無事にアメリカに到着したのはいいけれど、時差ボケが治らない状態で
あっという間にMKの学部卒業式当日になってしまいました。
今日はその1日についてご報告させてください。
前もって入れておけば、駐車場やイベントの情報が刻々と通知されてくるという
便利なアプリをダウンロードし、前もって調べておいた
会場に一番近い駐車場に車を停めました。
アメリカの大学なんで、駐車場は普通にたくさんあるし、この日は無料です。
駐車場を出たところで野ウサギくんと遭遇。
キャンパスに至るところ自然が残っているのがアメリカの大学。
この地域で写真を撮ると否が応でも映り込むピッツバーグ大学の学びの塔。
ピッツ大の卒業イベントはもう終わっているようです。
カーネギー音楽ホールが本日の卒業式会場です。
アンドリュー・カーネギーが寄付した自然史博物館、図書館などと並んで
歴史登録財となっている建築物の一つです。
開館は1895年。
現在は地元交響楽団ピッツバーグ・シンフォニーのホームとなっています。
ホール外壁にはいやっちゅうほどたくさんの偉人の彫像があります。
バッハやシェイクスピアなどもいるのですが、こちらミケランジェロ。
地球を背負ったモチーフの地球儀を手にするのはガリレオ・ガリレイ。
早く来すぎたかと思ったら、卒業生家族が続々と入っていくので、
わたしたちも入館することにしました。
入り口に立っているのは、昔使われていた蝋燭立てに違いありません。
ロビー脇の小部屋の床は総大理石。
ロビーには卒業生が既に待機していました。
今まで来たことがありませんでしたが、素晴らしいホールです。
HPによると、石造りを計算した音響も完璧なのだとか。
夏にもう一度最後の訪問をする予定なので、その時には
ここでぜひピッツバーグ響の演奏を聴いてみたいと思いました。
ところでここでわたしはとんでもないことに気がつきました。
今回、久しぶりに一眼レフカメラを持ってきたのですが、
カメラの使い方をほぼ忘れていたのです。
重たいのとなまじiPhoneのカメラがそこそこいいのと、
そもそも自衛隊イベントの参加が無くなったせいで、
カメラを持って出撃ということがほぼ皆無になっていたこの2年間。
全盛期は何も考えずに使えていた各種システムの変更方法が
全く感覚に残っていないのに、わたしは愕然としました。
今日は学部卒業式で、会場は暗いコンサートホールで行われます。
わたし的には最も難関であるところのこのシチュエーションに、
この時になって初めて焦り出しました。
そこでわたしはとりあえずステージ上の卒業証書のテーブルを
設定を弄りつつ何回も映してにわかの練習を始めたのでした。
しかしながら、結局最後まで思い出せない部分があって、
お恥ずかしい話、自分的には最低の画質となってしまいました。
後でMKに聞かれた時、即座に「ほぼガベージ」と自嘲したくらいですが、
ましなのを画像ソフトで加工してアップすることにしました。
ちなみにこの卒業証書はセレモニーのための「ダミー」で、
白い紙を丸めてリボンを巻いてあるだけです。
わたしがカメラと格闘していると、教授が入場してきました。
アメリカの大学の卒業式がビジュアル的に素晴らしいのは、
古来から伝わるアカデミックなガウンに身を包んで場を彩る伝統です。
今年は3年ぶりに行われるライブの卒業式となり、
巷ではごく一部の人を除いてマスクをほとんどしていない状態ですが、
ファカルティ、教授、卒業生はマスク着用で臨んでいます。
ちなみに教授のガウンの色は、その人の出身大学を表します。
黄色いガウンはジョンズ・ホプキンス大学、ブルーはUCバークレー、
白いのはMITだそうですが、必ずしも出身大学のを着るわけではないとか。
まず最初に卒業生一同がアルファベット順で入場。MKは学帽のトップにデコレーションしているので上からわかりやすい。学帽デコレーションは何人かの人がやっていましたが、
MKは学校の機材を最後にフル活用して凝ったのを作ったため、
大変目立ちました。
おかげでどこにいるのかすぐわかって親にはありがたかったです。
まずは工学部学部長のありがたいお言葉。
ヘンリー8世チックな衣装が似合いすぎて怖い。
この後、セレモニーは各種アワードの授賞式となります。
各部門で優秀と認定される学生を認定委員会が選び、表彰されるのですが、できるだけたくさんの人に賞を与えるため、
一人がたくさんの賞を独占することがないようにしているそうです。
松葉杖の女性はMKの共同研究パートナーで親友だそうです。
今回一緒にやったプロジェクトで、彼女がアワードを取りました。
なぜMKの名前がなかったかというと、一つのリサーチにつき
一人だけに賞を与えるということにしないと人数が増えるからではないか、
というのが「中の人」の情報です。
その次の「バーネット・プライズ」で、このイケメン教授が
コールした中にMKの名前が!!
MKはそういうことを親にいうのを極力省略するので、
全く予想していなかったわけですが、このバーネット賞、
GPA(Grade Point Average)が4.0(オールA)の学生に与えられます。
つまりMKは最優秀のトップ6だったということらしいです。
ちなみに一人を除いて全員がメダルをかけていますが、
このメダルはいわゆるアメリカのドラマなどで時々出てくる
「優等生メダル」で、GPAが3.5以上の学生に与えられます。
(この一人がなぜ何も付けていなかったかは謎)
この後は、マスター(修士号)とドクター(博士号)の部に入りました。
確かこの人はPhDのアワードを取った人だったかと思われます。
授与する教授が小さな女の人なので、ハグがこんなことに。
ちなみにこの教授はUCバークレーの卒業です。
最後に全員が証書を受け取り、退場しました。
今年は2020年、2021年、2022年卒業クラスが卒業式を行うことになり、
いつもはそうでもない工学部のセレモニーがかなり長くなったそうです。
過去2年の卒業式は、コロナのせいでライブで行えなかったため、
改めてこの日まとめて参加できる卒業生が集められました。
アメリカ人にとって、いかに大学の卒業式というのが
大事で貴重なイベントであるかということがわかった気がします。
もちろん、2年前に卒業した人も現在の住居や仕事など、
来たくても無理な事情があるため、全員が参加できるわけではありませんが、
もし万が一、全員来るという返事が来たとしても、
学校としては何とか実現させようと努力したことでしょう。
式終了後は、この壮麗な大理石造りのホワイエで、
ちょっとしたソーシャルが行われることになっています。
テーブルの上にあるバーガンディのものは、本物の卒業証書となります。
卒業式は3日間で行われ、最初の2日は、学部卒業式、
最終日が全体のセレモニーとなりますが、この日もいろんな学部が
学内のあちらこちらで式をあげていました。
アメリカの大学にしては小さいとはいえ、日本の大学に比べると
規模もキャンパスも比べ物にならないほど大きい学校である上、
今年は3年分の卒業式をやらなくてはいけないのですが、
伝統的に本学は発祥が工科大学なので、歴史が一番古く、
力関係でいっても一番いいこのホールを使えるというわけです。
ホワイエでは真面目に飲み食いする人はおらず、ほとんどが
友人同士や恩師と挨拶をし、記念撮影を行います。
お世話になった教授と。
制御工学の教授だそうです。
大きな博士課程優秀者とハグしていた小さな教授。
一通り挨拶を済ませたら、皆あっという間にどこかへ行ってしまいました。
こういう日はランチやディナーを家族で取るアメリカ人が多く、
市内のちょっと洒落たレストランの予約が取れなくなります。
ミュージックホールを少し歩くと、何だか見覚えのある場所に出ました。
ここは内部でカーネギー自然史博物館と繋がっていたのです。
確かここは古代の墓所の建築物をそのまま移設している展示室だったかと。
卒業式参加の家族が記念写真を撮りまくっていました。
ところでMKですが、何だかガウンの上に色々とぶらぶらさせているので、
何なのか聞いてもはっきりと答えてくれません。
「そのロープ何?」
「メカニカルエンジニアリングとオナーリサーチだよ」
だから機械工学とオナーリサーチの何なんだ。
まず、メダルはGPA3.5以上の「優等生メダル」これはわかった。
白いタスキは何かというと、これはいわゆる機械工学の優等生協会、
ΠΤΣ(パイタウシグマ)の会員であるという印。
MKはやはり機械工学のオナーソサエティ、
TβΠタウベータパイにも入っていて、プログラムにも名前が載っていますが、
そちらはなぜか何もくれなかったというのです。
タスキは二つかけられないので、どちらかからしか貰えないのかもですね。
MKと仲のいい学友のガウンを見ると、真ん中の女子は
女子にもらえるオナーソサエティのタスキと、
機械工学のロープを2本、メダルをかけていますが、
右側のように普通に何もない人がほとんどです。
口の重い彼が何度聞いてもちゃんと説明しないので、
夫婦でプログラムを熟読してその意味を解読したところによると、
このロープは「オナーズ」つまり学部の優等生に大学と学部から与えられるもので、
つまり機械工学科とオナーリサーチでいい成績をとったという印なのだとか。
それならそうとハッキリと言えよMK。
親にそれくらい説明してもバチは当たらんだろう。
ちなみに目立っていた彼の学帽の飾りですが、
知っている人は知っている、ゲームで有名な?ガチョウが、
「SLEEP」(睡眠)を「削って」Eを二つ、
「ENGINEER」(工学)に当てはめているモチーフでした。
誰かに何か言われたか聞いてみると、
結構みんなに写真撮られてた、ということです。
学部の式が終わり、もらうべき賞をもらってホッとするMK。
そうそう、心配した天気ですが、雨どころかこの日は
朝からずっと超いい天気に恵まれました。
雷雨の予報は一体何だったんだ。
AIやコンピュータが何でもできる現代でも未だ天気予報を100%的中させられない。
このことを皮肉にも思い知らされた工学部卒業式の日でした。
続く。