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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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令和元年 年忘れ映画挿絵ギャラリー

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なにがといって、今年は御代がわりがあり、平成が終了し
令和が幕を開けたことほど大きな出来事はなかったでしょう。

新しい年号開始が始まったのは五月一日からであったため、
「令和元年」と口に乗せるのも晴々とするこの響きを
半年ちょっとしか楽しめなかったというのが残念と言えば残念ですが。

今年はいつになく映画をたくさん取り上げたので、恒例の絵画ギャラリーは
映画の挿絵だけでけっこうな数になりました。
大晦日の今日は、今年アップした絵をふりかえって年忘れ行事とします。

今日も我大空にあり

1964年度公開の航空自衛隊映画です。
「本物よりも司令らしかった」と本物にいわせた、浜松基地司令役の
藤田進はじめ、隊長役に三橋達也、そして佐藤充、夏木陽介と
当時の人気男優を主役に据えて撮影された意欲作。

なんといってもこの映画には航空自衛隊が全面協力しており、
主人公たちがそうであるところのブルーインパルスや、
当時自衛隊の期待の新戦闘機、F-104が惜しげもなく登場します。

F-104「スターファイター」については、日本だけでいわれていた
「最後の有人戦闘機」というキャッチフレーズにツッコませてもらいました。

 

脇役もこうしてみるとたいへん豪華なキャスティングです。
この中で令和元年現在健在なのは、この映画のオーディションに合格し
これが映画デビュー作となった酒井和歌子(70歳)のみ。

ちなみに本作脚本須崎勝彌氏で、結婚式当日、新婦に電話で
自分が出席できなかったことを謝りもせず、

「君は二号で愛機が一号」

などという台詞を言い放つといった、今ならフェミニズム以前に
ポリコレで炎上しかねないシーンもあります。

若大将シリーズなどで有名な監督の古澤憲吾は、タイトル文字に
こだわり抜いた日の丸の赤を使っていましたが、現場では
この赤のことを「パレ赤」と呼んでいました。

「パレ」とは何を意味するのか書くのを忘れたのでここで言及しておくと、
大東亜戦争初期に陸軍落下傘部隊が降下した「パレンバン」のこと。

本人が「パレンバン降下作戦の勇士だった」と自称していたことから、
まわりも気を遣ってか「パレさん」と呼んでいたらしいのですが、
本人は陸軍ではなく海軍航空部隊出身ですし、しかも入隊したときには
パレンバン侵攻はとっくに終わっていたわけで、つまり

全くの嘘

だったということが海軍航空隊だった松林宗恵監督(予備士官)などの
証言からも明らかになっています。

ただ、古澤は戦時中(昭和19年)の『加藤隼戦闘隊』の助監督をやっていて、
劇中、パレンバン降下作戦の再現シーンに落下傘部隊員役で出演しており、
この体験をもって「降下作戦の勇士」と自称していたと考えられます。

「白い巨塔」で財前五郎役をした田宮二郎が、晩年飛行機の中で
ドクターコールに真面目に名乗り出てきて皆困惑、という実話がありましたが、
昔の映画人の中には映画と現実の境界線が曖昧になってしまうくらい
のめり込むタイプがいて、古澤監督もその一人だったのかもしれません。

 

「憲兵と幽霊」「憲兵とバラバラ死美人」

東宝から再編後すっかり変な路線に舵を切った新東宝の
本領発揮というべきエログロナンセンス映画から
軍に関係があるという理由だけで取り上げた「憲兵シリーズ」二作。

一部の読者にはなぜか大変ウケた企画です(笑)

天知茂と中山昭二が両作で主役を取り換えるという
新東宝の使い回しシステムがよくわかる比較となりました。

良い憲兵は中山昭二、悪い憲兵はもちろん天知茂、そして
いわゆる創作物の憲兵の典型(拷問上等)を細川俊夫が演じています。

とくに「憲兵とバラバラ死美人」は、原作となった実際の事件を描いた本が
実在の憲兵だったことで、当たり前のことなのですが、
良い憲兵がいれば悪い憲兵もいるというような描き方をされていたため、
シリーズの主眼を

「戦後憲兵という悪のイメージが流布されてきたという事実」

とし、どちらも話そのものは熱く語るようなものでもなんでもないですが、
憲兵に被せられた歴史的な汚名を雪ぐことを目的として語ってみました。

ちなみに後で聞いた話ですが、昔は女性が殺されると
メディアは扇情的に被害者を「美人」と煽るのがお約束だったそうで、
酷い場合には「首なし美人死体」なんてのもあったそうです。

 

U-571

戦闘中、諸般の事情でU-571、つまりUボートを操艦して
敵と戦わなければならなくなったアメリカ海軍潜水艦乗員の話。

ドイツの暗号機エニグマ争奪というお好きな方にはたまらない
ワクワクする要素を盛り込んだ荒唐無稽な戦争映画です。

潜水艦もののあるあるとして、狭い艦内なので、人間関係が
濃密に描かれるという傾向がありますが、本作は戦時中の設定なので、
人間関係というよりは、おのおのの能力や危機に際しての対処の仕方、
たとえば主人公のマシュー・マコノヒーが艦長になれずに腐っていて、
戦闘を経験するうちに覚醒するという成長の過程が主眼となっています。

ところで潜水艦ものといえば、海上の敵と戦うシーンでは
必ず潜水艦乗員は上を見つめますよね。

この映画でもふんだんにそのシーンがあったので、絵に描いてみました。

また、劇中、海上に取り残された艦長(ビル・パクストン)に、
あの「グラウラー」の艦長ギルモア少佐が、自分を艦外に残したまま
潜水艦を潜航させよと命じたときの

「Take her down !」

という言葉を言わせてトリビュートしています。

また、マコノヒー演じるタイラーは、いざとなったら部下に
非情な命令を下すことができるかが指揮官昇進のポイントだったのですが、
実戦で生還か全員戦死かという場面に遭遇して初めて、彼は
この「テスト」に合格します。

ところで、この映画をドイツ海軍の元軍人に観せたところ、
「Uボートが大西洋にいたこと以外全部嘘」
と一蹴されてしまったようですが、アメリカ映画だしまあ多少はね?

 

日本破れず

「日本の一番長い日」、つまり終戦のご詔勅に向けて
そのとき政権の中心にいたものたちがどうふるまったかを
戦後初めて映画という媒体で描いたのがこの「日本破れず」です。

わたしは創作部分が多い映画そのもののできというより、阿南惟幾を演じた
当代の名優早川雪舟の存在感だけで、この映画を高く評価しています。

東郷茂徳をヒーローのように描いていたり、米内光政が
まったく実際の雰囲気と違っているのは大いに気に入りませんが。

ちなみに阿川弘之の「米内光政」には、米内の風貌については

「軍港芸者たちは、ただでさえうっとりするような彼の美男ぶりに
辶(しんにゅう)をかけて(物事をいっそう甚だしくすること)
惚れ込んでしまう」

「威風堂々、長身の身に黒いスーツをきて歩く姿は魅力があった」

「うわア、偉人さんみたいなよか男」(by佐世保軍港芸者)

なんて言葉を尽くしてその男っぷりが称賛されているわけで。
東郷茂徳=山村聡ほど下駄を履かせなくてもいいですが、せめて
もう少し鼻の穴の小さな俳優さんに演じさせていただきたかったかなと。

あくまでも個人の感想です。

微妙に史実とは違うストーリーなので、映画は役名を採用していますが、
当ブログはそれを一切無視して本名で表記しました。

若々しい宇津井健、ガリガリに痩せた丹波哲郎、そして
沼田曜一、細川俊夫といったこのころの主流俳優が出演し、
実在した反乱将校たちを演じています。

終戦の際、実は一番反乱を沈めるために活躍したのは
歴史的にはあまり著名ではない田中静壱大将でした。

この映画では、田中大将を藤田進が演じ、存在感を見せています。

そして、陸軍の暴走を抑えるためにあえて閣僚にとどまり、
最後まで陸軍の総意を体現する「ふり」をして事態を収集しようとしたのが
阿南惟幾だったということができます。

早川雪舟が天皇陛下のご聖断を賜り滂沱の涙を流すシーンを描いてみました。

「地球防衛軍」

日本のSFもののレジェンドである「地球防衛軍」を取り上げました。
こういう荒唐無稽ネタは語っていても絵を描いていても楽しめます。

エントリを制作するのに調べると、登場する武器などが
独立したウィキペディアのページで説明されていたりして驚かされました。

もとはといえば、東京裁判で日本の被告の弁護人を担当した
ジョージ・ファーネスがエキストラをしているということで
矢も盾もたまらず購入したのがこの映画のDVDでした。

ファーネスは本作で国連の方から来た科学者、
リチャードソン博士を演じています。

ところで、映画を見ているうちに、わたしはタイトルの「地球防衛軍」とは、
何を隠そうこの日本国の軍隊であることに気がついてしまいました。

つまり、「地球防衛軍」=現日本国自衛隊なのです。

劇中地球外生物「ミステリアン」と戦うのはこの日本国防衛軍。
このころの作戦思想として領域横断作戦はまだ採用されていないため、
残念ながら劇には陸軍と空軍しか登場しません。

この防衛軍の司令には、司令といえばもうこの人しかいない!藤田進。
隊長にも小隊長?にも中丸忠雄らイケメン俳優を使っていてなかなかよろしい。

 

「原子力潜水艦浮上せず」

潜水艦救難艦DSRVをとにかく宣伝したいアメリカ海軍の協力で
チャールトン・ヘストンという大御所を起用して作ったにもかかわらず、
いまいち脚本に海軍に対する造詣が足りない感が拭えなかった作品。

コメントでは「変な映画ですね」とまでいわれてしまいました(笑)

それは登場人物、ことに主人公の艦長に、海軍軍人なら当然こうあるべき、
というか、実際にも選択するであろう軍人としての覚悟が全く見られないことです。
チャールトン・ヘストンともあろうものがよくこんな役引き受けたなっていう。

周りの人々の犠牲のおかげで生還したのに、救難艇から乗員を差し置いて
最初にのこのこ現れる艦長に、

「なに呑気にコーヒーなんぞ飲んでんだよ」

と思わず突っ込みたくなること請け合いです。

潜水艦の艦長ともあろう者が、我が身を挺して艦を救うという役割を
仲が悪かった(しかもそんな覚悟もなさそうに見えた)副長に
おめおめと取って替わられてしまうという設定もかなりイタい。

ミニ潜水艇で沈没した潜水艦を救助するのに自らの命を懸けた
ドン・ゲイツ大佐の心意気とは対照的です。

この挿絵は、オリジナルの映画ポスターと自分で作画した絵を
合成させていただきました。

ポスターに描かれているのは、外国の商船と衝突する瞬間の潜水艦です。

ゲイツ大佐の開発したミニサブは、一人が潜水艦の「目」となるため、
このように床に寝そべって監視をするという設定でした。

潜水艦の中なのでちょっと画像に赤みを加えてみました。

というわけで、今年ご紹介した映画は全部で七作。
来年もこれくらいのペースで絵を描くことも楽しみながら
自分視点で探した映画をご紹介していければいいなと思っています。

 

というわけで、みなさま、良いお年を。

 

 

 


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