フラッグデッキからさらに上に登ると、そこは04レベル。
いわゆるナビゲーションブリッジと言われる艦の「頭脳」に上がってきました。
この部分は、全体が二重の舟形をしていて、艦首に向いた方が船の舳先型です。
ここはその二重の内側部分。
入り口でもらった案内図によると、ここが「パイロットハウス」とあります。
パイロットハウス、というと艦載機のパイロットの待機室みたいですが、
英語ではこれが操舵室を意味します。
内部は少しずつ少しずつ手を入れていっているらしく、
ペンキが塗りたてのところと、全く放置されているところが混在しています。
この「セーラム」とネームシップの「デモイン」が設計されたのは
第二次世界大戦末期で、設計思想は一にも二にも当初は
「日本の重巡洋艦に打ち勝つこと」
主眼に行われ、特に特攻隊の攻撃を想定していたので、
操舵室の窓が必要最小限にくり抜いてあるあたりにそれが窺えます。
メンテナンスはおそらくボランティアのような人たちが行なっているので、
広い艦内のあちらこちらを毎日少しずつ手入れしていったとしても、
一巡してくる頃にはまた手入れが必要になっているような感じ。
海に浮いている鉄の塊である船は、放っておくとこうなってしまうのです。
ここも何か作業中ではあるらしく、ブルーシートが置かれていましたが、
くしゃくしゃで「ただ置いてあるだけ」という感じ。
舵輪の機械には伝声管が備え付けてあります。
足元にある緑色のものは、ヒーターだと思いますが、例えば護衛艦などでも
同じようなところに同じ感じでヒーターがあります。
DC ステイタスで「ボイラー」「エンジン」とありますが、
この「DC」は・・・・「Direct Cut」とか?
ラジオナビゲーション機器です。
ヘッドセットがコードがもつれたまま放置されています。
速度計。
パイロットハウスの艦尾よりには、
TACTICAL PLOT(直訳すると戦術室?)
なる部屋があります。
今で言うところのCIC(戦闘指揮所)と考えていいでしょうか。
前にも「マサチューセッツ」の項で描いたことがあるのですが、
CICという概念がが戦闘艦に生まれたのは第二次世界大戦中のことです。
レーダーというものが生まれてきたからこその概念で、戦後は
一層自動化が進んだため、情報を集積する場所が艦橋でなくてもよくなり、
今では CICは通常甲板よりも下階にあるのが普通です。
「セーラム」は第二次世界大戦の「最後の重巡洋艦」です。
このころは、この下の階にあったフラッグプロットにおいて、
発光信号や手旗信号、原始的な無線機程度で他の艦と通信を行い、
この画面の右端に見えている透明のアクリル板に、 白フェルトペンを使って、
レーダー手が通達する敵艦や敵編隊の位置、進行方向、数といった情報などを
手で書き込むことで情報を集約していました。
戦闘指揮所に詰める乗組員たちが使用したヘルメットが無造作に置かれています。
立てかけられているすのこ状のものは脚台かどこかのふたか・・・。
航跡自画器だと思います。
ガラスの下に紙があるので何かと思ったら、チェックしたという署名入りのメモでした。
海図にボードなど、ここで使われてたものがそのまま放置されています。
「サウンディング・インジケーター」は通信システムだと思うのですが、わかりません。
1958年の3月3日という日付入りで、通信で使う情報が書かれています。
「HELO COMMON」を使う、というのあコールサインでしょうか。
04レベルだけを地図にするとこうなります。
今タクティカルプロットとキャプテンシーキャビンの部分を見たのですが、
その一つ外側の「ナビゲーションブリッジ」の部分を見てみましょう。
このころは情報の収集と分析などに紙が使われていました。
なので、こういうところにも紙を収納するラックがあったりします。
今では取り払われていてありませんが、昔は艦長用の椅子もあったでしょう。
ジャイロレピータ、羅針儀があります。
航海長が航海指揮に使用するものですが、艦橋の前壁、
艦の中央になるところに主羅針儀があるのが普通です。
よく見ると機器に黄色い注意書きがあります。
Polychlorlnated Biphenyls、PCBsを含むので廃棄する時には関係各省に連絡の上、
とありますが、これは日本語だとポリ塩化ビフェニルのことです。
熱に対して安定し電気絶縁性が高く、耐薬品性に優れているため、
変圧器やコンデンサといった電気機器の絶縁油、可塑剤、塗料、
ノンカーボン紙の溶剤など、非常に幅広い分野に用いられたのですが、
人体に対して毒性を持ち、付着すると発癌性となることがわかっています。
わが国では「カネミ油症事件」後には製造・輸入が禁じられました。
USS「セーラム」の速度に関するスペックが書かれています。
例えば、13ノットから17ノットまでが「スターボード」で
回転数(RPM、レボリューションズ・パー・ミニット)は
115から122、と行ったようなことが表になっています。
ちなみに「フル」は18−22ノット、RPMは157−203、だそうです。
見学用に作られたらしい、外を見るための台があったので、わたしも登ってみました。
ふおおおおお〜! これは絶景じゃー。
5インチ砲の向こうに主砲が二段重なっているのが見え、艦首までが一望できます。
デッキ外側に出てきました。
ガラス窓の部分は、特に航空攻撃があった時に銃撃を受けないように
深くて分厚い庇に防護されているのがわかります。
前にも言いましたが、「セーラム」が完成したのは戦後であり、
このような対空戦闘も全く過去のものになった時に就役していたのです。
続く。