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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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帽振れ〜平成29年度遠洋練習航海 帰国行事

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本年度の遠洋練習艦隊は第67期一般幹部候補生課程修了者約190名
(うちタイ王国海軍少尉1名)を含む約580名で行われました。

訪問国は8カ国、13の寄港地に停泊。
総航程約5万7千㎞で、

アメリカ合衆国(パールハーバー、サンディエゴ、ニューポート、フォートローダデール、アンカレッジ)

メキシコ合衆国(チアパス、マンサニージョ)

キューバ共和国(ハバナ)

チリ共和国(バルパライソ)

エクアドル共和国(グアヤキル)

カナダ(バンクーバー)

ロシア連邦(ウラジオストク)

大韓民国(ピョンテク) 

を約半年で訪問してきたことになります。
各都市でどんな交流行事が行われたかは海上自衛隊のHPに上げられた
写真で見ることができます。

大韓民国に寄港すると聞いた時、旭日の自衛艦旗に反応する彼の国のことを思い、
わずかに心配だったのですが、この件に関しては出国のさい行われた
水交会での走行会席上、元海自の方から、

「韓国海軍と自衛隊は非常に仲がいいんですよ」

と伺い、それが杞憂であったことがわかりました。
ピョンテクでの交流行事を見ても、日韓海軍、和気藹々とやっている様子です。

ピョンテクに海上自衛隊が寄港するのは初めてのことだったようですが、
この後の海幕長の訓示でも、今回の訪問はロシアのウラジオストックと並んで
国同士の相互理解や信頼醸成に貢献し、訪問先海軍との交流を進化させた、
と評価されていました。

練習艦隊航行中、バルパライソの艦隊司令からいただいたハガキです。

これは赤道通過の際に行われる赤道祭りの写真で、
今から真鍋司令がこの大きな鍵で「赤道門」を開けるのです。

昔の遠洋航海では皆が工夫を凝らした仮装をしたようですが、
現代ではせいぜい赤鬼青鬼が現れるくらいでしょうか。

これによると、フォートローダデール市などから、
練習艦隊寄港日を

「海上自衛隊の日」

とするという申し出があったと書かれているほか、
各地で練習艦隊が歓待された様子がわかります。

ちなみにこのハガキはエアメールで、切手はチリの600ドル(高っ)
消印はValparaísoとなっていました。

さて、巡閲を終え、海上幕僚長が横須賀地方総監、
道満誠一海将に先導されて帰国式典の報告を受けるため移動します。

海幕長訓示が行われました。

実習幹部諸君、諸君は積極的に訓練や課題に取り組み、
初級幹部として必要な基礎的な知識技能を習得するとともに、
シーマンシップを涵養し、海の魅力と厳しさ、そして
国際公共財としての海洋の重要性を感じ取ってくれたことと思う。

また訪問した諸外国海軍を通じて、海軍の果たしている役割、
各国の安全保障の現状や取り組みを自らの目で確かめるとともに、
自由な海上交易に深く依存する我が国にとって、
海軍間ネットワークの持つ重要性を理解してくれたものと思う。

諸君は本日からは部隊勤務の第一歩を踏み出すこととなる。
海上自衛隊のすべての活動の基本は千変万化する海の上であることを肝に銘じ、
いかなる配置にあろうとも、海の上を基本とした物の見方、
考え方を持ち続けるとともに、今まで築き上げた同期の絆を大切にし、
切磋琢磨しながら勤務に邁進してもらいたい。

そして、練習艦隊の乗員に向けて、実習幹部の良い手本となり、
海上武人としての第一歩を踏み出した瞬間に立ち会ったことを
誇りとして今後の勤務に励んでもらいたい、と訓示を結びました。

頭中で海幕長の方を見ている一人一人の写真をアオリで撮るカメラ。
それにしても幹部たちの顔の日焼けしてなんとたくましくなったことでしょうか。

この後は練習艦隊司令、練習艦艦長に花束贈呈が行われました。

ちょうどこの日は選挙後初に衆参で委員会が行われたため、議員は全員が
代理を立てるかあるいは祝電だけの参加となりました。

政治家の出席がなかったので、防衛省からの挨拶がありました。

ここで式典は終了です。
海幕長や陸空司令、来賓のうち何人か、そして
在日米軍の第7艦隊司令であるフェントン少将が副官を従えて
退場していきました。


このときわたしの隣に座っておられた方は、横須賀の水交会会員で、
長年自衛隊に深く関わり、お世話をして来られたという方でした。
その方によると、

「アメリカ軍の副官は飾緒を左肩に付けてるんですね」

あれ、そうだったっけ?
フェントン司令官と引き上げる副官が長身の超イケメンなので、

「やっぱり米軍も要職の司令官の副官には見栄えのいいのを持ってくるんだなあ」

と感心しているうちに通り過ぎてしまったので見ていませんでした(笑)
それから、在日米軍の軍人の名札には

「チェスター・W・ニミッツ」(一例)

というようにカタカナで名前が書いてあるのを知りました。

ちなみにこの方は例えば今の一佐、海将補クラスが防大生であった頃、
自宅に招いてご飯を食べさせたりして面倒を見ていたのだそうで、

「うちに泊まった時にね、公衆電話どこですかって聞くんですよ。
なに、電話くらいうちのを使えばいい、と言っているのに、
『いえ、それは絶対にしてはならないことになっています』って。
本当に彼らは厳しく躾けられて礼儀正しくて、ねえ・・・」

「そんな防大生が今やこんなに偉くなってるのを見てさぞ嬉しいでしょう」

「ええ」

しかし、この方はよくいる

「あいつは俺が育てた」「俺は自衛隊ではVIP」

ということを言いたがるオヤジのような偉そうな感じは全くない、
純粋な「自衛隊ファン」であり、かつ無私を感じさせる素敵な方でした。

 

式典が終わったので、あとは慣習に従って行われる別れの儀式です。
まず練習艦隊司令と艦長が今一度「かしま」に乗艦します。

続いて袖の金線も半年を経てようやく馴染んできた風の幹部たちが
ふたつの舷梯から全員乗艦を始めました。

時間を短縮するため?か、集団の両側から列になって乗り込んでいきます。

そして、行進曲「軍艦」の鳴り響く中、立ち並ぶ練習艦隊乗員の前を
敬礼し別れを告げながら通過していきます。

横須賀音楽隊のお仕事は式典の演奏のみであったらしく、
この時の「軍艦」は生ではなく放送によるものでした。

舷門まで来ると、そこには練習艦隊司令官ら幹部が立っています。
ここに来ると新少尉たちは一人ずつ司令官らに正対し、言葉を交わして
さらに自衛艦旗のある艦尾方向に今一度敬礼をしてからラッタルを下ります。

しかしその当然の結果として、後ろに行くほど列が進まなくなります(笑)
その間、彼らはずっと敬礼したままその場足踏みをしていなくてはいけません。

余計なお世話ですが、仲が良かった、あるいはお世話になった乗員の前では
個人的な会話の一言二言を交わすことはできても、そうでない場合、
さらにお互いあまりいい印象がなかった場合()
この状況は非常に気まずいのではないかと激しく気になってしまいました。

そして一番最後に「かしま」を降りるのは、タイ王国の留学生です。

日本に留学し、さらには遠洋航海に参加できるタイの留学生というのは
国に帰ればきっと王室につながる高貴な家の出だったりして、
いずれにせよ超エリートに違いありません。

遠い将来、この新任幹部の中から例えば海幕長が出た時に、彼が
タイ海軍の最高位に就いていて、何かで再会し、この遠洋航海の
思い出話に花を咲かせたりするという可能性は大いにあるわけです。

この日ここにいたことによって、後世から我々は

「日泰海軍の歴史の目撃者」

と呼ばれることになるかもしれない、などと夢想するのは
なかなかワクワクすることでありませんか。

「帽〜ふれ!」

と号令がかかり、艦上と岸壁で帽がうち振られます。
女性カメラマンは舷側から新任幹部たちの帽ふれを狙う構え。
うーん、きっといい構図がショットできるでしょうね。

正式な式典での帽振れではないせいか、乗員たちの表情も
にこやかに和らいでいる気がします。

「頑張れよ!」

と真ん中の幹部。

「ほっ・・・やっと降りたな」

「やれやれ、手を焼いたぜ」

と右端の海曹二人。(あくまでもフィクションです)

わたしはこの艦橋の上の一団に気を取られ、こちらを写しているうちに
残念なことに肝心の新任幹部たちの写真を撮りそこないました(´・ω・`)

ここからものすごい存在感のオーラが放たれていたため、
つい撮影を優先してしまい、気が付いた時には「帽戻せ」になっていたのです。

ラッキーなことに新任幹部の帽振れはまだ終わっていませんでした。
「はるさめ」に向かっての帽振れもこの後行われたのです。

「はるさめ」甲板では青い作業服と幹部が満面の笑みで帽を振っています。

「帽戻せ」の号令がかかった後も、「はるさめ」からは拍手と、
そして両手を振り、自衛艦旗を振って別れの挨拶が止みません。

そのとき、「はるさめ」のおそらく海曹が、何事かを叫びました。
そこにいた全員がどっと笑い、「はるさめ」の幹部たちも
その何事かを言った乗員の方を見て笑っています。

彼がなんと言ったのか、わたしには残念ながら聞き取れませんでした。

しかしこの束の間の出来事によって、本年度の遠洋練習航海における新任幹部たちと
練習艦隊の乗員たちが共にどんな半年を過ごし、どんな絆の元に無事航海を終えて、
今ここに互いの壮途を祝福し合っているのかが、少しだけわかるような気がしました。

 

続く。

 


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