いろいろとここでお伝えしたい資料はあるのですが、とにかく
終わらせていないネタが多すぎて頭の痛いところです。
そこで、在庫処分ではありませんが、とにかく大長編
「ミッドウェイ」シリーズをなんとか終わらせることにしました。
前にも紹介した箇所も、新しく撮った写真があれば再掲します。
前回はCICの思想がSFの「レンズマン」からきている、という
開発者の衝撃的な話をご紹介することができました。
これが前回撮った写真ですが、このと誰もいない
右手前の
「トラック・スーパーバイザー」
のコンソール前に人が増えていました。
すごいなあ、ミッドウェイ博物館。来るたびに展示が充実している。
ところで前回「ミッドウェイ」のCICについてログをあげたとき、
コメント欄で
「海上自衛隊では、防衛秘密の中でも秘の度合いが高い特定防衛秘密で、
これが置かれているCICが関係者以外立入禁止となっている」
ところの
NTDS(Navy Tactical Data System)コンソール
と呼ばれるCICの中核を担う装置が、誰でも見放題触り放題になっている、
という情報が某所から寄せられて驚いたということがありましたが、
それはもしかしてこれもですか。
マネキンが飾ってある部分とは別に、座って体験?できるコーナー。
男の子の座っている席には「SWC」とあります。
「Surface Operations」の機器がある、という意味でよろしいでしょうか。
クルーのコーヒーコーナーも前からグレードアップしていました。
こちら前回のコーヒーコーナー。
紙カップよりは各自の名前の入ったカップだろう、ってことで。
ちなみに、このリニューアルはわずか1年の間に起こったものです。
USポスタルサービスというのはアメリカの郵便局で、
正式には郵政公社、わたしたちも普通に「USPS」と称します。
国の組織なので、軍艦の中でも郵便事業を行うわけです。
オフィスで働く係はおそらく軍属という立場ではないでしょうか。
彼の左手が置かれているのは到着便ですが、
この宛名書きの簡単なこと。
CPO J. NISH USS MIDWAY FPO NEW YORK, NY
軍艦勤務の乗員に送るには、船の名前と寄港地の都市だけでOK。
船名の後のFPO はFleet Post Office 、
艦隊に送る軍事郵便の記号です。
こちらも前に紹介した「メタルショップ」。
「ミッドウェイ」ほどの規模の空母ともなると、必要な金属部分を
なんでも艦内で作って現場に調達できてしまうのです。
そしてここからは動力関係、エンジンルームとなります。
右上にあるレイティングの紀章は、右側が
「Boiler Technician ボイラー科」
左が
「Machinist's Mate 機関科」
ここで働いていた乗員たちのものです。
機関科お仕事風景。
ワッチの割り当て表もありました。
写真は1971年当時の「ミッドウェイ」エンジンルームで、
ノリノリでお仕事するスロットルマン、デビッドさん。
「ロープレッシャー・タービン」(低圧タービン)
とあります。
パイプに描かれた
THE PRIDE OF THE PACIFIC(太平洋の誇り)
の字体は、なぜかアメリカでは「オリエンタル風」字体だと
信じられているものです。
これは「ミッドウェイ」の日本駐在が長かったことを表します。
推進と蒸気システムについての系統図です。
これによると、今わたしがいるのは、ボイラーから送られてくる
メインストリームが、高圧タービンを経て低圧タービンにいくところ、
ということを説明してくれています。
窓を覗くとタービンが(もちろんうごいてません)見えるようになっています。
右側は亀裂から飛び出してきたような文字で
「THREE ENG」
と書いてありますが、これはここ、ナンバースリーエンジンルームのこと。
低圧タービンとはなんぞや。
それがこの図でわかるようになっています。(たぶん)
この部分の中央にある巨大なダクトからは、高圧タービンから
送られてきたスティームが真上から送り込まれる、これはわかる。
それではAstern steam(後進蒸気)とはなんでしょうか。
もしかしたら低圧タービンはそのものが後進をかけるための仕組み?
低圧タービン内部。
マシニスト・メイトの紀章に舵輪を両手で動かす
水兵さんの後ろ姿が描かれています。
ロープレッシャータービン横から。
この流れで言うと?こちらがハイプレッシャータービンということになります?
左側に、赤い矢印と「AHEAD ASTERN」(前進 後進)という文字が見えます。
左回りが前進、右回りが後進という意味ですね。
ここにはボイラーテクニシャンも働いていました。
ボイラーがあったわけですが、その全体が図にしてありました。
なるほど、さっき水兵さんが両手で回していたのはこれか。
ここはエンジンルームのオペレーション配列システムというそうで、
各部分の状態がここで全て把握できるように集約されています。
右側のボードには、時間おきにチェックを行うためのシートが見えます。
ボイラー科のマスコットは
「STEAM'IN DEMON」
という赤い悪魔で、持っている杖はボイラー科の紀章です。
英語としてこの(’)は要るのかどうかという気がしますが。
ただ一部分が置いてあるだけなのでよくわかりませんが、
解説によるとこれは「バーナー」だそうです。
さて、次のコーナーに進むと、いきなりこんな光景が!
手錠をはめられ、閻魔さまの前に引き出されて御沙汰を受けます。
そののち収監されるわけですが、ここは何度もお話ししているように
ブリッグ(Brig)と呼ばれていました。
米国海軍には
Master-at-Arms (MA)
というレイティングがありますが、これは海軍内で
法執行を行う権利を持ちと部隊保護の責任を負う組織です。
1970年代までは軍艦内に組織される海兵隊の所掌でしたが、
その後MAの管轄になりました。
「ミッドウェイ」のブリッグの修復に対して、サンディエゴの
ある基金団体が協力をしたらしく、記念盾が贈呈されていますが、
これをみたところ修復が行われたのはごく最近であるようです。
そういえばこの一帯に来るのは2度目ですが、前回はありませんでした。
ということで問題の独房です。
独房内はトイレと手を洗うタンク、ベッド、以上。
四六時中外から見張られている状態は、非常に辛いものと思われ。
シーマン、D・トッチ、一体何をやらかしたのでしょうか。
ここに入る罪状は窃盗や喧嘩などはもちろんですが、
脱柵、不敬、反逆、といったものは船の上なら特に重罪となります。
悪意はなくても出航に間に合わず艦に乗り遅れることも
海軍では厳しく処分されました。
これも一応マイルドな脱走と見なされたわけですね。
もちろんバックミラーは展示用です。
「ミッドウェイ」には独房が2室ありました。
独房に収監される「囚人は、
「Bread and Water Panishment」
つまり水とパンしかもらえない比較的重い罪状の者です。
とはいえ、収監中はシャワーを浴びることはできました。
カルロス・ゴーン氏は日本での収監中毎日シャワーさせてもらえなかった、
と辛さを語っていたそうですが、体臭のない日本人と同じ扱いは
ゴーンさんにとってずいぶん堪えただろうなと思います。
アメリカ人でも艦内では誰でも毎日シャワーを浴びることはできませんが、
それでも囚人の区画には彼らの施設が備えてあります。
ドアはもちろんシャワーカーテンもなかったようですが。
ここも一応囚人?用の部屋なんだそうです。
6人用の「Holding Tank」と説明がありました。
おそらく喧嘩とか、酔ってやらかしちまったなどの
軽犯罪を犯したものが入れられたところだと思われます。
ホールディングタンクは、監房の俗語です。
6人部屋のトイレはこのような・・・。
「スレーター」ではありませんが、プライバシー皆無。
あれは皆で並んでるだけましかもしれません(知らんけど)
トイレに座っている時ももちろん監視付きです。
もう悪いことはやめよう、と心の底から反省しそう・・。
独房のドアだけが展示してありました。
ドアの下から食事が差し入れられたのでしょう。
なぜこんな角度で設置してあるのかなと思ったら・・・、
写真をSNSにあげてくださいというインスタ映えコーナーでした。
なるほど、ここなら檻を掴んで
「出してくれー!」
なんて素敵な思い出の写真が撮れますね!
先ほどの6人部屋より狭い、こちらは乗員の寝室。
ここには機関科の乗員の寝室があったそうです。
少しでも職場に近いところに、というわけですね。
床に赤い矢印がありますが、これは非常口につながる目標です。
雰囲気イケメンなシーマンが、何やら書き物をしています。
デスクの上には医学関係の本など。
ここは「集中治療室」Intensive care unit ICUとされています。
「ミッドウェイ」など軍艦というのはスペースがないので、
ICUはたった一人しか収容できません。
ここに入るのは、病院船に一刻も早く移送するか、あるいは
ヘリなどで搬送するというレベルの患者が一旦容体安定した時、
という限られた場合だけでした。
というわけで、ここからは以前にもご紹介したメディカルゾーン。
これで、「ミッドウェイ」艦内で訪れたところを全てご紹介しました。
最後に歯科受付の「サルタ」さんのナイススマイルをもう一度ご紹介して
「ミッドウェイ」シリーズを終わります。
ただし、あともう一回だけ艦外編がありますので続く。