7月8日、サンフランシスコ空港にアシアナ航空のボーイング777が墜落し、
乗客二人が死亡した事故は、ここアメリカでも連日報道されています。
事故後ほぼ1日、空港は使用禁止になり、空港で夜を明かした利用客もいたのとのこと。
この後われわれは後半西海岸で過ごすのですが、到着予定が
そのサンフランシスコ空港であるだけに、不謹慎かもしれませんが
そのときでなくてよかった、と胸をなでおろしながら繰り返される映像を見ています。
テレビでは事故当時の様子と、パイロットの飛行時間が43時間しかなかったことを
繰り返しており、また死亡したのが「チャイニーズ・スクールガール」であると言っています。
乗客がカートまで持ち出して避難している様子が、やはり避難する乗客の撮った
携帯メールでこれも流れていたのですが、現場はこれを制止する者もないほど
混乱していたということなのでしょう。
この事故を起こしたアシアナ航空は韓国の航空会社ですが、その韓国で
このニュースを伝えたキャスターがとんでもない非常識発言をしたことが、
ここアメリカでも話題になっています。
”Anger After Newscaster Calls Chinese Crash Deaths a ‘Relief’”
これがタイトル。
「ニュースキャスターが中国人の事故死亡者で『ほっとした』といって怒りを買う」
というところでしょうか。
“We just received an update that
the two dead are assumed to be Chinese….
We can say it is a relief at least for us,”
(たった今入った最新情報によると、二人の死者は中国人とのことです。
少なくとも私たちにとっては安心したといえるでしょう)
と言ってしまったというのです。
まあ、日本で地震が起これば「天罰」と号外をだし、不心得者の仕業とはいえ
「日本の地震をお祝い」し、日本人になりすまして「ボストンのテロをお祝い」する、
こういう前科のある国ですから、ニュースキャスターがこのような発言をしたとしても
実のところわたしはあまり驚きませんでしたけれど。
これを受けて勿論中国のネット利用者は皆激怒。
“How dare they use such an expression?
They proved themselves to be extremely deplorable,”
(なんだってかれらはそんな表現をするんだ?
自分たちが悲惨なことを証明してるじゃないか)
“ignorant and inhuman thinking."
(無知で非人間的な考えだ)
この件について、発言をしたニュースキャスターのした言い訳が、これ。
“The comment was made to emphasize the fact that there is
no Korean dead in the accident, which is a relief for us.
We apologize for not running the live show smoothly.”
(コメントは、事故によって韓国人が死ななかったという事実を強調したもので、
それが我々に安堵を与えたという意味です。
生放送を円滑に放送できなかったことを謝罪します)
いや・・・・これ、まったく説明になってませんわ。
最近まったくおんなじことを日本のアナウンサーに向かって言った気がするけど、
とにかく謝罪は『生放送でうっかり変なこといってしまったからそのことは謝る』
って、全然、何が問題だったのかわかってないじゃないですかー。
だいたい、それじゃ当初の「問題発言」と全く同じこといってるだけじゃないですかー。
案の定この言い訳に中国人はさらに激怒。
“Is he a human?”
(こいつ人間か?)
“brain-damaged,” “unethical”
(脳みそ腐ってる)(非倫理的)
まあ、このような激しい非難はとどまることなく、炎上の状態です。
自国の航空会社が起こした事故で亡くなったのが自国民でなくてよかった、
という考え自体が、わたしもですがおそらく日本人である皆さんには理解できないでしょう。
日本では海外での事故を報じるメディアが真っ先に
「日本人の関係者はいなかった模様です」
という事務的な「報道」をすることにすら、文句を言う人がいるくらいなのです。
しかし、こんなことを考えることすら不謹慎であるのに、ましてやそれを公言してしまう、
これがいかに非常識かということがこのキャスターも、テレビ局もわかっていないらしい。
もしかして、この国は日常的に日本に対して「愛国無罪」をしすぎて、
世界的な倫理的常識というべき線引きが全くできなくなったのでしょうか。
それにしても、円高による輸出業の壊滅的打撃と言い、日韓スワップ一部打ち切りにより
今後予想される経済的パニックと言い、IMFの査察(ストレステスト)と言い、ポスコ敗訴と言い、
ここのところ韓国には日本から盗んだ仏像の仏罰としかいいようのない試練が降りかかっていましたが、
ここに至ってこの事故です。
乗客の大半が他国人であったこと、事故原因はヒューマンエラーであることから
国家規模の賠償金の請求が予想されます。
しかしそういった、まず目を向けるべき部分を、どうもこの国の国民は直視できないらしい。
(あれ?最近日本のアナウンサーに対して全く同じようなことを書いた気が)
中国メディアを翻訳したこちらのニュースによると
On Monday, much of South Korean media and social networks
focused on the heroic efforts involved in evacuating the plane,
with headlines about how the crew and passengers reacted swiftly,
limiting further casualties.
(月曜日には多くの韓国メディアやソーシャルネットワークは、機内から脱出する際の
英雄的な努力にフォーカスし、ヘッドラインは乗務員や乗客が迅速に反応し、
負傷者を最小にとどめたかを伝えた)
“The 10-Minute Miracle,”
was the headline on South Korea’s biggest national daily newspaper,
The Chosun Ilbo.
(”10分間の軌跡”
これが韓国大手の新聞、朝鮮日報のヘッドラインである)
“Asiana cabin crew’s professionalism,
courage and sacrifice gave me warmth and made me cry.”
(《ある韓国人の感想》アシアナのクルーのプロ意識、
勇気と自己犠牲には心が熱くなり、涙せずにはいられなかった)
Only one major South Korean daily prominently raised the question
of potential pilot error in the crash,
with a headline on its front page that read:
“Pilot of Crashed Plane Only Had 43 Hours of Flight Experience on B777.”
(墜落事故原因ががパイロットの能力に起因しているという疑問を呈した新聞社は
たった一つで、そのヘッドラインと第一面で
『事故機のパイロットのB777の操縦経験はたった43時間だった』と報じている)
あまりきちんと訳せてないかもしれませんが、だいたいこんな感じです。
ここアメリカでのニュースは、パイロットの経験が非常に浅かったこと、そして、
自動着陸誘導装置(ILS)が切られて、手動で着陸することになっていたこと、
管制塔の呼びかけに対しパイロットの答えがほとんど聞き取れなかったことを言っています。
事故機を操縦していたのは副機長で、B777の操縦経験を積むための「慣熟飛行」、
さらには指導していた機長の方は先月15日に教官の資格を取ったばかりで
教官として乗務するのは初めてだったそうです。
事故の状況から、教官である機長が機体の速度が落ちていることに気付けず、
リカバーのための操作をできなかったのが最も重要な問題だという話もでているようです。
しかし、韓国国内のメディアと国民が、死亡者を「自国民でなくて良かった」とし、
「犠牲者がたった二人で済んだこと」を、乗務員の「勇気」のおかげ、と称えるのとは
全く別の話もちらほら聞こえてきています。
産経新聞はこの脱出の様子をこう報じています。
CNNテレビ(同)によると、乗客のエリオット・ストーンさんは、不時着直後に、機長から
「皆さん、落ち着いてください」というアナウンスがあったと振り返った。
しかし、多くの乗客は、すぐにベルトを外して、
緊急脱出用のシューターも配備されていないドアから一目散に外へ飛び出したという。
脱出時に荷物を持ち出すのは厳密に禁止されていると思うのですが、
荷物どころかカートまで乗客は引っ張っていましたからね。
そして、乗務員のうち「7人がショックで失神していた」
というニュースもどこかで見ましたし、
「ろっ骨を骨折しながら非常ドアを開けた乗客(アメリカ人)もいたということです。
しかし結果よければ、というのか、こちらのニュースでもどちらかというと
乗客乗務員に批判的な報道は抑えられ、「冷静に振る舞ったのでそれが幸いした」
という論調になってきています。
わたしはふと、911の同時多発テロのとき、みずほ銀行の行員たちが一階まで事故後
非常に迅速に避難したのに、ビルの警備員に「隣のビルだから戻れ」
と言われて「素直に従ってしまい、結局ビルが崩壊して殉難した」という話を思い出しました。
この事故がもし日本の航空会社で、乗客が日本人だったら、おそらく乗務員の指示に
おとなしく従って、ほとんどは座席にじっとしていたのではないでしょうか。
それが吉と出るか凶と出るかは、これまた仮定の話なので何とも言えませんが。
航空機事故は一般に「魔の11分」と言われ、そのほとんどが
離陸時の3分と着陸時の8分
に起きていると言われます。
そして、ひとたび事故が起こったとき、地上では90秒以内に全員を脱出させることが
安全のために求められているそうです。
これを「90秒ルール」というのだそうですが、今回、乗客のほとんどが中国人で
「我先に」脱出したことが幸いして被害が少なかったと言えなくもありません。
まあもっとも、日本の航空会社だったら、おそらく乗務員は迅速に、かつ冷静に
乗客全てを90秒以内に脱出させることができたとわたしは信じていますし、
彼女らは少なくとも事故のショックで失神などしなかったであろうとも思っていますが。
これを書いている2時間くらい前に出されたロイター通信によると、同機は着陸時に
目標を25パーセント下回る速度で飛行し、機体後部が滑走路前の防波堤に衝突、
機体の破片は海に散乱している、ということを明らかにしたようです。
そして同ニュースでアシアナ航空の社長が会見をしたことも報じられていますが、なんと
「すべての運行責任は教官を務めた機長にある」
と明言したそうで。
どんな原因の事故でも、とにかく最高責任者が責任を負う発言に終始するのが日本企業です。
もし航空事故が起こったら、日本の企業ならとにかくトップが「申し訳ありませんでした」
と最初に会社として事故そのものに頭を下げたりするのですが、
・・・・・・・この国のトップは、こういうこと言っちゃうんですね。
どうしてなったばかりの教官と、機体に全く慣れていない副機長が組んだのかとか、
そのシフトに何か問題はなかったのかとか、そういう原因追及をすることなく、
まず一切会社は関係ない、と。
状況から見てこの事故の原因は副機長のミスとそれをリカバーできなかった機長であることは
ほぼ間違いないんでしょうが、このあたりも「死んだのが韓国人でなくてよかった」という
発言と同じく、我々からは少し理解しがたい感覚に思われます。
いや、決して嫌味とかではなく。
亡くなった中国人の16歳と17歳の少女たちは、サンフランシスコで
2週間の語学研修のためのサマーキャンプを予定していたのだそうです。
まだ人生これからというときに・・・。
心からご冥福をお祈りしたいと思います。
ところで日本のマスコミはほとんどが当初「事故原因は機体の不具合」という論調だったそうですが、
これはやはり、この間のB787と同じ構図と考えてOK?
この、アシアナ航空社長の
「全責任は機長にある」
という発言をメディア各位はちゃんと同じくらいの時間を割いて報道するんでしょうね?