サンディエゴの岸壁に未だその姿を残す空母「ミッドウェイ」。
今日はこの巨大空母の甲板の風景などをご紹介します。
これは今年の写真。
9月の半ばですが、サンディエゴの昼間はまだまだ強烈な暑さです。
ただし夜になると途端に震え上がるほど寒くなります。
甲板の端にこうやって立つと、後ろの高層ビルと甲板が溶け合って
なんとも不思議な構図になります。
昔はなかったベンチもいたるところに設置されて。
これは去年の写真。
艦橋の近くの部分は、ここで行われるイベントのために
テーブルと椅子がスタンバイしており、夕方ホテルに帰って
甲板の上を見ると、アフター6の盛大なパーティが開かれていました。
ところでテーブルクロスが陸軍迷彩なのは何故なのか。
今年は冒頭写真をご覧いただければわかりますが、テーブルは一切出ていません。
この日は朝10時のオープンを待ちかねてやってきたので、
甲板に上がった時にはご覧のように誰もいない瞬間がありました。
他の軍事博物館ならともかく、「ミッドウェイ」ではこの時間だけです。
艦首のブライドル-レトリーバー、通称「ホーン」まで
本来ならばカタパルトのレールが繋がっていますが、
展示艦になってからは途中から全部カバーを被せてしまっています。
女の人の足元にあるのが航空機を牽引するシャトルで、
「ミッドウェイ」は油圧式のH‐4‐1を採用していました。
全長50mで、12,700kgの機体を144km/hまで加速させる能力があります。
朝早くからデッキの上の人形「シュータくん」は人気者。
基本皆同じスタイルで写真を撮りたがります。
「今日の信号旗をどう読むか」
というコーナー。
マストに掲揚されている信号旗を、右側の資料をもとに読み解きましょう。
正解は「WELCOME ABOARD」でした。
飛行甲板上のベンチには、寄贈した人がプレートをつけることができます。
これで多いのが、亡くなった人の想い出のために、という言葉とともに
その人の名前を刻むというパターン。
このプレートには、海軍軍人で2017年に亡くなった方の名前と、
「昨日は去った;明日はまだ来ない。
だから今を生きようじゃないか」
(Yesterday is gone; tomorrow isn't here yet.
So, Let's live in the now.)
という言葉が刻まれていました。
空母の甲板はこんな角度からも観ることができます。
ウィップアンテナ(ホイップと読む媒体もあるけどここは英語に忠実に)
の列。
甲板で構造物の上部に動くものを発見したのでよく見ると、
今から補修工事を行う工事人らしい人の姿でした。
もう一人。
やっぱり安全索をつけて作業していますね。
だって、この作業、矢印のところでしてるんですよ。
しかもさらに上に登ってるう!
これは高所恐怖症には務まりません。
しかしさすが「海軍の宝」だけあって、しょっちゅうメンテしてるんだなあ。
右舷から艦橋の後ろを覗き込んでいます。
画面左手に見えている黄色い建物がこの時泊まったホテルで、
その前の道が、かつて「グレイト・ホワイト・フリート」の水兵さんが
華々しく行進を行った、ブロードウェイピアです。
こちらは「ミッドウェイ」左舷側からコロナド・ブリッジ方向を見たところ。
実際に車でブリッジを渡った時、随分橋桁の高いブリッジだなと思いましたが、
これでも空母は通過することができないのだそうです。
今見ているあたりが、昔カーチスが自分の水上機飛行場を持っていたところだと思われます。
その昔、首からカメラを提げて歩いているのは日本人、とアメリカ人は
揶揄していましたが、スマホでのセルフィーが行動基準となった今となっては、
アメリカ人は皆こんな感じでどこに行っても写真を撮りまくっています。
「ミッドウェイ」はいたるところに撮影ポイントを用意してくれています。
「ミッドウェイ」の艦番号は41。
当たり前のことですが、かのアメリカ海軍空母第一号の「ラングレー」は
CV-1で、それから41隻目の空母となるわけです。
甲板には空中から感を間違えないように、大きく41が書かれていますが、
ところがどっこい、極限状態のパイロットにはこの字を読む余裕すらないらしく、
自分の艦を間違えてアプローチしてきたという話もありましたね。
これは戦争中、敵味方の間にもしばしば起こったそうです。
有名なところでは、珊瑚海海戦の時に、敵空母に着艦しようとした
帝国海軍の艦爆がいて、既の所でどちらもが気づき回避したのですが、
アメリカ海軍ではそれ以降、アプローチしてくる機に敵か味方か認識する
「フレンド・オア・フォー」のお作法が決まったと言います。
「ミッドウェイ」もそうですが、それでは敵ではないけれども
自分の艦を間違えてよそ様に着艦してしまったら、どうなるかというと、
リンチが待っております(笑)
尾翼の「F」に付け足して
FOULED UP →ヘマしやがって・・・
NAVY → お前なんか海軍じゃねえ
MUST BE AIR FORCE → 空軍になっちまえ
エアマン・アダムズ報告『私はウバンジになりたい』
(ウバンジとはアフリカの土着部族)
VF-62 ガードメール オリジナル・コーラルシー優先
どうやら間違えて「コーラルシー」におりちゃったんですね。
「空軍に行け」というのは、自分の降りる艦を間違えるようなパイロットは
海軍の資格無し、陸に降りるしか能のない空軍に行きましょう、ってことです。
こっちもすごい。
パイロットはニコニコしながら写真におさまってますが。
いっぱい書かれすぎて読めないんですが、その中に
「この子はお宅の迷子さんですか?」
とか、給油口にわざわざ
「ガスにはコニャックを混ぜといたでー」
と書いてあったりします。
しかし、艦を間違えた!と気づくと同時に、ペンキの缶を持った甲板の乗組員が
ニタニタしながら駆け寄ってくるのって、パイロットにとって一生のトラウマだろうな・・・・。
そして全身にペイントされた情けない機体でしょんぼりと帰還を試みるパイロット。
「二度と来るんじゃないぞ〜」
まるで刑期を終えてムショの門を出て行く時のような
生暖かい声援が、機体に浴びせられているのでしょう。
そして、この後自分の艦に戻ってから、その屈辱的な落書きを消す
機体メンテナンス係に思いっきり嫌な顔をされる運命が待っています。
さて、というわけで甲板をいよいよ降りることにしました。
退出口は艦尾の1箇所からです。
この一つ一つがライフボートなんですよね・・・。
最初に見学していたなかったら「米俵」?とか思ってしまったかもしれん。
このまま階段を降りて行けば外に出られますが、ちょっとだけショップをのぞいて見ることにしました。
ミッドウェイTシャツに混じって、さりげなくグラマンロゴのがあるぞ。
ジョリーロジャースのTシャツめっけ。
ところで今年、甲板の隅でこんなイケてるお掃除車を見つけました。
機体のペイントをするノウハウを取り入れております。
続く。