大型連休も終わりですが、皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか。
わたしは知人にお誘いいただき、葉山でヨットに乗ってきました。
有名人、著名人の別荘を海岸線に多数もち、御用邸があり、
日本で初めてヨットレースが行われたということもあって、
別荘とマリンスポーツの街、という、なにやらセレブなイメージのある葉山。
今回お誘いいただいたヨットオーナーは葉山マリーナのクラブ会員です。
駐車場にはとりあえず全ての信号旗がディスプレイされ、
看板にはクルージング(石原裕次郎灯台クルージングとか)や
クルージングの時間チャーターのお知らせがあります。
逗子駅から一本のバス通り沿いに、帆檣が林立する光景が見えたら、
そこが葉山マリーナ。
レストランやショップには観光客も入れますが、ヨット置き場には
クラブの会員と一緒でないと立ち入ることはできません。
サンフランシスコのヨットハーバーは、海上にオーナーがヨットを繋留してあり、
東部ボストンのハーバーの周りは、自宅からヨットに乗れるうちが多数あります。
関西では西宮に昔からヨットハーバーがありますが、ここも海上に繋留式。
しかし葉山、逗子は施設に対して隻数が多いらしく、ヨットは全てこのように
陸上で管理しています。
「どうやって海に入れるんだろうね」
「あのデリックから出航するんだと思うけど」
見ていると、ヨットの乗った台ごと専用の重機?で移動させています。
海に下ろすためのベルトを船体にかけてそのまま下ろす。
結構大変な作業のようですが、あっという間にヨットは海に。
船上には岸壁から渡された20センチくらいの幅のラッタルで渡ります。
「♪ドミソド〜ドミソド〜ドミソドッミソッソソ〜〜(移動ド)」
出航にあたっては先日水雷士を任命された不肖わたくしが、
口で出航ラッパを吹鳴させていただきました。
マリーナを出ると、連休であることもあって結構な数のヨットがいました。
こちら、慶應大学のヨット。
防衛大学校ヨット部のヨットもこの辺でクルーズするそうです。
ミズスマシみたいなヨット。これどうなってんの。
一旦乗ったらずっとこの姿勢のまま帰ってこないといけないわけだ。
ところどころ水鳥の群が漂っていましたが、この鳥が
飛び立つ時には、このように水かきで海面を助走していることが判明。
本日のコースは江ノ島の裏まで行って帰ってくるというもの。
江ノ島を海上から眺めるのも初めての体験です。
この日のクルージングにはオーナーを入れて六人が参加。
一人ずつ舵をとって江ノ島を目指します。
「目標はあの海保の船ヨーソロで」
警備のため錨泊している海保の大型船を目指します。
いつもならこのクラスの船を見ることはないそうですが、
この日は御用邸に宮様がおられたということで、海上警備を厳となしていたのです。
海保の船は海上警察ですので、例えばヨットの上で飲酒していると、
哨戒艇などで指導してきます。
「お酒か水かなんてどうやって見分けるんだろう」
「ものすごい倍率の望遠鏡で見てるんじゃない?」
今まで見えなかった江ノ島の先端が見えてきてびっくり。
連休ということで、びっしりと人がいます。
回廊があるので稚児ケ淵という島の西端だと思われます。
海保の船が近づいてきました。
海保の船ヨーソロで目標にしたものの、
「怒らせない程度に」(笑)
距離を取りつつ後ろを帆走していきます。
このPL31巡視船「いず」は3500トン、就役は1997年。
「でも、ダメ。白い船では全くときめかない。グレイじゃないと」
同乗の
「その瞬間(海上自衛隊に)恋をしてしまったんですよねー」
と初対面の挨拶でもためらいもなく言ってしまう”ネイ恋な女性”が呟きます。
ネイ恋本家である?わたしですが、元々のとっかかりが旧海軍だったこともあり、
実は海保の白い船にも結構ときめきます。
海保の制服も冬服に限りこれも結構ときめきますが、こういう場では黙っています。
しかし、白い船は汚れが目立ちやすいのに、メンテがあまりされてないような。
海保は海自ほどせっせと塗装の塗り直とかしないんでしょうか。
アップにすると塗装がが結構ボロボロなのが目立ちます。
「作業艇の吊るし方が海自とは全く違いますよねー」
「救難のために秒速でおろせるような体制にしてるんじゃないですか」
海自出身のオーナーのヨットなので、乗客も海自視点です。
海自と海保の船の決定的な違いは色々ありますが、一番大きな違いは搭載武器。
これは国防が目的と、救難警戒が目的である違いでもありますが、
海保の船は魚雷や水雷ではなく、ガトリング砲(M61バルカン)くらいしか積んでいません。
それから、独力での出入港のために船にバウスラスターも付いているのも違います。
甲板に海猿くんらしき人影発見。
「なぜ上半身裸・・・・」
「昼休みなんじゃないですか」
いずれにしても海自の艦船ではまず見られない姿です。
海保の船のお尻を見てからヨットをUターンさせ、ハーバーに戻りました。
このころから動揺が激しくなり、左舷に傾いて真ん中に座っていたわたしは
完全に左に滑り落ちる形に。
前方のヨットの傾き具合でお分りいただけるかと思います。
オーナーは右舷舷側に腰掛けて「生けるバラスト」となりました。
「もう少し傾くともう一人座ってもらわないといけないのですが、
お客さんに潮を被らせるわけにはいかないので・・・。
(錘になるのが)一人で間に合ってよかったです」
ちなみにこの後我々のヨットはこの前方のヨットに追いつき、追い越しました。
後から
「私としてはあのヨットを抜かせたのが嬉しかったです」
とメールが来ていました。
昔、この方からヨットを持つことになった、という最初のお知らせをいただいた時、
葉山マリーナにヨットを持つなんてゴージャスでリッチ、と思ったのですが、
この日実際に乗って、わたしが思い込んでいた、船上でパーティをするようなのではなく、
この方のヨットは完全に体育会系だったことがこれで判明しました。
誰も乗らない真冬にも週末は必ず海に出る、
というのを聞いてさらにその確信を深めた次第です。
マリンスポーツのメッカ三浦半島には、いろんなレジャーが存在します。
水上バイクが集団でかっ飛ばしています。
もちろん釣りを楽しむ船も。
突堤にもこの日は釣り客がぎっしりと並んで釣竿を下ろしていました。
この日のランチはこの時後から駆けつけたオーナーの知人女性を加え、
クラブハウスのイタリアンレストラン(ブルーのピアノ付き)でいただきました。
この女性もまた海上自衛隊のファンで、まだ「ネイ恋歴1年」にも関わらず
精力的に艦艇見学などに足を向けておられる方です。
当ブログにも目を通してくださっていると聞いて、つい動揺しました(笑)
さて、というわけで体育会系ヨット体験の1日が終わり、
半分寝ながら葉山から渋滞の道を運転して帰ってきたわたしは、
荷物を降ろして潮だらけの顔を洗うなり、夜8時まで寝てしまいました。
起きてさて写真でも整理するか、とバッグを開けると
カメラがありません。
なんとイタリアンレストランに置いて来てしまったと分り、
お店に確かめて、次の日ドライブがてらTOと取りに行きました。
せっかくまたわざわざ葉山に行くのだから、と大好きなホテル、
音羽の森のダイニングを予約しました。
葉山御用邸をすぐ近くに控え、やんごとなき方々にお料理を供することもある
ここのダイニングは味にも定評があります。
プリフィックスランチでメインにアワビのステーキを選びました。
沖合にはここにも海保の巡視船「たかとり」が錨泊しています。
写真を撮っているとホテルのマネージャーが近づいて来て、
「御用邸の警備のためにあそこにいます」
と教えてくれました。
葉山御用邸は海上からの接近にも目を光らせていて、
ヨットでも近づくとすぐさま監視が警告してくるそうです。
海保の監視船は消防設備として放水銃、粉末放射銃、自衛用として噴霧ノズルを装備しています。
尖閣海域に侵入した台湾の漁船に放水する映像が有名ですね。
こういうのを見ると、船がグレイだろうが白だろうが、
日本を守ってくれる海の防人たちに感謝せずにはいられません。
警備艇の向こうに通過している船は、宮崎県のカツオ漁船宮崎県のカツオ船、
第八十一由丸(よしまる)です。
第八十一由丸はカツオの生き餌となるイワシを捕獲するために
神奈川県の佐島(自衛隊武山駐屯地の近く)に出没するそうですが、
ぐぐっていたら、4年前には気仙沼で横転事故を起こしていました。
造船作業中に傾いて行き横転したようですが、今は元気にお仕事しているようで
よかったよかった。
帰りはせっかくなので、三浦半島の先までドライブしました。
折しもこどもの日、海岸沿いの駐車場にたくさんの鯉のぼりが。
こうしてたまに海で遊ぶと、確かに非日常的な体験は十分楽しいのですが、
反面、海に関わる仕事の肉体的な苦労を実感せずにはいられません。
実際に波に揺られ、潮の飛沫をあび、直射日光に炙られ・・・・。
自分の意思ではどうしようもない状況に肉体を翻弄されるのはそれだけで
十分に重労働であることを思い知ります。
岸壁から見たり停泊している船を見学したり、たまに体験航海で乗艦するだけでは
所詮上っ面しかわからないものなんだなと思うとともに、
改めて海自、海保の現場の皆さんへの感謝の気持ちが増した、わたしの連休でした。