オープニングに続き陸海自衛隊音楽隊の演奏が終了しました。
第一章のテーマは
トラディションー伝統と継承の響きー
なので、続く外国バンドも日本に長らく駐在している
米海軍軍楽隊もそういう意味ではここにカテゴライズされるでしょう。
ところでわたしは夏前に映画感想エントリをまとめて作成したのですが、
その中に團伊玖磨の自伝を基にした「戦場にながれる歌」という
陸軍軍楽隊ものがあります。
音楽まつりが終わったら関連テーマとしてアップする予定なのですが、
この映画、後半に当時の在日米軍軍楽隊が大活躍?するのです。
映画では終戦直後の外地における捕虜収容所の専属バンドという設定でしたが、
撮影に参加していたのはまさしく1952年からキャンプ座間に展開した
米陸軍軍楽隊のメンバーでした。
(そのため色々と映像とストーリーに矛盾が生じていたのですが、
そのツッコミも含めてどうぞアップをお楽しみに)
わたしはその制作の過程で映画のためにキャプチャした写真を観ながら、
「ここに写っている軍楽隊員のほとんどは下手したら生きていないかも」
という感慨を持ったものですが、つまり在日米陸軍はそれほどに
今日まで長きにわたって根を降ろしてきたということでもあります。
Selections From Queen
海上自衛隊が楽聖ベートーヴェンのメドレーを行った後に、
こちらはロック界のレジェンドであるクィーンのメドレーです。
昨年はなぜかクィーンがフレディ・マーキュリーの自伝映画、
The Untold Story
リリースとともに大ブレイクし、そのおかげで全世代に彼らの音楽が
懐メロという位置づけではなく浸透しました。
「ボヘミアン・ラプソディ」の冒頭アカペラの導入部分を
トランペット奏者がソロで演奏し、それにトロンボーンが絡みます。
ハイトーンのメロディはトランペットには難しそうですが、
わたしの観た回は3回のうち2回はノーミスでした。
その部分をイントロとして、曲は
「Crazy Little Thing Called Love」
(愛と呼ぶところのクレージーで些末なもの)
に代わり、ボーカルが加わります。
東京音楽隊がピアニストありきで今回ベートーヴェンメドレーを選んだように、
米陸軍音楽隊も彼がいるからクィーンをすることにしたのではないかと思いました。
マイケル・ジャクソンやフレディ・マーキュリーなんて、そもそも
似ているとか以前にまともに歌える人そのものが滅多にいない気がします。
白人、東南アジア系、東洋系、アフリカ系。
同音楽隊リズムセクション+キーボードは多様性に富んでいます。
もう一度「ボヘミアン・ラプソディ」に戻り、ラストの4拍3連部分、
「So you think you can love me and leave me to die?」
のところではリズムに合わせて全員で腰をアップダウン。
総じて米陸軍音楽隊のマーチングはラフな部分多めで、
全員でライトスライドでぐるぐる回るけど全く整列しないとか、
ただ上半身揺らしてるだけとかいう状態から、いつのまにか
高速移動してちゃんと整列しているというようなのがお得意です。
アフリカ系の年齢は他民族からはわかりにくい(そう思うのはわたしだけではなく、
アメリカの法廷ドラマ『グッドワイフ』でもそんなセリフがあった)のですが、
彼の場合袖の洗濯板は6本あるので、勤続18〜21年未満のベテランです。
階級は二等軍曹(スタッフサージャント)、自衛隊でいうと普通に二曹となります。
曲は「Somebody Loves Me」。
日本語のタイトルはなぜか「愛に全てを」なんだそうですが、どう考えても
「誰かがわたしを愛してる」ですよね。
ジャズのスタンダードに同名タイトルの曲があるのであえてそうしたのかな。
Queen - Somebody To Love (Official Video)
実際に映像を見ていただければ、このヴォーカルが持っているマイクのスティック、
フレディのトレードマーク?だったことがおわかりいただけます。
これについてはなんでもフレディがまだ学生の頃、当時のある日のステージで
スタンドマイクを振り回しながら歌っていると継ぎ目のところで半分に折れてしまい、
本人はなぜかスティックだけになったそれをえらく気に入って、
その後自分のトレードマークにしてしまったという伝説があります。
ところでこのスティック、いったいどこで調達してきたんでしょうか。
ネットを検索すると「100均でなりきりスタンドマイクの作り方」
なんてのが出てくるんですが、まあ陸軍なら、いくらでも金属加工くらい
施設科かどこかでやってもらえるかもしれませんね。
ちなみに100均で作ると、ポールはプラスティックになりますので念のため。
「 Find me somebody to love」のリフレイン部分になると、
全員が楽器をお休みし、自分たちも歌いながら客席に向かって
「一緒に歌え」
と手振りで強要してくるのでした。
ボーカルも
「エブリバディ!」(歌え)
とか言ってるし。
だがしかしここはジャパン。
このフレーズをこの場で一緒に歌える人は、おそらくこの代々木競技場の
五千人の観客の中でクィーンのコンサートに通ったレベルのファンとかの
一人か二人、せいぜい三人くらいだったとわたしは断言します。
というわけで皆手拍子はすれども歌は歌わず。
ユーフォニアムのおっさんが
「あ?聴こえねーぞコラ」
ってやってますが、歌えんものは歌えんのだ。わかってくれ。
というわけでクィーンの曲で最後まで押し通した在日米陸軍、
エンディングはもう一度「ボヘミアン・ラプソディ」で締めます。
あくまでもフレディスタイルでフィニーッシュ!
指揮はリチャード・チャップマン上級准尉。
今回米陸軍はドラムメジャーが出演しませんでした。
そういえばアメリカ軍の軍楽隊隊長は必ず上級准尉です。
軍楽隊に士官はいないということなんでしょうか。
米陸軍の退場は王道の「星条旗よ永遠なれ」に乗って行われました。
続いては米海兵隊第3海兵機動展開部隊音楽隊の登場です。
「伝統と伝承」といえば、海兵隊音楽隊の歴史は古く、
独立戦争中に創設された海兵隊が1797年に再建されたとき、
歴史上初めて大統領の前で演奏できる軍楽隊として生まれたものです。
彼らの制服が詰襟なのも、大航海時代「首を刃物から守るため」
カラーにレザーを使用していたことからで、一般的に今でも
海兵隊のことを「レザーネック」という慣習は残っています。
音楽まつりに出演する海兵隊部隊は沖縄のフォート・コートニーに駐在し、
アメリカ以外に本拠地を置く唯一の海兵隊音楽隊として活動しています。
演奏タイトルは「Peace Across The Sea」。
ブルース風のリズムを持つ曲ですが、検索しても同名の曲は見つかりません。
もしかしたら隊員のオリジナルだったりして・・・・。
ピースマークを全員で描いて、解散したところ。
彼らは海外に展開する唯一の音楽隊として、日本を中心に
アジア全域で活発な演奏活動を行なっており、
年間300くらいのコンサートをこなしているそうです。
ところで音楽まつりのとき彼らはどこに寝泊りしているんでしょうか。
ゆったりしたピースフルな曲がワンコーラス終わると、続いては
海兵隊名物、ドラムセクションの乱れ打ちが始まりました。
ステップしながらの演奏では隣のドラムを叩いたり、
時々スティックをクルクル回してみたり。
映像をご覧になることがあったら、ぜひこのときのシンバルの人の
謎の動きにも注目してみてください。
この奏者、後半演奏がない時もシンバルを振り回して目立っております。
そして時折このようにニッコリ笑いあったりしているわけですな。
「お、ボブお前やるじゃん」「まあな」
みたいな?
ちなみに彼らは全員三等軍曹です。
ところで大変不甲斐ないことに、わたしはこのパーカッションの後、
前半とは雰囲気をがらりと変えたハンス・ジマーの映画音楽風の曲の題名が
どうしても思い出せず、アメリカにいるMKにSkypeで尋ねたところ、
Two Steps From Hell - High C's
であるという答えとともに即座にYouTubeを送ってきました。
何度も聴いた覚えがあると思ったらわたしアルバム持ってました。
いやー、便利な息子を持ったものです。
前半のゆるふわなままで終わるわけがないと思ったら、
やはり後半は雰囲気を変えてきました。
構成としては前半がピースで後半が「地獄の戦い」ということになりますが。
それにしてもどうしてプログラムに曲名を載せてないんでしょう。
英語のタイトルが長すぎてスペースに収まらなかったからとか?
海兵隊名物、怖いドラムメジャーは今年も健在です。
軽々と回しているようですが、バトンって重そうですね。
ドラムメジャーはロバート・ブルックス一等軍曹。
これは何人かやってる顔ですわ。
新兵に「サー、イエス、サー!」とか言わせてるんだろうか。
それとも黙って一睨みするだけで泣く子も黙るみたいな?
先ほどの「地獄からの二歩」のミュージックビデオに出てくる人みたいな?
海兵隊は例年「アメリカ海兵隊賛歌(Marines' Hymn)」で退場します。
海自の「軍艦」陸自の「陸軍分列行進曲」みたいなものですね。
というわけで、在日米陸軍と米海兵隊、伝統のアメリカ軍楽隊のステージが終わりました。
楽しかった〜!
続く。