今日は平成30年度観閲式本番が行われた日ですが、
粛々と予行の続きをご報告します。
ゼッケンをつけた防大校長、実施責任者、統幕長、防衛副大臣、事務次官が入場。
儀仗隊は銃の台座上部だけを地面につけて角度を保ち静止です。
簡単なようですが、見事なまでに銃の位置と角度が揃っています。
この姿勢を作るのに全員全く動きに乱れがないのは流石訓練の賜物です。
赤いゼッケンは総理大臣役。
どこのどなたかは知りませんが、観閲式の総理大臣役をするなんて、
ご本人にとってもなかなか名誉なことなのではないでしょうか。
訓練とはいえ、全部隊が自分に向かって栄誉礼と敬礼を送ってくれるのです。
各司令官旗が一斉に「旗の敬礼」を行う瞬間。
栄誉礼のラッパはラッパ隊隊長の指揮によって行われます。
その間儀仗隊は「捧げ銃」をしています。
その後第302保安警務隊退場。
先頭の隊長が右脇に立てて持つのは指揮棒です。
ラッパ隊は前方と後方の二分隊に別れ、
メロディを交互に奏でるパターンです。
なるほど、これなら息を休ませながら長時間行進する事も可。
ラッパ隊、儀仗隊の列が退場。
全員スタンドを出終わったところで「演奏止め」の合図。
そこで陸上自衛隊の歌手、鶫真衣三等陸曹により、アカペラで
「君が代」の歌唱が行われました。
最近自衛隊では女性歌手による国歌独唱を推進しているようです。
海自では割と当たり前に行われて来たのですが、陸自の観閲式では
今回が初めてとなりました。
ヴィブラートが少なく、キレのいい「君が代」だったと思います。
国歌独唱の間の少年工科学校生徒隊。
銃を持たない生徒たちは敬礼をしている間も左手を
腰のカバン(工科学校の象徴?)に手を当てています。
これはなかなか長時間取り続けるのが難しい姿勢かも。
とりあえず前半の任務を終了し、リラックスした雰囲気の儀仗隊と喇叭隊。
周りで見ている陸自隊員たちの笑顔の理由が気になります。
会場の向こうでは自衛太皷の演者たちがスタンバイを始めました。
まず全部隊の前を観閲者である内閣総理大臣が車で観閲を行います。
なんども言いますが、この車上の自衛官は安倍首相という設定です。
しかし身分は自衛官なので、安倍首相の行う胸に手を当てるポーズではなく、
自衛官として敬礼を行なっているわけです。
この首相代役に指名された自衛官にとって、この任務は
ある意味もっとも現役時代晴れがましい「役得」かもしれません。
車での部隊視察が終わると、全部隊が観閲行進のため一旦退場します。
最後の女性部隊の後ろでは、移動を始めた車両、特に戦車の黒煙が
もうもうと立ち込めてものすごい迫力です。
退場に先立ち、台上では部隊表彰式が行われ、この時は
海がイージス艦「こんごう」、空がペトリだったのですが、本番では
陸 対馬警備隊、海 貯油部隊 空 偵察部隊
だったそうです。
予行は去年の受賞部隊だった可能性あり。
ところで観閲台上の人々が皆空を見上げていますが、これは・・、
空挺降下展示で、三人の空挺隊員がパラシュート降下して来ているのです。
もちろん資格が必要で難しいフリーフォールという降下です。
自分で落下傘をコントロールし、降りる場所をピンポイントで決めます。
最初の降下者が観閲台の正面に降りることが確実になったこの時、
観客から大きなどよめきが起きました。
フリーフォール降下ではほとんどが二本足で着地をキメます。
まるで空中散歩するような軽やかな足取りで着地。
二人目も観閲台のやや左寄りに見事着地。
三人目は台の右側寄りでした。
これも打ち合わせ通りだったら怖すぎる。
こういう晴れ舞台に降下を行う人を見るといつも同じようなことを
思い、そして口に出してしまいます。
「こんな時に全部隊から選ばれる三人ってどんな凄い人達なんだろう」
降下したら迅速に傘を畳み、降下順に台の前で全員揃うのを待ち、
観閲官に敬礼を行なって退場します。
ベテラン中のベテランかと思ったら若そうな人もいますね。
続いて徒歩行進が始まりました。
観閲部隊指揮官が徒歩部隊を率いて最初に登場します。
観閲台に差し掛かる手前で旗とともに敬礼。
陸自中央音楽隊隊長が指揮しているのはもちろん
「陸軍分列行進曲」です。
旧軍の全てを否定し、旧陸軍とは全く違う組織として発足した
陸上自衛隊ですが、海自と同じく、この八条旭日旗と、この
名曲中の名曲である行進曲だけは受け継ぎ、後世に残すことを選択しました。
防衛大学校学生隊、防衛医科大学学生隊も、陸軍分列行進曲で行進します。
緑の旗は第3大隊、オレンジは第4大隊です。
防大学生隊、第一大隊が観閲官に敬礼。
振り下ろした指揮刀の角度が実に美しい。
続いて防衛医科大学校学生隊。
高等工科学校学生隊。
高等工科学校の学生隊は3個中隊ですが、前2個中隊は銃を担いでの行進。
(最前列の学生たちは背中に背負っている)
最後尾の一個中隊は皆クラッチバッグ?を抱えての行進となります。
一年生はまだ銃を持たせてもらえないのかな、と言い合ったのですが、
本当の理由はわかりませんでした。
普通科部隊指揮官の車を運転しているのは女性自衛官でした。
迷彩服と赤、ある意味もっとも「陸軍らしい」、それが普通科部隊です。
部隊長に当たる人と旗手は右足に銃のホルダーを巻いています。
(これかっこよくないですか?)
銃の角度が全員見事に一致。
流石に普通科連隊の行進には女性隊員はいないようです。
今年初めて登場、普通科の対ゲリラ・特殊部隊指揮官。
発足が検討されていた時には、数百人単位で習志野の第一空挺団内に置かれる、
と言われていたようです。
自衛隊は今対テロ特殊部隊を二個持っています。
海自の特殊部隊が「特別警備隊SBU」、そして陸自がこの
「特殊作戦群」となります。
実際には習志野駐屯地に2004年発足しています。
陸自の中からさらに選抜された彼らは、特に体力、知力に優れているとされ、
アメリカ軍で言うところのグリーンベレー・デルタフォースに相当します。
彼らは空挺資格だけでなくレンジャー資格も取得しており、それだけでなく
何か一つの語学(敵性国とされている国の言葉も)を習得しているのだとか。
そして第一空挺団指揮官。
こう言っては何ですが、例年の第一空挺団指揮官とは
少々雰囲気の異なる自衛官(つまり細身イケメン)ですね。
第一空挺団、というだけで〇〇〇〇集団(お好きな言葉を入れてください)
と自衛隊内でも言われているというのに、さらにその中でも
選び抜かれた〇〇〇〇な(お好きな言葉を以下略)隊員がいたとは・・・。
特殊作戦群の合格率はわずか3パーセントといいますが、普通の人の3パーではなく、
特に人より優れた者のなかから選ばれているわけですからね。
今まで「秘密のベール」に覆われていたかと思われていた対ゲリラ・特殊部隊ですが、
今回観閲式で言うなれば初めてベールを脱いだわけです。
続く。