さて、わたしのアメリカ滞在における最大の目的である、
MKの大学院寮への荷物運び込みの日が近づいてきました。
元々このベイエリア地域は湿度が低いため、
霧の多いサンフランシスコを除いて夜間涼しく昼間は暑い
(日陰は涼しい)という砂漠型気候であるわけですが、
その昼間の気温が、引っ越しが近づいた頃異常に高くなりました。
この日は、サンマテオの山側に面した貯水池沿いの
長大なトレイルを家族三人で散歩に行ったのですが、
10時を過ぎると日差しがキツくて苦痛を感じるほどでした。
ベイエリアにトレイルはたくさんあるのですが、ピッツバーグのように
森林の木陰だけを歩くような場所が皆無であるため、
散歩は朝早くに済ませないと、地獄を見ることになります。
さて、MKの入居する大学院寮に引っ越しする日がやってきました。
無事大陸を半分横断して西海岸に着いた荷物を出すため、
U-HAULに行ってU-BOXを出してもらったところ、
扉の前にわざわざこんなものが置かれていて、一同呆然。
右側の牽引用のU -BOXは元からそこにあったものです。
「他にもいくらでも空いている場所があるのに、なぜわざわざここに」
「しかも扉の前に」
「嫌がらせかな?」
家族で呆れながらも、とりあえず積み込みを始めました。
荷物が全部コンテナであることと、レンタカーのゴールデンクラブで
インド人の係員が配車してくれたフォードのSUVの搭載力のおかげで、
どうやら引っ越しは2往復で済みそうです。
この頃、MKの大学キャンパスは、人気がなく閑散としていました。
寮への引っ越しは届出をして決められた日に行うのですが、
その日1日を通じて、引っ越しをしているらしいグループはほとんど見ず、
寮の周辺も学生らしい人はあまりいません。
その理由は明確で、セメスターが始まるのが9月26日だからです。
これは普通のアメリカの学校にしては特に遅い開始となります。
キャンパス内で、マスク推奨のポスター発見。
今はブースターショットを受けた人は基本マスク着用は免除されていて、
ヒートウェイブ下のここベイエリアでマスクをしている人は、
もちろん皆無ではないものの、あまり見ることはありません。
おそらくこのポスターは、COVID-19蔓延中、
特にカリフォルニアが酷かった時期に制作されたものでしょう。
MKの卒業した大学は、黒いスコッチテリアという
文句なしに可愛らしいマスコットがいて、何かと和ませてもらいましたが、
この大学のマスコットは・・・。
あまり可愛げがなくて気の毒だなあ、とかねがね思っていましたが、
こうしてみると、木のマスコット、悪くない。いやむしろ可愛い。
マスコットの可愛さは対象そのものではなくデザインが決めるのか。
・・・・とここまで書いたとき、ふと学校のデータを見たところ、
この大学にはマスコットは「ない」と書かれていました。
「ない」って・・。
キャンパスの歩道沿いには大学シンボルである木が植わっていますが、
この気候には、南国を思わせるヤシ科のフェニックスの方がお似合い。
大学院寮であるこの建物も、そこはかとなく南欧風です。
それにしても引っ越しをしているグループは、わたしたち以外に
1〜2組見たくらいで、そもそもあまり構内で人を見ません。
授業が始まるのが9月26日なので、アメリカ人の学生は、親元にいるか、
旅行をしたり、インターンシップをしたりしているのでしょう。
しかし外国人学生であるMKは、インターンシップが終わった今、
行くところもないので入居するしかありません。
居住区の鍵には学生証を使うことになっていますが、
この日、オフィスに取りに行ったらまだできていなかったので、
仕方なくアナログなキーを貸してもらうことになりました。
学生証を作るための期日に間に合わせるために、
親が出動し散々苦労してI-20を取ったというのに。
ちなみにI-20(アイ・トウェンティ)とは、
留学生が必要とされる書類で、入学許可証としての機能を持つほか、
入学後は在学証明書としての役割も果たします。
また、アメリカへの(再)入国審査の際にも必ず提示を求められるもので、
その大学の学生であることを証明する正式な書類です。
写真はこのキーでガチャガチャやっている最中のMKですが、扉開かず。
結局、隣の建物と入り口を間違えていたことが判明しました。
寮のロビーは冷房が効いて涼しく、ほっと息をつきました。
車から、事務所で借りたカートに荷物を積み込んで、いざ入寮です。
この廊下の広さよ。
ちなみに廊下のエンドには会議室、ゴミ捨て室があります。
そして、廊下もひんやりと空調が効いています。
ここが大学院寮(一人部屋)だ!
最近できた建物らしく、何もかもがピカピカ新しい設です。
フルキッチンに大型冷蔵庫、部屋に備え付けのソファ、大きなベッド。
いいなあ・・こんなアパートで学生生活を送りたかった。
普通のアパートのように食器洗い機はありませんが、
大型のオーブンがあるので、料理のできるMKにはありがたい作りです。
ただ、ドアを開けてすぐある大型の冷蔵庫扉が右開きなのはいかがなものか。
キッチンのエンドには小さなカウンターがあって、食事ができます。
一人の部屋なのでダイニングテーブルはありません。
ベッドの大きさはクィーン、机の奥行きはたっぷり。
そしてさすがは今時の大学生用アパート、コンセントがたくさんあります。
こんなに床が広いのに家具を置くことはできない洗面室。
日本では考えられないことですが、バスタブがなく、シャワーのみです。
部屋は自分で選ぶことはできず、自動的に割り振られるので、
眺めとか何階にあるとかは全くの運で決まります。
ここは7階ですが、大学のアイコンとなるタワーは部屋からは見えません。
アパートの一階の駐車場からようやく見える位置関係です。
窓はスライドして外気を入れることができますが、
網戸を開けることはできず、窓を開けるときには網戸下部に設けられた
台形の小さなドアみたいなところに手を突っ込んで行います。
つまり部屋の窓から絶対に人や物が落ちない設計です。
これは大学の寮としては実は大事なポイントかもしれません。
とりあえず荷物を運び込みます。
UーHAULとの往復はきっちり2往復ですんだのですが、
もしあと1つケースが多かったら3往復しなくてはならないところでした。
ここは大学院寮といっても、10階以上の高さのが4棟あり、
寮だけで日本の都心の大学よりよっぽど敷地が広かったりします。
MKの今回の部屋はこの中で最も小さいタイプで、
世帯持ちの院生のためにはファミリー向けの部屋も完備してます。
広大な敷地内ではペットがいなくなることもあるようです。
キャンパス内は結構野生動物もうろうろしているので、
飼い主はさぞ心配していることでしょう。
情報によるとこの猫はマイクロチップを埋め込んでいるようですが、
なのにどこにいるかわからないものなのでしょうか。
週末、ロビーにはちょっとしたパーティでもあったのか、
食べ物やなんかが乱雑に置かれていました。(日本のお菓子もあり)
ちなみにこのアパートには棟ごとに一室ずつ「音楽室」があり、そこには
ピアノが置かれていて、練習などで自由に使うことができます。
■ 各種ヨーロッパ料理
さて、ここで唐突に恒例のベイエリアグルメ紹介ですが、
今日はベイエリアで味わったヨーロッパの料理を。
🇮🇹イタリア
この日は引っ越しの荷物積み込みを終えたということで、お祝いムード。
レッドウッド・シティの中心街にある評判のイタリアンに出かけました。
MKのレストランの探し方は、とりあえず星4.5以上に絞り、
そこから家族の意見を聞いて選ぶというもので、
この日は中華でも、もちろん日本料理でもなく、レッドウッドシティにある
ちょっと華やかで美味しいピザを出すお洒落めの店となりました。
レッドウッドシティは、昔、日系移民の技術革新により、造園業が盛んで、
中でもアメリカ初めての菊の生産地として有名な地域だったのですが、その後日系人の強制所収容により、産業は廃れ、今日に至ります。
しかし、その名残なのか、サンマテオの中心街は今でも和食を出す店が多く、日系が経営しているらしい店構えだったりします。
(うちはもうアメリカの日本食に期待していないので行きませんが)
元々は先住民族を追い出した(?)スペイン人が移住していた関係で、
米墨戦争の後、カリフォルニアがアメリカ合衆国になった時も
メキシコ人の大金持ちが広い荘園を持っていたという土地です。
古い建物も多く、レストランの向かいにある図書館なども築100年超えです。
オリジナルの図書館は、アンドリュー・カーネギーが1万ドル寄付して
1904年に完成したのですが、1906年の地震で倒壊してしまいました。
そこでカーネギーがもう一度寄付をして建て直したのが、現在の建物です。
このことにより、レッドウッド公立図書館は、同じ敷地で
2回カーネギーの補助金を受けた全米唯一の図書館となりました。
わたしが選んだメインは魚とたっぷり野菜。
この日のイタリアンですが、経営しているのはもちろん、
ウェイトレスも間違いなくイタリア系の人たちでした。
こういう安心感というか、単にムードのために、ジャパニーズレストランは
そう見えるだけのアジア系店員を雇うのかもしれません。
それを思うと、アメリカの各種民族料理は、その国の人たちにとっては
必ずしも外国人が思うほど評価されていないのかもしれないと思ったり。
皆で取り分けるために頼んだスモールディッシュ、ズッキーニ。
家族の誰かが頼んだエビの一皿。
ピザは、テーブルの面積を節約するために工夫された
専用のスタンドに乗せられてサーブされます。
まずいピザは耳を食べる気にならないのですが、これは
生地がモチモチしていて端まで美味しく食べられました。
ここまでほぼ満点だったので、きっとデザートも美味しいに違いない、
と頼んでみた一皿目のパンナコッタ。
こちらはなかなかというレベルでしたが、
ティラミスは衝撃的に美味しかったです。
家族三人、夢中になって食べてしまいました。
🇪🇸スペイン
この日はベルモントにあるスペインのタパスへ。
レストランの名前から、おそらくイベリア地方の料理かと思われます。
昔バルセロナ旅行のためにスペイン語をちょっと勉強しましたが、
その時覚えたフレーズでいまだに忘れられないのが
「ウナス・タパス・サブロサス」(美味しいおつまみ)という言葉です。
タパスを「おつまみ」と訳すかどうかはちょっと疑問ですが、
要はタパスとは小皿料理のことだと思います。
バルセロナでは、TOのアメリカの大学の同級生と再会し、
彼におすすめのタパス、「パタータ」の店に連れて行ってもらいましたが、
ここでほとんど同じパタータ(ポテト)が食べられました。
まさにこれが「ウナス・タパス・サブロサス」でした。
そしてスペイン料理に来たら食べずにはいられないパエリア。
お鍋の大きさは、三種類くらいあって、これは三人用です。
後ろの席は六人でテーブルくらいある巨大なパエリアを完食していました。
出てきた時は自分が何を頼んだのかわからず、一瞬考え込んでしまった、
外側が岩のように硬いアイスクリームです。
🇬🇷ギリシャ
ギリシャ料理レストランにも行ってみました。
地中海沿いの国は総じて野菜中心のヘルシーな料理というイメージですが、
ここのサラータもオリーブオイルと調味料だけで唸るほどの美味でした。
ちなみにテーブルについてくれたウェイターは若い長身の男性でしたが、
この人が、額から鼻先までほぼ一直線の典型的なギリシャ鼻でした。
これね
ギリシャのデザートといえば、バクラヴァ。
フィロ生地の間に刻んだクルミ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、
アーモンドなどをはさみ、焼き上げてから濃いシロップをかけたものです。
昔パリで食べたバクラヴァが激甘すぎた記憶があり、躊躇しましたが、
ここはアメリカ、ちょっと洗練されているかもと思い、
三人で一つ頼んでみたら、これが甘さ控えめで大変結構でした。
アメリカのハーブティは、ポットにティーバッグを入れたものが多いですが、
ここは本物の葉っぱを使っているらしいので、
食後に頼んでみたら、面白いトレイに載せて持ってきました。
携帯を取り出したら、ポーズを取ってくれたので
(この人はギリシャノーズではなかった)
ウェイターさんごと撮らざるを得なくなりました。
上から見ると◯、下から見ると□のポット。
流石はギリシャです。
何がさすがかわかりませんが。
■ヒートウェイブと大学の開始時期の関係
この頃、ベイエリア一帯には、ヒートウェイブ注意報が発令されました。
何しろ、MKの大学構内では気温が43度にまで上がりました。
外に一歩出たら辛くてヒーヒーいわずにいられないくらいの熱です。
日本よりマシなのは、湿気が皆無であることですが、
これで日本並みの湿度なら、まんま熊谷市です。
湿度がなく高温なので山火事が自然発生していました。
そういえば、ピッツバーグからサンフランシスコまでの機内から
地上で火事が起こっているらしい現場を目撃したんだよなあ・・。
さて、繰り返しますが、MKの大学は4セメスター制で、
9月下旬と他と比べて遅い時期に学期が始まります。
MKの寮でヒートウェイブの間過ごした時、あまりに暑いので
部屋のクーラーをつけてくれるようにMKに頼んだのですが、
しばらくスマホで何か調べていたかと思ったら、
「冷房ないんだって」
部屋にあるエアコンと見えた空調は、
10月から3月いっぱいまでの期間暖房をすることしかできませんでした。
フロントや廊下にはひんやりと冷気が来ているので、
そのシステムがビルに備わっていないわけではないのですが、
とにかく学生の個室にはクーラーというものはないのです。
その時、わたしは気づいてしまいました。
この学校は、夏の間、学生がいることを想定していないことを。
昔キャンプで来ていたときから、このキャンパス内の夏の暑さが
とにかく過酷で、異常ですらあるなと思っていたのですが、
だからこそ、大学はその時期を勉強に向かないと切り捨てて、
9月下旬始まりの4セメスター制としたのに違いありません。
知らんけど。
それにしても、誰もいない時期、廊下とロビーだけが
ガンガン冷房されているのは何故なんだろう。
謎は深まるばかりです。
続く。