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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「ハワイ・マレー沖海戦」〜真珠湾攻撃と・・

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「ハワイ・マレー沖海戦」、ようやく真珠湾突入です。



搭乗員たちが飛行機に乗り込みます。
本物の海軍のシーンではないかと思うくらいリアル。



これは「取りかじにあげ〜」のあと「よーそろ〜」
といっているシーンなのですが、「微速」になっています。

まあ・・・細かいことはしょうがないね。



なんと言う名称の装置かわかりませんが、これでフネが風を立てているのを見ます。
これを確認して、航海士が

「風が立ちました」

と艦長に報告しました。
それを聞くと艦長はデッキに出ておもむろに飛行長に向かって

「出発!」

の司令を出します。
(男なら一生に一度はやってみたい仕事以下略)

 

それをきいた飛行長が合図の旗を振り、車輪止めが外されると、
飛行機はするすると動きだし、



皆が帽振れで見送る中次々と発進して行くのですが、
このシーンがどう見ても海の上の母艦。
しかもしっかり艦橋が左舷にあります。

ということはこの空母は「赤城」か「飛龍」ということになりますが、
これ、どちらも撮影は勿論取材すら拒否されたんですよね?

うーん・・・どう見ても本物の空母で撮影されたとしか思えんのだが。

そこでしらみつぶしに情報を拾い集めたところ、このシーンは
「タッチアンドゴー」のときに使った同じ実物大セットで、にゃんと、

「海に向かって建造されていた」

ことが判明。

これすごいですね。
当時はそんなことに使えるような空き地がいくらでもあったってことなんですよね。
実物大の甲板セット。
もし今後日本の戦争映画でそれをやれば(とくに大和もの)きっと映画史に名を残せるけど、
今の日本の土地事情ではまず無理だな。
特撮の方が安く済む、ということになっちゃう。

そしてこのカット、カメラアングルも完璧で、海の上であるとしか思えません。

こりゃすごい。
もしかしてこの映画が「名作」とされるのはこういう無茶な凝り方にもあったのか。


しかし、写真に撮れませんでしたが、発艦する九九式艦攻には
ときどき「K」の尾翼マークのものがみられます。
はっきり写っているのがK-315ですが、アルファベットの後は機種を表し、

戦闘機なら「1」
艦爆なら「2」
艦攻なら「3」

つまりこの機は「艦攻の15番機」ということになります。

ちなみに「赤城」だった場合、尾翼はAI-三桁数字、となるのですが、
Aは赤城の意味ではなく、一航戦(Bは二航戦)の意で、
続くアルファベットIは一番艦の赤城(IIは『加賀』)を意味します。

ですのでこの「K−315」はそのころ廃止されていた「加賀」の
艦載機の尾翼ナンバーをつけているということになるのですが・・・。

どなたかこの辺に詳しい方、ご存知でしたら教えて下さい。 







ハンモックで囲まれた艦橋デッキで帽振れする大河内艦長。
この人、本当に貫禄ありますわ。
演技もいい感じに「普通」。
艦長だからって帽振れのときにやたら悲壮ぶって眉根を寄せたりしません。
適当に帽振れをさぼったりしてそれが妙にリアル。

周りの軍人役もそのものにしか見えません。
まあ最も、このころは海軍軍人が映画の制作をずっと「見ていた」わけで、
少しでもおかしな所作があったり、海軍のしきたりが間違っていたら
即座にご指導ご鞭撻が入ったのでしょう。

現代の映画やドラマは、軍隊を見たどころか生まれてもいなかったものが
テキトーに聞きかじりの知識だけで考証し、おそらく諸般の事情とやらで間違いをろくに指摘もできず、
その結果、とんでもない映像になったと思われる例を散見します。

津川雅彦氏に言われるまでもなく、全てが「安く」なり、
「所詮映画」「所詮ドラマ」として消費されるだけのものになった、
ということなのでしょう。

それを「堕ちた」とするかどうかは別として。



雲の多い中索敵中、義一の乗った艦攻の様子が描かれます。



友田善一の操縦するのは指揮官淵田美津雄中佐と同じく九七式艦攻。
なんと友田、後ろに教官の田代飛曹長を乗っけています。
そして、相変わらずハワイからのラジオ放送を傍受しては

「まだラジオをやっとるぞ」
「そうですか。いつまで続けるんでしょうか」
「こっちがやっつけるまで踊るつもりじゃろう」

などと呵々大笑しますが、いやそれいくらなんでもライブじゃないから。
唯の音楽番組だから。



因みに藤田進演じる山下分隊長は、別の艦攻に乗っています。
この人物が 雲の切れ間から真珠湾を発見します。



そして、周りの飛行機に指差し動作でそれを教えます。



降下して山中を縫うように進む編隊。

この構図は、以降の真珠湾攻撃を描いた映像物の雛型となり、
連綿と繰り返される日本軍機侵攻のイメージとなります。



そして山下隊長が目を見張るその眼下には・・・・。



真珠湾が。
勿論模型なのですが、白黒が幸いして本物にしか見えません。



人間が本物に見えるので、こちらは明らかに実機。
尾翼にはク−320、胴には報国。
これはおそらく「呉空」の「報国号」(民間に寄付された機体のこと)。

皆さんの お志によっていただいた飛行機も活躍しましたよ!
という海軍の報告とお礼をかねた1シーンではないでしょうか。

映画のちょっとしたシーンにスポンサーに配慮したものやことを入れこむ、
そういったマーケティング手法はこのころからあった? 



さっそくこの「報国号」が、どうみてもこちらは模型の駆逐艦に雷撃。
ここで見ていただきたいのは海面。
フネの大きさから考えて、決してそう大きなセットとも思えないのに
海面のような小さな波が立っています。

これは、本物の海に見せるために寒天を使用した成果でしょう。



命中。
そのあと田代飛曹長が「やった!」と快哉を叫びます。

僚機が爆雷に成功したので我もと張り切る友田機。



そしてさらに次の獲物を求めて進む友田機。



「ヨーイ・・・てーっ!」



「どうだ!行ったか?」



後ろの機銃手が

「行ってます!行ってます!行ってます!」



「やったあ!やったあ!やったあ!」



「太棒了」

が「やった」なのか・・・。
と中国語にも詳しくなってしまうこのDVDです。



続いて円谷特撮監督渾身の真珠湾攻撃シーンが
次々と展開します。


勿論今の特撮やCGと比べれば稚拙さはいかんともし難いのは確かですが、
それでもこの時代、ここまでのものを作り上げたことは凄い。
戦後のGHQには本物の攻撃の実写フィルムだと思われ、
東宝は提出を強要されたという笑い話のような実話があったくらいです。


この映画がプロパガンダであるということから坊主憎けりゃとばかり

「セコい特撮も効果倍増で見ているこちらが恥ずかしい」

と特撮にまで噛み付いている映画講評者がいましたが、この人には
あんたは精魂込めて力を注ぎ、結果を為したと自信を持って言えることが一つでもあるか、
と是非聞いてみたいですね。
ましてやこの特撮のように「歴史に残る何か」を残したことがあるか、と。



義一らの雷撃隊が外側をやったあと、水平爆撃隊が内側を攻撃。

 

こうして詳細な画素の写真に撮ると、確かに模型っぽいですが、
大きな画面の映画で観た者は特撮であるとは思えなかったでしょう。
GHQが観たのもフィルムの大画面での上映だったのですから、
彼らが本物だと勘違いしたのも宜なるかなといったところです。

デジタル化され、高画質の画面に映し出されれば特撮の粗は隠せません。
現代の科学の恩恵を受けてこれが普通だと思い70年前のこの映像を一言、
「セコい特撮」などと言い放つ現代人は、過去そのものに対してあまりにも傲慢でしょう。

 

 

 

わたしが特に凄いと思ったのがこの映像。

日の丸の見えた飛行機の翼越しに爆撃される真珠湾が見えます。
この翼と特撮を合成しているのは明瞭ですが、それにしても、
映し出されている真珠湾の風景があまりにもリアル。

続いて、艦爆による急降下爆撃が始まりました。

 

艦上爆撃機攻撃は、水平に航行しながら投弾する艦攻と違い、
急降下して目標に爆弾を「投げつけるように」爆撃します。
「連合艦隊」の脚本家須崎勝彌氏が、

「艦爆乗りは気性が荒い者が多い」

と言うように、悍馬を乗りこなすような気質の者が多かったのでしょうか。
この艦爆隊の隊長は高橋赫一少佐、雷撃隊隊長は村田重治中佐です。

続いて戦闘隊。



マイケル・ベイも、「パールハーバー」のときにこれを観ていれば・・・。

あの映画では、21型と52型と、ついでに艦爆が一緒に編隊を組んでいましたが、
今考えるととんでもない構図ですね。

当時考えてもとんでもなかったですが。

ところで、これは特撮ではありません。
それにしても変わった仕様の零戦だなあと思われません?

21型は飴色だのなんだの、未だに議論になったりしますね。
(わたしはその『飴』が何色なのか、という定義がないので、
この件はいずれにせよ非常にもやもやしたものを感じずにはいられないのですが)
しかし、この零戦は白黒映像であることを考えても「飴色」には見えません。

これ・・・・・・薄いグレーじゃないんですか?

カウリングも黒じゃないし、じゃこれ一体なんなのよ、
とwikiを観ると、

「試作機の飛行映像が流用されている」

な、なんだって〜!(笑)

それは凄い。
そういえばこの零戦、試作機だからか翼に日の丸がないし、爆装もなし。

しかしある意こんな貴重な映像があろうか。
試作機の飛行映像なんて、もともとのフィルムはとっくに消滅しているでしょう。
しかし、この映画に流用しておいたので、こうやって後世に残っているのです。

素晴らしい。素晴らしいぞ「ハワイ・マレー沖海戦」。
知れば知るほど、この映画の歴史的価値が明らかになっていく。

 

そして零戦隊は水上基地の攻撃を・・。
ここはヒッカム飛行基地。



以及、というのがどうも「ヒッカム」と読むらしい。

昔香港に行ったとき、ロバート・レッドフォードの
レッドフォードが「烈福」で大笑い、
台湾ではイーサン・ハントのイーサンを「伊森」と書くので、
映画よりそちらが気になって仕方がなかったことを思い出します。



ホイラー飛行場。

 

艦爆も激しく攻撃。

それにしても、これみんな軍事施設ですよね?

「パールハーバー」で「真珠湾の仕返し」としてドゥーリトルの「東京空襲」が
行なわれた、ってことにして、東京の軍事施設を攻撃したと言い張ってましたが、
ドゥーリトル隊が攻撃したのは早稲田とか小学校だった、って
アメリカ人は知ってるんですかね?

最近中国が、靖国問題で日本に対していきなりトーンダウンしたアメリカに

「アメリカはパールハーバーを忘れたのか」

なんて共同戦線を貼ろうと挑発したということがありましたが、
アメリカは靖国参拝にうっかり口を出して予想外に日本人の逆鱗に触れ、

「これ以上日本をつつくと、原爆や東京大空襲のことをこっちが言われるぞ」

ってどうやら一部のお利口な人たちが気づいたんでしょうね。


軍事施設を攻撃した真珠湾に対し、「民間人殺戮」はアメリカの脛に傷。
それを糊塗するために日本を「悪者」にしておきたい、というのがアメリカ始め
「戦勝国」の本音ってやつですからね。

アメリカさん、きっと中国には

「いい加減空気読んでくれよ・・・」

と言いたいだろうなあ。



こちらは空母「赤城」(仮)。

「我奇襲に成功せり」

この報を受け、軍医長と主計長はほっとして腰を下ろします。
と・・・。



「パールハーバーは攻撃されている。訓練にあらず」

慌てた調子の放送が始まりますが、どうにもこの英語の発音がヘタすぎ。
戦時中ですから日系二世に声優をさせたというのが丸わかりです。

さて、この後、アメリカ側の反撃も激烈になるということで



ご予算の関係で一機だけアメリカ陸軍の航空機が出てきます。
この航空機はたちまちやられて火を噴き墜落。

ここで、あの飯田房太大尉の自爆シーンが、
「尊き犠牲」
という字幕ののちに再現されます。

全攻撃シーンを通じて、BGMの入るのはここだけです。



僚機に自爆するということを告げる飯田大尉。
この前後は模型による特撮ですが、このシーンは地上で撮影したらしく
人間がちゃんと手を振っています。

90度首が自動で動く人形を操縦席にくっつけて、それこそ「せこい特撮」をした

「ああ陸軍 加藤隼戦闘隊」

の特撮チームは少しこれを見て反省していただきたい。

栃林CGでさえ「人間の特撮はまだ無理」っていってるのに、
人形を人間に見せる特撮なんて、百年早い。

 

カネオヘ飛行場に突っ込み自爆した飯田大尉の最後。
しかしこの映画は「実録」ではありませんから、
明らかに飯田大尉のことであっても名前は無しです。 

というわけで真珠湾のシーンはここで終わるわけですが、
最後に皆さんに少し鑑定してもらいたいものがあります。
もしかしたら閲覧注意画像ですが、そうでないかもしれません。

それは飯田大尉の自爆シーンの合間の特撮映像なのですが

 

もともとのフィルムをデジタル化する際、フィルムについていたゴミが
はさまれたまま映像に映り込んでしまったようなのです。
もしDVDをお持ちの方がいたら、わたしのPCより鮮明なモニターで
この映像を確認していただきたいのですが、

このゴミって・・・・・・・どう見ても・・・。

(((((( ;゚Д゚))))))ガクガクブルブル

最後でとんでもないもの(たぶん)をお見せしてすみません。
クレームはこの映画をDVD化した会社にぜひどうぞ。






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