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5年後の棒倒し〜平成29年度 防衛大学校 開校記念祭

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防大名物棒倒し。

これはいうまでもなく、発祥は海軍兵学校です。

兵学校を描いたものには必ずこの棒倒しについての言及があるのですが、
中でも兵学校の英語の先生だったセシル・ブロックがこの棒倒しについて
外国人の目で素直に感動したことを述べています。

ブロック先生に限らず、江田島を訪問した海外の武官は、やはり皆
この棒倒し競技に驚愕し強い印象を受けて帰るのが常でした。

自分の過去ログに()ブロックが見た棒倒しの記述を発見したので貼っておきます。

紅白に分かれ、約百メートル離れて対峙した一団は、
在校生を二分した同数の攻撃隊と守備隊に分かれています。

防御隊は、高さ2メートル半、直径15センチの丸い棒を中心に、
その周りを幾重かのスクラムを組んで固めています。
棒の周りには頑強な体格の者ばかりが選ばれます。

下級生たちの肩の上には一号が乗って、敵の攻撃隊と直接戦うのです。
そして、その棒のてっぺんに刺さっている旗を取るのですが、
その棒の根元には、二人の特に頑丈な生徒があぐらをかいて棒を支えています。

 

昔は頂上の旗を取れば勝ちということになっていたのですが、今では

「3秒間30度の角度に傾けば勝ち」

というルールに変わっています。
さらに、昔は時間制限はなく、とにかくどちらかが取るまで行われましたが、
今は2分と決まっているそうです。

最初にこれが2分、しかも大抵は時間制限内に勝負がつくと聞いた時には
その短さに結構驚いた記憶があります。

さらに、昔は棒が倒れなくとも旗を取れば勝ちだったので、
厳密には棒倒しではなく「旗取り」というべきだったのですが、
今は倒せばいいだけなので名実ともに「棒倒し」となっているのです。

予選第二組は緑の第3大隊対青の第2大隊。
抽選によるものか、寒色系同士、暖色系同士の予選となった訳です。

慣例に従い、両チーム交互に気合いを入れるタイム。

こちら青の第2大隊は、攻撃隊と防御隊で交互に万歳?をするスタイルです。

ところで、確認のために自分のブログから防大の棒倒しの記事を探してみたところ、
昔(2012年だからもう5年前)当時の棒倒しは

「対決前に両大隊の棒倒し責任者が出てきて中央で睨み合う」

という儀式をやっていたっぽいんですよ。
プロレスラーとかボクサーが試合前に顔の距離1センチのところで
互いの目を睨みつけるパフォーマンスに近い感じのを。

あれから5年、何が起こったのか、このにらみ合いはなくなっていました。

競技が始まる前には、地面に描かれたサークルのきっちり真ん中に
棒倒しの棒が横たえてあります。
2m50cm、直径15cm、規格は兵学校のを踏襲しているようですね。

団体の中央で一人ヘッドギアなしなのが「棒倒し責任者」。
昔は「棒倒し総長」といいましたが、暴走族が社会問題になった頃、
まるで暴走族のリーダーのようだ、ということで「責任者」になりました。

これも世論を忖度する防衛省的謎の圧力の被害と言えなくもありません。

前にもいったことがあるように、わたしなど、責任者という名称は
どうにも役所的で棒倒しの実態にはそぐわないと思ってしまいます。

さらに本来なら責任者同士でメンチを切り合う(この文章もなんか変)はずが、
いつのまにかそれを無くしてしまい(たぶん不良の喧嘩みたいで柄が悪いとかで)
何のために両チームの火元責任者、じゃなくて危険物取扱責任者、でもなくて
棒倒し責任者がヘッドギアなしで出てくるのか、すでにその理由が失われていることを、
わたしはこの日、草葉の陰でじゃなくて上で一人考えずにはいられませんでした。

防大生の気質も5年も経てば変わってくるのは当然ですが、それが
より一層ジェントルに、ソフィスティケートされ、荒々しさの対極へと
変化していっているその実証の一端を見た気がしたからです。

いや、いいんですよ。
紳士たれがモットーでもある防衛大学校としては。

ただ、たとえ形骸的にであっても荒ぶることが許されているはずの棒倒しですら
徐々に徐々に牙を抜かれ、お行儀のいいスポーツへと変遷しているようで、
普通の学校ならいざ知らず、戦闘指揮官養成学校でこれは如何なものか、
と「ぼんやりとした不安」を感じずにはいられなかったのも事実です。

いずれにせよ、例えば今日から5年後、ここ防大グラウンドでは
どんな棒倒しが行われることになるのでしょうか。

 

合戦前の準備が始まりました。
総員配置につきます。

棒を立て、「上乗り」が頂点に軽々と飛びつきます。
簡単そうに見えますが、実はそうでもない気もします。

 

下にいる人たちが皆で手を上げている様子は、まるで太陽神ラーの祈祷とか、
ムウ帝国のマンダに捧げる祈りみたいですが、これは推察するに「空手証明」、
爪が覆われて武器を隠し持っていないことを証明するための動作です。

これも5年前は整列している時に手を前に出して、それを審査員が
歩いて見て回っていたのが今回なくなっていたのでそう解釈したのですが。

開始の合図があり、青の攻撃隊が一斉に駆けていきます。

そしてたちまち敵のオフェンスがサークルを攻略せんとやってきました。
手前の4人はサークルの後方から攻めようとしていますが、そうはさせじと
サークルの後ろには武闘系の学生を配置します。

棒の周りを立って固めるのは四人。
勝手に「四天王」と呼んでいたのですが、どうも本当にそういうらしいです。

兵学校の頃は、これは上級生の役目と決まっており、四号生徒(1年生)は
大体が下で棒を支える係に配されていたようです。

あっ、緑の攻撃隊がサークルを割ろうとしてますね。

ちょっとこれ一体どうなってるの、と一見思ってしまいました。

オフェンスが肩の高さに浮遊しているように見えますが、
これはサークルに取り付くようにして背中を向けている攻撃隊の背中に
駆け上がろうとしてジャンプした瞬間なんですね。

そして、四天王はいつのまにか一人が脱落して3人に・・・。

手前、大体6人くらいで(笑)乱闘となっております。
攻撃隊が一列に並んでいるように見えるのは、連続してサークルに突入し、
活路を開こうという作戦に違いありません。

手前の海自迷彩の審判が何かアクリルのボードを掲示しています。

向こうからサークルをよじ登ろうとする突攻を
果敢にも足蹴にして撃退する四天王(のうちの二人)。

左、サークルに突撃していこうとする突攻を二人掛かりで
引きずり出そうとしているオフェンス。

右は緑勢がサークルの外側から人員を剥がして突破口を作ろうとしています。

棒の周りを固めているサークルを緑が覆い隠すような状態になってきました!
どう見ても緑が優勢。

しかし棒の上の上乗りは健在。
上乗りがいる限り棒を倒したことにはなりません。

ずっと上から自分を引き摺り下ろしにやってくる
敵と戦う味方を見ているのってどんな気持ちなんでしょう。

張り手?を食らう人、突攻を羽交い締めする人の脚にしがみつき
足止めをする人、ウレタンのギアが壊されてしまう人・・・。

しかし次の瞬間・・・、

青の第2大隊の攻撃が棒を倒したらしくホイッスルが鳴りました。
すごくいいところまでいっていたのですが、青組が早かったようです。

勝敗が決したらさっさと自陣に戻ります。
真ん中の人、ノースリーブになってしまいました。

試合が終わり、両者定位置に整列して礼。

礼が終わるなり思わずガッツポーズ。
第2大隊対第3大隊は第2大隊の勝利となり決勝進出を決めました。

ここで観客に向けてアトラクションタイムです。
柔道部が二人ひと組で投げ技を披露しました。

えー、これは背負い投げでいいのかな?

単なる「型」とはいえ、全員が相手を地面に叩きつけた時、
観衆からは驚きのどよめきが漏れました。

投げられる方も受け身ができているとはいえ、
硬い地面に体を落とされて痛くないんでしょうか。

しかもその中に女性が一人混じっていました。
投げている方の柔道着には63期と刺繍されていて、4年生なので
投げ役を最後にしているらしいのがわかりますが、観客としては
女性が男性を投げ飛ばしているのをちょっと見たかったかも(笑)

 

迷彩服でベートーヴェンを華麗に弾く男子がいれば武闘系柔道女子もいる。
なかなか防衛大学校とは人材豊富な集団だと思った一日です。

続いて防大応援団による演舞が行われました。
「あおざくら」を読んだばかりの知識によると、応援団の訓練は凄まじく、
これに耐えて一人前になるのが「男の証」みたいな風潮があるとか。

持ち上げるだけで大変そうな巨大な大団旗を見ただけでその気迫を感じます。

応援団の団員については出身高校と氏名が紹介されたのですが、例えば

「埼玉県立川●高校出身」

というと、後ろで見ていた防大生の中から

「めいも〜〜ん」

「東京都竹●高校出身」

「めいも〜〜ん」

その日家でその話をTOにしたところ、

「それ、応援団文化。学校をいうとめいもーん、というのが約束なの。
旧制高校時代で高校イコールみんな名門だった時代の名残りなんだよ」

と教えてくれました。

「なんだ、川●高校と竹●高校が本当に名門なのかと思っちゃった」

わりかし失礼なことをさらっというわたし。
生徒が防大に入るくらいだしどっちも名門に決まってますよね?


 

続く。

 


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