またアメリカで妙なテレビショウをウォッチングする季節がやってきました。
この「Horders」は、以前「hording」というタイトルのときに紹介したことがあります。
今回アメリカに来てみたらこの「ため込み」を意味するタイトルが
「貯めこむ人たち」になっていました。
題名は変われども相変わらずゴミ収集業者がスポンサーになっていて、
周りの「見かねた親族」が番組に通報し、精神科医が訪れてカウンセリング後、
ゴミ収集車が三台表れてみんなで部屋をカラにしてしまうというパターンは同じ。
以前と少し雰囲気が変わり、ミステリーまたは幽霊屋敷探検番組みたいな
おどろおどろしいロゴが多用されています。
Hoarderとは、「貯めこみ、それをしまいこんでいる」という意味です。
「300万人以上が『貯めこみ』に囚われている。
これはそのうち二人の物語である」
こんな字幕の後始まる「汚部屋(というか汚家)」ストーリー。
毎回二人の貯めこみ屋さんが取り上げられます。
いきなり波乱を感じさせる黒猫の映像。
これはいわば「伏線」というやつです。
今日の貯めこみ屋さんは、「生理的にも落ちるところまで落ちた」タイプ。
全てのものが堆積して腐り、腐臭を発して近所から苦情が出たのです。
今回「通報」してきたのはこの娘ではありません。
娘は、母親に愛想を尽かし、10年前に縁を切ってそれ以来です。
自分が引っ越した後母の世話を祖父に任せたといいますが・・・。
その祖父、つまり貯めこみ屋さんの父親ですが、娘がこんな生活をしているのを
全くケアしてこなかったようです。
彼は自分の妻、すなわち当事者の母を病気で亡くしました。
彼女が「片付けられない人間」になったのはそれからだと言います。
今日の貯めこみ屋さん第一号、ロビン。
「母が死んだときわたしも死んだの」などと言っています。
この、「大事な人」(大抵母親)の喪失感で、生きる意欲を失くし、
その結果として身の回りを片付けることができなくなったとする人は、
この番組にほとんど毎回と言っていいほど登場します。
「片付けられない」というのが精神の異常であることを端的に語る例です。
そして、その欠損を過食などで補おうとする人もいますが、
この人の場合は・・・
その辺の野良猫にたんまりと餌をやり「猫おばさん」となることで
心の空洞を埋めていたと思われます。
別の日の「Horaders」より。
こういう、動物に愛を注ぎすぎるタイプと「貯めこみ」は時として両者を兼ねます。
これは「犬を貯めこみすぎた人」の回。
犬はネコより鳴き声が大きく匂いが強烈なので、周りが通報するのも早いようです。
こういう例は動物愛護協会に通報されることも。
続いて今日の二人目。
何回に一回かは男性が登場します。
見ようによっては男前と言えなくもないこの男性。
50歳で名前をケンといいます。
彼は近所からの通報で、市から
「二週間以内に自宅を完璧に清掃すること、
もしできなければ6か月牢屋入り」
と通達されてしまいました。
ひえー。
アメリカの行政って、厳しいんですね。
ケンには32歳と若い奥さんがいて、ちいさい子供までいますが、
奥さんは彼が何でもかんでもため込むので嫌気がさして出て行きました。
50歳の男にしては結婚が遅いのでは、と思ったら、
やっぱり。
別れた妻がいて、彼女との間に娘もいます。
やたら明るいこの娘、今回はお父さんを助けに出てきました。
牢屋に入らなくても済むように、一緒に片づけをするつもりです。(涙)
方や猫おばさん、ロビン。
次に出てくるのが「ホーダーズ専門」の(そんなのがいるのね)精神科医。
10年ぶりに母の家に足を踏み入れるという娘を伴って、ロビンのうちに訪れますが・・・・。
娘はあまりの惨状にショックを受け、パニックを起こして叫び、
ドアからUターンして外に出て泣き崩れます。
あd
ドクターも、マスクをせずに家に入ることができないほど。
それでも彼女はこういう患者を山ほど見てきているらしく、
マスクをする前に「わたしの唯一のアクセサリーなのよ」と冗談を・・・。
パニクる娘を何とかなだめ、本日の「お掃除隊」が集まり、
「やるぞ!」おー!」と気勢を上げて片付け開始。
「これがダイニングテーブルです」
って、テーブルなんか影も形も無いだろっていう。
百戦錬磨のお掃除隊隊長をして
「いままでこんな匂いを嗅いだことが無い」
なんて言わせるほどの立派な汚家。
そしてこのあと、お掃除隊はさらにショッキングなものを発見した!
アウチ。
こっ、これは・・・・・・猫の骨?
そして気のせいか、猫の形をしているような物体が・・・・・。
ガクガクブルブル(AA省略)
スタッフは気を遣って猫のご遺体を集め、箱に入れてロビンに
「ほら、あなたの猫たちの骨だから」
そういうことを気にするような人であれば、今まで何匹もの猫が
家の中で死んでいるのを放置しているわけはないのですが・・・。
しかし、彼女はいとおしそうに箱を抱きしめて
「庭の隅に埋めてやるわ」
うーん。なにかが間違っている。
・・・・・・・・・・。
ということです。
意味が分からなければ、是非にとは奨めませんが調べてみてください。
娘さんは10年間放置していたにもかかわらず、この惨状に怒り心頭。
何度も文句を言ったのに彼女は聴いてくれなかったことと、
もうこのままこの家ごとどこかに捨ててしまいたい、と語ります。
母親ならもう少し何とかするべきでは、というのは第三者の考えで、
いくら言っても言うことのきかない家族に手を焼いて、
あるいは見放してしまうというようなことはどこにでもあることなのです。
といいながらもサクサクと仕事は進み、
使用前、使用後。
それでもかなり汚いですけどね。
取りあえずダイニングテーブルが出てきました。
でも、このやる気のないロビンの態度。
アフターケア基金というのが出るにもかかわらず、
セラピーを受けることには興味がないと。
これでは元通りは時間の問題では・・・。
家のリペアのために7万5千ドルの予算が無ければ、
市は家を取り壊すしかなく、しかもその予算ほぼ1万ドルがロビンに請求されると。
その1万ドルも出せなかったら、さて、どうなるのでしょうか。
かたやこちらはケンの家。
ケンを訪れたのは偶然ですがロビンという同じ名前の精神科医。
この人も、「汚家のひと」専門だそうです。
こちらは蜘蛛が捕食中。
ケンは「片付けなければ牢屋入り」ですので、本人もどうしようもないことはわかっています。
しかしこの人、やたらに前向きというのか頑固というのか、
これだけ散らかしていても自分は間違っていない、という態度を崩しません。
ドクターに対しても「これはカビじゃないよ。ぜったいカビじゃない」
などとカビだらけの食べ物を見られてもこんな風に強弁します。
「寝てたね」と言われるとなぜか「寝てない!」と怒る人みたいです。
貯めこむことに取り付かれる人は、自分の行動や自分自身を正当化しようとする
傾向がある、と一般論を語る精神科医。
ケンもまたその傾向ありありです。
ただこちらは娘に慰められ、また、このままでは牢屋入りなので、
ようやくやる気を起こして、片づけ隊を受け入れることを受け入れました。
お掃除隊の隊長と隊員たち。
ケンが従順なので今回はやりやすそうです。
しかし、なんのためにこんなものを?
というようなものを山のように買って、ケンさん使わずに貯めこむようで。
食べ物も同じ調子なので、冷蔵庫の中で野菜が悲惨なことに・・・
お掃除隊の隊長も、牢屋に入るかもしれなくなったということが、
いわば「良い選択」へとケンを追い込んだ、という風に語っています。
ただ、その選択は自分の意志ではない、ということが今後どう彼に作用するかは、
神のみぞ知る・・・・・というか、はっきり言ってあまり期待できないという気はしますが。
言い訳したり怒ったりしながら、何とか部屋は片付いて、
取りあえず片付きました。
こちらもビフォーアフター。
ケンは週明けには裁判所に行かねばならなりません。
つまりこの片付けが終了したのは市の決めた二週間の猶予期限ぎりぎりだったわけです。
一応そんなこんなで牢屋に入ることを逃れたケンですが、
奥さんと子供は戻ってきてくれません。
どう見ても愛想を尽かされています。
というか、もともとこの女性はケンのことを本当に愛して結婚したんでしょうか。
もしかしてこのフィリピン系女性の永住権狙いとか・・・そんなことをつい勘繰ってしまいます。
さて、このシリーズにはよく言えば「夢追い人」、実は「オレ様の世界」に浸ったまま
現実世界に戻って来られない男性の話もありました。
ピンボールのような懐かしのレトロなゲーム機ばかり集めた
アミューズメントパークを開きたい、というのがこの男性の望み。
そのために、ゲーム機、そしてなぜかこのような人形を大量に集めています。
しかし、一応「アミューズメントセンター」をオープンしているにもかかわらず、
この店には誰も訪れることはありません。
そりゃそうだ、だれもいないだだっ広い空間にレトロなゲーム機と同じ人形が林立する店。
だいたい怖いよこの人形怖いよ。
この人形は彼自身を象って彼が作ったもので、彼の名前を取って
「ランディ人形」。
ゲーム機と自分のアバターを、体育館のような広い部屋にスペースもないほど
「貯めこんで」いるのです。
若いころは彼もこんな青年だったのでしょうね・・・。
誰も来ないゲームセンターを「ユニークなわたしの特別の場所」と誇らしげに語り、
100人もの「自分の若いころの姿をした人形」に囲まれて暮らす男性。
どう考えてもあなたには精神科医が必要だ。
と思ったら、来ました。
ランディの精神科医。
まあ、ただこの人、分析するばかりで結局何もアドバイスしないまま
番組は終わってしまうんですけどね。
つまりテレビ用の「やらせカウンセリング」というやつです。
もう、ランディ、自分の世界に浸りきっています。
目を輝かせて精神科医に向かって自分語りをするランディ。
もしかして精神科医、苦笑いしていませんか?
そして自分の夢の実現のために機械でほとんど床が見えないくらいの今の
「ユニークな」店から、さらに広いところに引っ越したいのだそうです。
右は今までの場所からゲーム機を運び出す片づけ隊ですが、
この店構えと入りにくそうな雰囲気をご覧ください。
これじゃお客は入ろうという気になりませんよね。
モノ好きな人が好奇心で一歩足を踏み込んだこともあるでしょうが、
きっと店主につかまって延々とこの店の「ユニークさ」を語られたりしたんですよきっと。
同じ人形に周りをぐるりと囲まれてね。
「片づけられない人のゴミを片付ける」ストーリーがほとんどのこの「Hoarders」。
この人がどうしてこの番組に出ているのか、いまいちよくわからないのですが、
番組としてはこれも立派な「貯めこむ病気」、彼本人にすれば
「テレビで店の宣伝してもらえて、引っ越しの運送代をもってもらえる」
という下心があって出演を引き受けたのかと思われます。
しかしこの案件、片づけ隊がもう重労働。
隊長さんはあまりにも重たいゲーム機を何往復も運んで、
手を機械とどこかで挟んで怪我してしまいましたし、
こんなものどうやって運べっていうのよ、な大物。
台車が重みで潰れたりして搬送現場は阿鼻叫喚。
その後、ランディはこの場所でアーケード、つまりゲームセンターを始めましたが、
新しい店にもやっぱりお客さんは来なかったようです。
あらあら。
おまけにセラピーを受けたり、アフターケアを受けることを辞退してしまったと。
今日もランディは懐かしのゲーム機をコレクションし続けているということです。
それにしてもこの人、何をやってコレクションを買う収入を得ているのかしら。
それでは最後にトリとして強烈な方を。
このヴィッキーさん。
部屋を散らかすのは基本形。
それだけではなく、息子を車に乗せているときにも、粗大ごみ置き場を覗いては
めぼしいものを漁って、持って帰ります。
「ほんとに恥ずかしくて・・・。
ゴミ置き場にダイビングしているお母さんなんてうれしいわけないだろjk」
思わず助手席で顔を伏せる息子。
息子にストレス与えてどうするよ、お母さん。
しかし、そんなお母さんにもこんな時がありました。
このころはまだ人生に絶望していなかったヴィッキーさん。
太ってはいますが、決して醜くはありません。
太った人の多いアメリカでは「こんなタイプが好き」という人は多いと思われます。
それが今や・・・・・。
何が彼女をここまでにしたのか。
批難されると、ベッドカバーをめくらないまま、顔まで隠して
ミノムシのようになってに寝てしまいます。
先ほどのロビン博士またしても登場。
彼女に説得され、別居中の夫や娘息子にも懇願されて、
ようやくものを捨てることに同意したのですが・・・・
言いたいことを言わせていたら、少しトーンダウンしたので、
娘さんがまた懇々と説得にかかります。
こりゃ大変だ。
でも、ほとんどを拒否の姿勢。
この娘というのが、髪を7色に染めて唇にピアス。
こういう風体の人に大正論で説得される実の母親って・・・・。
ここで事件発生。
片づけの手伝いに来ていた別居中の夫が、一応作業を中止して
ヴィッキーを説得しようとしていた一同を差し置いて、
彼女がその場を外したすきにバンバンとトラックにモノを投げ込み始めたのです。
飛び出してきて夫を怒鳴りつけやめさせようとするヴィッキー。
しかし夫も負けていません。
「お前が機嫌を直すのなんぞ待っていられるかあああっ!」
慌ててトラックからものを取り戻そうとする妻。
夫はお構いなしにその辺のものを放り込み、二人はもみあいに。
もう、修羅場です。
逆上して周りのスタッフに「出て行け!茶番はもうたくさんだ!」と叫ぶヴィッキー。
彼女の弟もしっかり母の血を受け継いで、部屋がちらかっているので、
この際一緒に片付けようとしていたようですが・・・。
あの。
どうでもいいんですが、どうしてここに軍艦旗が・・・・。
まあ、とにかくこれがヴィッキーの部屋で、右は片づけ後の息子の部屋。
外に出されたものをどんどんまた運び込むヴィッキー。
まあ、観葉植物は置いておいてもいいように思いますが・・・。
娘はもうどうしていいかわからない様子で泣きだしました。
しかし、娘息子がどうしてこのお母さんからまともに育ったのか。
昔々、子供たちが小さいころには彼女も「普通」だったということでしょうか。
結局、ヴィッキーはすべてのものを部屋に戻してしまい、
夫とは離婚してしまいました。
夫はなぜか片づけに来たオーガナイザーと一緒に働いていて、
セラピストを探していると言いますが・・・。
もしかして、元妻のごみをバンバン捨てることでこの仕事に「目覚めた」のかな。
こうやって「貯めこみに憑りつかれた人々」を見ると、
「片付けられない」は真に精神的な病気なのだということが良くわかります。
その精神が病む原因が取り除かれ、治癒しないことには
どんなに周りが強制的に彼女なり彼なりの身の回りをきれいにしてやったところで
何の解決にもならないということなんですね。
この一連の物語にそういう「虚しさ」を感じずにはいられなかったのですが、
一番印象的だったのが、この旭日旗。
こんなのアメリカで買えるのね・・・・。
ってツッコみどころはそこじゃないだろ。