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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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ご当地アイドルと考える日本の防衛〜平成30年阪神基地隊サマーフェスタ

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前回阪神基地隊に来たのは、昨年の暮れに行われた
餅つき大会(という名称かどうかは知りませんが)の時です。

その懇親会会場に、年端もいかない場違いな少女たちが混じっており、
異彩さで目を惹いていたのですが、後から彼女らが
阪神基地隊御用達の「ご当地アイドル」であることを聞かされました。


ご当地アイドル(ローカルアイドルともいう)というのは、
文字通り、地域を活動拠点とする「地域限定アイドル」です。

全国各地にに2018年6月現在で1,245組存在するそうですが、
基本的に一つの地域にアイドルが混在することはなく、
したがってここ神戸にもご当地アイドルは1組しかおりません。


これがその神戸担当ご当地アイドルのメンバーですが、
何というか、全員その辺を普通に歩いていそうな感じ。
いかにも街で見かけるちょっと可愛い女の子というのがポイントかと。

このご当地アイドルグループと阪神基地隊の縁は結構古く、
基地隊御用達のようになったのは前司令の時からだそうで、
サマーフェスタなどの一般公開の時に文字通り「客寄せ」として
イベントに花を添える的な役割を担ってきたようです。


今回のサマーフェスタでは、彼女らのうち二人をパネラーに据え、
防衛についてのパネルディスカッションが行われました。

これは考えたな、とわたしはちょっと感心しました。

自衛隊のイベントなので、防衛について一般人を啓発するような
真面目な催しも行いたいが、たとえ評論家を呼んできたところで、
いわば週末のお祭りに楽しみを求めてやって来た人たちが、
このクソ暑い(失礼)中、青山繁晴氏や百田尚樹氏ならともかく、
知らないおじさんの難しい防衛講話なんぞに脚を止めてくれるでしょうか。

やっぱりここはアイドルで釣って(笑)熱心に聞いてくれる層の固定化を図り、
人がいるところには人が集まるという群集心理を巧みに利用し、
ちょっと自衛隊の宣伝もしてしまおうという戦略が正解でしょう。

体育館の半分ではトートバッグ製作や鉛筆画の展示、
組紐や南極の氷展示が行われていますが、舞台側の
パネルディスカッション会場では、開場と同時に
パイプ椅子の最前列に席を占める一団あり。

わたしが車で正門前を通りかかった時、ちょうど開場となり、
開門前から待っていたらしき人々が門内になだれ込んでいたのですが、
それはもしかしたらこの人たちだったかもしれません。

というわけで、時間となり、パネルディスカッションが始まりました。
向かって右テーブル、自衛隊からは隊司令、総務科長、先任伍長の三人、
左のご当地アイドル側には大学生と高校生のメンバー二人が座り、
ハラハラドキドキの(嘘)ディスカッション開始です。

わたしは最後列に座りましたが、始まるまでは
椅子にもまだまだ余裕があるという感じでした。

となりではパソコンでモニターにテーマを映す作業をしています。

「どうなる?ニッポンの海上防衛!」

うーん、これはもしかしたら尖閣の中国船による海洋調査の話まで行くか?
と思いたいけど、相手がアイドルではなあ・・・。

ディスカッションはメンバーの紹介から始まりました。
この写真を出してきたのは、基地隊司令の履歴を明らかにするためではなく、
当方、うっかりしていてアイドルの写真を撮るのを忘れてしまい、
後から見ると写っているのがこれしかなかったからです。(しかも一人だけ)


そして、前列の男性陣は、全員が彼女らの熱心なファンだと思われます。
父兄参観に来た彼女らの父親といってもおかしくないような年齢層です。

「誰々(メンバーのあだ名)が一番!」とマジックで書いたTシャツを
来ている人などは少なくとも父親とかではないことは確かですが。

ディスカッションは三人の自衛官が一つのテーマにつき一定の時間喋り、
アイドルが時々振られるクイズ形式の質問に答え、解説を受けて

「全然知りませんでしたー」

「勉強になりましたー」

と〆るのがお約束、という感じで進みます。
当初の予想通りアイドルは文字通りの飾り物確定。

彼女らの防衛関連における知識は見たところ皆無で、というか
一般常識的にもそれは如何なものか、というレベルだったわけですが、
しかしながら、世間一般の人の防衛に対する関心なんて、
この平和に暮らしていける日本においてはこれが平均かもしれない、
とわたしはふと考えました。


たとえば、この画面のホワイトボードにお日様マークが見えますね?

これは、彼女らの一人が「機雷」という言葉を知らなかったため、
(機雷の『き』の漢字を聞かれて『奇襲の奇ですか』という名言アリ)
改めてどのようなものか説明した跡、つまり機雷の絵です。

そこから始まるんかい、とわたしは結構ワクワクしてしまいました。
(ネタ的な意味で)

しかし、そのようなやりとりを通じて、彼女らに噛んで含めるように、
海上自衛隊と防衛の基本について説明していくことによって、おそらくですが、
そこに集まった一般人、前列に陣取っていた彼女らのファンにとっても、
結構な啓蒙になったのでは、とわたしは進行中考えていました。

 

パネルディスカッションは、「日本にとっての海上交通の重要さ」、
具体的には日本の輸入は海上輸送と航空輸送の割合はどのくらいか、
から始まって、ソマリア沖アデン湾の海賊対策にまで及びました。

「海賊て、お話の中にしかいてないと思ってたー」(神戸弁)

アイドルがいうと、基地隊司令が、

「パイレーツ・オブ・カリビアンみたいな?」

「そうそう、ジャック・スパローみたいな」


わたしはこのアイドルとほぼ同じことを、民主党政権下で
当時の国対委員長(平田健二)が言い放ったのを覚えています。

「海賊というのは漫画で見たことはあるが、イメージがわかない」

70過ぎの現役政治家が同じことを、しかも国会で言っていたのですから、
わたしにはとてもアイドルを無知をだなどと笑うことなどできません。

ディスカッションの最後のテーマは

『海上自衛官って?』

お休みはいつか、休みには何をしているのか、どこに住んでいるのか、
年俸はどれくらいもらっているのか。

最後は、わたしにとってこの日唯一全く今まで知らなかった情報でした(笑)

このテーマでも、自衛官が一人ずつ、自分のことを中心に話していきます。

とにかく海上自衛官は家を空けることが多い。
若いうちは家を出るとき奥さんが

「あなた、今度いつ帰ってくるの」

と言って送り出してくれたのに、最近では家にいると

「あなた、今度はいつ行くの」

になってきた、と総務科長が皆を笑わせると、基地隊司令が

「亭主元気で留守がいい、っていうんですよ」

アイドル1「・・・?」
アイドル2「・・・?」

なんと彼女ら、この言葉を生まれてこのかた聞いたことがない様子。
まあこれは時代のせいというより単に本人たちの問題でしょう。


総務科長の話の途中で、アイドルはこの対談中、唯一この時だけ

「(総務科長の)奥さん、(外国)人って聞いたー」

「どこで知り合ったんですか」

などといきなり積極的に質問しだしたのにはふふっとなりました。
お年頃の女の子らしい。

そして、最後の小テーマ、「自衛官にはどうやったらなれるか」。
この大事なポイントには海上自衛隊としては何が何でも着地せねば。

自衛官への登用について簡単な説明をした後、

「あなたたちだって自衛官になれますよ」

「えー、女性の自衛官なんているんですか」_(┐「ε:)_ズコー

「いますよ。今は護衛艦の群司令にも女性がなっていますし・・。
(高校生の)なんとかちゃんは防大に入ることもできるし、
(大学生の)かんとかちゃんは大学卒業後、
一般幹部候補生になるという道もあります」

「でも・・・体力ないからやめときます」(あっさり)

「それじゃ自衛官と結婚するというのはどう?
この基地にもたくさん独身の自衛官がいますよ」

前方の男性たちの空気が瞬間凍ったと思ったのはわたしだけでしょうか(笑)

 

さて、そんなこんなであっという間に1時間が経ち、
パネルディスカッションは無事終了。

決して皮肉でも冗談でもなく、普通の防衛講話とは全く違った意味において、
大いに勉強させていただいた、と言っておきます。

さて、会場には陸自駐屯地からの装備展示もありました。
こんなのが伊丹から一般道路を走ってきたのね、とつい考えてしまう、
巨大な発射機(LS:Launching Station)。

これによると、機動時には全長15.90m、全高約4mなので、
連節バスよりは短いくらいでしょうか。
問題は高さですが、これも作業車にはその倍くらいのがあります。

現地の説明がこれ。

あのう・・・これ、パトリオット・ミサイルの発射機ですよね?
なぜ「ペトリオット」という説明が全くないんでしょう。

もしかして何かの配慮?

(とこういうことにはやたら疑い深いわたしである)


パトリオットミサイル(MIM-104 Patriot、MIM-104 ペトリオット)は、
レイセオン社が開発した広域防空用の地対空ミサイルシステムです。

一般的な名称は「パトリオット」(愛国者)ですが、自衛隊では
より英語発音に近い「ペトリオット」を正式名称にしています。

ペトリオットはシステム名で、どのシステムもトレーラーで移動でき、

「射撃管制車輌」「レーダー車輌」「アンテナ車輌」「情報調整車輌」

「無線中継車輌」「ミサイル発射機トレーラー」「電源車輌」

「再装填装置付運搬車輌」「整備車輌」

の10両でワンセットです。
本日ここに展示してあるのはこの10両のうちの一つミサイル発射機です。

現地にはこのペトリオットミサイルの発射機以外にも
偵察警戒車や軽装甲機動車などのほか、偵察用オートバイがいました。

ヘルメットをかぶってオートに乗った写真を自衛官が撮ってくれます。


海自の迷彩の人も暑そうでしたが、ここでずっとヘルメットをかぶせ、
バイクに跨らせて写真を撮っている陸自の隊員さんも大変そうでした。

でも、不思議なことに彼らが汗をぬぐったり暑そうにしている様子は全くないのです。
むしろどの自衛官も端然として涼し気にすら見えます。

例のパネルディスカッションで、自衛官に何か質問は、と聞かれたアイドルが、

「海賊対策で暑いところに行ってる自衛官の人たちは体は大丈夫なんですか」

と聞いていましたが、答えは

「そのためにわたしたちはいつも体を鍛えています」

それはよく知ってるけど、体を鍛えると汗の出方までコントロールできるのか?
とわたしはこの日の自衛官たちを見ていて不思議でなりませんでした。

続く。

 


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