陸上自衛隊の観閲式ご報告も無事終わりましたので、
14日に行われた芦屋基地航空祭に戻ります。
思えば何年か前、音楽まつりのご報告で、自衛太皷の中の
芦屋基地を根拠とする芦屋太皷について、
「芦屋というと関西の人間には兵庫県芦屋しか思い浮かばない」
などと書いたものですが、その芦屋に今回訪れたことで、
九州の福岡にも芦屋があることをいやっというほど知りました。
なぜかというと、今回の航空祭、わたしが所属する防衛団体、
地球防衛協会日本支部(仮名)の研修旅行、という名目で、
住んでもいないその土地から九州までバスで行くことになったからです。
前日から現地に乗り込んで地元ホテルに宿泊し、翌日は
バスが出発するという市の合同庁舎で集合です。
ちょうどこの日、自衛隊の一般曹候補生採用試験が行われる予定でした。
自衛隊曹候補生の募集は年二回行われ、陸自は3,000名、
海自1,300名、空自750名が定員とされます。
この日は第一次合格者を対象とした第二次試験だったはずで、
口述試験と身体検査が行われる予定だったようです。
ちなみにわたしも知らなかったので調べてみたところ、
第一次の筆記試験は700字の作文以外は国語、数I、英語の択一で、
高校卒業程度の難度だということでした。
英語は「コミニュケーション英語」とあるのですが、もしかしたら
「ハロー」「ハワユー」「グッド。ハワユー?」
という英語のことかしら。知らんけど。
受験資格は18から27歳までということなので、社会人で
転職を考える人も受けることができるというわけですね。
防衛団体の研修会ということなので、バスの中でもカラオケではなく
自衛隊紹介ビデオを観たり憲法改正について書かれたものを、
コーディネイターが朗読したり、という感じです。
ただ、今回の研修旅行、地球防衛協会だけでは人数が集まらず、
仕方なく、地元の自衛隊協力会に声をかけたのですが、
申し訳ないけどそのメンバー(娘息子が自衛官、という人が多数)
はあまり憲法改正などに興味はないらしく、バスの後方のラウンジで
お酒を飲んでいる人たちも・・・。まあいいんですけどね。
そして関門橋の手前のパーキングで休憩をしました。
ここはもう門司。
近くには日本で初めて海底ケーブルが敷設されたという記念碑があります。
この時に敷設船として身体を張った?沖縄丸は、日露戦争の勝利の
立役者として、戦勝パレードに菊の御門を付けて参加した、という話を
ここで一度したことがあります。
関門橋を見るのは実は初めてなのですが、関門海峡が
こんなに狭いものとは知りませんでした。
最初に関門鉄道トンネルが開通したのは昭和17年。
大東亜戦争末期にはB-29によって集中的に機雷敷設が行われ、
その数は日近海に投下された機雷のおよそ半数ともいえる
5,000個、いまだに1,700余の未処理機雷があると言われています。
目的地までの途上、企画者のイチオシということで、
有名な宗像大社に立ち寄りました。
天照大神の三柱の御子神を祀っている神社だそうで、
日本書紀にもその名前がみられる由緒ある神社です。
境内には神宝館があり、わたしは見学しましたが、
あとで聞いてみるとどうも入館したのはわたし一人だったようです。
三女神の一柱である田心姫神(たごりひめのかみ)が祀られているのは
沖津宮といって、知る人ぞ知る女人禁制の島、沖ノ島です。
神宝館にはその「神の島」の写真、祭祀についてのビデオ、
そしてそこに伝えられた神宝が展示されているのです。
神宝館を入ると最初のガラスケースに収められている小さな指輪。
そのものの写真を撮ることは禁じられていますが、
その写真を撮影することは許されていました。
沖ノ島から出土した5世紀頃の純金製指輪。
製作されてから1600年経っているというのに、
まるで最近まで誰かの指を飾っていたような輝きです。
この指輪は国宝に指定されています。
いずれも沖ノ島で出土した土器や船形、香炉、装飾品など。
これも現物が飾られていて実際に観ることが出来ます。
右下は7センチくらいの大きさのミニチュア機織り機です。
8世紀ごろのもので、本当に布を織ることができるものですが、
江戸時代、福岡の藩主が手に入れたところ、いきなり音を立て、
動き出して光を発したため、恐れおののいた藩主は
また沖ノ島に返還したという曰く付きの品なのだとか・・・。
その後バスは福岡に到着しました。
ホテルから歩いて25分くらいのところでその晩懇親会が行われ、
わたしは運動方々防衛協会会長と歩いていったのですが、
到着が少し遅れてしまい、顔なじみの地球防衛協会会員の島でなく、
地方協力会のおじさんたちの真ん中、しかも皆が避けたらしい
協力会会長の隣の席に座らざるを得ませんでした。
この会長というのが、バスの中でクイズと称して下ネタを
女性に言わせるというセクハラをするわ、このわたしに向かって
地球防衛協会会長様ににお酌をしろといい放つわ、
なんの断りもなく食事も始まらない頃からタバコを吸いまくるわ、
わたしの紹介者である銀行頭取の話をした途端、金融業は落ち目で、
とか言い出すわ、見かけも中身もサイテーのおやぢで、
わたしは早々にその席を逃げ出し、防衛協会の皆さんと
親交を温めていたのでございます。
会社組織で働いた経験があれば、こんな人はもしかしたら珍しくもなく、
いなす方法もスキルも身につけているのかもしれませんが、
残念ながらわたしには、全くその機会ももちろん技術もありません。
かといってうまく取り繕ってやり過ごすほどの度量も持ち合わせていないので、
多少の不興を買っても、あなたたちとは関わらない、と意思を表明したわけです。
互いになんの利害関係もなく、ましてや上下関係もない。
たまたま自衛隊イベントに行くのに一緒の交通機関を使うだけの関係。
そんな相手にどう思われたってハッキリ言って知ったこっちゃありません。
きっぱり。
次の日、7時半にロビーに集合し、バスで基地に向かいます。
博多駅前のホテルからはたくさん航空祭行きのバスが出ていました。
旅行会社のツァーで参加する人もたくさんいるのでしょう。
博多駅前から基地までは小一時間くらいだったでしょうか。
こんな建物が見えてきたのでてっきり基地の管制塔だと思ったら、
芦屋にあるボートレース場でした(笑)
車がすでに駐車場にたくさん停まっていますが、これは
今日レースが行われないため、芦屋競艇がおそらく善意で
航空祭観客用に駐車場を提供したのだと思われます。
ツァーのものらしいバスもたくさん停まっていますが、
ここから基地までは歩くと結構な距離があります。
我々は芦屋基地の好意でバスで基地内まで乗り入れることが出来ました。
基地のゲートを入るときに、一般客は手荷物検査をしますが、
私たちはバスごと入ってしまえるのでフリーパスです。
バスを停めるや否や、わたしは単独行動を決め込み、
会場に向かって一人で歩き出しました。
折りたたみの椅子に背もたれ付きのチェア、
日よけの帽子にタオルなど、いつもの「観戦セット」があれば、
どこでも不自由なく観覧が出来ます。
バスを停めて広い敷地の横を歩いていると、ホイールローダー?が
自衛官と一緒に子供を乗せて走り回っているのに気がつきました。
なんと芦屋基地、施設科部隊の装備に体験搭乗というサービス実地中。
戦車や武器装備に一般人を乗せたり触らせたりしたら大騒ぎ必至の
基地の外の人対策で、コマツなら文句あるまい!となったのだと思われます。
映画「激闘の地平線」の主人公のように、もしかしたらこの体験で
「自衛隊に入ってドーザの鬼と呼ばれたい!」
とか思う将来の自衛官候補だっているかもしれませんし。
敷地内にバスを停めても、滑走路とエプロンまでは結構歩きます。
入間と違い、観覧する人たちがのんびりと会場に向かう様子を見て、
あの入間の修羅場ともいえる場所奪還の有様を思い出し、
やっぱりあそこは特殊なのだと改めて思うわたしでした。
その時頭上を飛行機の爆音が横切ったので、
肩にかけていた一眼レフをなんの調整もせずに空に向けました。
この時時間は0930。
朝8時ちょうどの開場前後から、T-4はリハーサルを兼ねた
オープニングフライトを行なっていたそうですが、
この時刻には全て終了し、その次のU-125Aの救難訓練展示も終わり、
プログラム最初のT-4訓練飛行真っ最中だったのです。
これは二機でこれから着陸するにあたり、前方の機が
フラップを下げる形で、後方が下げずに行うという演目だと思われます。
立ち入り禁止のロープが貼られた、その2列くらい後ろの席も、
ここ芦屋基地なら開場一時間半後に行っても確保できます。
適当に座る場所をだいたい中央あたりに定め、椅子を出して
そこからT-4の訓練飛行を見ることにしました。
訓練飛行は二機ずつ、トレイル隊形やクロスアンダーなどを行います。
4機揃って着陸態勢に入ります。
密集隊形の先頭からブレイクした瞬間。
右手から進入して4機が次々に着陸した後、左でUターンして
滑走路を右手にもう一度帰っていきます。
この写真でもお分かりのように、芦屋基地では入間のように
脚立など全く禁止されておりません。
脚立に乗ってパイロットに手を振ることもできてしまうというわけ。
後から着陸した機とはこうやってすれ違う形になります。
訓練飛行というのはこの飛行機で訓練をする学生パイロットが
日頃行なっている訓練をそのまま見せるというものですが、
本日は全機を教官が操縦しています。
4機が等間隔でしずしずと進んでいきます。
拡大してみると、演技を終えたパイロットたちは
観客に向かって盛大に手を振ってご挨拶をしてくれます。
ところでわたしはここまでなんの調整もせず撮りまくっていて、
特に望遠レンズがどれくらい写るのか全く確かめていなかったので、
ものすごーく遠くにいる人の耳を試し撮りしてみました。
するとこんな写真が撮れ、さすが800ミリ換算の望遠レンズは凄い、
と感動した次第です。
ただしNikon1ユーザーならご存知だと思いますが、いくら望遠レンズが良くても、
ニコ1独特の立ち上がりの悪さははっきり言って航空機撮影には
全くと言っていいほど向いておりません。
じっとしている人の耳は良く撮れても、飛んでいる飛行機には
苦労させられ、フラストレーションが溜まりました。
エプロンではT-4のコクピットに座って写真を撮ることができる
体験コーナーが2機並んでおり、これが朝から最後まで大盛況。
シミュレーターでも退役機でもなく、現役の練習機、
しかもブルーインパルスと同じ機体とあっては、
一度乗ってみたいと誰しも思うでしょう。
子供などをコクピットに座らせ、スマホやカメラで
写真を撮ってあげる係の自衛官、笑顔が素敵です。
コクピット後席にはフル装備のパイロットがいるんですが・・・。
ダミーかな?それともまさか本物・・・・?
芦屋基地上空には本当に鳥が多いです。
なぜか我が物顔で飛び回っているのですが、バードストライクなど
基地側は対策を取っているのでしょうか。
さて、続いてのプログラムは「イルミネーションフライト」です。
芦屋航空祭ではT-4の定番飛行らしく、検索すると動画が出てきます。
全部で7機のT-4が離陸のために滑走路の左エンドに向かっていきます。
7機の「レッドドルフィン」は2機・1機・3機のグループに分かれて離陸します。
1機で離陸した3番機。
最後に残りの3機が編隊のまま離陸を行います。
最初に飛び立った4機は、空中で集合し、エシュロン隊形で戻ってきます。
一矢乱れぬ、とアナウンスされていましたが、これをみると一瞬ズレがあるかな。
パイロットは全員戦闘機の操縦をしていた経験を持ち、
教官となった今、階級でいうと1尉から1佐です。
全員が出身地と出身学校、タックネームも紹介され、この辺が入間との違いです。
4機と3機に分かれて編隊飛行をしたのち、7機が揃って
傘型隊形で会場の正面から進入してきます。
これが噂の芦屋基地名物、「イルミネーションフライト」。
航空機は最終着陸形態を取った状態で編隊飛行を行うのですが、
着陸形態とは、車輪を降ろし、高揚力装置フラップを下げた状態です。
車輪を降ろすと、T-4は着陸灯が点灯しますが、この着陸灯は
パイロットがスイッチ操作することで消灯点灯が可能です。
そこで、傘型で向かいながらライトをつけたり消したり。
全機点灯、全機消灯、一機置きに点灯、半分点灯・・・。
まるでクリスマスツリーのイルミネーションのように。
アナウンスではこれを
「アシヤン・イルミネーション」
と称していました。
最後に全機点灯した瞬間。
基地上空を過ぎれば、あとは7機の編隊は4機、3機に分かれて着陸を行います。
入間でもT-4部隊は「ロートル航空隊」と言われているように、
芦屋基地でも教官である彼らパイロットは「おじさま」と呼ばれていました。
最高齢は1佐なので、もう50歳に手が届こうかというご高齢です。
着陸後、後席で旗をふるパイロットあり。
両手バイバイで完璧な演技を締めくくる、可愛いおじ・・・いや、
レッドドルフィンたちでした。
続く。