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スミソニアンが選んだ第二次世界大戦のエース(英米編)〜スミソニアン航空博物館

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スミソニアン航空博物館の「第二次世界大戦の航空」コーナーには
世界各国の「エース」と言われた戦闘機搭乗員の紹介があります。

まず「エースとはなんぞや」から始まる説明をどうぞ。

空対空戦闘で、5機以上の敵機を撃墜したパイロットをエースと呼びます。
第一次世界大戦時、フランスによって最初に使用されたこの称号は、
公式ではないことが多かったにもかかわらず、すぐに、全ての戦闘員
(世界各国の)に採用される「基準」となりました。

もともとは、エースの資格には10機撃墜が最低条件でしたが、
第一次世界大戦の最後の年までには、5勝が基準となりました。

第一次世界大戦からベトナム戦争までの戦争に従事した約5万人の
アメリカ軍戦闘機パイロットのうち、エースになり得たのはそのうちの3%未満です。

ここに紹介されているのは、第二次世界大戦時の各国のトップエースです。

スミソニアンが選んだエースは、全部で21名です。
もちろん「5機以上」ならここに収まりきれる数ではありませんから、この21名は
その中のトップエース、文字通り「エース・オブ・エーセズ」ということになります。

■ アメリカ合衆国

リチャード・アイラ・ボング陸軍少佐 

Maj. Richard Ira Bong (September 24, 1920 – August 6, 1945)USAAF 

40機撃墜 愛機:マージ号

USAAFはUnited States Army Air Forces(アメリカ合衆国陸軍航空隊)のこと。
ボングについては当ブログでも何度かご紹介しています。

南西太平洋戦線で日本軍機とP-38で戦い、1944年に第一次世界大戦中、
リッケンバッカーの記録26機を上回り、アメリカ軍のトップ・エースとなりました。

その後は本国でP-80シューティングスターのテストパイロットに回されましたが、
終戦直前の1945年8月6日、テスト飛行で墜落死しました。

トーマス・ブキャナン・マクガイア・ジュニア陸軍少佐 

Thomas Buchanan McGuire Jr. (August 1, 1920 – January 7, 1945) USAAF

38機撃墜 愛機:パジーV世号

ジョージア工科大学という超難関校の学籍を捨ててパイロットになったマクガイアJr.は、
南太平洋でやはりP-38ライトニングでボングと撃墜数を争うエースでした。

 

1945年1月7日、ネグロス島上空の哨戒任務中に帝国陸軍航空隊の
杉本明准尉操縦の一式戦「隼」、福田瑞則軍曹操縦の四式戦闘機「疾風」と交戦、
戦死しました。

David McCampbell.jpg

デイビッド・マッキャンベル海軍大佐 

Cap. David McCampbell  USN (January 16, 1910〜June 30, 1996 )aged 86

34機撃墜

偶然ですが、マッキャンベル大佐もジョージア工科大学から海軍兵学校に進んでいます。

F6Fヘルキャットのトップエース。
第二次世界大戦のアメリカ人のエースの中で3番目に高い得点を記録し、
戦時中に生き残ったアメリカ人のエースの中で最も高い得点を記録しました。

また、1944年10月24日、フィリピンのレイテ湾の戦いの開始時に、
1回のミッションで9機の敵機を撃墜するという空中戦記録を樹立しています。

ちなみに彼は信号士官時代、日本の潜水艦が撃沈した空母「ワスプ」に乗っていて
生還し、そこから搭乗員となったという経歴の持ち主です。

現在のスミソニアン国立博物館に展示されているF6F-5ヘルキャットは
彼の乗っていた空中戦の勝利の数だけ旭日旗が描かれたものを再現しています。

Francis Gabreski color photo in pilot suit.jpg

”ギャビー”・ガブレスキー陸軍大佐

Col. Francis Stanley "Gabby" Gabreski (January 28, 1919 – January 31, 2002) 

USAAF

31機撃墜

ポーランド系アメリカ人。
第二次世界大戦中のヨーロッパにおけるアメリカ陸軍航空隊の戦闘機エースであり、
朝鮮戦争におけるアメリカ空軍のジェット戦闘機のエースでもあります。

2つの戦争でエースになったアメリカ人搭乗員は7人いますが、その一人。

ポーランド語が話せたことからRAFでの戦闘機デビューをした彼は、
リパブリックP-47サンダーボルトに乗ってルフトバッフェと戦い、
ヨーロッパ作戦地域のトップ・エースとなりました。

28回の撃墜スコアは、太平洋戦域のアメリカのトップ・エースであった
リチャード・ボングの撃墜数合計に匹敵します。

この対ドイツ軍成績は他のアメリカ人パイロットの誰にも破られていません。

グレゴリー・”パピー”・ボイントン海兵隊中佐

Lt. Col. Gregory ”Pappy" Boyington  (December 4, 1912 – January 11, 1988)

USMC

23機撃墜

中華民国空軍の「フライング・タイガース」(第1アメリカ義勇軍)出身。
海兵隊エースとしては彼がトップとなります。

海兵隊に再入隊後は南太平洋に配備され、F4Uコルセア戦闘機で戦闘任務を行います。
南太平洋では零戦に対し劣勢で一機も撃墜できなかった彼ですが、
自身が日本機に撃墜され、潜水艦に捕獲されて捕虜になる直前の32日間で
急激に記録を伸ばし、リッケンバッカーの25機を抜く26機撃墜を行いました。

このときボイントン撃墜を自分が行ったと主張したのが、帝国海軍の川戸正治郎上飛曹です。

この主張は英語wikiによると最終的に反証(つまり否定)されていて、しかも

「川戸は反証にもかかわらず、死ぬまでその話を繰り返した」

と彼の主張に疑義を呈する書き方がされています。
(日本語Wikiでは”推定されている”とのみ記述)

■ イギリス

マーマデューク・トーマス・セントジョン”パット”パトル王立空軍少佐

Sq. Ldr. Marmaduke Thomas St. Jhon ”Pat "Pattle(3 July 1914 – 20 April 1941)

RAF

51機以上撃墜

Squadron Leader Pattle of 33 Squadron RAF Greece IWM ME(RAF) 1260.jpg左・パット

Marmaduke Thomas St. John Pattle, DFC & Bar。
これが人の名前とタイトルだということすらピンとこなかったわけですが、
本人も自覚していたらしく、自分の愛称を家名から取った「パット」にしています。

マーマデュークなる名前はお祖父様のミドルネームから取られています。
このファーストネームで特に学齢期、彼はなかなか苦労したかもしれません。

彼は南アフリカ生まれで、18歳で南アフリカ空軍に志願したものの却下されたので、
イギリスに渡り、短期で王立空軍のパイロットになりました。

イタリア侵攻後、彼の飛行隊はギリシャでイタリア軍と戦い、
彼の撃墜記録はほとんどがそこで達成され、RAFのトップエースになります。

最後の日、彼は前日からの高熱にもかかわらずハリケーンで出撃し、
ルフトバッフェのメッサーシュミットBf110重戦闘機に撃墜され戦死しました。

ジェームズ・エドガー・”ジョニー”・ジョンソン王立空軍少将

Air Vice Marshal James Edgar Johnson, CB, CBE, DSO & Two Bars, DFC & Bar, DL
(9 March 1915 – 30 January 2001)

RAF

38機撃墜

この人も自分の愛称を本名には全く含まれない「ジョニー」にしています。

ところでイギリス人の名前(偉くなった人)には、このように
ずらずらとタイトルがくっついてくるのが常ですが、
この際簡単に説明を加えておくと、

CB=バス勲章(騎士団)
CBE=大英帝国勲章 (騎士団)&DSO=メダルリボン
DFC=殊勝飛行十字章(戦功章&DSO
DL=副統監職

となります。

Wing Commander James E 'johnny' Johnson at Bazenville Landing Ground, Normandy, 31 July 1944 TR2145.jpg愛犬(ラブラドール)はサリーちゃん

ジョンソンはエンジニアからパイロットに転身しました。
ラグビーで骨折した鎖骨の手術のため、バトル・オブ・ブリテンには参加できませんでしたが、
その後の対独掃討作戦に、ほとんど休むことなく参加し、撃墜記録を上げました。

彼が参加した作戦には、ノルマンディーの戦い、マーケットガーデン作戦、
バルジの戦い、西部連合軍のドイツ侵攻などがあります。

スミソニアンの記述だと38Victoryとなっていますが、Wikiなどでは、

個人勝利34、共同撃墜7、共同未確認3、損壊10、地上機撃破1

という記録になっています。

個人勝利ではメッサーシュミットBf109を14機、フォッケウルフFw190を20機破壊であり、
対ルフトバッフェにおける西側連合軍の戦闘機エースとしては、トップに君臨します。

 

続く。

 


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