昨日、ちょっと怖かったこと。
車に乗り込む前に、TOと次の行き先について、
「ウェックスフォードのホールフーズ(マーケット)に行かない?」
と会話していました。
直後に携帯を車に繋ぎ、appleCarPlayで
一番近いWhole Foods Marketを検索しようと「W」を入れた途端、
画面には「Wexford」と表示されたのです。(ちなみにそれまでウェックスフォードを検索したことはなかった)
携帯電話が人の会話を聴いていることがわかった瞬間でした。
さて、ピッツバーグに旅装を解いて早くも1ヶ月が経過しました。
この間の最も重要なミッションの一つ、
MKのアパートから荷物を運び出す仕事が無事に終わり、
その荷物を我々のAirbnbの部屋に運び込むところまでが終わりました。
わたしが選び抜いたAirbnbの立地は、なんと
彼がインターンシップで仕事をしている会社から歩いて5〜6分。
9時からの就業にうちで朝ごはんをちゃんと食べてから行くという、
おそらく彼には今後しばらくないであろう規則正しい生活を楽しんでいます。
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引っ越し前のアパートと、職場の間には、
MKの御用達コーヒーショップ、「コンステレーション」があります。
COVID-19の流行後はカフェであった部分を閉め、
カウンターには何人たりとも近寄らないように、という意味で、
結界線を張って営業していたのですが、今回MKと一緒に行ってみると、
なんとMKは結界のこちら側のカウンターでコーヒーを飲むことができる
「VIPカスタマー」に出世しているではありませんか。
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当然、MKと一緒に行ったわたしもカウンターに座らせてもらいます。
なんとMK、その後このお店の人から気に入られたのか、
互いにファーストネームを呼び合う仲にまでなっていました。
卒業後、インターンシップの会社に通うことになった彼は、
わたしたちが来るまで、バスでやってきて通勤前に開店と同時に入店し、
朝ご飯のマフィンとコーヒーの後歩いて職場まで通っていたというのです。
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早速わたしも久しぶりのプアオーバーを楽しみました。
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カウンターに座って初めて知ったのですが、オーナーのクリフは
毎日豆の種類によって配合を研究するため、
オレンジ色の電卓で計算をしてその結果を左のノートに書き込んでいます。
普通に機械で淹れて提供するコーヒーのことは「バッチ」(batch、
一塊という意味でいっぺんに入れたもの)と言いますが、
バッチコーヒーもそれなりに美味しいのがこのお店。
しかし、プアオーバー(手淹れ)を注文されると、彼は
研究熱心な科学者のような態度で会心の一杯を淹れようと張り切ります。
その理由について、彼は一度MKに
「ただ普通に淹れているだけだと仕事が面白くないから」
と言ったそうですが、いずれにせよそのこだわりは
使用する水に浸透膜濾過器を使うというような選択に現れています。
かといってそれほど気負い込んだものではなく、
「おいしい水と旨くローストした豆を使えば、
そんなに苦労することなく誰でも美味しいコーヒーは淹れられる」
二つは矛盾するようですが、どちらも真実なのでしょう。
また、クリフが自分の仕事に厳しいのは驚くべきで、
今回、何度かコーヒーを頼みましたが、
あまり上手くいかなかった、と言って淹れなおしたのが一回、
今日のは満足しなかったから次のは無料にする、と言われたのが2回。
失敗したと彼がいうのを飲んでも、そんなに変だと思わなかったのですが、
何か途轍もないこだわりを持っていることだけはよくわかります。
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そんなこの珈琲店。
最初からいい「気」が満ちている場所だと思っていましたが、
こうやってゆったりとカウンターに座っている時の気分は最高です。
飾りの少ない店内ですが、イコンのようなものがあり、
蝋燭が備えてあったので、クリフはロシア系かと思ったのですが、
MKによると、ドイツ系ということでした。
計算しながらコーヒーを淹れている彼の姿を見ると、それも納得です。
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前にも書きましたが、このオーナーの腕には、刺青が全面に施されています。
アメリカに来るたび、人々の刺青着用率が増えていく気がしていますが、
若い人ばかりではなく、いい年をした初老の男女が、
揃ってふくらはぎなどに変な柄を入れていたりするのを見ると、
一生取れないのに、その柄をそこに入れてよかったの?
とちょっと聞いてみたくなったりします。聞きませんけど。
まあ、ここのクリフとエイミーの場合は、それが似合っている
(ヒッピー的な意味で)のでいいんじゃない、としか思いませんが。
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この日はお店が混んでいたので、カウンターは遠慮して
隣の空き地にあるテーブルでコーヒーを楽しみました。
ピッツバーグは時々蒸し暑くなって豪雨が降ることもありますが、
おおむね日本より湿度は低く、気温が高くても
日陰に入れば快適に過ごせるので、外での飲食は人気です。
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MKもこの街に住んで友達と色々とお店を巡った経験から
いいなと思った店に親を連れて行ってくれるようになりました。
ここはケーキショップですが、夜遅くまで営業していて、
この日も、たくさんの甘党さんが
夕食後のケーキを楽しみに来ていました。(やはり女子率高し)
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今のご時世を反映して、ビーガンケーキが食べられます。
3人で普通のケーキひとつとビーガンケーキひとつを選んでみました。
(でもどっちがビーガンだったか忘れた)
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この日は雷雨と言ってもいいくらいの土砂降りとなってしまいました。
The Butterwood Bake Consortium というのがお店の名前。あえて訳すなら、
「バターの森 焼き物協同組合」
みたいな感じかな。
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また別の日、前回行って全員が気に入ったグリルレストランに、
今度は最初からカウンターの観覧席を希望して行きました。
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前回好評だった人参のソテー。
アメリカの人参は日本のより細長い鉛筆のような形状で、
「ヘアルーム・キャロット」と言いますが、
それをそのまま短く切って火を加えると大変甘みのあるソテーになります。
これ以降、わたしはにんじんを買ってきては
頻繁にこれでスープ味のソテーを作るようになりました。
ここのはおそらく照りをバターでつけてます。
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TOが選んだのはポレンタ。
ポレンタとはトウモロコシの粉から作った練り物みたいなもので、
ここではそれにカポナータ(ナスやトマトを揚げて甘酢で和えたもの)、
それからフェタチーズをまぶしてあります。
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これはわたしがオーダーしたツナのステーキ。
シシトウが親の仇のようにたくさん乗っかっていて、
MKにも食べてもらいましたが、ちょっと多すぎでした。
味というより見た目のために乗せたようです。
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MKはさすが若者、ハンガーステーキに挑戦していました。
ハンガーステーキ(hanger steak)とは、牛の上腹部、
肉の部位の中でも最も柔らかいとされている部分のステーキです。
上にかかっているソースのことを、サーブしてくれたウェイターは
「ウォータークレスのチミチュリ・ソースです」と言いましたが、
「チミチュリ」が言いにくいのか、ちょっと噛み気味でした。
アルゼンチン発のチミチュリソースは、パセリとニンニクのみじん切りを、
オリーブオイルと白ワインビネガーなどで和えたもので、
おそらくこれはパセリの代わりにクレソンを使っています。
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デザートは3人で二種類頼むことにしました。
これは焼いていない、つまりレアチーズケーキ。
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こちらのチョコレートケーキは小麦粉を使わずに焼いてあります。
どちらも結構なお味でしたが、まあ普通でした。
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ここはキッチンで働く人たちや薪のオーブンが
ガラス越しに見える「鑑賞席」ですが、写真を後で見てみたら
中の人がカメラ目線で挨拶をしていました。
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日課の散歩は、毎朝気の向くまま、いろんなところに行くつもりでしたが、
交通の便の関係と、それから、朝の時間も結構暑い日が多く、
日向の多いコースは歩くだけで消耗してしまうので、
結局いつも同じ公園の同じ木陰の多いコースを歩いています。
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朝早い時間でなくとも、山奥なので普通に鹿と遭遇します。
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ノースエンドという球場の近くのトレイルにも一度行ってみましたが、
ここは今年、とんでもないことに、遊歩道沿いにびっしりと、
ホームレスがテント村を築き上げている事態になっていました。
今時のホームレスなので、テントはどこで拾ってくるのか、
普通のキャンプ用の立派なものばかりですし、
彼らなりに地域に溶け込む努力のつもりなのか、ゴミはひと所に集めて、
テントの外に靴をきちんと揃えて脱いでいたりしていましたが、
それでもホームレスはホームレス。
道端のテントから巨大な裸足の脚が出ているとギョッとしますし、
ベンチに座っているホームレスに愛想よく挨拶されても困りますし、
なんと言っても集団で暮らしている現場付近は臭いがすごいのです。
彼らの中にもヒエラルキーみたいなのがあって、力のある人は
道の脇と言っても天井(橋の下)がある所にテントを持てますが、
中にはテントもなしに木の下とかに住んでいる人もいました。
それにしても、ピッツバーグのホームレス業界で、
わずか1年の間に一体何があったのでしょうか。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/0d/d3eeb712526db02d079d28da8104e656.jpg)
今年の夏で我が家はピッツバーグから去ることになります。
しかし、もし将来また戻ってくる日が来たとしても、この川沿いのトレイルにはもう2度と来ることはないでしょう。
このままホームレスが住み着いてしまったら尚更です。
本来ここは川でウォータースポーツをしたり、
ボートを持っている人が係留して岸辺でパーティを楽しんだり、
という何方かと言えば豊かな人々が集まる場所だと思っていたのですが。
ただ、まだ貸しボートなどはちゃんと営業しているらしく、
週末のこの日、わたしがボートにカメラを向けると、
船の上の二人がオールを持ち上げて挨拶してくれました。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/07/d4727cb1f353339fad0ffea6b81fde4b.jpg)
ピッツバーグ名物の黄色いブリッジ。
ここのところ順番に補修工事をしていて、去年とは違う橋が
通行止めして全面改装をしていました。
工事に使用されている重機は圧倒的にコマツかコベルコです。
さすがのメイドインジャパン。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/3b/f175cb648546602186e794d85dd4a188.jpg)
PNCパーク(野球場)の前まで歩いてきて、
去年はなかったこんなモニュメントができているのに気づきました。
地元チームパイレーツの永久欠番の数字が並んでいます。
例えば、手前の33番ですが、このブログでも紹介したことのある
「フライング・ダッチマン」ことホーナス・ワグナー(Honus Wagner)
の背番号です。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/ca/6f5f11eb597541ec04aa4a4404fd6309.jpg)
さらに、道端に巨大なサインボールが!
こちらは、説明によると、ピッツバーグパイレーツ、
ホームステッド・グレイズ、ピッツバーグクロフォーズ、と
ピッツバーグ縁の野球チームの殿堂入り選手のサインボールなんだそうです。
ちなみにホームステッド・グレイズ(Homestead Grays)というのは、
昔存在した黒人ばかりの野球リーグ「ニグロ・リーグ」のご当地チームで、
1950年まで存在していました。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/27/f027094d598a380104207cd05f6b9cce.jpg)
もう一つのピッツバーグ・クロフォード(Pittsburgh Crawfords)も、
ピッツバーグに本拠地を置くプロ・ニグロリーグの野球チームでした。
当時は「クロフォード・カラード・ジャイアンツ」などと呼ばれていました。
BLM全盛の今となっては信じられない呼称ですね。
1930年代半ば、クロフォードはニグロリーグの中でも
最も強力なチームの一つであったということです。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/32/b0f40803ac3e42eefa5fd801586c576b.jpg)
こちらがクロフォーズの選手の皆さんです。
戦争中、女子ばかりの野球リーグがあったのは知っていましたが、
黒人ばかりのリーグがあったのは初めて知りました。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/d1/d3096301eacc8ef8374bf2d680fe4b39.jpg)
サインボールにはこの3チームの中の殿堂入り選手のサインと、
殿堂入りした年、プレイしていた時期が書かれています。
![](http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/a2/0a8bd944e67c62bc5588555a37d7609a.jpg)
この日の散歩は、サインボールのところでUターンして、
またホームレス地帯を抜け、パーキングまで戻ったのですが、
途中でボランティアらしいゴミ拾いの集団を追い抜きました。
この少し先にはホームレスのテント村があるわけですが、
ゴミ拾い軍団は果たしてホームレスのゴミを拾うのか?
大変気になりましたが、見届ける時間はありませんでした。
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おまけ:MKの住んでいたアパートの駐車場で目撃した
「マイ・ガール」(なぜ明朝体)の描かれた痛車。
アメリカでこのタイプの痛車は初めてみましたが、
どうしたって日本とは「ノリ」が違う気がしますね。
所変われば品変わると申しますが、痛車すらも違います。
続く。