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「月に触れてください」アポロ17号の月の石〜スミソニアン航空宇宙博物館

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スミソニアン航空宇宙博物館のマイルストーンコーナーには、
文字通りのマイルストーンとして月の石が展示されています。

わたしが写真を撮ったとき、意識したわけではありませんが、
たまたま横にいて月の石を触ろうとしていたのは、
「NASA」の文字が書かれたTシャツを着た少年でした。


アポロ計画でアポロ11号が月面着陸させたのと同タイプである
LM-2と同じコーナーに、それはあります。

月面上で撮られた写真には、宇宙飛行士たちが持ち帰る前の、
地面(っていうか月面ですが)に転がった岩が写っています。
「あなたが触るのはこの岩の一部分です」
左に書かれているのは、
「アポロ計画の最後のミッションとなったアポロ17号のクルーは、
1972年の12月、この石のサンプルを地球に持ち帰りました」
そして、石は航空宇宙局から貸与されているものであるという説明です。


斜めに丸くくり抜かれたウィンドウは、
中央におそらく盗難防止のための分厚いアクリルガラスが嵌め込まれ、
その下の部分に手を差し入れるようになっています。
誰も見ていない隙に大掛かりな機材を使って
台座ごと根こそぎ掘っていくことができないようにかもしれません。

元々宇宙飛行士が持ち帰ったという「月の岩」はこれ。
写真に写っているのが結構大きなものであったことがわかります。
ここで展示されている岩があったのは、
「タウルス・リットロウの谷」と名付けられた場所で、
鉄分が豊富な火山岩であり、緻密で暗灰色または黒い玄武岩です。

アポロ17号の持ち帰ったサンプルは111キロあったそうですが、
それが一つの塊だったかどうかはわかりませんでした。
わかっているのは、主にアポロ15, 16, 17号によって採取されたのが
2415サンプル、総重量382キログラムであったということです。

アポロ計画において、月の石はハンマー、レーキ(熊手)、スコップ、
トング、コアチューブといった様々な道具を使って採集され、
ほとんどはここに展示してあるような採集前の状態が写真で記録されています。

石は採集時にサンプル袋にいったん入れられ、それから汚染を防ぐため、
特別環境試料容器に格納されて地球へ持ち帰られました。

月の上にあったというその岩は、一体幾つに刻まれたのか、
こんな小さなピースになり、それが埋め込まれています。

スライスされたばかりの月の岩。
ここに展示されているのは、星印の部分となります。

そしてその部分を触っている、見知らぬアメリカ人の手。


違うところに展示されている月の石らしいですが、
微妙に形が歪んでいますね。
なぜこの形にカットしたんだろう・・・。
◆月の一部にタッチしよう!
展示の横の説明にはこんな言葉があります。
月の実際の部分に手を触れること。
それはあなたを人類の宇宙への冒険に誘います。

最後のアポロ月面ミッションであるアポロ17号の乗組員は、
このサンプルを1972年12月に地球に持ち帰りました。

1969年7月から1972年12月の間に月に着陸した6回のアポロ計画は、
合計約382kgの岩と土のサンプルを地球に持ち帰りました。
これは月の歴史と構成について知るデータを地質学者に提供しました。



1960年代までは、月は文字通り「到達できない場所」でした。
しかし1969年以降、人々は月に到達することができるようになり、
それ以降人類の視野は根本的かつ大々的に変えられることになります。

プエルトリコのアレシボとバージニア州グリーンバーグには
巨大な電波望遠鏡が設置されています。
Arecibo Telescope
これらを使用して収集されたこの月のレーダー画像は、
北極(中央下)、岩の多いクレーターからの反射、
古代の溶岩流からの暗い反射がはっきり確認できます。
画像に「ブルース・キャンベル」と書かれていますが、
アメリカの俳優くらいしかヒットしませんでした。

◆月の一部を持ち帰るために

月に到達するまで、アポロ計画で乗組員に課された訓練の一つに
月のさまざまな、かつてないほど困難な場所に着陸し、
地球に持ち帰るためのサンプル標本を選択するためのものがありました。
特に最後のアポロ計画のために、NASAは、乗組員に
地質学者を加えたというくらいです。


アポロ17号のメンバー、左から月面着陸操縦士ハリソン・シュミット、
船長(ミッション・コマンダー)ユージン・サーナン、
司令船操縦士ロナルド・エヴァンス。


この左のシュミットが学者代表で送り込まれた?地質学者です。
当初クルーにはサーナン、エバンスと別の飛行士が指名されるはずで、
シュミットは18号に搭乗する予定でしたが、
アポロ計画そのものが17号で打ち切りということが決定したため、
この決定を受け、科学者らの協会が

「17号では宇宙飛行士に訓練で地質学を学ばせるのではなく、
地質学者そのものを月面に赴かせるべきである」

とNASAに圧力をかけたと言われています。
それほど月の物質を持って帰ることが重視されていたということでしょう。

アポロ宇宙飛行士たちが持ち帰った月の石から貴重なデータを得ることは
研究者たちのアポロ計画の一つの大きな目的でした。
そしてこの科学者からの要望を考慮して、着陸船操縦士に指名されたのが、
地質学の専門学者であるシュミットだったというわけです。

地質学者ハリソン・シュミット、大きな岩を調査中。


シュミット、石採集中。
ちなみに、船長のサーナン、操縦士エヴァンスはどちらも海軍軍人でした。

サーナンはF -J-4フューリー、A-4スカイホークの艦載機パイロット、
エヴァンスは宇宙飛行士のテストの合格を受けたとき、
「タイコンデロガ」の艦載機であるクルセーダーのパイロットでした。

月周回軌道が2011年に撮影した、アポロ17号の月着陸地点の写真です。
この写真には、月面探査機の軌跡、宇宙飛行士たちの足跡が作った道、
そして月面探査機が降下した後がはっきりと写っています。
◆ ルナ・ディプロマシー(月外交)
アポロ17号のハリソン・シュミットは、月から採取した一つの岩を分割して、
親交国の政府、アメリカ50州、そして領地に配布することを選択しました。

それはまだ彼らが「月の上」にいるときに、司令官ジーン・サーナンは、
アポロが将来の世代のために挑戦の扉を開いた、と声明を発表しました。
「確かに今は、そのドアにはヒビが入っているかもしれません。
しかし、アメリカだけでなく、世界中の若者たちが共に手を取り、
学び、働くことができる、そんな将来が確実に訪れるはずです」

確かにその後、宇宙においてそれは理想に近づいたかもしれませんが、
また最近、ロシアという宇宙大国の一つが戦争を起こすことで
そこにも亀裂が入っているというのが現実です。
◆月の石の所在場所

アポロ計画によって持ち帰られた月の石はそのほとんどが
テキサス州ヒューストンの宇宙センター内にあります。

市場に出て売買されたものもあり、2002年には月試料実験室施設から
火星の岩石資料が入った保管庫が盗まれたこともあります。(回収済み)
日本では、1970年の大阪万博においてアメリカ館で実物が展示され、
連日長蛇の見学者が訪れたのが有名です。
2005年の愛知万博でも大阪万博のものとは別の月の石が展示され、
国立科学博物館には常設展示されています。


◆月の石捏造説

アポロ月着陸陰謀説を紹介したので、ついでにこちらも挙げておきます。

「アポロの回収した月の石は偽物で、アメリカの砂漠で拾ってきたもの」

アポロ着陸が陰謀なら、当然石もありえないということになるわけで、
こういうことを言う人が出てきてもさもありなんです。

実際には地質学者の研究により、月の石は年代的にも成分も、
地球の石とは全く異なる特徴を示していることや、
地球には存在しない組成を持っていることが発表されています。

そもそもこの捏造論者は、アメリカを始めとする地質学者、物理学者が
これまでに発表した論文をちゃんと調べず発言しており、
そのことも各方面から指摘されているようです。
しかも、現在進行形で世界各地の機関が、しかも分析機器の進歩を見込んで
少しずつ小出しにして研究が進められており、
過去にも多数研究論文が発表されているのですが、この名誉教授は
自分の専門外の研究についてそういったことについて確認せず、
捏造を学術的に反論しようともしていないことから、
トンデモ扱いされているようです。


1969年9月15日、アポロ11号の宇宙飛行士、

月着陸船パイロット エドウィン・E・オルドリン・ジュニア、司令船パイロット マイケル・コリンズ、船長 ニール・A・アームストロング
が、ワシントンDCのスミソニアン博物館の当時の博物館長
フランク・テイラーに2ポンドの月の石を見せています。


彼らは1969年7月、月面にこのように書かれた碑を遺してきました。
We came in peace for all mankind.「我々は平和裡に月にやってきた 全人類のために」
冒頭の写真の男の子が成人する頃には、
人類が「手を取りあって」「平和に」宇宙に行く未来が来るといいのですが。

続く。





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