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平成30年度 年忘れお絵かきギャラリー

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早いもので、2018年、平成30年も終わろうとしています。

今年は出席したイベントも多く、私生活も何かと忙しかったこともあり
絵を描く余裕があまりなかったので、1日だけとなりますが、
今年一年に発表した挿絵を、恒例年忘れギャラリーと称して
振り返っていこうと思います。

まず冒頭は、4月27日から4日間にわたって連載した映画、

「深く静かに潜行せよ」

から。

潜水艦映画の名作としてその名前を知らない人はない、
とまで言われている本作を取り上げると決めたからには
かなりの覚悟で具に観ていったわけですが、進むにつれて
戦争映画としては決定的な「これじゃない感」に苛まれたという作品。

その時もかなりツッコミましたが、その違和感というのがまず主人公の
クラーク・ゲーブル扮する潜水艦艦長リチャードソン少佐という軍人の描き方です。

リチャードソンは自分の乗っていた潜水艦を撃沈した駆逐艦「秋風」とその艦長、
豊後ピート(もちろんあだ名です)への復讐心に燃えるというのですが、
この大前提がそもそもおかしすぎませんかね。

戦闘の結果敗北したからといって、特定の一駆逐艦に復讐心を燃やす、
というこの艦長の動機は、軍人としてかなり歪すぎて、

「お前はアナポリスで何を学んできたんだ」

と説教したくなるレベルの指揮官失格だと思うわけです。


個人的な復讐心に突き動かされ、リチャードソンは、すでに着任が決まっていた
新艦長ブレッドソー大尉(バート・ランカスター)を汚い手で引き摺り下ろし(笑)
潜水艦「ナーカ」の艦長におさまったかと思えば、いきなり強権を発動し、
訓練は駆逐艦をターゲットにしたものばかり、潜水艦は遭遇しても無視。

同じタイプの駆逐艦が現れると目の色変えてやっつけ、
憎き敵を叩くために独断で危険な豊後水道に乗り込んでいく。

一般に、二枚目俳優が演じる軍人のあらまほしき姿というのは、
身も心もイケメンで勇ましく正義感に溢れ、公正中立。
そして何より指導力に優れているというもののはずなのに・・・・。

実際の潜水艦乗りが原作を書いたということですが、彼とても
こんな公私混同の指揮官が実在するとは思っていなかったでしょう。

もう一人の主人公、ブレッドソー大尉は普通に「良い軍人」。
艦長の席を奪われた恨みを持ちながらも、それはそれ、これはこれ、
と私心を任務に持ち込まない公明正大なタイプです。

リチャードソン艦長ときたら、任務に私情を加えまくるのみならず、
いよいよ「秋風」と対決!という戦闘中に、司令塔からなぜか
被害を受けた魚雷発射室をわざわざ見に行って、そこで転倒。
戦闘が終わってからもう一度同じ魚雷発射室に、一言「どうだ」というために
のこのこ出かけていって昏倒。結果脳挫傷で死亡。

お前はいったいアナポリスで何を学んできたのかと(以下略)

 

そして調べていてこんなことがわかりました。
クラーク・ゲーブルは、クランクインしてから
リチャードソン役を拒否し、撮影現場をボイコットしていたという事実を。

映画「風と共に去りぬ」で、スカーレットの永遠の相手、無頼な南部の伊達男、
あのレット・バトラーを演じ、大スターとなったゲーブルにとって、
わかりやすいピカレスクならまだしも、こんな中途半端な、

「悪人ではないけれど、軍人としては資質無し」

みたいな弱い人間を演ずることは耐えられなかったのだろう、とわたしは推察しました。

そういう裏の事情を踏まえて観ると、ただの戦争映画ではない、
人間ドラマの範疇に加えられるこの映画の複雑さが読み解けてきます。

というわけでこの映画、ある意味「名作」ということには間違いありません。
「戦争映画の名作か」といわれると、思いっきり否定しますが。

「深く静かに潜行せよ」のこれらの挿絵は、最初にゲーブルの顔を
真面目モードで描いてしまったため、4回とも同じタッチで
制作することになってしまい、大変な思いをしました。

特にこの三日目のゲーブルとランカスターの絵は、字入れ直前に
ソフトがクラッシュするという悲劇に二回見舞われたため、
完成した時にはほとんど肩で息をしている状態でした。

でも、回数を重ねるごとに選択するペンの種類や手法などに
前回の教訓を活かすことができたため、だんだん要領が良くなって
時間は短縮されていったということはあります。でっていう。

 

それから、名作中の名作といわれるこんな映画でも、
笑ってしまうような荒唐無稽な設定や細かいミスが満載で、
ツッコミどころ多すぎイ!であることをあらためて確認しました。

特にこの映画で観ていて辛かった(嘘)のが日本人俳優たちのセリフです。
冒頭の潜水艦艦長は比較的まともな日本語を喋っていましたが、
それでも聞き取れないところがあったり、まあ笑わせてもらいました。

豊後ピート

「秋風」との対峙

宿敵「秋風」撃破

伊潜との対決

 

映画「イン・ザ・ネイビー」

「はみ出し者たちのスティング・レイ」

こちらも潜水艦映画、「ダウン・ペリスコープ」を取り上げました。
邦題の「イン・ザ・ネイビー」は、この映画の最後に、
同名のヴィレッジ・ピープルの歌が流れることからついたようです。

 

こちらは優秀なのに、過去の操艦ミスのせいで、いつまでも
艦長になれない潜水艦隊のはぐれサブマリナー、ダッジ。

彼は”あること”をして、グラハム少将に蛇蝎のごとく嫌われていますが、
サブマリナーとしての実力はかなりのもので決断力もあるため、
潜水艦隊司令のウィンスロー中将は彼を高く買っています。

そんな上層部の思惑がぶつかり合った結果、ある将官会議を経て
彼はついに念願だった潜水艦の艦長職を拝命するのですが、その潜水艦とは
第二次世界大戦時のディーゼルエンジン潜水艦、「スティングレイ」でした。

しかも悪意を持って少将がわざわざ選んだ乗組員は、潜水艦隊の「問題児」ばかり。
彼らを率いて模擬演習(ウォーゲーム)で原潜の港に進入できたら、ダッジは
晴れて原潜の艦長にしてもらえるということになり・・・。

原子力潜水艦隊バラオ級潜水艦

個性豊かな変人サブマリナーたちの描写だけでも楽しめるこの映画。
彼らを率いる艦長も、気に入らない副長を「処刑」してしまったり、
明らかにディーゼルボートの限界を超えて潜行して皆をビビらせたり、
あーこれは出世できませんわ、という規格外れの軍人として描かれます。

ところで、わたしの好きな映画のタイプに

「男性の集団が目的に向けて皆で努力し栄光を勝ち取る」

という条件を満たすもの(例:炎のランナー、ほとんどの戦争もの)
があるのですが、この映画もある意味その範疇に入ります。

第二次世界大戦中にディーゼルエンジンの潜水艦に乗っていた
ハワードというおっさんが、ダッジ艦長の統率の下、
タンカーの下に潜り込んで原潜のソナーを逃れたときに

「生きててよかったぜ、DBF!」

と叫びます。
このセリフはDVDではちゃんと翻訳されなかったのですが、
興味を持って調べてみたところ、このDBFには日本にも若干関係ある
あるストーリーがまつわっていることがわかりました。

「ディーゼルボート・フォーエバー!」

わたしなんか、DBFのバッジまでアメリカのミリグッズ店で買っちゃったもんね(笑)

ウォーゲームの勝利

ところで、劇中、

「雲が厚くて哨戒機に見つかりにくい」

という設定のはずだったのに、原潜がドルフィン運動をしているシーンでは
雲もない真っ青な空になっていて、なんぞこれ、と思ったのですが、
そういえばこれと同じことがつい最近ありましたよね?

とある国の海軍駆逐艦が隣国の哨戒機に火器管制レーダーを向け、
向けられた方が政府レベルで抗議をしたところ、当初

天気が悪く波が高かったので
レーダーが空に向いて偶然哨戒機に「当たってしまった」

と言い訳をしていたはずなのに、映像が公開されてみれば、
そこは波一つないいいお天気だった、なんて事例が。

映画でこのわたしごときにツッコミを入れられているのと全く同じことを
実際の軍がやっているっていったいなんなのよって話ですが、
ともかくこの話、年の瀬にワクワクする展開となっていますよね。

韓国海軍が次々と見え透いた言い訳をし、それを日本側が
瞬時に論破していくという展開からもう目が離せません(笑)

  ところで、わたしは映画の挿絵を描く場合、通常   1、真面目なタッチで劇中の1シーンあるいは登場人物を描く   2、省略したタッチで登場人物を象徴的なセリフを添えて描く   3、映画のストーリーを漫画仕立てで語る   という3種類のどれかを選択しますが、「深く静かに」は1、
「イン・ザ・ネイビー」は2、そしてもう一つの潜水艦映画

「ペチコート作戦」   は3、と意図したわけではありませんが、結果的に皆違う方法になりました。   「社交界の人気者、潜水艦に乗る」

ある潜水艦出身の自衛官にオススメされた映画です。

コメディー仕立てなのだけど、本職から見ても
潜水艦戦闘シーンなどがちゃんとしているということでした。

しかしその割に当ブログではきっちりコメディ部分だけにフォーカスしてます。

潜水艦乗りが見て「ちゃんと描かれている」としても、
悲しいことに一般人からは他の潜水艦映画と何が違うのか、
その肝心なところまではわからないんですよね。

「看護師部隊、潜水艦に乗る」

第二次世界大戦中の潜水艦に、イケメンというしか取り柄のない
(と思われた)中尉(トニー・カーチス)が、ケーリー・グラントが艦長を務める
潜水艦に乗り込んできて、そいつが島で拾ってきた看護師部隊が
男だけの潜水艦に乗り込んでくることからてんやわんやの大騒動。

みたいなわかりやすいコメディで、本当に楽しんで絵を製作しました。

ドジっ娘(死語?)でことごとく艦長の神経を逆撫でする娘が
結局艦長の妻に、逆玉狙いのイケメンダメ士官は、その後覚醒して
原潜の艦長に、その妻も看護師の一人というお約束のエンディングです。

乗り込んできた看護師たちは、結局全員潜水艦乗員とくっつく?のですが、
その相手は、当初いがみ合ったり殴ったり殴られたり、
騙されたの騙されないのと揉めたりする相手であるのがポイント。

タイトルの「ペチコート作戦」は原題どおりなのですが、
ただし作戦の核心となるブツの名前をマイルドに言い換えております。

当ブログでは、その下着をネタにしたこの映画の「オチ」にも
鋭く突っ込み、

「この時代に日本の女はその頃まだ”それ”を使用していない」

という重大な映画のミスを追求しております。
わたしがこれまで追求し、解明した映画の矛盾の中でも
ベスト3に入るほどの快挙だったと自分では思っています(嘘)

そう、ペチコートというより、題名はこちらがより正確です。

「オペレーション・アンダーガーメント」




二人の艦長〜インディアナポリス轟沈と伊号58

映画についてのツッコミや感想がメインではなく、
メア・アイランド海軍工廠跡の博物館で見つけた

「インディアナポリスが原子爆弾を搭載したメア・アイランド」

という観点からの展示を中心に、原子爆弾搭載の様子、そして
「インディアナポリス」の艦長と彼女を撃沈した伊58の艦長、
二人のこと、軍事裁判などについて語ってみました。

この絵は参考にしたニコラス・ケイジ主演の映画

「USSインディアナポリス 勇気ある者たち」
(邦題は『パシフィック・ウォー』)

のラストシーン、現世では実現しなかったマクヴェイ2世と
橋本以行、二人の艦長が敬礼を交わしあう姿を描きました。

「ほどほど海軍人生」〜華族軍人・松平保男海軍少将

ノブレス・オブリージュという概念がそのまま西欧から持ち込まれ、
日本の貴族階級の男性はよほどのことがない限り軍人を志しました。

貴族は特権階級なので、兵学校や陸士などでも成績は非公開で
自動的に上位、その後の昇進もエスカレーター式だったので、
もしこの人物が華族でなければ、少将にまでなることはなかったでしょう。

(貴族は大学に無試験とはいわないけど下駄を履かせてもらえて入学できた)

戦争が始まって戦線に赴き、戦死した貴族階級軍人もいましたが、
松平少将は日露戦争に「鎮遠」の分隊長で参戦した以外は
平和な時代に副長、艦長などを勤め、成績がそこそこだったのが幸いして
その後に現場に立つことなく、敗戦を知る前に他界しました。

このエントリ制作であらためて知ったのは、貴族がその血を維持するためには
妾や養子の制度があってこそだったという事実です。

そうしたことがタブーとなってしまったため、結果として
皇統が危機に瀕しているという事態があるわけですよね。

 

スピットファイアー・ガール〜メアリー・エリス

今年7月24日、元王立空軍の輸送部隊でファースト・オフィサーだった
女性パイロット、メアリー・エリスさんが亡くなりました。

同名のよしみでと読者の婆娑羅大将に教えていただいたのをきっかけに
彼女をはじめとする

ATA (Air Transport Auxiliary、補助航空輸送部隊)

の女性パイロットについて勉強させていただきました。

「スピットファイアー・ガール」というのは、彼女らが航空機を
工場や基地から別の航空基地に輸送する任務を負っていたからで、
輸送した航空機中最も「キャッチーな」スピットファイアが選ばれたのでしょう。

エリスさんは90歳過ぎて、女性パイロットの後部座席に乗せてもらい、
一瞬操縦桿を握っただけでなく、宙返りされても豪快に笑っていました。

そういえばあのチャック・イェーガーも今年で96歳になると思いますが、
2012年、89歳の時に音速越えを再現しています。

パイロットが短命、なんて噂は全くあてにならないってことですね。

ジョセフ・ヒコ〜彼レ如何ニシテ亜米利加人トナリシカ

濵田彦藏、のちのジョセフ・ヒコ、通名アメリカ彦藏。
アメリカ市民。

サンフランシスコのメア・アイランド海軍工廠跡博物館で、
咸臨丸コーナーの近くにあったヒコの紹介を読み、
ここであらためてその生涯を辿ってみました。

日本に再入国するために日本人であることを捨て、
アメリカ人になるという辛い選択をした彼が、二つの祖国の狭間で
いかに自分のアイデンティティに苦悩したか。

彼の辿った道から想像できるそんなことについて語ってみました。

 

絵を描くのは楽しいのですが、何しろ時間が取られるので、
取り掛かるにもえいやっと思い切らなくてはならないのですが、
来年はもう少し頑張って見てもらえればいいなと思っています。

 

それでは皆さま、良いお年を。

 

 

 


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