さて、空母「ミッドウェイ」艦内探訪、いよいよ最後の部分になりました。
郵便局を過ぎると、機関室です。
はっきり言ってわたしが一番「お手上げ」なのがこの部分。
説明がなければ何を行うものか想像すらつきません。
この狭い部屋では部品を展示していましたが、実際にここで
このような部品の調整をした訳ではないと思います。
その心は狭過ぎるから。(という程度のことしかわからない)
部屋の外側には
「マシーン&メタルショップ」
と説明ガイドのための看板がありました。
ここで使われていた調整・修理のためのパーツのいろいろ。
「マシンゲージ」「スライドゲージ」「ホールゲージ」「プラナーゲージ」
何やらゲージ的なものばかりが集まっている訳ですが、これらも
何一つ用途が想像できません。
ゲージだから「測るもの」であるくらいはわかりますが。
あっ、「センターパンチ」これはわかる。穴あけ機ですよね。
それから「Tスクェア」ってバンド名、これから来てたの!?(衝撃)
マシーン&メタルショップというのは、船の動力そのものではなく、
艦内で必要なものを修理、あるいは調整、作製する部門だと思われます。
船に必要な部品を部品を海の上でも作ってしまえるこの施設、
時と場合によっては艦載機部隊の必要な部品も調達していたそうです。
今度はわたしに少しは何に使うのかわかる道具が出て来ました。
こちらも全体的にキーワードは「測るもの」ですよね!?
カリパス(calipers)なんて言葉、生まれて初めて知る訳ですが、
ものさしで測ることのできない内径や外径を測るための道具、
三日月のような「アウトサイド・マイクロメーター」なるものは
精密なねじ機構を使って、ねじの回転角に変位を置き換えることによって拡大し、
精密な長さの測定に用いる測定器。
ノギスよりも精度の高い測定に用いられる。 一般的なものは目盛は0.01mm。
だそうです。はえ〜。
手前の機械に「ミルウォーキー」とありますが、アメリカの工具メーカーです。
アメリカではしょうもないCMを懲りもせず出している企業というイメージ。
Milwaukee Tool Commercial - Very Funny
もう一丁。
funny ad for milwaukee tools
いずれも、「強力に回転する」ということを訴えたい模様。
同社は1924年に最初の軽量ドリル穴あけ機を発売して以来、
工具一筋のメーカーとして業界に君臨しています(多分)
工作室のドアには黄色に赤字で大きく
「プロフェッショナルとは」
いやしくも価値のあることは正しく行う価値があると
信じている人間のことである
(One who believes that if something is worth
doing its worth doing right.)
と書かれています。
If a thing's worth doing, it's worth doing well.
(いやしくも為すに足る事ならりっぱにやるだけの価値がある)
というイディオムをアレンジしたものだと思われます。
壁にペイントされている指矩とハンマーの組み合わせのマークは
海軍のレイティングで、
「 HULL TECHNICIAN 」(船体技術者)
を意味します。
船体技術者は、あらゆる種類の船舶構造物とその表面を
良好な状態に保つのに必要な金属作業を行います。
また、配管、小型ボートの修理、バラスト制御システムの運用と保守、
品質保証プログラムの管理を行っています。
そのために溶接、ろう付け、リベット締めまたはコーキングを行い、
放射線、超音波、および磁性粒子検査装置を使用して、船舶構造を検査、
金属の熱間および冷間成形における熱処理、
パイプの切断、ねじ込み、および組み立て、換気ダクトの修理、
金属、木材、ファイバーグラスボートの修復
断熱材の設置と修理など、多岐にわたる作業を任されています。
右側のマークは
「MACHINARY REPAIRMAN」(機械修理士)
です。
旋盤、フライス盤、ボーリング・ミル、グラインダ、パワー・ハック・ソー、
ドリル・プレス、その他の工作機械を操作して、
蒸発器、エアコンプレッサー、ポンプなどの交換部品を製造しています。
ウィンチやホイストの修理はも行います。
機械修理師は、基本的に部品を修理または製造することによって、
エンジニアを支援するというポジションです。
ちなみにこの屁はのデスク下部に設置されているのは
HITACHI Super Pair 200RP
という低圧配線用の遮断器で、このシリーズは現行です。
「ペア」という名前なのは二つセットで使用するからです。
金属を切断するための機械だと思います。
続いて、「SCULLERY」スカラリー、食器洗い場。
この単語のイメージはどちらかというと「邸宅に設置してある食器洗い場」だそうです。
食器だけでなく調理に使ったポットやフライパンなど調理器具全てを洗う場所です。
ここではトレイだけで毎日1万5千枚を処理していたということです。
この窓口に洗うものを置いていき、中に送り込むようになっていたようです。
海軍と我が海上自衛隊でもおなじみ、トレイが見えます。
呉の海自カレー・チャレンジでは、確か最高賞に自衛隊で使っているのと
全く同じこのトレイがもらえた記憶がありますが、今もやってるんでしょうか。
左の機械まで運べば自動洗浄が行われますが、ある程度までは人間が行います。
皆さんも自宅で食器洗い器を使うとき、ある程度予洗してから入れるでしょ?
ところで超私事ですが、我が家の食器洗い器がついに動かなくなりました。
キッチンに作りつけたビルトインタイプで、他の収納部分とと一体化となる
木製のドアが貼ってあり、何よりも超大型で便利なのですが、
いかんせん耐用年数が限界まできてしまったようです。
日本の家電事業からは撤退した BOSHの製品だったので
本社に電話すると、地元の修理業者を紹介されたのですが、案の定
「もう部品がないので修理できないんすよねー」
と頭から直らないと決めてかかっている様子。
それどころか
「新しいのに買い換えた方がいいと思いますが」
ってそれは直らないってことにして新品をを売りつけるつもりかい?
比べるつもりはないけど「ミッドウェイ」の上なら、どんなことがあっても
何があっても故障したものは直すし、部品がなければ作る、
少なくとも見もしないで直らないなんて言わないぞ?
たまたまこれを作成したその日にこんなことが起こったので、
ついついこんなことを考えてしまいました。
がしかし、流石の「ミッドウェイ」でも直せない機材もあります。
あまりに酷い事故が起こると、外部から人を呼んでこなくてはなりません。
「ミッドウェイ」では艦載機が発艦したとき、ショックを和らげるために付いていた
ウォーターポンプが破損したことで、左舷先端が吹っ飛んだことがあります。
しかも、その破片を、発艦した戦闘機のインテークが吸い込んでしまい、
(ファントムだと言われている)戦闘機は海に墜落、パイロットは
脱出するのに成功したものの、カタパルトは使用不可能になってしまいました。
多少のことならなんでも直すメタルショップも、これはちょっと無理、
ということでわざわざアメリカ本国から修理人を呼び寄せることになりました。
この時、「ミッドウェイ」はその修理人の噂で騒然となったといわれています。
なぜならその修理人は元海軍水兵で、現役時代「ミッドウェイ」の、
カタパルトの修理を専門に行っていたのですが、任務中に事故に遭い、
片腕を失っていたからでした。
数人の助手を使って作業する修理屋を皆遠巻きにして見守り、
中には写真を撮る人もいるという具合に、片腕のインパクトは凄かったようですが、
凄かったのはそれだけでなく、航行中に直すのは不可能だと思われたカタパルトを
結局この人は夜にも作業を続け、修復することに成功したということです。
ちなみに我が家の食器洗い機、直らないと言われては致し方なく、
取り替えを決意したのですが、取り付け工事の来る日、
念のため動かしてみたらなぜか正常に動き出しました。
つまり壊れていなかったことが判明したのですが、考えた末、
工事は中止することなく続行し、換装を決行しました。
ゼオライト乾燥システムを使っていて、前より若干パワーは落ちますが、
何と言っても音が静かで、使用する水の量が少なくて済むので、
結果論ですがもっと早く替えていればよかったと思っています。
続く。
参考:「空母ミッドウェイ アメリカ下士官の航海記」 J.スミス著