何かのお役に立てているのかなと思いました。
階級間の乖離のような問題は中にいなければ決して理解(わか)ることではなく、
また外部者が触れるべきでもないことではあると思っていますが、
やはりこれほど再々自衛隊関係のイベントに参加し、同好の士と
意見を交換していると、やはり聞きたくないことも聞こえてきます。
まず噂(先日の日南市長の自爆案件に類するものもあり〼)。
上に対する中からの不満、非難の声。
不満に関しては、トップの立場からお話を伺う機会がある者からは
親の心子知らずというか、それはそういうことではないと思うんだがな、
と思われる(もちろん一人心の中で)ことも多々あるわけですが、
逆にそれは不満を持っても無理もない、と思うことももちろんあります。
何れにしても、第三者には永遠に真実はわからないことです。
ただ、わたしは、どんな人にもどんな組織にも理想とは程遠い「現実」はある、
もちろん問題もあるということはもはや達観しております。
その上で言うのですが、
今まで自衛官一人一人との出会いを通じて幾度となく感銘を受けてきた結果、
ひいては自衛隊という組織の健全性と明日を信じるに至り、さらに理解し、
これを少しでもたくさんの人々と共有したいという思いから、
今日もまた東奔西走をし、自分の目で見た自衛隊の姿を発信しているのです。
さて、昼食後、わたしたちは早速艦長室を見学させていただくことにしました。
艦長室は観艦式ではまず公開されることはありませんので、貴重な機会です。
「艦長室」であると誰が見てもわかる艦長室の表札。
「式年遷宮時 神宮より賜」
とプレートで説明されていますが、これはどこの神宮でしょうか。
「あきづき」就役の年にはまだ伊勢神宮の式年遷宮の年ではなかったので、
平成の大遷宮が行われていた出雲大社でしょうか。
ちなみに、先任海曹室の表札も全く同じものでした。
艦長室、入って右側の応接コーナー。
艦長ともなりますと、こういうところに賓客を招くという必要もあるわけで・・・。
万が一、総理大臣や防衛大臣が乗艦するようなことになれば、
こういうところで接遇するためのスペースでしょうか。
加湿器もありますが、海の上でも冬は乾燥するものなんですかね。
壁掛け電話の下には艦長の携帯が充電中。
艦長であっても勤務中は携帯を持たないようです。
なおデスクの上には艦長と愛妻のツーショット写真。
「わたしには勿体無い妻だと思っております」(〃'∇'〃)ゝ
(あ、書いてよかったのかな)
医務室でお見かけした衛生隊の海曹妻も美人さんだったし、
統計的にみて自衛官の妻はしっかりした可愛らしい方が多い気がします。
ロッカーにも引き出しにも鍵付き。
まるで板のように畳まれた寝具。
「やっぱりこういうのも艦長が自分でたたむのかな」
と鉄火お嬢さん。
そうなんですよ。
自衛官は最初からこれを叩き込まれるのでどんなに偉くなっても
起きた途端頭が動くより先に体が動いて「バームクーヘン」を作ってしまうのです。
それにしてもシーツも全くシワがなくてすごいですね。
清潔と整頓は海軍から踏襲された美しい慣習の一つです。
その点アメリカ人は、ベッドメイキングは「しつけ」の範疇ですので、
海軍に限らず、ちゃんとしたうちに育ったら皆普通に行います。
こんな風に寝具を折りたたむ作法はないと思いますが。
居室と水回りの境はドアでなくカーテンで仕切られています。
さすが艦長専用の浴室、足は伸ばせないものの、一人で浸かることのできる
バスタブが用意されています。
「しかし、湯を張ってゆっくり湯船に浸かったことはありませんね」
と艦長。
やはり重責を担う艦長ともなると、なかなかそんな時間もないのでしょうか。
ちなみにふと気になって湯船用の水は海水かどうか聞いてみました。
「違うと思います」
艦長はほとんど湯船に浸からず洗い場のシャワーで済ませてしまうとのこと。
シャワーは奥のスペースでシャワーカーテンを引いて使います。
丸窓は基本開けたままにしてカーテンだけ開け閉めするようです。
ベッドの横に壁をくりぬいた物入れ棚があるのが工夫ですね。
現代の護衛艦には舷窓はほとんどないのですが、外から見ると
01甲板のレベルに二つだけ窓があるのが確認されます。
その二つがどちらも艦長室の窓であるということで、
これは艦長の艦における地位の特別さを意味しています。
洗面所には専用の洗濯機も備えてあります。
「昔であれば従兵というのがいて、艦長はなんでもやってもらえましたが、
自衛隊は基本自分のことは自分でやります」
そういえば、井上成美大将が艦長だった時代、艦長付きの従兵が
部屋のお掃除をしていてベッドで眠り込んでしまい、気がついたら
横に艦長が寝ていたという話をここでしたことがあります。
戦後の民主化された自衛隊では、その階級、身分差は海軍時代に比べると
なきに等しいといってもいいかもしれません。(あくまでも比較で)
艦長のデスクに、「初志」と書かれた写真がありました。
一目で江田島の教育参考館前の階段で撮られたとわかりますが、
見たことがないこの7つボタンの制服は・・・・?
「カンセイブ(?)の制服です」
少年術科学校は1970年(昭和45年)〜1982年(昭和57年)まで存在した
海上自衛隊生徒の教育を行うための機関です。
艦長がこの制服を着て江田島で写真を撮った頃には、
少年術科学校は規模を縮小されて「第1術科学校生徒部」となっていたはずです。
「カンセイブ」とは「幹部生徒部」の略でしょうか。
幹生部は2011年には廃止されてしまったので、この制服も無くなりました。
「初志を忘れないために、今でもこの写真を飾っているんです」
ちなみに、少年術科学校の歴代学長は、全員が旧海軍の海軍兵学校、
海軍機関学校卒の海将補で、中には佐近允尚敏海将の名も見えます。
艦長室の見学を終えたころ、甲板で主砲の動的展示があるという
アナウンスがあったので、甲板に出ました。
今までの艦艇体験からいうと、伊勢湾の掃海隊訓練と並ぶべた凪です。
艦種部分には観艦式の時と同じように立ち入り禁止のロープが貼られています。
三々五々、見学者が集まって来たころ、一人が解説をはじめました。
ぶっつけ本番だったらしく、
「えー・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
頑張れ。
展示は何をするかというと、この動かざること山の如く見える
主砲の5インチ砲を動かしてお見せしよう、というわけ。
ちなみに5インチは127ミリのことです。
横浜のみなとみらいであったMASTという展示会では妙にスタイリッシュな流線形の
イスラエル製かスェーデン製かなんかの家具調主砲が(忘れた)目を引きましたが、
このアメリカ製(BAE 日本がライセンス生産)はシャープでスッキリしてます。
まず横向きー。
「こいつ・・・動くぞ!」
上むきー。
正確にはMk.45 Mod4 62口径5インチ単装速射砲といいます。
Mods4ということは今まで0から始まって5代目ということですが、
開発が始まったのは1960年でも、戦前からアメリカ海軍は
5インチという口径を標準にしていましたので、わたしが今まで見た
アメリカ軍艦にも5インチ砲は珍しくありませんでした。
俯仰角は 65/-15度ということなので、おそらくこれが最大俯仰状態。
真上に撃ったら弾が落ちてきたとき危ないから?(小並感)
観客の方にも向けてしまうのだった。
このタイプ、イージス艦に搭載されていたもので、護衛艦では
「あきづき」が最初に搭載されたということでが、この後就役する
「あさひ」型にも同じタイプが採用されることが決まっています。
観客「はえ〜」
対空砲を撃つこともありますからね。
最大射程は110キロメートルを超えます。
この角度になるってことは、理論上自艦を撃つことが可能ってことか。
VLSのセル越しに撮ってみました。
危険ですから昇らないでくださいというのは高いところにあるから?
展示が終わってから、速射砲を艦首側から撮ってみました。
なんかこうして見るとノーズが長く見えますが。
と思ったら、このタイプは62口径(157-8cm)で、従来型に比べると
砲身を延長して砲口初速を上げてあるのだそうです。
速射砲の薬莢が床に落ちた跡がありありと・・・・・。
砲弾の装填、などは完全自動となっていて、実際に飛んでいく部分
(弾頭)には水上弾、榴弾、対空弾、照明弾を装填します。
陸自の一般公開などで空砲を撃つ時には装薬包を装填して射撃しますが、
このタイプはセンサーが弾頭の未装填を感知すると「エラー」と判断し、
撃つことができなくなるため、空砲射撃も行うことはできないということです。
ところで映画「亡国のイージス」の中で、同じ味方だったはずの護衛艦から撃たれた
ハープーンミサイルに対して護衛艦「うらかぜ」が、主砲で撃ち落とす場面がありますが、
2発目は間に合わずに撃沈されてしまいました。
そこで疑問です。
追尾も全自動のこのタイプなら、2発目の撃墜は可能だったんでしょうか?(独り言です)
続く。