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コヨーテポイントと「ジャパノロジスト」ヘンリー・P・ボウイ〜サンフランシスコ

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サンフランシスコ滞在中、一度だけコヨーテポイントに歩きに行きました。

コヨーテポイントは正確にはサンマテオにあり、
サンフランシスコに飛行機が着陸するとき、左側の窓に座っていると
眼下にその場所を確認することができます。

ところで皆さん、いきなりですが、アメリカでは、歴史を

Pre-Columbian (先コロンブス期)

とそれ以降に分けることをご存知でしょうか。
つまり、クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見し、
彼らが上陸して大陸にいた先住民族(俗にいうインディアン)を
征服した後とそれ以前、というわけかたをするとき、
この言葉を使います。(厳密なものではありません)

それでいうと、プレコロンビアン期には、ここコヨーテポイントは
今のような地続きではなく、沼地に囲まれた島だったと言われています。

そんな地形なので真水を確保することができなかったはずなのですが、
地層を調べてみると、わずかながら人が住んでいた痕跡があるそうです。

この土地一帯はメキシコ統治時代、

コエターノ・アレナス( Cayetano Arenas)

という個人に譲渡されており、「コヨーテ・ポイント」の名前は
おそらく動物ではなくこちらからきたのだろうといわれているそうです。

その後、アレナス一族は1850年、ハワードという実業家に土地を売却し、
ハワードはここで「パシフィックシティ・アミューズメントパーク」という
スパ&プールを経営していました。

政府がここを買い取ったのは1942年のことです。

かつてここにあったというアミューズメントパーク、
パシフィック・シティの大きなエントランスの写真です。

向こう側にはジェットコースターのようなものが見えていますね。

実はこんな楽しげなものができていた模様。

記録によると、ボードウォーク、遊園地、観覧列車、メリーゴーラウンド、
回転木馬、ダンス場ともちろんフードコートのようなものもありました。

そして、今写真を撮っているところをサンフランシスコ側から見たところ。
海水浴をするにはサンマテオは今ひとつ気温がやばいのです(笑)

このアミューズメントパーク、シーズン制で最初の年には大盛況でしたが、
(100万人訪れたとある)次のシーズンには4分の1に減り、
第3シーズンの開催が行われることはありませんでした。

その理由はわたしの予想通り、午後になると強風が吹き付けるここの気候と、
それから湾岸に都市部の汚水が流れ着いたためだといわれています。

上の写真に見えている島部分がここだと思われます。

 

ところで、先ほど名前の出たハワード(ホワードとも)家の
裕福な未亡人、アグネス・ポエト・ハワードは、15歳下の、

ヘンリー・パーク・ボウイ(ブイ)

という弁護士、のちに「ジャパノロジスト」、つまり「日本学」の
権威となる男性と結婚するのですが、この男性が、
アグネスの死後、日本政府に招かれて来日し、横浜に住み、
日本女性との間に子供までなしました。

ルーズベルトかと思った(笑)

この人が、フランス文学者であり翻訳家でもある平野威馬雄の父親、
つまり平野レミのおじいちゃんです。

日本美術愛好家として「武威」(ぶい)という雅号をもち、
日本画を嗜み、サンマテオに日本から呼び寄せた庭師に庭園を作らせ、
排日運動の起こっていたアメリカでサンフランシスコ日米協会初代会長として
日本文化の普及に務めました。

ここコヨーテ・ポイントも、アグネスから相続した土地を
他の海岸沿いの町と同様観光地にするため彼が尽力したそうです。

ここには毎年のように訪れていながら、日本との意外な関係について
初めて知ることとなり、また、大変驚かされました。

今では観光地といっても州が保有する公園で、自然博物館やピクニックエリア、
そしてゴルフコースとヨットハーバーしかありません。

向こうに見えているのはサンマテオブリッジ。
サンフランシスコ側からバークレイに渡る長い橋です。

海沿いにはカメラクルーがいるようですね。

コヨーテポイント・マリーナにはヨットクラブがあります。
先ほどの話によると、午後は風が強いということなので、
ヨットを楽しむ人には絶好のコンディションなのでしょう。

とはいえ、午前中にはこの通り鏡のような海面です。

この日は週末でしたが、ヨットをする人はわかっているのか、
ほとんど漕ぎ出そうとする人の姿はありませんでした。

かろうじて浮かんでいたヨットは2隻だけ。
遠目に見てもキャビン?ではのんびりとした雰囲気で、
お茶でも飲んでいるのではないでしょうか。

決して体育会系ヨット部のようなクルーズにはならなそうです。

桟橋には鵜が羽を乾かしていました。
鵜は水鳥ですが、なぜか羽に防水性があまりないため、
水に入るとその度にまめに羽を乾かす必要があるのだそうです。

コヨーテポイントはバードウォッチングのポイントでもあります。
自然公園の一環でもあるんですね。

この日も近くに舞い降りてしばらく生態観察させてくれた鳥さん。

何枚も写真を撮らせてくれました。

ここコヨーテポイントには子供向けの自然博物館
キュリオシティという施設がありますが、その中では保護動物などを
人口で飼育したりもしているそうです。

その中には、こんな生物たちも・・・・。

バナナスラッグ

とか。

タランチュラ

とか。

西洋ヒキガエル

とか。
野生生物で保護しなくてはいけないけど、公園にいるとまずい、
そんな生物をここでは保護しているのだそうです。

コヨーテポイントを歩いていると、頭上を何度も鳥の群れが行ったり来たりします。

カッショクペリカンです。
北アメリカにはアメリカシロペリカンという白い種類がいますが、
この地域には羽が薄茶ミックスのこのペリカンが生息しています。

遠目にはペリカンに見えませんが、彼らは飛ぶとき
長い首を折りたたんで邪魔にならないようにします。

海の上を列を作って何往復もしていましたが、何をしているかというと
魚の群れを見つけると空中から水中へ飛び込んで魚をとるのです。

このようなダイナミックな方法で魚を捕らえるペリカンは珍しく、
例えばシリコンバレーにいた白いペリカンは集団行動をせず
泳いで餌を探し、大抵は他の鳥の獲物を盗んだりするのだそうです。

ここには第二次世界大戦の間、ほんのいっときでしたが、
戦地に赴く商船船員のための特別の訓練を行う施設がありました。

昔このテーマに一項を割いて説明したことがあります。

この石碑は、その学校があったことの記念と、戦地に赴いて
命を落とした船員たちの慰霊碑を兼ねています。

もし皆さんもサンフランシスコに行くことがあったら、
左側の窓の下を見ていてください。

マリーナに並ぶヨットが並ぶ突き出した半島がコヨーテポイントです。

逆にいうと、ここにいると、一日世界の航空機が飛んでいる姿を
場合によっては驚くほど近くで見ることができるので、
飛行機好きには「ウォッチングポイント」としても知られています。

アメリカン航空。

デルタ航空。
アメリカ国内便搭乗の経験から個人的にすっかり「見切りをつけた」航空会社。
合言葉は ” Delta, Sucks ! "

この日の旅客機には翼の上にこのようなベイパーが観測されました。
戦闘機のベイパーは翼端から溢れるように現れますが、
かなり速度を落とした着陸寸前の旅客機は、翼の上だけが
薄っすらと煙ったようなベイパーです。

ベイパーは、翼の上下を空気が流れる時、上部に流れる空気と
翼の下部を通る空気に負圧の差が生じ(距離が違うので)
翼の上を通る空気の圧力が下がって温度も下がるため、
空気中の水蒸気が翼の上だけに水滴となって現れる現象です。

(ということでいいですよね?)

というわけでこれは中国南方航空です。

ユナイテッドのおそらく国内便。
よく見ると翼端から細いベイパーが見えます。

KLMオランダ航空。
旅客機の着陸車輪は小型のタイヤが複数あるのが普通らしいと
今回この写真を見て初めて気が付きました。

岩を積んで作った洲には、

「危険は自己責任で」

と釘を刺してあります。
自己責任で釣りをしている人たちがこの日は結構な数いました。

公園内にはポプラクリークとい名前のゴルフコースもあります。
フィーは平日で38ドル、サンマテオ市民なら33ドル、
また「トワイライト」「スーパートワイライト」料金はさらに安く、
それぞれ27ドル、19ドルといったところですが、トワイライトは
午後1時以降にプレイを始めればいいそうです。

ゴルフをしないのでこれが普通なのかどうかわかりませんが、
日本と比べて安いんじゃないでしょうかね。

ちなみに190ドル払えばメンバーになれるそうです。

アメリカは公園のように街中に普通にコースがあるので
ここでならゴルフやってもいいなあ、とよく思ったものです。

公園ではヒスパニック系の家族が子供の誕生パーティを行うらしく
木に誕生日のくす玉人形、「ピニャータ」が吊り下げられています。

中にお菓子やおもちゃなどが詰めてあり、本日の主人公が
目隠しをして棒で叩き割るのがお誕生日のクライマックス。

割れたピニャータからはお菓子が溢れるので、それを
こどもたちがわっと拾いに来るまでがセットです。

アメリカのトイザらス(もうないですが)などには
ピニャーターのコーナーにいろんなデザインのものが売られていました。

わたしの直感が「これは不倫」と決めつけた黒人男性と白人女性のカップル。
男性は結構な年齢、女性は若いけど後ろ姿はご覧の通り。前に回ってもご想像の通り。
きっと男の方には嫁がいるな。

なぜそう確信したかというと、二人の異常なはしゃぎ方です。
人目のつかないこんな公園をイチャイチャしながらもつれ合うように歩き、
いきなりきゃっきゃうふふと走り回る。こんな夫婦っていると思う?

まあ付き合い始めか新婚さんという可能性もないではないですが。

という(面白くもない)ドラマが最後に待ち受けていたわけですが、
ほとんど人気のないこの公園では珍しい出来事でした。

「見てみい、旭日旗や」

映画「トラ、トラ、トラ!」で淵田美津雄隊長を演じた田村高廣が
真珠湾攻撃に向かう機上でいうセリフです。

この、祖国を象徴する太陽の光を写真に撮っていた時、
ここコヨーテポイントと日本の縁など知る由もありませんでした。


ヨットやゴルフ、ピクニックでここを訪れるアメリカ人も、
今やほとんどがそのことを知らない世代になっていますが、
わたしだけはそれを覚えておこうと思います。

 

 


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