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オークランド航空博物館〜フライング・タイガースと宋美齢とシェンノート

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オークランド航空博物館で、デコイ・ミサイルを「子供用のレプリカ」だと思ったのは、
隣にこのミニチュアのP-40-Cトマホークが展示してあったからです。

これは紛れもなく、子供用の「フライング・タイガース」機。

幹部学校の見学記もそうですが、ひとつの写真を取り上げてはでれでれと語り、
話題を詰め込みすぎでなかなか先に進まないというのが当ブログの特徴とはいえ、
今日のタイトルはいくらなんでも詰め込み過ぎではないか、と思ったあなた。
あなたは正しい。

しかし、この「フライング・タイガース」という航空隊のことを語るとどうしても
もれなくこの二人の名前を出して来ずにはいられないのです。

本当は「アクタン・ゼロ」もタイトルに入れたかったのですがこれはまたいずれ。

と言いながら話を遠くから始めますが(笑)、この一月に台湾に行ったとき、
街を救うために乗っていた戦闘機を用水池の傍に落とし、そのため戦死し、
現地の人々から神様として崇められている海軍搭乗員の廟、「飛虎将軍廟」の記事をアップしました。

「飛虎」と言うと、たとえば中国人でも「飛ぶ虎?」と思ってしまう人がいるそうですが、
実はこの二文字で戦闘機のことを指します。

「飛虎」、つまり「フライング・タイガー」です。

この「フライング・タイガース」という部隊はアメリカの義勇軍航空隊ですが、おそらく、
「飛虎」が中国語における「戦闘機」であることを知った命名者が一も二もなく、

「かっこいいから、これでいこうZE!」

と英語の直訳を部隊名にしたのだと思われます。


1937年の盧溝橋事件、続く第二次上海事変によって日中戦争が勃発しました。
あっという間に日本側の航空機爆撃と海上封鎖で不利になった中国軍は
最初の頃ソ連から供与された飛行機で日本軍となんとかやりあってきたものの、
海軍が零式艦上戦闘機を投入したときから全く勝てなくなりました。

蒋介石は日本の脅威に対してその前から武器兵器を海外から購入し、さらには
アメリカから軍事顧問を雇い入れるなどしていたのですが・・・・。

そこで、出てくるのがこの人物。
蒋介石夫人である宋美齢です。



せっかく以前描いた絵があるので出してきました。
この派手ないでたちを見ていただきたいのですが、西洋風のジャケットの下に、
宋美齢は同じ仕立てで中国服を着ていますね。

ボストンに滞在したときに写真をご紹介した名門女子大学、ウェルズリーを卒業、
英語が堪能で、海外在住が長い宋美齢ですが、現存するどの写真を見ても彼女は
アメリカに住んでいるのにもかかわらず中国服、あるいは中国風の仕立ての服しか着ていません。

これは(わたしの考えですが)宋美齢の「戦略・勝負服」というものだったのではないでしょうか。
なぜなら彼女はアメリカに支援を求める中国そのものを代表してそこにいたからです。

日中間の関係悪化に伴って、宋美齢はアメリカに対し、中国への支援を求めて活発に運動を始めます。
タイトルのもう一人の人物、クレア・リー・シエノーを中国軍の軍事顧問にしたのも彼女です。

シエノー、というのは日本で「シェンノート」とされている人物の名前。
スペルは

Claire Lee Chennault

なので、フランス系であったことを考えるとシエノール、さらに厳密にいうと
シェンノー、シエノーが正しいと思うのですが、ここでは日本での慣例通りシェンノートと記します。
(どうも日本人「はフランス系のアメリカ人の名を、英語読みにしてしまいますね。たとえば
黒人人権運動家のDuboisなども、『デュボイス』ではなく、どう見ても『デュボワ』なのですが)

この宋美齢と言う女が、国際的オヤジころがしの達人(笑)。

達者な英語と自慢の美貌、そしていつも身に着けるニューヨーク仕立ての中国服、
ふんだんに宝石をちりばめた中華民国空軍のバッジ。
「かわいそうな中国」を象徴する女性として当時アメリカ人には絶大な人気があり、
ファンクラブまであって、信奉者からの貢物は絶えなかったとか。

宋美齢は蒋介石の通訳、という立場でしたが、また
「国民党航空委員会秘書長」の肩書も授けられていました。

航空委員会、ですよ。
そう、ここでその、アメリカ陸軍航空隊のクレア・リー・シェンノート大佐に交渉し、
この人物を、現在の1200万円の月給で国民軍に雇い入れることに成功するのです。

このほかにも宋美齢は。駐中華民国大使館附陸軍武官のジョセフ・スティルウェルなどにも
陸軍への協力を取り付けています。
つまり中国軍は、このシェンノートを通じて、

「アメリカの派兵、すなわち日本と戦わせること」

をすでにここで約束させたということになるのです。



どうですかこのオヤジころがしの真骨頂っぷり。
国家的交渉を携わる人物が、楽しそうに軍事顧問と夫の腕にぶら下がって。

彼女はこの後国際間における存在感を増していき、ついにはルーズベルトやチャーチルと共に
カイロ会談に出席するのですが、そのとき出席したルーズベルトの次男・エリオットは、
彼女についての感想をこのように書いています。

「蒋介石夫人は男の歓心を得ることばかりに長く従事したので、
いまやそれが第2の性格のようになったような印象を受けた。
本来の性格はたぶん恐ろしいもののように思え、正直言って怖かった」

また、ジャーナリストで作家のセオドア・ホワイトはその作家の鋭い目で彼女を

「冷淡でいわゆる愛人タイプの女性だった」

とも酷評しています。
アメリカ人も転がされて喜んでいる男ばかりではなかったということですね。


ちなみに、このシェンノート、高校時代の同級生であった妻との間に
7人もの子供を作っておきながら、中国勤務になったとたん現地の女性
(もしかしたら宋美齢が手配した?)と深い関係になっていまい、糟糠の妻を離婚し、
この若い中国人女性と再婚しています。

また、その中国人女性と言うのがテレビ局のレポーター上がりで、
シェンノートと結婚した後はワシントンでロビイストになったという、
まるで「プチ・宋美齢」みたいな女性だったということです。

よっぽどこの写真のときに手懐けられたのか根っからの「転がされ好き」だったのか、
それとも宋美齢のおかげですっかり中国人女性好きになったのか。

軍人としては優秀な人物だったのでしょうけど、こういう「サイドストーリー」を知ってしまうと、
特に女性の立場からはその人物評価に点が辛くなってしまいます。


さて、当時アメリカは日本と水面下ではともかく、表向き敵対していたわけではありません。
しかし国際的には中立であらねばならないのにもかかわらず宋美齢の甘言に乗って
(乗ったふりをして?)中国に肩入れして資金を出し、日本と戦うことを決めたのです。

真珠湾が攻撃されたとき、アメリカはいかにも「全く予想もしていない攻撃だった」
などと驚いたふりをしましたが、実はそのずっと前に中国軍の皮を被って戦争していたんですよ。
自分は直接関係ない他国間の戦争に首を突っ込むという形でね。

真珠湾を卑怯だと言うなら、こちらは中立国として明確な国際法違反であり、
はっきり言ってよっぽど卑怯なんじゃないかね?

え?アメリカさんよ。


着任したシェンノートは、さっそく現状を視察し、まずは中国軍が脅かされている
零戦の脅威についての報告をしますが、
アメリカ人は全くそれを信じず、検討委員会では

「シェーンノートのような最高の専門家の言っていることは信じたい。
しかし、これが本当だとすれば、その“ゼロ”とかいう戦闘機は、
アメリカの計画中のいかなる戦闘機よりも優秀だってことじゃないか。」

一同はそれでワッと笑い、それでお開きになったそうです。
アメリカ戦争省は(そんなのあったんだ・・・)このレポートを
「実に馬鹿げている。空気力学的に不可能だ」
と一蹴し、肝心のシェンノートの部隊でも採用係官は

「日本人は皆眼鏡をかけているので操縦なんてまともにできない」とか
「日本人の作る飛行機なんて性能が悪いので任務は楽勝」

などと言って人集めをしたため、優秀なパイロットが当初はいなかったくらいです。

しかし実際にふたを開けてみると米軍の航空隊は零戦の優秀さに当初は手を焼き、


ゼロ(零戦のこと)と格闘戦をしてはならない。 時速300マイル以下において、ゼロと同じ運動をしてはならない。 低速時には上昇中のゼロを追ってはならない。


などの「三つのおやくそく(Three "NEVER")」をお触れとして出したのはまた別の話。

シェンノートがルーズベルトの後ろ盾を受けて結成したのは、
100機の飛行機、100人の搭乗員、200人の地上員を目標にした
AVG(American Volunteer Group)、アメリカ義勇軍です。

このAVGが、中国語の「飛虎」から名称を得て、「フライング・タイガース」となります。
何が義勇軍だよ、実態はアメリカ軍の派兵じゃないか、と思ったあなた、

あなたは正しい。


実は、その実態を証明する、忘れられた「作戦計画」があったのです。
なんとフライング・タイガース率いるシェンノート少将が、この頃おそらく宋美齢にそそのかされて
日本本土を奇襲攻撃しようとしていたというものなのですが、
それについては次回エントリでお話しします。







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