空母「ミッドウェイ」のランドリーコーナーを見学しました。
まだまだ続く展示を先に進んでいきます。
コード的なものを巻いておくものが壁に設置されています。
こういうどうでもいいようなものも一応撮っておくことにしています。
クリーニングのために0830から1000までは施錠する、
ということがドアに書かれていますが、肝心の
MIDWAY INST
という部門が何かはわかりません。
インスティチュートかな?
今ならインスタグラムもINSTだけど・・・。
おおっ、もしかしたら後ろに積んであるのは札束でしょうか。
乗員のスナイダーさんは
「ペイデイ(給料日)は女房に40ドル送ることになってたよ。
そのお金で彼女は各種支払いをするのさ」
としみじみと語っています。
1962年ごろというと日本ではドルが360円だった頃です。
日本円だと今の14万4千円になりますが、向こうの感覚ではもう少し安かったはず。
しかし、お給料は札束で支給されたんですね。
今でもそうですが、アメリカのお札の最もよく使われる単位は20ドルで、
こちらで購入した50ドルや100ドル札をペラっと出すと、レジの人は
マジックインキの茶色みたいなマーカーで印をつけて、本物かどうか
確かめたりします。
滅多に高額紙幣を見たことがないので、しげしげと眺めて透かす人もいます。
マーカーは、偽札ならペンの跡が残るけど本物なら残らず消えてしまう、
という便利もの。
これを使う時、お店の人はちょっと嬉しそうにします。
レジにいつ100ドル札が来てもいいようにペンを常備してあっても、
滅多に出番がないので、やっと使う日がキター!
という達成感みたいなのがあるのかもしれません。
話が逸れましたが、そういうわけで、電子マネーでない頃には
これがペイデイのありふれた光景であったというわけです。
ドアにかかっているバッグ、さっきもどこかで見たなあ、と思ったら、
士官用食堂の料金徴収ブースの中でした。
個人用でなく、仕事で何か(お金?)を運ぶためのバッグだと思われます。
この階段を登ってしまうとまたハンガーデッキに戻ってしまいます。
階段の下に謎の穴が空いていますが、ハッチを開けた時のハンドルが当たらないように?
売店でタバコとか歯ブラシを購入している乗員。
「艦内の売店ではなんでも買えたよ。
上は150ドルのロレックスから、下は15セントの歯磨き粉まで」
H .カーマイケル(もしかしてホーギー・カーマイケル?)さんは
このように言っておられます。
1962年なのでこれも日本円にすると・・・ロレックスが5万4千円?
物価指数で計算し直してもこれ今の10万8千円にしかならないんですが、
ロレックスってこんな安い時計でしたっけ?
不思議に思って調べてみると、アメリカが自国時計産業保護を行っていた時期、
ロレックス社はケースやムーブメント部品を輸出し、
組み立て工場を設立して、北米で生産をしていたことがあるそうです。
つまりセカンドラインなら10万円でロレックスが買えたということみたいですね。
ひょんなことからどうでもいいことを知ってしまった(笑)
あるいはロレックスは軍人割引?対象だったかもしれません。
ダグラスさんの思い出によると、
「マルボロ一箱がたった10セントだったよ!」
ということですから。
これも換算してみると当時の36円、現在の価格だと360円ですが、
日米の物価の違いがあるので今の180円って感じかな(適当)
今JTの価格表を見てきたのですが、タバコって400円もするんですね。
さて、シャワー室にやってきました。
オフィサーズ・アイランドの一角なので士官用だと思われます。
ドアの外に洗濯バッグやガウンをかけて今使用中。
なんと、ここにやってくると「ジャー」という水音と、
シャワーを浴びながら誰かが鼻歌を歌っているのが聞こえてきます。
セントラルヒーティングも完備のシャワールーム。
ただし時間は1分半で済ませてね。
1分半だと一曲歌い終える前に時間になってしまいますが。
洗面セットを持ち込んでいる人もあり。
歯磨き粉はアメリカでおなじみのコルゲートです。
洗面台に大理石柄のデコラボードを貼ってあるあたりが士官用って感じ。
ちなみにシャワーのお湯はアメリカ海軍では真水です。
海水を真水にする担当の係、というのがいて、彼らは自分たちの仕事に
大変な自信と誇りを持っていたそうです。
それだけ昔はすごい技術とされていたのでしょうか。
ただし、シャワーのお湯はなんとなくヌルヌルしていて、石鹸も落ちにくく、
その日によって微妙に成分も違うという感じだったそうです。
まるで海水そのもののようなしょっぱい日があるかと思えば、
なぜかジェット燃料JP-5の匂いがすることもあるなど、安定していませんでした。
そしてお湯の温度も全く一定でなく、真冬の日本海を航行する時には冷水、
時として熱湯が出てくるときもあって、なかなか大変だったそうです。
冷水の方が気合いを入れればなんとかなるだけマシで、熱湯の場合は
一瞬ボタンを押して霧のような熱湯を何度かに分けて浴び、
此れを以てシャワーとする、みたいな体の洗い方をせねばなりません。
こんな時にはシャワー室のあちらこちらから悲鳴が聞こえてきます。
とても鼻歌など歌っている場合ではありません。
兵たちは、悲鳴が聞こえてくると腰にタオルを巻いたまま、
別の、状態のマシなシャワーを求めて艦内をうろうろすることになります。
よそのコンパートメントでも、マシなお湯が出るという情報が広まると、
あっという間にそこに行列ができることになるのです。
今の空母は原子力ですからおそらくこんな悲劇はないでしょう。
たとえあったとしても、普通に女性軍人が同居している艦内で、
タオル一枚で歩き回ることはもはや不可能です。
トイレットだったと思います。
床は全体的に緑のタイル張り。
階段の下を覗いてみると、そこは兵員用の居住区の様子が少し見えます。
ロッカーから洗濯物をランドリーバッグに詰め終わったらしい人がいます。
その向こうに脚だけ見えている人がいますが、影を見る限り
このマネキンは「下半身だけ」の可能性があります。
なかなかのイケメン青年、ローズボロ君が上半身裸で荷物の搬送の真っ最中。
「UNREPは全く面白くない仕事だったよ。
洋上での再補給をこなすと背中が痛むほどだった。
何時間も、作業終了まで箱が次々とやってくるんだ」
UNREP(underway replenishment)
は進行中の洋上で燃料や軍需品、日用品などを船から船へ移動させる作業です。
洋上補給=アンダーウェイってことでOK?
キャプテンズ・コール・ボックス。
つまり艦長に何かを直訴するための目安箱というわけです。
船という運命共同体を住処とする海軍では、こと船の安全については
意見具申を末端から上に上げることのできる組織と言えます。
いじめや各種ハラスメントについての訴えもあったかもしれません。
ここにも補給でクレートを積み込んでいる写真がありました。
「我々が積み込まなくてはいけないクレートっていうのは本当に
大きくておまけに重いものばかりだったんだ。
チームワークで皆協力して運ばなければいけない。
再補給に11時間かかるっていう”最高記録もあったよ」
あの、その11時間の間に食事くらいはもちろん取れたんでしょうね?
こちら、補給部門のオフィスの様子です。
職場が・・・・狭いです。
「補給オーダーはトイレットペーパーからテレタイプのテープまで、
ありとあらゆるものが毎日机の上を行き来していたよ」
J.リンカーン
映画「ペチコート作戦」劇中、実話として、ある潜水艦の艦長が、
補給部門に見本付きで送ったトイレットペーパーの要請を無視され、
「諸君は本品の代理に何を使えというのか」
と気色ばんで補給処に手紙を送ったことが紹介されていましたっけね。
トイレットペーパー・・・人間の尊厳を守るためにも必要です(笑)
高圧電流が流れている「何か」。
この出入り口の上をみてください。
STARBOARD OPEN
POET LINE OPEN
という二つの電光掲示があり、右側の『スターボード』が点灯しています。
右舷と左舷を意味するわけですが、これが何かというと、
「チャウ・ライン」
すなわち食事を待つ列に並ぶ許可を表しています。
空母は巨大な都市なので、特に給料日は郵便局や食事の列が混雑し、
長蛇の列となってしまいます。
そこで、左舷、右舷に居住区がある人員を分けて、
「今並んでいいのは左舷側の乗員」として混雑緩和をしたのです。
そんな状態ですから、食事にはゆっくり時間をかけることは許されません。
ほんの数分で空腹を満たすと、すぐに彼らは次にテーブルを譲り、
仕事へと帰っていくのです。
アメリカ海軍に限らず、自衛隊でも一度経験すれば「早寝早食い」は
もう身についてしまうと言いますよね。
ところで冒頭写真をみてください。
床にあるハッチを開けて作業をする場合には、ご覧のようなネット状のガードを置いて、
間違って人が落っこちてしまうことを防ぎました。
これが置いてあっても上を歩かないでね、と書いてあります。
それから、ハッチを開けておくことによって、
「中に人がいる」
ということを知らせることにもなりました。
ここでわたしたち日本人には非常に興味深い話をしましょう。
「ミッドウェイ」が横須賀勤務だったころ、床にハッチのある通路付近に
日本人の幽霊が出る
という乗員たちの噂が
「ミッドウェイ」が日本に来てしばらく立った頃、塗装の工事で
乗艦してきた日本人が、普段あまり人の出入りがない場所で作業をしていたところ、
中に人がいると思わなかった乗員がハッチを閉めてしまったのだそうです。
何日も経ってからその日本人は死体で発見されました。
その後、出航のたびにそのハッチ付近から声が聞こえたり、
いるはずのない日本人の姿を見たという証言が相次いだのだそうです。
((((;゚Д゚)))))))
「空調中なので閉めてください」
と書かれた青いドアは
「フライング・ミシップマン・クラス」(飛行士官候補生)
が何かやっている途中なので入室禁止、とあります。
ところで、艦内にあったこの注意書きを見て日本人のわたしとしては
思わず立ち止まってしみじみと眺めてしまいました。
そして「ロナルド・レーガン」を見学した時、彼女はちょうど補修中でしたが、
甲板で作業をしている工事関係者のほとんどが日本の会社からの派遣で、
日本人だったのを思い出しました。
ハッチに閉じ込められて幽霊になってしまった日本人の事故などを経て、
「ミッドウェイ」では、注意書きに日本語併記をするようになったのでしょう。
(-人-)ナムー
続く。