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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「原子力潜水艦浮上せず」〜"Congratulations, Skipper!"

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気がつけば潜水艦ものを選んでいる当ブログ映画部ですが、
今回もチャールトン・ヘストン主演の原潜ものを取り上げます。

「原子力潜水艦浮上せず」。

原題は

Gray Lady Down 

灰色の淑女沈没す、ってなところでしょうか。
一口で潜水艦ものといっても、これは今までお話ししてきたのと
少し毛色が違っていて、潜水艦救難をメインに描いたものです。

当時最新装備だったDSRVと潜水艦救難をアピールしたかったらしい
米海軍と国防総省、ついでに撮影に協力してもらった
「カユーガ」と「ピジョン」の乗員に深く感謝する、という
字幕から映画は始まります。

アメリカ軍の原子力潜水艦「ネプチューン」は潜水艦の故郷てある
ニューロンドンに帰投しようとしていました。

潜行状態から浮上の命令を下してから、艦長のブランチャード(ヘストン)は
この任務が終わったら自分が艦長の座を渡す副長のサミュエルソンに

「艦長にコーヒーを」

と軽ーく注文します。
1度目は見流してしまったシーンですが、一度観終わった後は、
この「コーヒー」にちょっとした意味があったことに気がつきました。

てか副長にコーヒー淹れさせるなよっていう。(これも伏線)

艦を降りるのは艦長ですが、この度は副長にサプライズをするようです。
乗員同士が偽の喧嘩をして慌てて止めに入った副長に、

「サプラーイズ!」

「あっ・・・・騙された」

乗員一同からのプレゼントはサイドパイプでした。
艦長になる人にサイドパイプとはこれいかに。

「月曜日に新しい艦隊司令が着任するときに使いますよ」

そう、ブラッチャード大佐は月曜から艦隊司令に昇任するのです。
でもやっぱり艦長はサイドパイプ吹いて貰う立場で、吹く人じゃないけどな。

このセンスのないプレゼント考えた人は誰?

そのとき、ちょうど運悪く霧の中レーダーが故障したノルウェーの船が、
(なぜかブリッジでは全員がなまった英語で会話)接近していました。
艦長も甲板に上がり回避行動を支持するのですが、
ワッチの士官マーフィーの初期の判断が霧のため甘かったせいもあって、
船は「ネプチューン」の艦体に激突してしまいます。

衝突したのはちょうど機関室のある部分の艦腹でした。
なんの予兆もなくいきなり浸水していくエンジンルーム。

パイプが裂け、蒸気をかぶって叫び声をあげる機関室の乗員と壮絶です。

この映画の不思議なシーンの一つですが、潜水艦なのに乗員のバンクが
寝ている人で上から下までぎっしり詰まっているところです。

潜水艦って交代制で寝るからこんな普通の軍艦みたいなことはないよね?

それはともかく、事故は深夜起こったため、バンクの乗員たちは慌てて飛び起き、
浸水していない前方に必死で移動を行います。

艦長は、まだ亀裂箇所に人が残っているのがわかっていましたが、
浸水を止めるため苦渋の決断でドアを締めさせました。

悲惨なのがドアを閉められた機関室。
海水とパイプの水が同時に彼らを襲います。
こんな状態なのに同僚を助けようとする人もいますが、彼らの顔は
見る間に熱で焼けただれていくのでした。

機関室、完全に水没。

「ネプチューン」は機関室と制御室を失いました。
これは全く自力で動くことができなくなったということであり、
海底に向かって速やかに沈没していくのを手を拱いて見ているだけです。

「ジーザスジーザスジーサス!1200フィートで潰れます!」

若いだけにテンパるのも早いハリスくん。

目盛りがものすごい速さで深度の変化を告げています。

800フィート、250m付近まできてしまいました。

海底の岩礁が迫ってきていました。

「衝撃に備え!」

衝撃の瞬間、あちこちで叫び声が上がりました。

1450フィートの海底に鎮座しても一部が破れた潜水艦が無事であるというのは
ちょっと奇跡のような状態かもしれません。

「頑丈に作ってくれたな」

ここでさり気なく艦長、

「ジェネラル・ダイナミクスに感謝しよう」

と製造会社(スポンサー?)の宣伝をするのですが、日本語字幕ではただ

「製造者に感謝しよう」

となっています。

とりあえず損傷個所を調べ、負傷者の手当てをすることを命じますが、
軍医は艦尾にいたため殉職してしまっています。
傷の手当は看護士資格のある衛生兵ペイジ一人の手にかかってきました。

そのとき上の階からふらふらと降りてきた副長。

「デイブ、俺はてっきり・・・」

生きていたことを喜んだ艦長に向かっていきなり、

「コングラチュレーションズ、スキッパー」

これが言葉通りの意味ではないことは誰だってわかるでしょう。
副長、なんかすごい怒ってます。

(なんなんだこいつ・・・・)

艦長は返事をせず顔をこわばらせるのでした。

さて、こちら大西洋連合軍司令部。
ノルウェーの船から通報を受けた当直士官は、沈んだ原潜が
「ネプチューン」らしいという見当をつけ、対策に入りました。

早速主要な司令官などに電話連絡をするのですが、これが面白い。
「バーンズ提督」と書かれたカードにパンチ穴が打ってあり、
それを差し込むと自動的にダイヤルをするという仕組みです。
短縮ナンバーなどがない時代の最先端テクノロジーです。

バーンズ提督のゴーヂャスなお部屋に連絡が入りました。

初期の段階で乗員の約半数、52名が失われたことがわかりました。
生き残った乗員にも怪我人多数、一人は脳挫傷で意識不明の重体です。

原子炉は失われ、機関室も浸水しましたが、隔壁はほとんどが無事。
空気清浄器が一台故障しただけという奇跡的な状態であることがわかりました。

しかしこれで艦内の空気が汚れる1日半の間に脱出しなければならなくなりました。

司令部には早速「ネプチューン」を救出する対策チームがおかれました。

救出はできるが、「ネプチューン」のいる場所は狭い大陸棚の斜面なので、
一度地滑りが起きたら海底まで落ちてしまい助からないだろう、
という結構悲観的な結論が出たので、救出チーム司令のベネット大佐は
まず自分の妻のリズに電話で事故を知らせます。

「ブランチャードの細君に言ってくれ。
何が起ころうとも必ず彼を助け出すと」

潜水艦救難隊ユニットの格納庫からDSRVが運び出されました。

「緊急事態だ。原子力潜水艦が大西洋で沈没」

艦長がペイジに呼ばれてバンクに行くと、脳挫傷を起こした乗員が
もう死にかけていました。

「(死んだら)どうします?」

「布をかけておけ」(あっさり)

士官寝室の前を通りかかると、フルートが聴こえてきました。

開けてみると、見張り士官だったマーフィ。
フルートは故郷のナッシュビルで習ったといい、皆素朴な人たちで
海軍兵学校に入った自分を誇りにしている、と彼はいいます。

「また帰れるでしょうか」(;_;)

「帰れるさ」(´・ω・`)

( ;  ; )

映画的にいうと、こういうの(楽器をする、動物を飼うetc.)
は「フラグ」ということを皆さんももうお分かりですね。

それに、なんとも縁起悪いことに、彼の名前はマーフィ。
世に「マーフィーズ・ロウ」というものがあってだな(略)

こちらニューロンドン。
テニスをしていた艦長の妻ですが、ベネットの妻の顔を見るなり呟きます。

「He's down, isn't he?」 (沈んだのね)

さすがはサブマリナーの妻。察しがよろしい。

DSRVの積み込みが開始されました。

なんとアメリカではDSRVを輸送機でフネまで運ぶようです。

輸送機内部。海軍大サービスですね。

艦長は先ほどの副長の態度が気になっていました。
早速艦長室に呼びつけ、艦内に落ちていたというサイドパイプをわたしますが、
副長は冷たく、

「これは本来クルーの持つものでしょう」

と突き返してきました。

ほらー、プレゼント、やっぱり気に入ってなかったんだ。

字幕ではこの部分、「艦長のものです」という日本語訳になっていますが、
これはおそらく翻訳した人が、サイドパイプというものが
海軍の船でどんな位置付けのものなのか理解していなかったのだと思われます。

案の定これに続く艦長のセリフも、おそらく苦し紛れに意訳してあります。
(DVDの翻訳って、案外いい加減なものだとこの作業を通じて実感します)
お節介ながらここを英語で言っている通りに訳しておくと、

副長「これは本来クルーの持つものでしょう」

艦長「そうさ、だから皆が君に贈ったんだ」

副長「彼らは全部”あなたの部下”だからね」

となります。

つまりどういうことかというと、「ネプチューン」乗員にとっては
尊敬する艦長はブランチャード大佐だけであり、新しく着任する自分は、
せいぜい大佐をサイドパイプで「お見送り」するのがお似合い、という
彼らの皮肉が込められたプレゼントなんだろう、と言っているわけですな。

被害妄想もいいところですが、それも平時であれば内心抑え込むところ、
こういう事態になったので爆発してしまったということなんでしょう。

さらに副長、ブチ切れついでにさらに言いつのるのでした。

「あの時浮上しなかったらあんなことにならなかった!
あなたは自分の勇姿をひけらかすために浮上したんだ!
”みんな見ろ、艦長が最後にブリッジに上がるぞ!”ってね。
もう終わりだ!」

艦長は流石に平静ではいられず、

「そのクソみたいな暴言を今すぐやめないとシックベイに放り込むぞ」

その時、轟音が聴こえてきました。
鎮座している場所の上部が雪崩を起こし土砂が降り注いできたのです。



ようやく無線が上部に到着した「ナッソー」とつながりました。
「ナッソー」には救難隊司令のベネット大尉が乗り込み指揮を執ります。

艦長はベネット大佐に現状を報告。
DSRVが1400には到着するという知らせに乗員は喜びに湧きます。

「夕飯までに帰れるぞ!」

その後、要員以外は司令室から出すことを命じた艦長は、
司令室から統率の邪魔になると判断して追い出した副長が
自分を見て嘲笑しているのに気がつきました。

こーんな感じ。

ウマが合わないというのか、内心なんとなく気にくわない間柄でも、
平常時にはなんの問題もなく付き合うのが社会人というものですが、
不幸にして、非常事態がその亀裂を表面化し悪化させることがあり、
この艦長と時期艦長は、実はそういう関係だったというわけです。

しかし、軍隊、特に潜水艦などという職種の軍人たちは、いわば
常にその「非常事態」を想定すべき環境に生きているわけですし、
特に艦長クラスになればいざという時、自分の精神状態をまず
制御するための訓練を若い時からやってるはずなんですけどね。

原潜の艦長になるほどの軍人がこの非常時にメンブレ起こすなど、
実際にはまずあり得ないと思いますが、まあ映画だから仕方ないか。


 

続く。

 

 


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