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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「深く静かに潜航せよ」前編

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潜水艦映画について多くを語りながら、
今まで取り上げる機会を逸してきたのですが、最近何かと
潜水艦づいていることもあり、気合いを入れて今回この名作、

「Run Silent, Run Deep」(深く静かに潜航せよ)

に取り組んでみることにしました。

 

この映画が昔から潜水艦の戦闘映画として高く評価されているのは、
原作者の

エドワード・ビーチ少佐(Edward Latimer Beach Jr.)

が大戦中に「トリガー」「ティランテ」「パイパー」など
実際に潜水艦に乗り組んでいた人物だったと言う理由が大きいでしょう。

 

映画は1942年の豊後水道から始まります。

この「豊後水道」が、この映画では親の仇のように何度も出てくる
キーワードとなっているのですが、アメリカンの発音ではなぜか

「ボンゴ・ストレート」

となります。

映画冒頭、クラーク・ゲーブル扮するリチャーソン中佐が指揮する潜水艦は
日本の輸送船団の護衛に当たっていた

「豊後ピート」

とあだ名されるおそるべき駆逐艦「アキカゼ」と対峙しました。

これまで3隻ものアメリカ軍潜水艦を撃沈している「アキカゼ」艦長は
目の前をうろうろしている潜望鏡をあっさりと見つけて叫びます。

「潜望鏡、潜望鏡、水中爆弾投下」

こういう場合の命令としてこれが正しいのかと言われると多分違うと思うのですが、
まあ、俳優が日本人であるらしいだけましというものです。

この日系俳優はどこにも名前がクレジットされていません。

戦闘による名誉の負傷のつもりか、この「豊後ピート」艦長、
筋肉少女帯の大槻ケンジさんのようなメイクを目元にしております。

それに答えて横の乗員が

「スイチュウパクダン、ジュンピセヨ」

残念、こちらは「日本語でおk」な人でした。

船団に向かって魚雷を二発放ち、さてー、どうなってるかな?
と潜望鏡を除いたリチャードソン艦長が見たのは、なんと
こちらにまっすぐ向かってくる駆逐艦の姿でした。

慌てて潜航を命じる艦長ですが、轟音とともに・・・・

潜水艦はバラバラに。

映画開始からわずか2分半で帝国海軍との勝負はついてしまいました。

一年後、真珠湾基地。
リチャードソン中佐は、陸に上がって鬱々と臥薪嘗胆の、つまり
暇に任せて復讐のための図演をやって時間を潰す日々を過ごしていました。

図演には彼に心酔しているヨーマンのミューラーが付き合ってくれます。

「やった!これで200連勝です!負けたのは一回だけです」

「でもその一回は机の上じゃなかったしな」

「・・・・・・」

ついつい僻みっぽい愚痴を言ってしまうリチャードソン。
部下に気を遣わせてんじゃねーよリチャードソン。


ミューラーから、「アキカゼ」に撃沈された潜水艦がまた一隻増えた、
というニュースを聞き、心穏やかではないリチャードソン、
いきなり模型を机から叩き落とします。(おいおい)


そして、戦闘で負傷した艦長が艦を降りる潜水艦「ナーカ」(Nerka、ヒメマス )
の入港の噂を聞くや、何が何でもその艦長になったる!と一人で決心するのでした。

 

「ナーカ」が入港してきました。
この映画で「ナーカ」に扮したのは、「レッドフィッシュ」SS-395です。

「レッドフィッシュ」は戦争中、

「ぱとぱは丸」タンカー「第二小倉丸」「瑞穂丸」

「鳳山丸」空母「雲龍」

を撃沈、多くの船を撃破しています。
朝鮮戦争にも参加し、この映画のすぐ後に退役して標的艦となりました。

これまで副長だったブレッドソー大尉(バート・ランカスター)が艦長になるというので、
「ナーカ」の乗員はお祝いのジャケットをプレゼント。

ブレッドソーも大喜びでそれを受け取って皆ではしゃいでいると・・・

いきなり仏頂面の偉い人が乗り込んできました。
こういう人は大抵悪い知らせを持ってくるものです。

「これはなんだ」

「グッドラック・トークン(お守り)ですよ。
戦闘配置につく前にお尻を触ってやるんですよ」

にこりともせず、

「面白い」(interesting)

 

あれ?人事の大佐、今から戦闘配置なの?

案の定、偉い人のお知らせは、「ナーカ」の次期艦長はブレッドソーではなく
リチャードソンに決まったというものでした。

「彼は第7海域に詳しい。
ホットスポットの第7海域にはアキカゼがいて、4隻撃沈された。
参謀本部は彼に仇を討たせたいのだ」

「わたしではダメなんですか!」

「いやー、リチャードソンがかなり頑強にねじ込んできてねー」

というわけで怒り心頭のブレッドソー、自宅を急襲です。
そんな彼に向かって、リチャードソン、呑気に

「防虫剤のスプレーとって?」

「お断りします!」

要するに彼は、艦長だと思っていたのに今更副長なんてできねえ!
部下の手前もあるしいっそ艦から降ろしてほしい、
ということを言いにきたのでした。

「君の気持ちもわかるが、これも上からの命令でね」

「命令じゃないでしょう。あなたが彼らのところに行ったんだ。
かわいそうな(sad)人事の司令官のところに」

「とにかく君の申し出は断る。これはわたしからの命令だ」

「うっ・・・・」

おまけに、

「主人をお願いね」(ニコニコ)

命令に加えて奥さんにこんなことを言われたら、
ジェントルマンの軍人としてはいやでも

「お任せください」

って言わざるを得ませんわ。

憤懣やるかたないブレッドソー副長の思惑を乗せたまま「ナーカ」号は出航。

乗組員はどの水域に出陣することになるか、賭けを始めます。

「僕は7」

「なにいいいい?」

誕生日が7日だからという理由で「7」に賭けたジェシーくん、
皆に縁起でもない、アホタレが!と突っ込まれて涙目。

ところで、彼の後ろの魚雷発射管の蓋には日本の国旗のペイントがありますね。
実際に「レッドフィッシュ」はここから、日本の船を攻撃していたのです。

そして艦長がいよいよどの海域に出撃するかを告知する時がきました。

「当艦の進路を第7海域に向ける」

「うっわ・・・・最悪」

 

問題の豊後水道は避ける、とする言葉に皆は一応安堵しますが、
ヨーマンのミューラーは驚いて手を止めます。

艦長、「アキカゼ」に復讐するんじゃなかったのか。

「ナーカ」は訓練を行いながら豊後水道を避けて第7海域に進みます。

その訓練とは、深度50フィートで魚雷発射できるよう、
潜行と同時に潜望鏡をあげ、艦が平行になると同時に射つというものでした。

訓練は執拗に繰り返され、何回やっても満足しない艦長の

「ダイブ!ダイブ!」

が何度も艦内に響き、そのうち士官の中には疑問を持つ者も現れます。

「どうして豊後水道を避けるのにこんな訓練をする必要がある?」

さらに、初めて遭遇した日本の潜水艦に対峙せず、これを見逃す艦長に、
兵の心にも不満が芽生えていきます。

「これは出撃じゃない。”模擬出撃”だ」

「艦長は敵が怖いんだな」

士官室でも新艦長の評判は散々です。

「彼の慎重さに感謝しなきゃな。石橋を叩いてまだ渡らない」

「ドリルマスター(訓練の達人)の艦長に乾杯!」

そんな士官をなだめるブレッドソー副長も皆から孤立していくようでした。

 

そんなある日訓練で事故発生。
甲板にゴミ捨てに出た人を置いたまま、「ダイブダイブ」をやっちゃったのです。

「危うく死者が出るところだった。訓練の責任は君にある」

艦長は副長のブレッドソーを頭ごなしに叱りつけ、カチンときた彼は、

「いくら訓練をしても艦長が攻撃する気がないなら無駄です」

と言い返してしまいます。

しかしついに艦長が戦闘命令を下す時がやってきました。
大型タンカーを護衛する駆逐艦「モモ」に遭遇したのです。

「モモ」って、もしかしたら「雑木林」と言われた「松型」の4番艦「桃」のことかな?

「桃」は実在しましたが、1944年からだだーっと作られた駆逐艦なので、
1943年という設定のこの頃にはもちろんまだ存在していません。

なぜ「モモ」にしたかについては、わたしは

「アメリカ人にとって発音しやすかったから」

の一点だと思っています。
「アキカゼ」も全員が発音に苦労してるんですものー。

タンカーをやられて初めて「ナーカ」に気がつく駆逐艦「桃」の見張り。
そんなことで護衛艦が務まるか!

右側の士官はその報告を受け、

「〇〇舵いっぱい、なんとかなんとか」

と言いますが、残念ながらこの人の日本語も全く聞き取れません。

戦闘態勢になって甲板を走ってくる「桃」の乗員ですが、こんな時に全員が
第一種軍装を着込んでいるのはおかしいと思います。

それから、水兵さんたちが全員長髪なのでアウト。

向きを変えてこちらに直進してくる駆逐艦「桃」。

臆病な艦長のことだから多分潜航して逃げるだろうと皆が思っていたら、
正面から駆逐艦を迎え撃ち、潜行して艦隊が平行になった途端、魚雷発射!

そう、つまり訓練はこのためにやっていたのです。

「アキカゼ」との対決では、正面からくる「アキカゼ」から逃げたのが敗因だったので、
艦長はそれを克服すべく訓練を繰り返したのでした。

 

現金なもので、乗員たちは

「艦長はわかってる!」

と手のひらぐるんぐるんに返して褒め称え始めました。

「正面から突っ込んでくる駆逐艦を見て震えたが、艦長は落ち着いたもんさ。
顔色一つ変えず魚雷発射を命じてた!」

 

しかし、士官には懐疑的な者もいました。

「潜水艦を無視して駆逐艦には全力で・・・・
あれはなんかの実験なんじゃないでしょうか」

いや、実際そうなんですけどね。
リチャードソン艦長の目的は、「アキカゼへの復讐」一点なのですから。

次にリチャードソン艦長が輸送船団を見逃した時、ついにブレッドソーはキレました。
艦長の命令した航路を自分で割り出すと、行き先はまぎれもない豊後水道。

「豊後水道に行くつもりですか?」

「そこにアキカゼがいるからな」

「行かないと言っていたのに?」

「命令はその状況に応じて変わる」

いやー・・・これは艦長としてアウトじゃね?
最初っから豊後水道にいくつもりしていたのに、皆に隠していたわけだから。

「あなたは魚雷温存のために潜水艦を見逃し、艦首攻撃のために船を危険にさらした」

「我々は艦首攻撃でモモを沈めた。またやれる」

「相手はアキカゼです。艦首攻撃はアドバンテージなんかじゃない。
失敗したら軍法会議ですよ」

「失敗などせん」

「人の命がかかっているのに何を言い切ってるんですか」

もはや、リチャードソンは「ナーカ」を「アキカゼ」への復讐のために
恣意的に利用しようとしているとしか思えません。

ていうか実際にそうなんですけどね。

やはりキレた士官連中はブレッドソーに謀反をそそのかしますが、
漢の彼はそれをきっぱりと断ります。

艦長の意見には絶対反対ですが、海軍の男として
彼の矜持がそれだけは許さないのでした。

「艦長の腰巾着」と言われて士官と喧嘩したミューラーが、
艦長にその一部始終を報告しています。

「大尉は謀反をはねつけましたよ」

「そうだろうな」

「なあミューラー、俺も馬鹿者かな」

「は?」

「副長はそう思っている」

「本当にアキカゼをやれば誰も文句はないでしょう。
我々は前にアキカゼにやられた時とは違う」

「そう思っていいかな」

「豊後ピートの葬式を出してやりましょう」

 

潜水艦長として、復讐を任務より優先させるリチャードソン艦長。
彼に賛同してくれるのはミューラーだけというこの孤独な状況で、
宿敵「アキカゼ」と戦うことはできるのでしょうか。
 

続く。



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